「組織的な戦闘が終結した後も、アンドロメダ銀河では旧帝国残党による散発的抵抗や、先住種族による旧帝国系種族への報復などの事件が発生しました。そのため旧帝国種族については、同銀河での拘禁または銀河系への送還の後、戦災宙域の復旧活動への従事処分が科されました。これは、責任の少ない種族には保護と行政処分、責任重大な種族には軍事裁判までの隔離及び賠償活動としての意味を持っています。しかし戦後処理に当たっては、別の大きな課題がありました。中枢種族によって、自らの文明段階以上に高度な軍事技術を供与された先住種族への配慮です。サタンはそうした〝負の遺産〟が、先住種族間の紛争や旧帝国系種族への襲撃に使用されることを案じて、遠征艦隊に対策を講じさせました」
図47:決定
「こうしたサタンの配慮についても、若干の説明が必要と思われますので、ここで解説させていいただきます。彼女は元来、強健な種族ではなかったので、力弱き個々の種族や個体が協力して、巨大な社会や技術の健全さを保つことの重要性を知る種族です。また人類の皆様と同様に、樹上生活を営む雑食動物から進化し、その文明発展に際しても自らの発展を参考に支援を行ってきたので、皆様に対しては密かに特別な感情を抱いているかとも思われます。〝銀河系戦役〟の際、旧帝国派種族に操作された地球人の一派は、公式接触のため月面を訪れていたサタンの派遣隊に対し、奇襲攻撃を実行しました。彼女達は原始的な核兵器を投射しましたが、力場障壁によって無効化されました。そこで彼女達は無謀にも、装甲動力宇宙服と光線兵器による一斉突撃を敢行します。サタンは撤収を試みましたが、攻撃隊の一部が自動反撃によって損傷すると直ちに多数の
図48:地球内戦
「この悲劇の原因としては、第一に、中枢種族が当時の人類の技術水準を著しく凌駕する兵器を、密かに地球へ搬入していたことがあげられます。第二に、サタンの分離個体が多数の触手と複眼をもつ大型の球体という、基本形態とも地球仕様とも全く異なる宇宙仕様だったため、皆様に十分な理解と信頼を提供できなかったことも反省されました。そのためこの〝地球内戦〟後、現皇帝は全ての先進種族に対し、発展途上種族との接触時は危険な軍事技術・転用可能技術の移転に注意すべきことと、外交上の場面ごとに適切な姿の分離個体や映像体を選択すべきことを通知しました。そして以後、彼女の
図49:誤解
「戦役終結直後のアンドロメダ銀河中核領域は、かつての地球と同様の状況にありました。そのためサタンはアスタロトに指示を行い、アスモデウスとアドラメレクの支援も得て、大規模な武装解除作戦を実施しました。遠征艦隊の各理事種族は、随行の武器商人に扮装した分離体または分離個体を領域の各所に派遣し、旧帝国種族が供与した兵器の買上げ、またはより高性能な兵器との有償交換を広告しました。買上げの代金は、戦争被害からの復旧・復興のための民生用品と技術の購入代金に充当されました。交換された兵器は後に使用不能となる故障が発生し、損失は同様の民生品及び技術によって補償されました。また、すでに移転済みの軍事技術については、攻撃兵器への転用が困難な対抗手段が、周辺種族に提供されたのです」
図50:対策
「作戦が完了するとサタンは、同銀河の全ての通信網を通じ、その内容と理由を説明しました。彼女はその中で特に、銀河系において自らの文明段階に不相応な軍事力を求めた種族が招いた様々な悲劇を、実例をもとに解説しました。そこには種族的孤立や社会の停滞、経済破綻、環境破壊、さらにはその結果としての自滅的戦争や、他種族による支配・操作といった恐ろしい結果も含まれました。彼女はまた、以後は帝国内の全種族につき同種技術の開発・保有が制限される旨を告示しています。供与兵器の回収に際して詐術的手段が用いられたことについては謝罪が行われましたが、侵略と戦乱に疲れた同領域の圧倒的多数の種族からは、理解と支持が表明されました。これらの措置によって、旧帝国の〝負の遺産〟が残した悪影響は可能な限り除去されたのです」
図51:平和
「以上がこのたびのアンドロメダ戦役の事実経過であり、さらなる詳細は今後様々な情報媒体や、各惑星に帰還した皆様の視察団員からも公表される予定です。同銀河は現在アスモデウスを長とする臨時行政府による暫定統治のもとにありますが、情勢の安定後は段階的に先住種族への権限委譲が行われ、将来的には両銀河を共に等しく統治する民主的な統一政体が設立される予定です。私ストラスは、今後かかる悲惨な大戦が二度と再び繰り返されぬよう、また両銀河が復興と繁栄を共にすることを願いつつ、ここに以上の報告を行うものです。最後に、
図52:ソル
終話のあいさつが始まったので、私は机を片づけ始めた。しかし恒星から遠く離れた場所に住む、極低温種族が太陽神というのも面白い。まあ太陽神といえば世界各地の神話で数多くいただろうから、友好種族達が分担で演じたのかもしれない。それにサタンの別名〝
図53:人類
人の代わりに考え働くAIを使い、それぞれの立場や関心事から、どんな社会を作るかを皆で考える〝政策参加〟が人間の大きな仕事になって久しい。政府が提供・支援する教育番組から好きなものを選んで受講し、企業方針も含めた〝政策〟で役立つ新たな発想や価値を生み出すと、
図54:地球
それは技術の進歩だけでなく、社会の発展に伴う価値観の変化や、それを反映した
図55:物語