竜の姫に俺は乗る─召喚されしロボオタ、姫が変身したロボを駆り最強を目指す─   作:三丈夕六

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第6話 ちょ!? 服着ろよ!!

 ヒュドラムを倒した俺達は、地下空間をAIに空間検知して貰い、その1つから脱出した。

 

 ヒュドラムの巣から森へ抜けた頃、ティアマトの様子が急におかしくなった。いや、戦闘中からおかしかったが。それとは少し様子が違う。

 

『はぁ……はぁ……』

 

 ティアマトの声には覇気がなく、疲れ果てているようだった。

 

「大丈夫かティアマト?」

 

『だ、大丈夫……です……こんなに動いた事無かったので、少し……疲れが……』

 

 ティアマトの体を気遣うつもりだったのに、結局ヒュドラムとの戦いで無茶させてしまったからな……どうすればいいんだ?

 

〈解。エネルギー不足により、形態維持が困難になっている模様です。位置情報を知らせるため再度信号弾を発射します〉

 

 ティアマトの肩が開き上空に信号弾が打ち上げられる。木の合間を通り抜け、眩い光の球が上空へと登っていく。

 

〈熱源感知術式起動。40km先より複数の熱源がこちらへ進路を変更した事を確認。魔力感知術式機動。共有記憶領域と照合──合致。ダーナ機を含めた3機が気付いたようです〉

 

 すぐ見つけて貰えたか。良かった……。

 

「なぁ、AI。俺はどうしたらいい?」

 

〈手動でコクピットより降機して下さい。ティアマト・リ・アシュタリアが異竜人体(いりゅうじんたい)へ戻った際は彼女の体を温め、安静にするよう勤めて下さい〉

 

 AIの指示通りティアマトを着座させ、コクピット前に手を添える。……ティアマトの動く意思を感じないから動きが重いな……仕方ないが、もどかしい。

 

 しばらくして降機準備が整う。すると、コクピットを照らしていた光やモニター、操作用魔法陣が無くなり、俺の体に伝っていた細い光も消えてしまう。

 

 精神リンクが切れた事で、すぐ近くに感じていたティアマトの存在が遠くに感じるようになった。代わりに俺が入って来た時の大きな魔法陣が目の前に現れる。

 

 それに触れようとした時、ティアマトの声が響いた。

 

『行か、ないで……もっと乗っていて欲しい、です……』

 

 よわよわしい声。精神接続も切れているから彼女がどんな気持ちなのかも分からない。不安なのだろうか?

 

「心配するな。ずっとそばにいるから」

 

『ホント、ですか……?』

 

「ああ。だから安心しろ」

 

 そう伝えてから、俺はティアマトの外へ出る。添えられていた手に乗り、膝へ。彼女の脚にある窪みへと自分の足をかけて慎重に地面へと降り、ティアマトの顔を見上げた。

 

「もう戻ってもいいぞ」

 

 ティアマトのつぶらなツインアイ。それが俺をジッと見つめる。

 

「見ててやるから」

 

『はい……』

 

 その眼が潤んだ瞬間、ティアマトの体が粒子になって霧散する。それは、よく見ると先程のマナ粒子に似ていた。でも、ずっと色が濃い。マナ粒子は淡い色をしていたが、彼女の粒子は明らかに存在を主張しているように見える。その粒子が俺の目の前に集まり、人型を形成していく。人の姿に。女の子の姿に。

 

 うっすら緑がかった髪に、頭のサイドについた2本の角。金色の瞳。猫のような細い瞳孔……少し幼さを残した顔。その子が、真っ直ぐ俺の瞳を覗き込む。

 

「ショウゴ……」

 

 聞き慣れた声だけど、反響は無い。普通の人の声だ。改めて、あの竜機兵というロボットはティアマト本人なのだと思い知る。どういうメカニズムなんだろうか? 今度AIに聞いてみよう。

 

 そう思って視線を彼女から逸らそうとした時、彼女に両頬をガッと抑えられた。

 

「あ、あわわわわわわ……!」

 

 あたふたするティアマト。顔まで真っ赤だし何かあったのか?

 

「どうしたんだよ?」

 

「し、下見ないで……ふふふ服着てませんのででで……」

 

「へ?」

 

 俺は反射的に下を見ようとして、彼女の胸元の肌色を認識した瞬間、急いで彼女の顔へと視線を戻した。ティアマトの目が泳ぎまくっている。俺の顔も急激に熱くなった。

 

「ちょっ!? なんで裸なんだよ!? ふ、服は!?」

 

「神殿に置いて来てしまいましたぁ……!」

 

 ティアマトの目はみるみる内に涙目になってしまった。

 

 

 

◇◇◇

 

 

 とにかく何か着せなければと思い、俺は自分が着ていた上着をティアマトへ着せた。黒いジャージは彼女にとってはサイズがかなり大きいらしく、一応だが目のやり場には困らなくなる。

 

 俺達は大樹を背に座り、救援を待つ事にした。竜機兵の3倍以上ある大樹が無数にある森にいると、なんだか自分が小動物にでもなった気分だ。そう思うと変な生き物がいなくてよかったな……ここ。

 

 ティアマトは慣れているのか、特に怯えた様子もなく遠くを見つめていた。

 

「竜機兵になっている間、体内に蓄積されたマナ粒子を消費するのです。今はそれが尽きかけているので……」

 

 ティアマトが言った瞬間彼女のお腹がグゥと鳴る。彼女はまた顔を赤くしてお腹を押さえた。

 

「ん? 体内に蓄積されたマナ粒子ってもしかして……食いもんで補充するのか?」

 

「は、はい……短期間で大量に蓄積するにはそれしかなくて……」

 

 ティアマトのこの感じ……竜機兵になったヤツは腹が減りやすくなるのかも。

 

「ちょっと……その……えと……」

 

 ティアマトの目が周囲を彷徨う。どうしたんだろうかと思っていると、彼女は意を決したような表情で俺を見た。

 

「し、ショウゴ!」

 

「なんだよ?」

 

 突然、ティアマトが体を寄せて来た。心臓が止まりそうになって咄嗟に身を引こうとするが、彼女に腕を掴まれてしまう。

 

「に、逃げないで」

 

 何か言おうとしたはずなのに、全部頭から吹っ飛んでしまう。彼女の長い髪が顔にかかってくすぐったいなとか余計な事ばかり浮かんで、何を言おうとしたのかすら、忘れてしまった。

 

 「やめろ」だろうか? 「離れろ」だろうか? どちらにしても、言ったら彼女を傷付けていただろう。そう思うと、言わなくて良かったと思えた。

 

「な、なんだよ急に……?」

 

 代わりに俺は冷静を装うことにした。できているかは自信無いが。

 

「その、こうしていて、いいですか? 繋がってないから、不安で……」

 

 ティアマトの金色の瞳にうっすらと涙が溜まっていた。恥ずかしそうに上目遣いをする彼女の姿に俺の心臓はうるさいほど鳴り響いていた。

 

 さっきまではティアマトに乗ってたって言うのに、なんで人に戻ったら緊張してんだよ。バカか俺は……。

 

 恥ずかしさを誤魔化そうと自分への悪態をついていると、ティアマトはポツリと呟いた。

 

「私……いつも役立たずで、皆からどう思われているのか分からないのです。だから怖いの。さっきまでショウゴと繋がってた感覚を忘れたくないのです。だから……逃げないで……」

 

 それで離れると不安になるのか。竜機兵になっていた時のティアマトは嬉しそうだったもんな。そりゃ、そう思うかも。

 

 役立たず……か。

 

 彼女のことばで思い出す。母親から言われた一言を。

 

 ──アンタなんか産まなきゃ良かったのよ……!!

 

 俺は、あの日、あの言葉を聞くまで必死に親の言う事を聞いて来た。それまでやりたい事も我慢して、親の望み通りに生きて来た。

 

 だけど受験で失敗した瞬間、手の平返しだ。俺は見限られて両親の関心は弟や妹へ。俺はいないも同然の生活。だから俺は家を出た。結局、俺は18年も俺の人生を生きられなかった。

 

 ティアマトも、家族からそんな風に思われたんだろうか? だとしたら……。

 

「恥ずかしかっただけだ。い、いいよ別に……」

 

 辛くは当たりたくないな。

 

 俺が答えると、ティアマトの顔はパッと明るくなった。

 

「こういうの慣れてないんだけど」

 

「知ってます。見ていましたから」

 

「あ〜……絶対恥ずかしい所も見られてるよなぁ……」

 

 ティアマトがふふっと笑う。そのおかげか、少し空気も軽くなった気がする。

 

 

 ……。

 

 

「なぁ」

 

「なんですか?」

 

「精神リンクしてる時ってさ、ティアマトにも俺の気持ちが分かったのか?」

 

「はい。考えている事までは分かりませんが、ショウゴが楽しいと感じていたり、私の事を気遣ってくれていた事は……なんとなく分かりました」

 

「そっか。なんか……そうやって筒抜けだと恥ずかしいな」

 

 ティアマトはムッとした顔で「私もですよ!」と怒った。思わず笑ってしまい、また空気が軽くなった。

 

「ねぇショウゴ? 私と……その、戦ってくれますか?」

 

 チラチラと俺を見るティアマト。少し不安気な様子に、また心臓が跳ねた。

 

 恥ずかしくなって視線を逸らしてしまう。ティアマトと戦う……でも、まぁ、ティアマトといるのは悪くないと思える。俺も……その、楽しいし。

 

「俺を選んでくれたのはティアマトだ。だから、俺もそれに応えることにする」

 

「そ、それって……?」

 

「やるよ、竜闘の儀。色々教えてくれよな」

 

「ほ、本当ですか!? やった!!」

 

 ティアマトが興奮したように俺の腕に抱きついた。腕に伝わる柔らかい感触に体がビシリと固まってしまう。ティアマトは俺の様子がおかしい事に気付いて、自分の胸元と俺の顔を交互に見た後、また顔を真っ赤にして謝ってきた。

 

 その時、辺りに風が吹き渡り、周囲に女兵士ダーナの声が響き渡った。森の木々を縫うように、銀色の機体がこちらへと飛んでくる。ティアマトは、立ち上がってダーナ機へと大きく手を振った。

 

『姫様〜!!!』

 

「ダーナ!! 私達ヒュドラムを倒しましたよ!!」

 

 嬉しそうに飛び跳ねるティアマト。その姿は普通の女の子そのものだ。

 

 人の気持ちが分からなくて怖い、か。

 

 もしかしたら、ティアマトが戦闘中にああなるのは、その反動なのかもしれないな。人の気持ちが分かるというのは、それだけで嬉しいから。

 

 

 ……。

 

 

 こうして、俺はこの世界でティアマトと闘う事になった。元の世界に戻りたいという気持ちが無いかと言われれば嘘になる。だけど今は……。

 

「行きましょうショウゴ! 私の国を案内しますね!」

 

 ティアマトが手を差し伸べて来る。俺は、その嬉しそうな顔を、見ていたいなと思った。

 




〜ティアマト〜

きゃああああ!♡ これってもうアレですよね!? 見てましたよね! ね!?

私達の物語はここから始まるんですよ! ハァハァ……ハァハァ……だ、ダメです……想像したら心臓が……♡

あ! 次回予告をしていませんでしたね!
明日からは毎日19:05投稿です!

次回、「ヒロインの姉からプロポーズされた件」


……え?


ち、ちょっと待って下さい!


ダメです! そんなのダメ!! だってショウゴは私だけの……お、お姉様は何を考えているのですか!? 

次回も、その、絶対見て下さいね……?
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