三馬鹿がキヴォトスを巻き込むだけの話。   作:カブトムシの相棒

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☆軽い人物紹介


・1人目

名前:丹花シンタロウ

学園:ゲヘナ学園

学年:2年

年齢:16歳

身長:198㎝

誕生日:12月25日

武器:トンプソンM1A1

一人称:俺

特徴:黒黄髪。強面で怖がられる。好きなタイプは面白そうな子。彼女が欲しい。童貞。アホ。


・2人目

名前:桜庭ケイスケ

学園:トリニティ総合学園

学年:2年

年齢:16歳

身長:192㎝

誕生日:10月10日

武器:RDI Striker12

一人称:私、俺

特徴:金髪。爽やか系。好きなタイプは巨乳とエロいへそを持つ子。彼女欲しい。童貞。ゴミ。


・3人目

名前:神崎レン

学園:ミレニアムサイエンススクール

学年:2年

年齢:16歳

身長:195㎝

誕生日:9月10日

武器:Double Bell VSR-10

一人称:ワイ

特徴:銀髪。ソース顔。好きなタイプはロリ(予備軍)。彼女くれ。童貞。カス。



※そして、全員総じて【クズ】である。




では、本編です。


アホとゴミとカス。それと、糸目なあの子。

 

 

 

 

 

 

☆シャーレ執務室。

 

 

 

 

 

 

『────あの、ごめんなさい電話での御返事で……その、貴方とは付き合えません。色んな意味で………えっと、ごめんなさいっ!』

「────へ?」

 

 

 

”プツッ!ツー、ツー、ツー……”

 

 

 

執務室の空間で、とある大男が電話を取っていた。

 

その男の名は『丹花シンタロウ』

ゲヘナ学園にて帰宅部の2年生。恵まれた体格であるが、顔が強面であり友人は非常に少ない。

 

そして【とある女の子】の”兄”に充る人物だ。

 

そんな男が今………気になっていた隣クラスの女子に振られたのだ。

 

 

 

「ぎゃははははははははははは!!!!!」

「おめでとう!!おめでとーーー!!!お前はよぅやったで!これで49回目の告白失敗や!ぷひゃー!!数打ちゃ当たる戦法じゃお前は不利だって事やなぁぁ!!だーははははははははは!!!」

「ふ、二人共よしなさい……シンタロウ、その、残念だったね」

 

 

 

そして、この執務室にはあと2人の生徒が居る。

 

2人目は『桜庭ケイスケ』

 

トリニティ総合学園に通っており、此方もシンタロウと同じく2年で帰宅部。

彼も恵まれた体格を有しており、顔もかなり整っている。正統派な綺麗顔と云える。

 

 

そして3人目は『神崎レン』

 

ミレニアムサイエンススクールに通う、挙げた2人と同じ彼も2年生。

違うのは、彼は【工作部】の部長である事。存在が似ている【エンジニア部】からは良く誘われているが、意識の違いか断っている。人員は1人だけだが。

 

彼もまた恵まれた体格の持ち主。容姿も非常に整っている。

 

 

だが……

 

 

 

「パプ~~ッ!パラリラパラリラ!!パッパパラリラパラリラ!!シンタロウ君の恋はつ~づ~く~~~~~!!」

「あー49回目!フォウ!!あ~49回目!!イエァ!!不吉な数字49回目~~~!!ゼハハハハハハハハ!!!よいしょー!!」

「こらこら!もうその辺で止しなさいって!幾ら何でもやり過ぎよ…!」

「だいじょーぶだいじょーぶ!先生、いつもの流れだから!ぎゃーははははははは!!!」

「ワイ等にとってはこのクズがイキって女の子に告白すんのは、オ〇禁1週間して遂に解放するのと同じくらいの気持ち良さなんやッ!邪魔はさせまへんで~~ッ!!」

「オナっ………!?」

 

 

 

そう、この2人はクズである。

 

ケイスケは何処から出したか、ラッパを吹いて煽り倒す。

レンは態々シンタロウの目の前に行ってリズミカルに踊り、彼の告白の失敗数(49回目)を連呼する。

 

2人の超カス煽りを止めようとする『先生』に対し、尚も止めようとしない。

何なら卑猥な言葉を用いて論してくる。どうやらこの2人にとってシンタロウの起こすイベントは最高の肴の様だ。

 

因みにこの先生は【女性】である。年齢は27歳。身長は170㎝で、黒髪ロングの美人だ。

おっぱい、尻、デカい。正に無ケツのクールビューティーと云える。

 

そんな先生が居ても止めようとしないのは相当だ。

 

 

 

「………ら……」

「おっ」

「始まるでぇ」

「え、な、なに?」

 

 

 

2人の煽りを今まで黙って見聞していたシンタロウ。

ブツブツと、何か発し始める。

 

ケイスケとレンは何かを察したか、彼から距離を離れる。先生は何が何だか分からないが……いやな予感だけはビンビン感じていた。

 

瞬間……

 

 

 

────クズ共ォォォッ!!此処がテメェ等の墓場じゃァァァァァ!!!!

「よし、逃げるぞ!!」

「先生、ワイ等の仕事はもう終えてるから大丈夫やで~!ほなまた~~ッ!!」

「え、ちょっ……きゃっ!!」

 

 

 

”バリィィィィィンッッッ!!!!”

 

 

 

眼にも追えぬ速度で消え去る3人。

気付けば其処には誰も居らず、あるのは……割れた3つの窓ガラス。

 

どうやら彼等は窓から出て行ったようだ。

 

 

 

「……一応、無事っぽいね」

 

 

 

念の為、危険だが窓からチラッと下を覗く。

最下層からかなり高位置にある執務室だが、あの3人は頑丈であるとは知っている。

 

眼を擦り、見ると、地面に大きなクレーターが出来ているのが分かった。

 

 

 

「まぁ、無事よね……はぁ」

 

 

 

一応3人がするべき今日の仕事は終わっている。

優秀だ、非常に。

 

だが、同時に……どうしようもなく問題児だ。

 

 

 

「仲良いのか悪いのか……男の子のノリを理解するのは難しいわね」

 

 

 

先生は女性だ。

この【キヴォトス】は9割が女子生徒と云っていいほど、女所帯であるのは確か。

先生もそれは役も承知でいた。だが、まさかまさかの男の子が3人も居たのだ。

 

しかも全員2年。偶然だろうが、凄まじい確率だ。

 

話が逸れたが、性別が女である先生は今をトキメク女の子たちよりも少なからず男を知っている。

だが……男子特有の性質や生態は未だに分かり切っていない。

 

故に、彼等の話に付いていけない事も多々ある。

 

 

 

「………窓ガラス、リンちゃんに報告しなきゃなぁ」

 

 

 

割れた窓ガラスを背景に、先生はこれから起こる説教に身を震わせるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────はぁ、はぁ、はぁぁ………クソ、あのゴミ(ケイスケ)カス(レン)ッ!何処に行きやがったァァ…ッ!!」

 

 

 

己の愛銃、トンプソンM1A1を散弾しながら2人を追いかけたシンタロウ。

だが、2人のトリッキーな逃走術に翻弄され、見事に逃げられてしまった。

 

 

 

「はぁ、はっ、はぁ……ふぅ」

 

 

 

目の前に惨殺すべき怨敵が居ないとなると、一気に冷静な感情に成る。

息を整え、身心を落ち着かせる為に近くの木陰にあるベンチに座る。

 

此処が何処か、シャーレからかなり走りケイスケを集中的に狙って追いかけていたのを何とか覚えている。

 

だが、今は此処が何処かなんか心底どうでも良かった。

 

 

 

”ピロン”

 

 

 

「ん?通知……ッ!モブ美ちゃんからだッ!」

 

 

 

すると、モモトークの通知が鳴る。

確認すると、それは狙っていた女の子から。

 

直ぐに内容を確認する為にモモトーク欄を開く。

 

その内容は……

 

 

 

〈初めまして、突然すみません。モブ美の()()です〉

〈あの子は内気な性格なので私から言わせて頂きます〉

〈モブ美には私と云う恋仲の者が居ます。ですので、どうか諦めて下さい〉

〈ただ、誠心誠意の告白だった、悪い人ではなかったとお聞きしました〉

〈良い人なのは承知しました。ですがモブ美は渡せません。失礼します〉

 

 

 

で、あった。

 

 

 

「………いやレズだったんかい」

 

 

 

シンタロウは、最初から自分は土俵にすら上がれていなかった。

その事実に、ただ、打ちのめされたのだった。

 

 

 

 

 

 

☆そして2時間後…。

 

 

 

 

 

 

「えぐっ、うぅぅぅ……ちくひょぉぉぉ………レズならレズって、最初から言えよぉぉ………思わせぶりなこと言いやがって、勘違いしちまったじゃんかよぉぉぉ………んぐっ!んっんっんっ、んぅ……ぷひゅぅぅぅ……ゲェェェ…っぷ…う、うぅぅ……うぅぅぅ…っ!」

 

 

 

失恋して数時間が経ち、シンタロウは泣きながらドカ飲みしていた。

本当は酒が良かった。だが店員の態度が何故か悪く、炭酸飲料しか買えなかった。

まぁ未成年というのもあるが……酒はブラックマーケットの裏ルートで幾らでも買える。何なら造れるが、今はもう何でも良かった。

 

 

 

「ちょ、なにあれ……」

「ゲヘナ生よね?何で此処に……?」

「通報した方が良いんじゃない?汚らわしい……」

「もう通報致しましたわ。下劣に泣き散らして、下賤なゲヘナ生はこれだから……」

 

 

 

”ヒソヒソ、ヒソヒソ……”

 

 

 

潔白な制服を着込んだ生徒達が遠巻きにベンチに横たわるシンタロウを凝視し、秘密話をする。

まるで下品な物を見る眼つきで。

 

しかし、その話し声や視線は全てシンタロウに聞こえている。彼は耳が良いのだ。

 

 

 

うっせぇぞゴラボケェ!!!その羽毟られたくなかったら消え失せろォォッッ!!!!

「ひっ!!!」

「こ、怖いぃぃ!!!」

「いき、いっ、行きましょう!」

「なんて野蛮なっ!これだからゲヘナはっ!!」

 

 

 

ぴゅ~~~……と、一斉に逃げて行く生徒達。

 

この男、もはや男も女も関係なくなっている。

正しくバーサーク状態。近付く者は誰彼構わず噛みつく狂犬と化している。

 

 

 

「ぐすっ……あれ、あの制服に羽、なんか何処かで…いや、もういいや何でも……クソッ!女なんて、女なんてっ………」

 

 

 

そして、またグビグビとジュースを飲み干す。

地面には10本以上の缶やペットボトルが散乱。仮にこれが酒だったと思うと恐怖である。

 

シンタロウの胸中には様々な恨み節が募って、ギュルギュルと渦巻いている。

 

辛い。正直、この一言だ。まさか49回も告白して、全て振られるとは思わなかった。

今日こそは、今日こそは……そう思って生きてきたが、もう何か何でも良くなってしまった。

明日、己を煽り尽くしたクズ共は必ず殺して豚の餌にすると決めているが……小学校から高校に至る今日まで成功どころか土俵にすら立てぬ己の恋は、実る事があるのだろうか……。

 

そう思うと、なんか生きる気力が削がれて来た……。

 

 

 

「うぅ~~~、っく……はぁぁ…………もう此処でオ〇ニーしてやろうかな」

「ぶふっっ!!!!」

「おん?」

 

 

 

全てがどうでもよくなり、ここで一発抜く宣言した瞬間だった。

 

何者かが直ぐ横まで誰かが近付いていた。頭がバグって気が付かなかった。

直ぐに眼を向ける。そこには……。

 

 

 

「い、いやいや!!ナニ言っちゃってんすか!?ここ公園っすよ!?」

「……糸目黒髪ロングビューティーな姉ちゃんだ。すげぇ、実在したのか」

「は、はい?」

「でもゴメンなぁ糸目ちゃん。俺、いま傷心中なんよ……このゴミは必ず片付けるからさぁ、今は一人にしてちょ…」

「えっと……ん~~、そのっすねぇ……私は此処にゲヘナ生の不審者が居ると通報を受けて現着した身でして、そういう訳にはいかないんすよ」

 

 

 

シンタロウの目に映る糸目な綺麗な女の子。

 

黒髪のロングヘア―。

赤と黒を基調とした専用の制服。

糸目で微笑みが美しい容姿。

スタイル抜群で雰囲気が柔らかい。

黒い羽がカッコいい。

 

中々に正統派な美人が出てきた。

 

困った感じに笑う様相は何か輝いている様に見えた。風に揺れる長い髪と、チラ見えするおへそがかなり魅惑的だ。

 

 

 

「そうかぁ……はぁ………」

「取り合えず不審者の正体は貴方でイイっぽいっすね。お名前は?」

「あー、丹花シンタロウです」

「丹花シンタロウさんっすね……ん?丹花シンタロウ?」

「ん?」

「丹花シンタロウ……って、もしかして…………あ、いえ!何でも!」

 

 

 

その少女はなにかが引っ掛かったのか、少し戸惑いを見せるが、続ける。

 

 

 

「まぁ特に大きな問題行動をした訳じゃなさそうですし、そこに散乱してるペットボトルや缶たちも確り回収して頂けるなら良いっすよ……その、もう一度お伺いさせて頂くっすけど、シンタロウさんってゲヘナ生っすよね?」

「え?それがどうした?」

「どうしたって……此処()()()()()っすよ?やけに堂々と居るな~と思いまして」

「………なに?」

 

 

 

そう云われて、猫背だった姿勢を一気に正して周囲を見渡す。

 

白金を基調としたレストランやケーキ屋さん。

清潔感あるコンビニに洋服屋。

遠方に見えるトリニティ総合学園の校舎。

 

 

 

「……あ、此処トリニティなんか!」

「は、はい?」

「なるほど、どうりで変な目で見られると思った訳だ……そりゃ、ゲヘナの生徒が居たら嫌だよな」

「も、もしかしなくとも……今まで気が付かずにドカ飲みしてたんすか?」

「あぁ」

「頭大丈夫っすか??」

「急に失礼だな。至って正常だぞ」

 

 

 

正常ではない。

 

だがやっと真実に気付けた。

此処はトリニティの自治区だ。シンタロウを煽った”クズ三羽烏”の一人、桜庭ケイスケが通う高校の自治区の名だ。

 

我武者羅に走り、殺戮本能で動いていた故か、いつのまにかトリニティに着いてしまったようだ。

ゲヘナ生と言う事もあり、言った事が無かったのも気が付かなかった理由の一つだろう。にしてもだが。

 

 

 

「一体全体なにがどうして、ゲヘナ生が気が付かずトリニティでドカ飲み何て事になるんすか……?」

「それは…………」

 

 

 

シンタロウが訳を話そうと言葉を出そうとした、瞬間。

 

 

 

〈モブ美には私と云う恋仲の者が居ます。ですので、どうか諦めて下さい〉

 

 

 

”ダバーーーーーーーっっっ!!!!”

 

 

 

「え、えぇぇ!?」

 

 

 

なんと、シンタロウがとんでもない勢いで涙を流し始めたのだ。

 

 

 

「えぐっ!えぐえぐえぐっ!!!だぁぁぁーーーあぁぁっ!おれ、おれぇぇぇえ!!」

「ちょちょちょっ!ど、どうしたんすか急に!?また泣きだして……本当に何があったんすか!?」

「糸目ちゃんっっ!きいて……ぎい゙で、ぐれぇぇぇぇ!!!」

「わーーー!!分かった分かったっすから!上着を引っ張るのはやめてっす!!」

 

 

 

その女子がシンタロウの情緒不安定さに押され、致し方なく隣のベンチに座る。

ゲヘナ生とトリニティ生が横並びに座るのは色々とマズい。時期的にも、色々と。

 

だが、どうやらその女子はこんな人間でも放っておけない性格なのか、取り合えず話は聞く雰囲気をみせて隣に座ったのだ。優しい。

 

 

 

「えぐ!!おぉぉぉっ!うおぉぉぉぉ…!!」

「あーあー、こりゃ相当っすね……ハンカチっす、遠慮せず使っていいっすよ」

「えぐっえぐっ……あびばとっ………ぢぃぃぃん!!!」

「(あ、鼻かむんすね……)」

 

 

 

その少女が貸してくれたハンカチを鼻水だらけにする。

この男、最悪である。

 

 

 

「ずびびびっ……あびばとぉぉ………新しいの買うからぁ………」

「あ、いえ、遠慮なく……その、本当に何があったんすか?そんな事に成ってしまうなんてよっぽどの事があったんすよね?」

「えぐ、ひぐっ……俺、今日─────」

 

 

 

そして、シンタロウがその女子に事の経緯を告げた。

 

 

 

「────そしたら、その女の子まさかのレズでぇぇ!最初から俺は土俵にすら上がれてなくってっっ……!!」

「あーーー……ぐ、グロイっすねぇ」

「見てぇ俺に送られた文面!こんなのNTRじゃないかぁぁぁぁ!!!!」

「ね、寝てはないのでNTRではないと思うっすけど…(正論)」

「あぐぅぅぅぅ!!うっ、うぅぅぅぅ~~~!!!俺の16年間は、俺の恋は、どうして実らないのだァァ……!!」

「49回も告白してるっすもんね……聞いた事ない数なのは今は置いとくとして、辛いっすねぇ」

 

 

 

事の顛末を聞いたその女子は、中々にエグイ話を聞いて、なんか目の前の大男が可愛そうに見えて来てしまった。

 

気になってた女の子がまさかのレズ。衝撃的な事実、かなりキツイ。

 

 

 

「俺に話しかけて、余り見せない笑顔を見せるから勘違いしちゃったんだ……」

「いやチョロくないすか???」

「えぐ、うぅ……だって、俺にコレと云った理由もなく話しかけてくれる子なんて、あの子が初めてでぇ………嬉しくってェ……俺、顔怖いからァァ……」

「うーーん……地味に致しなかったかもしれない」

 

 

 

チョロイかチョロくないかって話ならば、チョロいだろう。

だが、理由が理由だ。

 

この強面、この体躯、宜しくない噂……。

 

この三拍子が揃い、珍しい男子生徒で誰も近寄らなかった。

 

 

 

「えぐっ……うぅぅ………でも、糸目ちゃんに話せて良かった。なんかスッキリした……」

「はは、嫌な事は吐き出すに限るっすからね。誰にも大きな迷惑を掛けず一人で募った不満を抑えていた貴方は立派っすよ。シンタロウさんには、きっとまた()()()()()()()()っすよ」

 

 

 

その言葉は今のシンタロウが欲しかった言葉で。

シンタロウはそのままハンカチをずぶ濡れにしたまま、腕を使って感謝の言葉を放つ。

 

 

 

「えぐっえぐ……糸目ちゃん、マジで優しいのなぁ……ありがとう…おぉぉ……」

「いえいえ!そんな事は全然……あと私の名前は糸目ちゃんじゃないっす」

「あ?じゅびび……ふぅぅ……あぁ、そういやそうだな。糸目ちゃんの名前ってなに?」

 

 

 

すると、その少女が苦笑いを見せ頬を掻きながら告げる。

そういえばそうだ。この少女の名前を聞き忘れていた。自分ばっかで、情けない。

 

シンタロウは問うと……その少女が微笑みを見せ告げる。

 

 

 

「────私は『仲正イチカ』っす!トリニティ総合学園、正義実現委員会の2年です。はぁぁー、やっと自己紹介が出来たっすね~」

「仲正イチカさんか!珍しい苗字だな~!容姿端麗、糸目で美しい仲正イチカさんにはピッタリな名だ……素敵だ」

「あ、あはは……49回も女の子に告白しているからか、御上手っすね~」

「ッ!!!???!??! ふ……ふははははは!!いや~それ程でも!この構文はネットで見つけてきたのをそのまま引用してんだ!まー仲正イチカさん以外にはドン引きされたが」

「(……この人に彼女さんが居ない理由、ちょっと分かるかも)」

 

 

 

その子の名前はイチカというらしい。

社会性、要領、全てが高水準。

 

正義実現委員会の組織内でもそれなりの位置に属しており、世話焼きで面倒見の良さから後輩からの信頼は絶大。顔も広い。

 

加え戦闘力も上澄み。それ以外も人並み以上に出来る才女だ。

 

 

 

「仲正イチカさんは…」

「イチカで良いっすよ~。仲正イチカさんだと、何か言い辛くないっすか?」

「そうか?じゃあイチカさん!」

「あれ?ま、まぁ良いっす!それで何の話っすか?」

「イチカさんは通報を受けて来たんだよな?俺のこと捕まえるの?」

「いえいえ!捕まえないすよ。悪さしてる訳じゃないですし、理由も理由っすから……まぁ、ゲヘナの生徒がトリニティの自治区に居るのはちょっとマズいので、そこだけ厳重注意させて頂くっすけど」

「捕まえないのか……」

「なんで残念そうなんすか…?」

「俺、イチカさんには捕まっても良いぜ」

「意味不明なこと言わないでほしいんすけど!?」

 

 

 

気付けば復活しているシンタロウ。

その様子に少しホッと胸を撫でおろすイチカ。さっきまであんなに泣いてたのに、切り替えが早いなと思ってしまう。

 

しかし、男子高校生と話すのは初めてだが、意外と話せるもんだなと。

イチカはそう思った。このキヴォトスには現在観測されている男子は彼を含め計3名。

 

イチカ的には『桜庭ケイスケ』が同じ学年で居るな~と、そういった感覚だった。

彼以外にも居る。それも周知してはいたが素性全般は知り得ていなかった。

 

だが……彼、丹花シンタロウ。

 

 

 

「(────丹花シンタロウ……キヴォトスでも【超級の危険人物の一角】とされ恐怖の象徴と恐れられていた怪物。しかし、まさかこの様な男の子だったとは……噂は噂っすね)」

 

 

 

情緒不安定に成れば何をするか分からぬ危険性があるが、それを抜けばただの男の子だ。

下ネタや号泣、彼の個性であろうが、まぁ……男はそういうもんなのかもしれない。

 

イチカは彼が発した全てを無理矢理そういうのだと納得した。

 

 

 

「ふー、しかしアレだ。泣くってのは良いな」

「な、なんすか急に?」

「泣くと涙と共に悪感情も流してくれる。己が抱える憤りも大体が晴れる。巷では一番のストレス発散らしいぞ?」

「まぁそう言うのは良く聞くっすけど……」

「話聞いてくれてありがとう。改めて礼を言わせてくれ、イチカさん」

「いえいえ!滅相もないっす!御力に成れたのなら良かったっすよ」

 

 

 

目元の腫れも癒え、強面の顔で笑うシンタロウ。

その笑みはかなり怖い。絶対に言わないが、彼がモテない理由の7割は顔かも知れない。

 

絶対に言わないが。

 

 

 

「あーー……彼女欲しいなぁ」

「振られたばっかなのにほしいんすか?」

「男はいつだって飢えてんのよ。女の子は良い匂いだし可愛い、見てるだけで癒される」

「何だか、おじさんクサイっすよ」

「そうか?まぁそうかもな……イチカさんは思わないのか?彼氏ほしいとか」

「え!?わ、私っすか!?」

 

 

 

すると、シンタロウは急にイチカに向けそう問うて来る。

無論答える義理は無いが、シンタロウはただ普通に聞きたかっただけの顔をして目を合わせて来る。

 

イチカは少し悩んだ末……こう答えた。

 

 

 

「ん~……正直、あんま思った事はないっすね~。キヴォトスは女の子ばっかですし、私は組織内でもそれなりの役職には就いているんで」

「そうなのか、まーそういうもんだよなー」

「はは、すみません浮いた話もなく……」

「いいや、俺の方こそ急に聞いて悪かった。まーぶっちゃけそんな気はしてたし」

「────え?」

「あんた、どっちかっつぅーと【俺等側】の人間だろ」

 

 

 

ゾッとする感覚。

シンタロウの眼が見開かれ、イチカの双眸を捉える。

 

まるで腹の中を覗かれる様な感覚だ。背筋が凍り付く。

 

 

 

「な……なん、何言ってんすか?」

「我慢強く、理性的……そして俺の様な得体のしれぬ男ですら放って置く事が出来ない性格。正にトリニティの模範生だ。だが俺の眼は誤魔化せんぞ。あんた、今も少し我慢してる」

「………何が言いたいんすか?」

 

 

 

イチカが少し圧を出してそう問う。

それ以上言うのなら、此方も出るとこ出るつもりの圧を…。

 

だがしかし、シンタロウは思いも寄らぬ事を言う。

 

 

 

「────それどうやってやるんだ?」

「………へ?」

「本当は暴れたくて仕方ない本性、そんな自分に辟易してはまた我慢。言っちまうと目標とかもないんだろ?なのに赤の他人の為に頑張れる、良い人で居続ける……イチカさん、マジ凄いぞソレ。並大抵の精神じゃねぇわ」

「あ、あの……?」

「今迄それなりの人間を見てきたつもりだ。善良な人や真性のクズまで。だがあんたみたいな濃いのに空っぽな人間は初めてだ」

「うっ……」

 

 

 

ヤバイ、図星だ。

そうイチカは……そういう人間だ。何でも出来るが故に、理想も夢も目標も立てていない。

そして、己の持つ狂暴な本性。

 

それすらも見透かれている。なんだこの男は、洞察力が尋常じゃない。

 

イチカは彼に一種の恐怖すら覚えた。

 

 

 

「恋愛感情抜きで云うが、面白いなあんた………よしッ!!決めた!」

「は、はい?何をっすか…?」

「イチカさん!俺と【同盟】を組んでくれ!」

「………………は?」

 

 

 

瞬間、シンタロウがこれまた急に訳の分からぬ事を言ってくる。

既にイチカはお腹いっぱいだが、シンタロウは続ける。

 

 

 

「簡潔に説明するぞッ!先ず、俺は彼女が欲しい。そしてイチカさん、あんたは自分のしたい趣味や目標がない。此処までは良いな?」

「は…はぁ……」

「だから!イチカさんは俺に彼女が出来る為の()()()()()を!そして俺は……イチカさんが()()()()()()()()()()()を見つける!どうよコレェ!良くね!?」

「ッ…!」

 

 

 

そう言い終えると同時、シンタロウは腕を拡げて同意の声を求める。

かなり自身があったようで、断られるとすら思っていない表情を己に向ける。

 

しかし、話を聞けば……デメリットが一つしかない。

互いに補う。そういう意図での同盟だろう。

 

あげるべきデメリットは……そう。

 

 

 

「で、でも私等はゲヘナとトリニティっすよ?今でさえ【エデン条約】の準備とかでピリついているのに、そんな事したら追々…」

 

 

 

そう、二人は本来交わるべきではない二人組だ。

ゲヘナとトリニティ。この関係は歴史では語り切れぬ程の因縁がある。

 

犬猿の仲、とでも言えば良いのか。非常に嫌悪的な関係性だ。

 

 

 

「だからなんだ?同じ人間だろ?」

「え…?」

「別に俺もイチカさんもゲヘナがどーたらトリニティがあーだらと、そんな面倒な奴じゃないだろ。ゲヘナもトリニティも関係ない。そう思わん?」

「……そう、っすね?」

「ってかエデン条約なら俺等仲良くしなきゃじゃね?なら俺とイチカさんで仲良く同盟組んで、互いに利に適う関係になろうぜ!」

「な、成程っす……」

 

 

 

そう言われてしまえば何も言い返す事が無くなる。

とはいえ、まだエデン条約の枷が大きい。先輩や後輩達にもゲヘナの生徒と関わっているのを見られるのは些かマズイ。

 

だが……イチカは。

 

 

 

「────ひひっ、ソレ、いいかもっすね」

「おっ!!っつー事はぁ?」

「乗ったっす!私と同盟を組みましょう、シンタロウさん」

 

 

 

悪い気が全くしなかった。

 

 

 

「ッシャァ!決まりじゃFoooo!俺にも遂に女の子の友達じゃァ!!」

「ちょっ!声が大きいっす!人気少ないとはいえ此処は公園なんすから……っ!」

「あーメンゴメンゴ!んでよイチカさん、これ俺のモモトークだわ追加してくれ」

「え?あ、あぁ……追加したっす」

「よし!!」

 

 

 

シンタロウの愉快な声が響く。

最初にあったドカ飲みして潰れて泣いていた彼はもう居ない。いるのは調子のいい男子高校生の姿だ。

イチカはそんな彼に呆れた表情を作るも、それと同じくらい……何だか、少し面白い感覚に成った。

 

 

 

「え……(私、今……面白いって?)」

「んじゃ俺もう行くわ。そろそろ行かなきゃイチカさんに迷惑掛かるからな!」

「……え?あ、帰るんすか?」

「応ッ!さて、同盟の証に握手をしよう」

「あ、はい」

 

 

 

”ギュっ”

 

 

 

イチカの掌に力強い握手。

ゴツゴツしてて、硬くて、大きい。

 

女子とは全く違う、身体的特徴。

 

 

 

「イチカさんの指細くね?でも意外と確りしてんなぁ」

「握っといてソレ言うんすか?そういうトコっすよ」

「うぇ!?早速俺マズかったか!?」

「まー今の云われて嬉しい女子は居ないかと?」

「嘘だろ……これもノンデリに入んのかよ……あ、そうだ」

 

 

 

すっと握手を解き、気になった事を告げたシンタロウ。

そう言われて、少しムッとしたので反を投げるイチカ。

 

イチカにそう言われたシンタロウは、懐から何か可愛い柄のメモ帳を出して直ぐに言われた事を書く。

 

 

 

「よし、一発目のアドバイスだ!しかと受け取らせて頂くぜ!」

「いえいえ……あの、聞いて良いのかアレっすけど意外に可愛いメモ帳っすね?」

「あ?あぁこれ?コレは『妹』から誕プレで貰ったヤツなんだよ」

「へー妹さんが居るんすか。いま何歳なんすか?」

「11歳だな。因みに俺の100倍は頭いいぞ」

「やっぱそうなんすね」

「ちょっと待てぃ!やっぱってなに!?何で納得しちゃう!?」

「いやー、兄であるシンタロウさんがこんなですから、必然と反面教師にしてそうだなーと思って」

「……ヤベェ、反論出来ねぇな」

 

 

 

辛辣な意を言われて何も言えなくなるシンタロウ。

正に図星である。

 

 

 

「えーっと……”仲正イチカは狂暴な性格をしており、口が悪い生態をしている…”と」

「ちょっとちょっと!!なんて失礼な!」

「お黙り!アタイの心を痛めつけた罪ヨッ!」

「口調どうなってんすか……」

「まー本当はこう書いた」

「え?…………は???」

 

 

 

〈仲正イチカは人助けが好き。だが一人で出来るとなるとカメラとかも有り。俺のを貸してみる〉

 

 

 

こう、書かれていた。

 

 

 

「これ……」

「この1時間の関係で見てみて、イチカさんの合いそうな事を予想してみた。次いつ会える?俺の持ってるカメラ貸して背景とか動物、色々撮ってみるといい。意外とハマるかもだぞ!」

 

 

 

シンタロウは洞察力がエグイ。

全てを見透かしているのではないか、そう思ってしまう程、正確無比。

 

だが、イチカからしたらそれは……何とも、嬉しい。そんな言葉に似た感情を芽生えさせたのだ。

 

 

 

「……ひひっ、良いんすか?貸して頂いても」

「応ッ!その代わり、俺へのアドバイスも忘れないでくれ!俺今年マジで彼女欲しいからよ!」

「分かったっす。じゃあ……明後日、D.U.で会いましょう。トリニティはかなりマズいんで」

「承知した!っと、そろそろ行くか……んじゃ!明後日にカメラと新しいハンカチ持ってくるわ!じゃあ、またな!!」

「はい!また明後日……って、はやっ!」

 

 

 

韋駄天が如く、高速でその場から消えたシンタロウ。

まるで嵐の様な男だった。泣いてはテンションが上がって、急に同盟とか言い出して。

 

でも、悪い気はしなかった。なんなら、寧ろ楽しかった……様な気がする。

 

男の子と話す機会が今まで無かったから、それもあるだろう。

だが一番は……彼だから。

 

 

 

「変な人っすね~……ホント」

 

 

 

明後日に……未来に楽しみと云った感情を覚える何て、いつ振りだろうか。

イチカは、誰も居ない公園で一人……そう思った。

 

 

 

 






メインは3人で馬鹿やって、それぞれにイチャコラな感じも書いてみたいっすね。



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