三馬鹿がキヴォトスを巻き込むだけの話。   作:カブトムシの相棒

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大変申し訳ございません。今回は少しストーリーを整理させる回にしました。



今回、メッチャ長いです。



☆三馬鹿(プラスα)のイケメン度。


① 桜庭ケイスケ:正統派イケメン。外見だけはFGOのプーサーみたいな感じです。それに執事口調を上乗せしている。トリニティではそんな生き方なのでファンクラブがある。過去に4回背中を刺されている(無傷)

② 神崎レン:堀が深いイケメン。実は細目。胡散臭いがノリの良さと普通に整った容姿で、ミレニアムではクズだが頼りになる下衆イケメンと云われてる。

③ 逢冥アキト:緘黙なクールイケメン。無表情な事が多いが世話焼きで距離が近いので勘違いする子が多い。無自覚を多用しているので、ケイスケに次ぐ〈背中を刺される〉タイプの人間。

④ 丹花シンタロウ:ギャグ枠。顔は傷跡の所為で当初は怖がられていたが、本人の男子ノリとやかましさでゲヘナではお調子者キャラとして扱われている。ってかほぼ上裸か全裸なのでシンタロウの評価は低い。クズ。アホなのでよくイジられる。(ばかでアホだけど、コイツの良さは私しか知らないんだよね…)と思ってる子が実は多数居る。




では、本編です。


動き出す各組織。

■

 

 

 

 

 

────アビドス高等学校。

 

 

 

 

 

「────この写真の男を知らねぇか?どっかで見たとか、そうかもしれないでも何でもいい」

「ん、知る訳がない」

「先ずそんな人が居たってこと事態が初耳ですからね~。3人はどうですか?」

「もちろん知らないわ」

「うへ、私も~」

「あはは…すみません、シンタロウさん。御力に成れなくって」

 

 

 

とある日、シンタロウは砂漠に飲まれた嘗て繫栄していた土地────アビドス高等学校に足を運んでいた。

 

理由は逢冥アキトの捜索。レンにも協力を仰ぎ、信憑性は薄いがアビドスに足を運んでいる可能性があると聞き入れ、アビドス高等学校に向かったのだ。

 

だがアキトの存在を知らなかったアビドスの面々。

 

1年の『奥空アヤネ』と『黒見セリカ』

2年の『砂狼シロコ』と『十六夜ノノミ』

そして、3年の『小鳥遊ホシノ』

 

これが、現在の在校生だ。

 

 

 

「そうか知らねえか。情報じゃアビドスに身を隠してるって聞いたんだがなァ……いや此方こそスマンかった!急に押し掛けちまって。コレ、ゲヘナのお土産の温泉饅頭だから食ってくれな」

「わぁ!良いんですか?」

「応さッ!んでよォ……なんで先生が此処に居るんだ?しかも『ユメ』ちゃんまで。ってかボロボロじゃね??」

 

 

 

シンタロウの目線の先。そこには2人の女性が座っていた。

1人はシャーレの先生、そして、もう一人は……緑がかった薄い水色の髪を靡かせる、豊満な胸を強調とさせる艶やかなスタイルを誇る女性。

 

────『梔子ユメ』……元アビドス高等学校の生徒であり、現【シャーレの事務員】として活動している人物だ。

 

 

 

「私達は彼女達の支援要請を受け、此処に居るんだ。実はさっきまで2人して遭難しちゃって倒れてたんだけど、シロコに助けて貰ってね」

「あー成程な。ん?なんでユメちゃん居んのに遭難なんかすんだよ」

「ひぃん、ごめんなさい先生……まさかコンパスを忘れちゃうなんてぇ……」

「だははははは!!相変わらず俺レベルで馬鹿じゃねぇか!」

「ん、レベルの低い自傷」

「ユメ先輩、後でお説教です」

「ひぃん!!ホシノちゃん許してぇ~…」

「あとユメ先輩を馬鹿にした君も」

「えぇえぇ!?」

 

 

 

気怠げのホシノから一変、ユメに対する態度が鬼教官のような雰囲気に成る。

2人はまだ在校生がユメとホシノだけだった時期からの仲だ。色々あったが、こうして今も分け隔てなく話せるほど、仲睦まじい間柄だ。

 

 

 

「あはは……でも、その人を見かけましたら、直ぐにシンタロウさんに連絡するようにしますね」

「アヤネさんっ……貴女は女神かッ!恩に着るッ!!御礼に、今度俺とデートでも☆」

「あ、あはは………あの、皆さんと一緒なら」

「ッシャァァ!!」

「シンタロウ、君はそれで良いのかい?」

「寧ろ可愛いあんた等とデートできるんだぜ?最高過ぎて神を恨まないわヒャッハー!!」

「あんた無敵かっ!」

「言葉遣いが余りに変だよシンタロウくん……」

「ん、第一としてシンタロウとデートできるの全く嬉しくない」

「うへー。まぁ紫関ラーメン奢ってくれるなら良いんじゃない~?」

「わぁ!賛成です~!」

「女の子から集られるのも乙だなぁ~!!モテモテになった気分だぜ!」

”「(キモ…)」”

 

 

 

散々な扱い。皆、シンタロウの扱いをよく分かっている。

先生は呆れてしまうが、コレがこの子なのだろうと思う事にした。

 

 

 

”ドガガガガガガッッ!!”

 

 

 

「あん?」

「銃撃!?」

「まさかっ!」

「あれは……カタカタヘルメット団ですっ!」

 

 

 

突如、校門口から無数の銃撃音が鳴り響く。

その正体はカタカタヘルメット団。前々からアビドス校舎を根城にしようと、くどくも襲撃してきているのだ。

 

 

 

「あ、あの子達っ!また此処を襲いに来てるよぉ……」

「もうー、これじゃオチオチお昼寝も出来ないじゃないかぁ」

「よりにもよってこのタイミングで……皆さん!直ぐに校庭に…っ!」

「うん。もちろ……ッ!待って」

「え?」

「おらおらおらー!今日こそお前等の学校は占拠させてもらうぜー…って、だ、誰だお前!?」

 

 

 

即座に動くアビドスの面々。だが、シロコが直ぐに静止させる。

それは、彼女達よりも早く動いていた人物。カタカタヘルメット団の前に立つ男…シンタロウ。

 

 

 

「シンタロウ!?い、いつの間に……」

「一体どこから……全く気付きませんでしたっ」

「な、何でもいいわよ!早く加勢に行かなきゃ!」

「はいっ!」

「待って、二人共」

 

 

 

セリカとアヤネが飛び出す前に待ったをかける。その正体は、ホシノ。

 

 

 

「良い機会だね。二人共、彼が今からする事をよぉく見ておきな~……半端ないから」

「余り見れないですから、貴重ですよ〜」

「ん、正直尊敬するレベル」

「え、えぇ?」

「皆さんがそこまで……わ、分かりました」

「(シンタロウ……やり過ぎなければいいけど)」

 

 

 

なんと加勢には行かず、シンタロウに全て任せるという。

それは絶対的な信頼から来るモノ。だが彼の戦闘を知らぬセリカとアヤネは、まだ少し不安が残っている。

 

 

 

「あんた等がカタカタヘルメット団か。悪いこと言わねえから、今直ぐ回れ右して帰れ」

「なんだ誰だテメェ!!」

「なに?いじめられたいの~?」

「悪事ってのは必ずお天道様が見てんだ。最後の通告だ……消えろッ」

 

 

 

シンタロウは一定の圧を出してヘルメット団に威嚇する。

それは並大抵では受けきれない。必然的に本能が生命の警鐘を鳴らす。

 

 

 

「うあ……何だコイツ…怖ぇ」

「ボ、ボス……なんか、なんかヤバいっすよっ」

「はっ!!なにビビってんだテメェ等!こんなん見てくれだけだろっ!あたし等の火力を前にすればビビり散らかすに決まってるっ!テメェ等!撃て撃て撃てーー!!!」

 

 

 

だが、それでも止まらなかったボス格のヘルメット団により、暴発。

次第に銃撃が増えていく。それは無論、シンタロウに着弾する。

 

シンタロウはただただ冷徹に、静かに、その攻撃を受ける。

 

 

 

「ね、ねぇ!本当に大丈夫なの!?」

「シンタロウさん…!」

「大丈夫大丈夫~。ぶっちゃけ効いてないし。あ、これ来るね」

「二人を除いて、笑ったら罰ゲームとかどうでしょう?」

「ん、賛成」

「うへぇぇ、私無理だよ~!」

「ぷふっ!あ、ダメっ…わたし、想像しただけで笑っちゃう…っ!」

「ユメ、下品だよ」

「ひぃん!じゃあ先生は大丈夫だって言うんですか!?」

「無理かもしれないね」

「え、罰ゲーム?笑う?」

「な、なんの話で…」

 

 

 

その瞬間────なんとシンタロウは。

 

 

 

「────フンッ!!!!」

 

 

 

”ビリビリビリビリ!!!!”

 

 

 

”「……へ?」”

「うぅん、ちょいと決まんなかったが、まぁ良いだろう。さて、まだ続けるかい?お嬢ちゃん達。俺の美ボディで目を失明する前に、退散した方が君達の為だぜェ?」

 

 

 

己の筋肉を膨張させ、制服諸共ビリビリに破き……上半身裸に成ったのだ。

それを見たカタカタヘルメット団は理解が追い付かず、思わず射撃を中断。

 

 

 

「ぷひゅ!はっははは!!」

「ユメ先輩、アウト~」

「っっっ…っ……ふぅぅ。危ない」

「シロコちゃんもアウトじゃない?」

「それならホシノ先輩の怪しい」

「え、え、え……え???」

「な、え?親方?」

「ちょ、セリカちゃ…ふふっ!!」

 

 

 

セリカのそれっぽいセリフに思わず顔を強張らせるホシノ、ノノミ、シロコ。

先生も既に限界だ。色々と意味不明すぎる光景なのに、その単語はズルい。ユメなんか普通に笑ってる。

 

だが、なんと予想外。ボス格はビビりながらも銃を構える。

 

 

 

「な、なんなんだテメェは!アビドスの最終兵器かっ!?ふざけた野郎だマジで!」

「悪いが俺は客人でね。今は俺個人の情報協力を受諾してれた彼女達の恩を返している最中なんだ。ワイルドだろう?」

「い、いやまぁ、上裸だから半分ワイルドだが……」

「ちょ、なに普通に会話してんすかボス!」

「う、うるせえ!そうしなきゃ何かしてきそうで怖いだろうが!!」

 

 

 

ご尤もである。

だが、銃を構えた時点で……次のフェーズにシンタロウは移行していた。

 

 

 

「嬢ちゃん達に個人的な恨みはねぇが……仕方ねぇ。此処でキメる」

「な、なにをする気だ!?」

「ふぅぅ………ハァァァァァァァ!!!!」

 

 

 

”ビリビリビリィィィィィ!!!!”

 

 

 

そして、皆々が刮目する。

彼の下半身。その、残った布を。

 

────ペロロ様の柄が入った、ふんどしをッ!!!

 

 

 

”「────」”

「最終形態、解放……ってとこだな」

 

 

 

シンタロウは残っていたズボンすら筋肉で破り、何故かふんどし一丁でキメポーズ。

意味不明な事にペロロ様の顔面が真正面に入っている……最早理解不能の領域だ。

 

無論、その時点でカタカタヘルメット団は恐怖に陥る。イキナリ目の前の傷跡を残す強面な偉丈夫が、イキナリ筋肉でふんどし一丁に成れば誰でも怖いが。

 

 

 

「……え、どういう事ですか?」

「やばアイツ……」

「っっっっ……!」

「なに笑ってんのよ先輩たち!」

「いや、相変わらず過ぎてっっ……ずる過ぎる…っ!」

「んっふふ……っ!」

 

 

 

既にアビドス組は決壊寸前。だが際で何とか耐えきる。1年生組は悍ましい者を見る眼でシンタロウを見据える。

だが、彼の次の行動で……それは終わりを迎える。

 

 

 

「────お前等……全員抱きしめてやるぞ~~~!!!!」

”「っっ!!!??!??!?」”

「こんな機会、滅多にないんだッ!!いやっほーーーう!!!」

「へ、変態だ~~~!!撤退だ!逃げろ逃げろーー!!」

 

 

 

阿鼻叫喚。カタカタヘルメット団は皆シンタロウの奇行に怯え散らかし、そのまま逃走。

彼は腰を前後に降りながら器用に前進。普通にヴァルキューレ案件であるが、彼はアビドス高等学校を護ったとして(恐らく)正当防衛として無事で済むだろう。

 

1年生以外は全員耐えきれなかった。何度見ても、あれは慣れない。

 

カタカタヘルメット団が去った校門前にて、シンタロウは一人佇む。

 

この戦い、彼の完全勝利だ。

 

 

 

「ふぅ……雑魚どもが、誰を相手にしてると思ってんだ」

「こんの馬鹿~~~!!!」

「ほげーー!!なにすんだセリカさん!」

「あんたが何してんのよっ!!こん、ばっっ……先輩たちがアレだけ言うからワクワクしてみてたら最ッ低な戦いを見せてくれちゃって!ちょ、早く服着なさいよ!」

「いや粉砕しちまったしなァ、俺の筋肉で」

「どういう原理!?どこまでもふざけた男ねぇ!?」

 

 

 

堪らず飛び出したセリカが彼の頭を引っ叩く。当然である。彼女の少し笑ってしなったが、死んでもそれは言えない。

 

ひっぱたかれるだけで済んだ。コレで済んでラッキーと云えるだろう。通報されないだけマシだ。

 

セアヤネ以外の面々はシンタロウの下らな過ぎる戦闘方法に呆れすぎて、逆に腹筋を崩壊させている。あの体躯とこの強面でコレが出来るのだ。逸材と云う他ないだろう。

 

 

 

”ピリリリリリリ”

 

 

 

「ん?あ、俺のだった制服に入れてた携帯から着信音が」

「あんた片付けてきなさいよ……」

「任せ……なに?」

 

 

 

シンタロウが携帯を拾い、通話に出る。

その相手は、何とイチカだ。

 

 

 

「……もしもし?どうちたの~イチカさん」

『どんな喋り方っすか……シンタロウさん、今大丈夫っすか?』

「大丈夫だが、なんかあったか?」

『いえ、その……いつナイフを届けに行けばいいかなーと思いまして』

「ナイフ?……あっ!忘れてたわ!」

『そうだろうと思ったっすけど。それで、どうします?私がそちらまで届けに……』

「いや俺から行くわッ!ってかもう行くわッ!大丈夫だよな?」

『へ!?い、今からっすか!?ちょ、コッチにも色々と準備が…』

「おっけ分かった!10分後にトリニティの校門前に向かう!んじゃまたッ!!」

『は??こ、校門前?あ、ちょ、もしもし?もしもし!?シンタロウさん!!??』

 

 

 

”ピッ”

 

 

 

通話を終えたシンタロウがセリカと窓越しから見ていたアビドス組と先生に身体を向ける。

 

 

 

「悪いッ!用事できたわ!!んじゃアッくんの情報が掴めたらまた連絡してくれな~!!」

「は?ちょっと待ちなさ……服を片付けろーーー!!!」

 

 

 

セリカの怒声も虚しく、シンタロウはふんどし一丁のままその場を去った。

その場に残ったのは彼が破った制服。そして、怒れるセリカ。

 

中々にカオスな空間だったが……彼はそれ以上の功績を残していた。

 

 

 

「あっははは…はー、やっぱシンタロウくんは凄いですね~!」

「あの、すみません……思ってたのとは違った戦い方だったんですが……」

「アヤネちゃん、コレは言ってしまえば戦わずして勝つ。確かにやり方は真似できないけど、こういう戦い方もあるって事だね」

「現に、私達は枯渇していた銃薬を一回も使っていない。しかも、校舎にも被害を出さず」

「っ!もしかしてシンタロウさん、私達の現状を汲み取って、あの行動を……」

 

 

アヤネは少し反省した。少しでも、彼を悍ましい怪物と思ってしまった事を。

彼はああ見えて周りが見えているのだと、そう実感できた。

 

なんだ、優しい人なんだ……。

 

 

 

「いやアレは素だね」

「多分それも込みで脱ぎたかったんじゃないかな?シンタロウくんって直ぐ脱ぐし」

「やっぱ最低じゃないですか!!」

 

 

 

そう思っていた時期が、アヤネにもありました。

 

 

 

「うぅん、まさかあそこまでするとはねぇ~……結果的に犯罪者を世に放っちゃったし」

「彼、ふんどしのまま何処に行ったのでしょうか?」

「ん、自首しに行ったのかも」

「だったら良いんですけどね~」

「君たち、彼の扱い結構酷いよね……」

 

 

 

そういう先生だが、やはりやり過ぎたシンタロウには何も言えない。

ふと窓を見れば、せっせと服の残骸を掃除しているセリカが見えた。

 

 

 

「さて、私はセリカを手伝いに行こうかな」

 

 

 

そうして、皆で粉々になったシンタロウの制服を集め、そのまま燃えるゴミに放り投げ、その場は収まった。

 

後に、シンタロウの印象が180度変わった出来事だと、セリカとアヤネは語ったとか。

 

 

 

 

 

 

 

「先生。シンタロウくんって優しいですね」

「そうだね。あんな感じでも、アビドスの子達を気に掛けてる子だから。優しいのは当たり前なのよね」

 

 

 

最後に先生とユメは、そう語った。

 

 

 

 

 

 

 

▼

 

 

 

 

 

 

ある時、アキトはハルカと模擬戦を。

 

 

 

「────ハルカ先輩。お前の突破力、タフネス、そして粘りはキヴォトスでも類を見ん。ただアルへの狂信性で動くその身は、琴線が切れれば過度な脱力を呼び、大きな弱点と成り得る。視野が狭ばれば只の暴走列車以下だ……ハルカ先輩自身、己の弱点は理解しているな?」

「は、はいっ……」

「アル社長が聞けば怒るだろうが、お前は残虐性を秘めている。それは戦場に於いて何よりも代えがたい感情だ……それは善い方向に進化させろ。戦闘技術は俺が根幹から底上げさせる……先ずは構えろ。この俺に一掠りでも当ててからが本番だ……殺す気で来い」

「っ!しょ、承知しましたっ……殺す気で殺しますっっ!!!」

 

 

 

ある時、アキトはムツキと戯れを。

 

 

 

「────ねぇねぇアッキー。アッキーってさぁ、男の子じゃん?」

「あぁ……それがどうかしたのか?」

「いつもソファーで寝てるとはいえさ、此処って女所帯な訳じゃん?やっぱり悶々~ってしちゃうもんなの?でもアッキーってソウイウのあんま無さs」

「無論だ」

「無論だ!?」

「あぁ……俺とて、お前たち淑女とは別性の存在。身体の構造も特徴も何もかもが違う……食欲性欲睡眠欲、俺自身これらの三大欲求は左程ないと自覚はしているが、無い訳ではない」

「へ、へ~?そうなんだ……」

「俺はその性欲を消す修行も積み重ねて来た身だ。だが、全てを消しきれなかった……狼に成る気はないが、軽はずみに俺の情欲を唆す行為はしない事を薦めよう、ムツキ室長」

「くふふ!分かった分かった!気を付けるね~?狼さん♡」

 

 

 

ある時、アキトはカヨコと会話を。

 

 

 

「────ねぇ、洗濯物なんだけど……どうしてコレが外に出ているの??」

「?……俺のだな、それは。安心しろ、無論お前たちの下着類は室内に干してある……何か問題が?」

「いや問題だから。その、し…下着系の配慮は有難いけど。第一として私達の下着っ……い、いや、あんたにソウイウのがあるとかは考えて無いし嫌じゃないからこの際いいよ?でも────あんた自身の下着も中で干してほしい」

「??……何故だ?俺は男だぞ?」

「うん、だからそう言ってるんだけど」

「???……あぁ、成程。相分かった……カヨコ課長の言い分、しかと理解した」

「そう、良かった。例え男の子でもあんたは…」

「俺の下着が窓越しから見えるのは苦痛だろう。配慮が足りていなかった事、大変申し訳なかった……次回からは、確りと…」

「はい馬鹿。あんたは一旦鏡を毎日見る習慣を付けよっか。自分の魅力を分かってないの、ほんとヤバいから」

「????」

 

 

 

 

 

………。

 

 

 

 

 

 

 

そして、アキトが便利屋68に加入して少し過ぎた頃。

 

 

 

 

 

「……」

「…………うぅ」

「……アル社長」

「ぴぃ……な、なによぉ」

「動くな……意識を其処に集中させろ……若しくは、無理矢理されるのがお好みだったか?」

「ひぃぃぃ!!む、向けます!向けるから、ゆっ…ゆるしてぇ…!」

 

 

 

便利屋68の事務所内、その社長席にて……とある事が行われていた。

カヨコ、ムツキ、ハルカの面々もそこに居り、何やら騒がしいアルとアキトの起こす光景をジィ―っと見ている。

 

言葉だけだったら滅茶苦茶に事案だが……アルがアキトにされている事、それは…。

 

 

 

「────良い髪質だ……細部まで潤いが行き届いている。ケアを怠っていない証拠だ……社長として、容姿に対するオーラは必須だ。便利屋の長としての自覚があって素晴らしいな?アル社長……クククッ」

「い、いぃから!いいから早くやってよぉ!へ、へへ、変な髪型にしたら承知しないんだからね!?」

「……俺を信用してないのか?」

「ひぃぃ!し、してるしてる!してるわよぉ~!」

 

 

 

アルの髪を梳かして、新しい髪型にしようと望むアキトの図。

アルは怯え、アキトはその様子に悦ぶ。

 

異様だが、中々にイチャ付いてる図だ。

 

 

 

「……私たちは朝っぱらから何を見せられてる訳?」

「くっふふ!まぁまぁカヨコちゃん?面白いからいーじゃん!」

「あうぅ……アル社長、どのような髪型に成るのでしょうか……ふひひ、たのしみですっ」

 

 

 

その光景を見る3名。呆れるカヨコ、面白がるムツキ、楽しみに待つハルカで別れる。

 

アキトが来て数日の刻が流れ、既にアキトが便利屋に馴染み始めた頃合い。

3名はもうアキトの圧に慣れている。最初の頃は流石に驚く事や怯む事もあったが、アキトも彼女達の前では重圧を抑える力を身に着け、今となっては普通に便利屋のエース格として扱っている。

 

だが……妙な事に、アキトはアルにはその重圧を抑えようとしないのだ。

 

 

 

「ふっ……良い声で鳴くな?俺を興奮させてどうするつもりだ?アル社長」

「面白いって意味よね!?面白がってるのよねぇ!?あ、あぁ、貴方はもっと言葉選びをねぇ~!」

「クッククク……相変わらず快活な女だ。だが、活きが良いのは素敵な事だ。誰でも持てる訳ではない……特にその点に於いて俺は無力。お前のその元気で救われる者が居る……俺は、そんなお前を尊敬するぞ……クククッ」

「なんなのよ!?本当に何なのよ!?か、揶揄うか褒めるかどっちかにしなさいよ~っ!んもう!」

 

 

 

”イチャイチャ!ぎゃーぎゃー!イチャイチャ……”

 

 

 

砂糖過ぎる空間。

アキトは変わらず表情筋が硬く読み辛いが、アルは仄かに顔を赤く染めている。

 

そういう雰囲気ではある。

 

 

 

「……コーヒー飲むけど、要る人」

「はーい。ブラックでお願い~」

「あ、手伝います…」

 

 

 

砂糖を吐きそうになるとはこの事か。

カヨコ以外ブラックを飲む事は余りないが、この時ばっかりは流石に苦味が欲しくなった。

 

 

 

「……ふむ、もう少しで出来上がるぞ」

「ほ、ほんと?ふぅ……緊張するわねぇ」

「………」

「ひぃ!?ち、違うわよっ!え、えっ、えっとね!?アキトさんの作る髪型ってどうなんだろうな~って思っただけで、あ、貴方の腕を疑ったとかそんなんじゃないのよっ!?ね、ねぇ!今のってそういう趣旨の言い方だったわよね!?…ってムツキだけ!?二人は!?」

「コーヒー淹れに行ったよ~。お二人さんも飲む?」

「え?そう?じゃ、じゃあ……ブラックを頼もうかしら!」

「ムツキ室長、すまないがミルクコーヒーと角砂糖を二つずつ頼みたい……」

「ちょっとぉ!?」

「おっけー!んじゃ、淹れて来るね~!くふふ!」

 

 

 

アルの提示したブラックではなく、アキトの提示したミルクを受けたムツキは、カヨコとハルカに着いて行った。

 

 

 

「ちょっとアキトさん!子供扱いしないでよっ!ミルクコーヒーだなんて……アウトローらしくないじゃないっ!」

「否。苦味、甘味、辛味など様々な味覚を好み、好悪なく好き好んでこそアウトローだ……それが分からぬなど、まだアウトローの認識が甘いのではないか?砂糖入りミルクコーヒーだけに」

「なんですっ…ぷふっ……あー悔しい!!全部が悔しい!元警察の貴方にアウトローを説われたのも、こんなしょうもないギャグっ…いや先ずあなっ……ぶふふっ!貴方そんなキャラじゃないでしょう!」

「クックック……はしゃぐのは嫌いではない。ノリは良くすべきだと履修している」

「えぇ…なんなのよもうっ」

 

 

 

そうこう会話していると、アキトの手が止まった。

アルは分かっていた。

大体どういう髪型に成るのか、その仕草や動きで……分かるのだ、女の子だから。

 

アキトはアルに手鏡を渡し、その髪型の内容を見せる。

 

 

 

「────あらっ!やだすごい上手じゃない!」

「お気に召したようで何よりだ……」

 

 

 

アルの髪型は以前のとは打って変わり、左側に置かれるサイド編みおろしだ。

それなりにボリュームのあるアルの長髪。加え、アルの持つ快活な聖母感が妙に馴染んでいる。

 

アキトの思っていた100倍の手腕。アルは驚愕を禁じ得なかった。

 

そうしていると、アキトが急にこんな事を告げる。

 

 

 

「……いつもの髪型は言わずもがな。だがその髪型も、きっと似合うと思っていた……俺の双眸に映るお前は美しく、綺麗で、誰よりもずっと可憐な女性だ……」

「へっ!?あ…あ、ありがとう……?」

「……すまない。今のは、セクハラに該当するのだったな。雑用として出過ぎた真似をした……詫びる機会があるのなら、設けたい所存だ」

「はへぇ!?ちょちょ、ちょっと待ちなさいよ!そ、そんなの考えなくっていいから!だ……第一、私は…嬉しかったし?」

「なに?……真か?」

「え、えぇ!本当よ!でで、で……でもね?急に言われるのはやっぱ恥ずかしいから……ね?」

「……タイミングを計らえば、お前にはセクハラをしても良いという認識で構わないな?」

「言い方ぁ!?今みたいな発言は許すってことよっ!せ、セクハラなんてしたら……お、お仕置きだからね!?」

「………ククッ…あぁ、分かった。気を付けよう……我が主、我が剣が守護せし貴女(きじょ)よ」

「はうぅ……変人なんだからぁ~…っ」

 

 

 

古風な言い回しだが、彼なりに彼女を想っての発言。

それがイヤになるくらい、よく分かってしまう。だがそれはそれで怖い。恐怖の圧が怖い。

嬉しいのに恐ろしい……アルの脳ミソはグチャグチャになりそうだった。

 

 

 

「くふふ♡何だかあの二人、楽しそうだね~」

「はぁ……私達の存在忘れてないよね?」

「アル様、とっても綺麗です……っ」

 

 

 

そんな二人を陰ながら見守る面々。

 

これが、今の便利屋の日常になりつつあった。

 

 

 

……翌日。

 

 

 

────アルがとある企業から依頼を受け、アキトの貯金を含む9割以上の資金を傭兵集団に振り込んでしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

”チリンチリン……”

 

 

 

「あ、あのぅ……」

「いらっしゃいませ!何名様ですか?」

「あ、すみません……此処で一番安いメニューって、なんですか?」

「一番安いメニューですか?それでしたら……紫関ラーメンの580円になりますね!この御店の看板メニューなのでオススメですよ!」

「あっ…ありがとうございます!」

 

 

 

アビドスのとあるラーメン屋にて、ハルカを先頭に便利屋68が入店する。

 

アル、ムツキ、カヨコはホッとした様子で店内を見渡す。

食に飢えていたのか、アルのお腹の虫が鳴る……限界に近かったようだ。

 

 

 

「えへへ!やーっと見つかった、600円以下のメニュー!」

「うふふ!ほら、何事にも解決策があるのよ。全部想定内だわ」

「そうだったんですか……流石アル社長です!なんでも御存知なのですね…っ!」

「はぁ……」

 

 

 

カヨコは呆れた様子。だがそれだけだ。彼女も流石に空腹には勝てない。

そんな様子の4名を視認した黒猫の生徒……セリカは笑顔で接待する。

 

 

 

「4名様ですか?御店にご案内しますね」

「んーん、どうせ一杯しか頼まないし大丈夫」

「え?一杯だけですか?でも……どうせならごゆっくり御席へどうぞ。今はお客さんも少なく暇な時間ですので、空いてる席も多いですし」

「おー!親切な店員さんだね。じゃあ、御言葉に甘えよっかな」

 

 

 

ムツキが主に対応。そのまま席へ案内された便利屋68だが、ムツキが思い出したかのようにセリカへ告げる。

 

 

 

「あ、我儘ついでにお箸は5膳で宜しく!バイトちゃん」

「5膳ですか?どうして1膳多く……え、ちょっと待って。まさかラーメン一杯を4人で分け合うつもり?」

 

 

 

思わずか、セリカが声を出してそう告げると……。

 

 

 

「ご、ごご、ごめんなさいっ!貧乏ですみません!お金がなくてすみませんっっ!!!」

「あ、い、いや……別に何もそこまで……」

「いいえっ!お金がないのは首がないのも同じ!生きる価値なんてないんですっ!ムシケラ以下なんです……ムシケラですみません…っ」

「はぁ、ちょっと声デカいよハルカ。周りに迷惑」

 

 

 

ハルカが情緒不安定に陥り、カヨコが窘める。

慣れた様子でそう在る4名だが、周りからしたら変な集団と思われるだろう。

 

だが……ここで予想外が起こる。

 

 

 

「そんな!お金がないのは罪じゃないわっ!胸を張って!」

「へ?……はい!?」

「お金は天下の廻りものっていうし、なによりまだ学生だし!それでも小銭をかき集めて食べに来てくれたんでしょう?そう言うのが大事なのよ!」

「あ、あのぅ……」

「ちょっと待っててね。直ぐに持ってくるから!」

 

 

 

セリカはそのまま厨房へと入って行ってしまった。

呆気に取られたが、便利屋68は直ぐに正気を取り戻し、会話を始める。

 

 

 

「……なんか盛大に勘違いされた気がするんだけど」

「まぁ私たちもいつも貧乏って訳じゃないんだけどね~。強いて言えば、金遣いの荒いアルちゃんの所為だし」

「アルちゃんじゃなくて『アル社長』でしょ?ムツキ室長、肩書はちゃんと付けてよ」

「ん?だってもう仕事終わった後じゃん?ところで、社長の癖して社員にラーメン一杯も奢れないって実際どうなの~?」

「ぐぅ……」

「今日の任務に投入する人員を雇う為に、ほぼ全財産使っちゃったしね。まさかアキトの貯金にまで手を出すなんて……」

「だ、だって!アキトが使ってくれってぇ…!」

「だとしてもだよ。現に今、アキトが単身出稼ぎに行っちゃってるんだよ?後で此処に合流するとは言え、まだ入って日が浅い子に………はぁ」

 

 

 

チクチク言葉が止まらないムツキとカヨコ。次第にアルが小さくなっていくが、何とか思考を巡らせて告ぐ。

 

 

 

「ふ、ふふふ……でもこうしてラーメンは口に出来るでしょう?想定内よ」

「たったの1杯分じゃん。せめて4杯分は残しておこうよ……」

「ぶっちゃけ忘れてたんでしょ?ねぇアルちゃん。夕飯分残しとくの忘れてたんでしょ?」

「…………ふふふ」

 

 

 

図星である。

 

 

 

「はぁ……まぁ、リスクは減らせた方が良いし、今回のターゲットはヘルメット団みたいな雑魚には扱えないのは同意する」

「そうだね~。アッキーが言うんだもん、何か従った方が良い感は否めなかったし」

「そうね……正直、アキトさんが進言する程彼女達は大変な相手なのは理解したわ。うん、だから仕方ないのよ」

「ビビってる?」

「ビビってなんかないわよ!これは武者震いよ!」

「うっそだー!未だにアッキーにビビり散らかしてるくせに~!」

「う、うぅ、うるさいっ!怖くなんかないわよ!あんな人!」

 

 

 

今回、とある学園を襲撃するにあたってアルは大量の傭兵を雇った。

それは今回の昼食がラーメン一杯代に陥るほどだ。

 

それには、アキトの進言があった。

 

彼のそういう側面の話は異様な程信頼に値できる。それはアルのみならず、3名も同意出来るほどだ。

 

故に、アルの行動の全てを否定は出来なかった。

 

 

 

「まぁ、アキトもまさか全財産を使うまでとは思ってなかったそうだけどね」

「アッキーの驚いた顔が見れただけでも収穫だけどね~!くふふ!」

「アキトさん、まだ来ないのでしょうか……」

「ぐぅぅぅ………」

 

 

 

とはいえ、アキトもアルの散財具合には驚愕したらしい。

責任を感じてか、急遽資金集めに出たっきり、今日はまだ会えていない。

 

昼食までには合流すると言っていたが……。

 

 

 

「と、兎に角!失敗は許されないわ!あらゆるリソースを総動員して挑む。それが便利屋68のモットーよ!」

「初耳なんだけど」

「今考えたんでしょ~」

「うるさいっ!じゃあ今回の依頼を成功させたら、すき焼き!すき焼きにしましょ!絶対に成功させるんだから、気合い入れなさいっ!みんな!」

「す、すき焼き…!とは、一体…!?」

「大人の食べ物だね、それも凄く高価な」

「ふわぁ~……そんな大層なもの、食べていいんでしょうか?食べた後はハラキリでしょうか……」

「しないでいいわよ!?」

「へぇ~、やる気満々じゃんアルちゃん」

「アルちゃんじゃなくて!社・長!!」

 

 

 

皆で気を高め、目標を作る。

チームとして非常に質が良いのは確かだ。その後方には怪物が構えているのを見れば、大きな脅威となろう。

 

 

 

「お待たせしました!熱いのでお気をつけて!」

 

 

 

”どんっ!”

 

 

 

そんな中、セリカがラーメンを持ってきた。

 

それも、特大サイズの。

 

 

 

 

「ひえっ!?なにこれ、超特大サイズじゃん!」

「ざっと10人前はあるね……」

「これは、オーダーミスなのでは……こんな量のお金、払えませんよぅ……」

「いやいや!コレで合ってますよ。紫関ラーメン並の580円!ね、柴大将!」

 

 

 

明らかに違うのは確か。だがそのセリカが厨房に声を掛ければ、その柴大将という犬の大将がふっと笑みを零し、告ぐ。

 

 

 

「あぁ、ちょいと手元が狂って作り過ぎちまったんだ。気にしないでくれ、こっちのミスだからよ。料金はそのままで十分だ」

「大将もそう言ってるんだから気にしないで!じゃ、ごゆっくりどうぞー!」

 

 

 

そう言いながらセリカは仕事に戻る。

便利屋の前には多量のラーメン一つ。冷たい水に橋が5膳。

 

チャーシューやもやしが大量に乗っかっているソレは、空腹に嘆いた便利屋の食欲をこれでもかと刺激する。

 

 

 

「う、うわぁ……っ!」

「なんだかよく分かんないけど、ラッキー!いただきまーす!」

「……いただきます」

「ふふふ。流石にこれは予想外だったけど、厚意に甘えて、有難く頂かないとね」

「食べよっ!」

 

 

 

”ずずずずーーー!”

 

 

 

ラーメンを啜った瞬間、便利屋に電流走る。

 

 

 

「っ!おいひい!」

「な、なにこれ!ほんと美味しい!」

「中々イケるじゃん?こんな辺鄙な場所なのに、このクオリティだなんて~!」

「────でしょうでしょう?美味しいでしょう?」

 

 

 

それぞれが甘美な声を上げ、喜色表情を見せる。

余りの美味しさ、空腹にコレは最高が過ぎる……。

 

勢いよく食べている、そんな時だ。

 

不意に隣の席から声を掛けられた。

見れば、そこには笑顔が素敵なモデルボロ負けのスタイルを持つ少女が立っていたのだ。

 

 

 

「あれ?えっと、隣の席の…?」

「うんうん!此処のラーメンは本当に最高なんですっ!遠くから態々食べに来るお客さんも居るんですよ」

「えぇ分かるわ。色んな所で色んなラーメンを食べて来たけど、このレベルは中々お目に掛かれないものっ!」

「えへへ……私たち、此処の常連なんです。他の学園の方々に食べて貰えるなんて、なんか嬉しいです」

「い、いえ、そんな……恐縮ですっ…」

「その制服ゲヘナ?遠くから来たんだね」

「私、こういうの見た事あります。一杯のラーメン、でしたっけ……」

「うへ~。それは一杯のかけそばじゃなかったっけ?」

 

 

 

次第に増えていく隣席のとある学園の生徒達。

 

黒髪で、ピンと尖った眼鏡の生徒……アヤネ。

薄緑髪で、グラマラスな体型を持つ生徒……ノノミ。

銀髪の狼耳を持つ、表情が少し硬めの生徒……シロコ。

 

そして……小柄で、ピンク髪、そしてオットアイが特徴な生徒……ホシノ。

 

加え、彼女達と同じ席に座り、微笑ましそうにその様子を見ている大人の女性が2名………先生とユメ。

 

先生を見たムツキとカヨコは思う。この人は生身の人間だ。

きっと顧問か何かか、人型の大人は珍しいなと思う。

 

 

 

「(……連中の制服)」

「(あ、ホントだ……アルちゃんは気付いてないみたいだけど?)」

「(……言うべき?)」

「(………面白いから放っておこ!)」

 

 

 

そんな中、ムツキとカヨコはとある事に気付く。

だがアルはそんなの関係なく、4名の生徒達と楽しく会話する。

 

カヨコは呆れながらも、沈黙を行使。

 

すると、アヤネがある事を問う。

 

 

 

「そういえば、どうして箸が5膳なのですか?」

「ん?あぁ、実はもう一人此処に来る予定なんだけど……」

 

 

 

カヨコがアキトの事を言う、その瞬間だ。

 

 

 

”チリンチリン…”

 

 

 

タイミングよく、店内のベルが鳴った。

皆々が一斉に出入り口に眼を向ける。そこには、話の話題が存在していた。

 

 

 

「いらっしゃいませ!何名、さ……えっ」

「────」

 

 

 

”ゾクッ………”

 

 

 

死。

 

ソレを纏うに値する重圧。

息を吸う。それすら許されない……そう発想してしまう程、目の前に佇む大男は住む世界が違った。

 

そう……噂をすれば、というヤツだ。

 

最恐の剣客────逢冥アキトが入店した。

 

 

 

「っ、あ……」

「……すまない。先程来、この趣の良い店内に4名の可憐な嬢が入店した筈だが……」

「っっっ……あっ、は…はいっ!お聞きしておりましたっ……あ、案内しますっ!」

 

 

 

漏れ出る重圧。だが、アキトがセリカに丁寧に己の事情を説明。

セリカは脂汗を噴き出しながらも、責務を全うする。

 

便利屋68の座る席に案内。

 

 

 

「ひっ……き、来たぁ…っ!」

「なんで社長が怯えてんのさ……お疲れ、アキト」

「おつかれアッキー!もう、遅いじゃーん!」

「お疲れ様ですっ……す、すみません!先に、食べてしまいました……」

「すまない、資金回収に僅かに手間取った。だが……1週間は生きれる金は手に入った………アル社長」

「ひっ!は……はい?」

 

 

 

アキトがビクビクと怯えるアルの背後に立ち、妙に良い声でゆっくりと発語する。

 

 

 

「────少し、金遣いに気を遣った方が宜しいと思うぞ……」

「ひぃぃ………」

「だが、その豪快さに、部下を飢えさせない為尽力するその姿……つくづく、俺好みだ………イイ女だな、アル社長」

「ひぃぃぃ!!な、なんなのよぉ~!ここ、怖いからそれやめてぇ!?」

 

 

 

アルの肩を掴み、耳元で穏やかに囁く。

未だ慣れないアキトの重圧と雰囲気。

 

アルにとって、最も頼りに成り、恐ろしい存在であるアキト。

 

彼女が暴走すれば、それを正す存在の一人と成り得ている………聊か、行過ぎであるが。

 

 

 

「ど、どーどー!アッキーちょっとやり過ぎだよ?」

「アルも、そ、その…反省してるから。ね?」

「う、あ……うぅ…!」

「………ククッ。聊か、度が過ぎたようだ。悪かったなアル社長……」

「うぅぅ~……私の方が上なのに…っ」

「加え、この者達の話相手に成って頂けた貴女(きじょ)達にも、非礼を詫びよう。遮ってしまい申し訳ない」

 

 

 

そのまま流れる様に、便利屋68と会話を設けていたアビドス生達にも一礼の謝罪を行う。

綺麗な謝罪。その雰囲気と存在感で呆気に取られていた。

 

直ぐにノノミが告ぐ。

 

 

 

「い、いえいえっ!とんでもないですよっ!謝る事なんて…っ!」

「否。迷惑を掛けたのは確かだ……俺はカウンターでこの店の極上品を頂く。再度、この子達の話相手に成って頂けると有り難い……」

「は、はぁ……」

「ちょっとちょっと!なんでカウンターで食べちゃうの?一緒に食べようよ!」

「そうだよ、折角なんだから。ホラ箸。そこに座って食べよ?」

「……ダメだ」

「なんで?」

「アウトローと云えど、お前達は可憐たる淑女。男である俺は頂けん……一度口を付けたラーメンはお前達が食してくれ」

「あ、ちょっとぉ!」

 

 

 

そのまま、アキトはカウンターへ行く。

関節でもないのに、アキトはそれでも共に一つの器に入ったラーメンを食べる気はないらしい。

 

それはアキトの本心ではない。異性の間柄、そして節度と彼自身の生真面目さが故の拒絶だった。

 

そうして、アキトはカウンターへ座り、注文を始める。

 

 

 

「……ご、御注文はお決まりですか…?」

「あぁ……あの子達と同じラーメンを並で頼む……先程は驚かせてしまいすまなかった」

「い、いぃぃ、いえいえ!でで、では直ぐにお持ちしますね!」

 

 

 

セリカは未だにビビっている様だ。

活気が強い女の子に見えるが、猫耳を持つ生徒特有の本能か、この男には決して粗相をしてはいけないと生命が警鐘を鳴らす。

 

 

 

「ず、随分と個性的な殿方なんですね~」

「ウチの社長がね、どう云う訳か拾ってきたんだ。あんな感じだけど良い子だよ」

「アッキーってば凄いんだよ~?事務仕事は勿論、家事全般出来て特に料理がすっごく美味しいんだ~!便利屋では新人だけど、今じゃアッキー、ウチのエース枠なんじゃない?」

「戦闘訓練も、凄く丁寧で理に適ってて……あたしみたいなゴミクズでも、優しく教えてくれて……え、えへへ…っ!」

「ん、意外」

「人は見かけに寄らない、って感じか~……ふぅん?」

 

 

 

アキトの背を、ホシノがジィっと見つめる。

背中を向けていると云うのに、全く隙がない。彼の登場で、一気にこの便利屋68たちが侮れない組織であると、ホシノは即座に認識を改めた。

 

 

 

「まぁでも、ウチの社長は未だ手懐けてはいないっぽいけど」

「うっ……」

「アルちゃんが拾ってきた癖にね~?でもこの2人ってば、さっきみたいなイチャイチャを四六時中するんだよ?どう思う~?」

「んなっ!?い、イチャイチャなんかしてないわよっ!適当な事言わないで頂戴ムツキ!」

 

 

 

ムツキの発言にアルが取り乱すと、ノノミは問う。

 

 

 

「も、もしかして~……ソウイウ事ですか!?」

「へ?」

「に、近いかもね~?くふふっ!」

「少なくとも、向こうはそう思ってるかもね」

「はわわっ!ま、まさかの展開ですね…っ!」

「流石に気になる。どういう流れで拾ってきたの?」

「私、気になります~♡」

「ちょ、ちょっと待ってよぉ!私と彼はそんなんじゃ……ちがうんだってば~!!」

 

 

 

そうして、突如として始まった恋バナに両組織が花を咲かせる。

 

全てを言うなと、元々アキトには釘を刺されている故隠し隠しで話した。

それに黄緑髪の生徒を中心に、他の子達も興味津々で聞いてくる始末。

 

花の女子高生なのだ、それも仕方ないと言えよう。

 

 

 

「……良いねぇ、青春だ。この光景をずっと見ていたいわねユメ」

「はい!」

 

 

 

そんな彼女達を横目に、ふっと微笑む大人────先生とユメ。

だが先生の眼は、彼……アキトを追っている。

 

 

 

「(ユメ以外は気付いてるわね……やっぱあの子)」

「先生」

 

 

 

ホシノが先生に話しかける。

 

それに同調するように、ユメ以外のアビドス生が一瞬だけ先生に視線を寄越す。

 

確定で良いだろう。彼が、シンタロウが探していた────逢冥アキトその者だ。

 

 

 

「えぇ、分かってる。シンタロウには私から伝えるわね」

「……只モノじゃないね。背を向けている今でも、全く隙が無い。多分、シンタロウと同格」

「そっか………嫌な予感がするなぁ」

 

 

 

ホシノ程の実力者の進言。

一抹の不安を抱えながら、先生はシンタロウに連絡した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

▼そして日は流れ……アビドス:高等学校付近。

 

 

 

 

 

「────変わらないな、此処も」

 

 

 

こんにちは。俺…いえ、私の名は桜庭ケイスケ。

現トリニティ総合学園の2年生です。

 

私は今、懐かしの場【アビドス】に居ます。

 

砂漠。ただそれだけが広がる荒廃した地域。

何を隠そう、此処は私の……。

 

 

 

「去ってから2年か……ふぅ、気が重い」

 

 

 

私の最初の母校でありますから。

 

昔、私が14の時、私はとある組織に加入しておりました。

上からの任務で年齢を偽造し、アビドス高等学校の1年生として在籍していた時期がありました。

 

それが、まぁ良くない形でバレてしまい、当時の方々には相当な想いをさせてしまった。

 

私は、それが今も悔いています。

 

 

 

「今は小鳥遊さまに加え、十六夜さま……後は3名の生徒が入っているらしいけど、当時に眼を向ければ頭数は増えているんだな。流石だ」

 

 

 

桐藤さまから頂いた名簿を読む。

 

そこには在籍している生徒の顔と名前があった。

 

・小鳥遊ホシノさま

・十六夜ノノミさま

 

此処までは知っている。関わっていましたから。

その下、私が去ってからの生徒。

 

・砂狼シロコさま

・黒見セリカさま

・奥空アヤネさま

 

この3名だ。面識は皆無。

砂狼さまは私と同じ2年、十六夜さまと同期らしいです。

 

黒見さまと奥空さまは1年生のよう。良い眼をしていらっしゃる。アビドスに生きるに値する力強さ。後輩に恵まれているのでしょう、小鳥遊さまは。

 

 

 

「ふぅ……可能な限りバレないよう動け、か。変装は得意じゃないんだけどな。桐藤さま……やってくれる」

 

 

 

彼女には口酸っぱく事を言われている。

やれ秘密裏に動けなど、随時定期報告は怠るな、など……俺とアビドスがどういう関係かを知って尚、手厳しい。

 

何故か私には本当に厳しい桐藤さまだが……まぁ、それも彼女なりの愛なんだろう。知らんけど。

 

 

 

「にしても、便利屋68……何でゲヘナの小悪党組織がこの地に?いや先ず、どうしてあの逢冥が……」

 

 

 

私がこの地に来た理由。それは、逢冥アキトを無力化させる事。

 

元々はヴァルキューレに入り、キヴォトスの均衡を保つ中立として在籍していた奴ですが、何を思ったか、上司…だったか。その人をぶん殴って退学処分を言い渡されたとか。

 

そして終いにはゲヘナの、それも新進気鋭の小悪党組織【便利屋68】に加入。

 

言うなれば、ゲヘナの超大幅戦力アップと云う状況。

 

これを危惧した桐藤さまは私に先程申し上げた任務を指令した、と云うのが今回の本筋です。

クズ……丹花にも似たような事を言われましたが、第一は桐藤さまです。あのゴミクズは心底どうでもいい。

 

 

 

「(情報や曰く、アビドスに出向くと言っていたが……本当か?)」

 

 

 

便利屋68は新進気鋭だからか、情報が少ないのです。

若い組織特有の弊害と云えましょう。小規模、少数精鋭だから足取りも掴めません。

 

しかも組織内には逢冥が居ます。

 

この手のプロ、昔は【裏社会の死神】などと謳われた程の伝説。

 

ふぅ、えぇ……本当に厳しい。

 

 

 

「────ッ」

 

 

 

前方3㎞先に複数の気配を感知。

私は気配を消し、最速で付近へと近づきます。

 

 

 

……ッ!!

 

 

 

「────神は居るのかもしれませんね」

 

 

 

どうやらこの任務は、早く片が付きそうです。

私が見たのは、15人規模の傭兵集団。そして────

 

 

 

「……情報は正しかったようだ。偶にはカイザーの鉄屑共も役に立つ」

 

 

 

便利屋68の面々。その後方に、異様な雰囲気を放つ偉丈夫。

逢冥アキトそのものが、存在していました。

 

裏の情報屋を通して、便利屋68の動向を手に入れた時は内心疑いを掛けましたが、まさか本当にあのカイザーに依頼を受けていたとは……。

 

過去の件もあり、内心……良い気はしませんね。

 

ですがコレは私情。関係ありません。

私は直ぐに携帯に電話を掛けます。相手は無論、桐藤ナギサさまです。

 

 

 

『……もしもし。任務の程は如何様でしょうか』

「逢冥アキトを発見致しました。事前に調べた情報通り、便利屋68は奴を引き連れアビドス高等学校を襲撃するようです」

『ご苦労様です。ふふっ、流石はケイスケさんです。この短期間でヴァルキューレよりも先に見つけ出すとは。やはり貴方は素晴らしい殿方です』

「光栄です。私は頃合いを見て奴を1世紀ほど無力化させようと思います。出番の許可を」

『寿命が尽きるまでする必要はありませんが、承知致しました。タイミングは貴方にお任せ致します。最後に……相手はあの逢冥アキト。全く以て簡単な内容ではありません。それは貴方が一番よく理解為さっているでしょうが……深追いはしなくて宜しいので、必ず無事に帰還して下さい』

「……承知しました。それでh」

『もし怪我を一掠りでもした場合は、お分かりですね?』

「………も、勿論で御座います。では、失礼します」

『えぇ。では、健闘を祈ります』

 

 

 

桐藤さまに報告を終え、私は────奴を無力化させるべく、後を付けました。

 

 

 

 

 

次回

 

裏切りの便利屋。そして、対峙する彗星の貴公子と地獄の番人。

 




☆因みに、次回の最初はシンタロウがイチカに……何かされます。



いつもありがとうございます。

誤字報告、脱字、感想お気に入り評価、いつも本当にありがとう御座います。
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