三馬鹿がキヴォトスを巻き込むだけの話。   作:カブトムシの相棒

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☆三馬鹿のセリフの見分け方!


1:一人称

シンタロウ → 俺
ケイスケ  → 私
レン    → ワイ


2:クズ共の呼び方

シンタロウ → 桜庭、神崎、テメェ等、ゴミ、カス、ムシケラ共、クズ共
ケイスケ  → 丹花、神崎、お前等、アホ、カス、吐き気を催す元凶共、クズ共
レン    → 丹花、桜庭、テメェ等、アホ、ゴミ、ゲロ以下の馬鹿共、クズ共

※共通なのは3人共【苗字呼び】である。


3:他の生徒の呼び方

シンタロウ → さん付け(例・イチカさん、ヒナさん、ホシノさん等…)
ケイスケ  → 苗字さま呼び(例・錠前さま、聖園さま、阿慈谷さま等…)
レン    → ちゃん呼び(例・フウカちゃん、モモイちゃん、ユズちゃん等…) 


4:異名

シンタロウ → アホ、剛拳、ゲヘナの一発屋、天使の妹を持つ悪魔
ケイスケ  → カス、神脚、トリニティの鬼神、彗星の貴公子
レン    → ゴミ、修羅、ミレニアム最高傑作、史上最強のロリコン



といった感じです!シンタロウとケイスケは少し分かり辛いかもですが、もっと分けれる要素は増やします。

例えば、シンタロウは全ての生徒にタメ口ですが、ケイスケは敬語です。


では、本編です。


カスとゴミ、デートを邪魔する。

 

 

 

 

 

 

 

────拝啓。お袋、親父。

 

今は地獄でシバかれているでしょうか、それとも余りにも憐れで閻魔に天国へ行かされ、幸せを満喫しているでしょうか。

 

まぁ死ねば仏、きっと楽しくしてんだろう。

 

別にどうでも良いし、生きてねぇんだから拝啓もクソもありませんが、ご報告です。

 

俺こと、丹花シンタロウ及び()()シンタロウは今────

 

 

 

「────あっははは!シンタロウさん、顎にホイップクリーム付いちゃってるっすよ!おひげみたいで、はははっ!意外とあざといっすね~?」

「んぅぅぅべろん」

「うわぁ舌ながっ!?ってか汚なっ!別に私拭いたのに…」

「ぜぇぇい!!!」

 

 

 

”べちゃっ”

 

 

 

「すまん、また付いちまった。拭いてくれ」

「絶対わざとっすよね!?しかも割と結構な勢いでつけたっすよねぇ!?」

「なんの事だ?まーほら、頼む!」

「え~……はぁ、もう。コッチ向いてっす。拭きますよ~」

 

 

 

史上最高の幸せを満喫中じゃぁぁ!!!

 

ゼハハハハハハ!!ゼェェハハハハハハハ!!!!

 

とまぁ、とある海賊漫画の最強格に成り掛けるのも納得の幸福感。

俺は今、黒髪ロング糸目の狂暴二面性持ち美少女とデートしている。

こんな機会二度とねぇ……今を噛み締めるとしよう。

 

その名も仲正イチカさん……正実の2年生なんだと。凄ぇなぁ。

 

 

 

「んっふふふ!」

「何すか?変な笑い方して」

「いやぁ、俺ってば女の子とデート何て初めてだからニヤケが止まらんのよ」

「え……49回も告白しておいて、一度も女の子とデートをした事が無い…?」

「あぁ、半分以上はその場で会って次の日には告白。そんで振られて、持ち越された時は大体がモモトークだ。ヤバくね?」

「ヤバいっすね」

「あと笑い方に関してはイチカさんも『ひひっ』とか言うし、そっとの方が変だろ」

「ん?なんすか、やるんすか?」

「もう前が見えねぇ…とはなりたくないので遠慮させて下さい(戦慄)」

 

 

 

流れる様なトーク。イチカさんも楽しそうだ。

この気持ちは、彼女にとっても思いも寄らぬ感情なのかもしれん。いや、聞くにイチカさんは友人も居るし可愛い後輩や頼れる先輩もいるらしい。

 

だが……こう、心から存分に素を出せるのは居なかった様に見える。

口調だって時折乱暴になる。そこもまた、可愛いらしい。

 

俺がトリニティではなくゲヘナ、そして同年代なのも大きい要因なのかも。

 

 

 

「はい、拭き終わったっすよ。服とかにも付いてんのはどうかと思うっすけど」

「まーいいよ。だって拭いてもらう場所を増大させる作戦だったしな。今でいうアレだ、犬系彼氏だ」

「それ、イマドキ腫れ物扱いされるヤツなんでマジで辞めた方がいいっす」

「犬系彼氏だめなの!?兎系彼氏よりはいいだろ!!」

「腫れ物にレベルとか関係ないっすから!多分犬系彼氏ってそういうんじゃないですし……あとシンタロウさんがそういうの知ってるの何かおもしろいっすね」

「よくつるむクズ共が教えてくれてな。ワンチャン女の子は犬系彼氏に弱いとか聞いて、いま実践してみたんだ。ドキッた?」

「まぁ、そうっすね~……怒気ったっすね」

「結構キレてるな」

 

 

 

笑いながらそういうイチカさん。うん、少しイラっときたみたいだ。

なるほど、犬系とかそういう系の真似事はいかんらしい……あの野郎共、パチこきやがったなッ。

あん時のツケもある。会ったら殺そう。

 

 

 

「シンタロウさんはもう少し女の子との距離の詰め方を学んだ方が良いかもっすね」

「と、言うと?」

「さっきの事っすよ!私の頭を急に撫でて来るなんて……女の子は髪が命なんすから、撫でるならもっと丁寧に撫でるっす!」

 

 

 

すると、イチカさんはぷりぷりとしながらそう言ってきた。

まー云われてみればそうだ。つい『イブキ』と同じ感覚で撫でたが、あの撫で方はちょいと乱暴か。

 

それに……イブキも女の子だしなぁ。もしかしたら嫌だったかも、気を付けよ。

 

 

 

「なるほどな、分かった。じゃあこんな感じか?」

「んっ、そうっすね、こんな感じ…ぃ………はっ!?」

 

 

 

早速実戦だ。俺はイチカさんの頭を出来るだけ優しく撫でる。

 

……ふむ、あの時も思ったが、イチカさん頭小っちぇな。The・モデル体型だしなぁ。

 

髪もサラサラだ。イブキみたいにサラサラとふわふわの融合とは別枠の髪質。こうも違いが出るのか。

 

 

 

「ちょ、は!?何して……っ!?」

「こんなもんか?感想を聞かしてくれイチカさん」

「……犯罪っす」

 

 

 

うぇ!?な、なんで!?

 

 

 

「えぇぇぇ!?そんな強くやってないと思うんだが!?」

「許可も無く撫でるんじゃないっすよ!び、吃驚するじゃないっすか!」

「そんなん聞いてねぇし、ってか俺は丁寧かどうか聞いてんのに犯罪はねぇだろ!」

「う…うるさいっす!ばか!シンタロウさんがモテないのはそういう所っすよ!!」

「ぐぅぅぁぁぁぁあぁ!!そ…それは、反則だろ…っ!」

 

 

 

こ、こいつ!俺の弱点を的確に指摘してきやがる!

流石、正義実現委員会の中核ッ……すげぇ、パンチ力だ!

 

 

 

「く…め、メモ……」

「は…はぁ………っ」

 

 

 

俺は倒れながらも、何とかメモ帳を取り出し〈女の子の頭は勝手に撫でない〉と書き記す。

む、難しい……いや常識か?くそ、女心は分からんぜ。

 

 

 

「……意外と上手いじゃないっすか

「はぁ、はぁ……か、書けたぜ…っ」

「いやどんだけダメージ受けてんすか。効き過ぎでしょ」

「49回も告白を断られた男にその発言はクリティカルなんよ」

「あははは!これは使えるっすね~」

「俺はイチカさんがマジモンの悪魔に見えてきたぞ……」

「ゲヘナの生徒さんにそう言われると何か嫌なんすけど……」

 

 

 

にしても、イチカさん思ってた以上に素を出すのな。

俺の見立てではもうちょっと経ってからかなと思ったんだが……なんかあったんか?

 

ま、いいや!

 

 

 

「さて、クレープも食い終わった事ですし!そろそろ別の所に行きましょうか」

「おっ、そうだな。じゃあスーパーでも寄って何か見にでも行くか」

 

 

 

そうして、俺とイチカさんは公園付近を後にし、最寄りのスーパーへ向かおうとした……。

 

 

 

「────ちょっと待てクソ野郎!!!」

「────此処がお前の墓場やでぇぇぇ!!!」

「あぁん!!?」

「へ!?な、なんすか!?」

 

 

 

……所だったのに。

 

ん、ゴミ~。ムシケラ二匹が御登場だ。

さて、こう言う展開は何時もの事だ。こっからは駆除になるが、どうやって抹殺してやろうか。

 

 

 

「お前、今なんと云った!!」

「スーパーに行くんだよこのスーパーな美女となァァ!!!」

「え、えぇ!?」

「ふざけてんちゃうぞボケぇ!!何がどうしてテメェ風情がそんなエグ美女とつるめるんや!!!さっさと洗脳を解いてその子を解放せぇ!!」

「テメェがふざけんなクズ野郎!!!誰が催眠術師だゴミクズゥ!!だったら俺は今頃キヴォトスで天下取ってんだよ!!」

「そうだ神崎、先ず第一としてこのクソ野郎が催眠を得手としてもその強面のアホ面で直ぐに眼が覚める」

「ぶっ殺すぞこの野郎!!!無駄に顔が良い分際で言いたい放題言いやがって!!思った事全て言うからいつまで経っても童貞なんだバーカ!!」

「あぁ!?ゴラ丹花お前いま言っちゃいけないこと言っちまった様だなぁ……」

「そうやそうや言ってやれ丹花ァ!んはははははは!!!」

「テメェが一番可能性が低いんだよボケェ!!!」

「この小学生の敵がァ!!お前みたいなロリコンは末代まで呪われて童貞のまま小さく死ねッ!」

「はぁぁ!!?おンどれらァ舐め腐りおってッ!!童貞ならワイが末代って言いたいんか!?クソがッ!ワイがテメェ等纏めてミンチにしたるわァァ!!!」

 

 

 

よく、よーく分かった。

 

このクズ共は俺の邪魔をしに来ただけじゃねぇ。

 

────この温った関係に清算をしに来たようだ。

 

 

 

「おい……」

「あぁ、分かってる」

「ワイ等は元々そういう仲やったなぁ?」

「あ、あの~?」

「貴女さまは少しお離れに。此処は大変危険です故」

「今から現場から血祭りが舞うからのぉ、トリニティのお嬢ちゃんにはちょいと刺激が強いかもしれへん」

「そう言う訳だイチカさん、あんたは俺の後ろに隠れてろ」

 

 

 

俺がイケメン風にそう言う。

 

 

 

「ッざけんなぁ!!」

「なにくせぇセリフ吐いてんじゃ!うわ!さむぅ!背中痒いんじゃボケ!」

「はっ!!ザマァねぇ!言う相手が居ないってのは惨めなモンだなぁぁ!?」

「あぁ!?なんだとクズ野郎!!」

「アホの割に中々の火力発言するやないかこの下衆野郎!!!」

「黙れムシケラ共ッ!!俺はテメエ等と違って身長と筋肉がある、そして当のテメェ等は顔だけだ!!それが全てだァ!」

「身長に関してはそんな変わらんやろが!!」

「私は正統派、この性犯罪者予備軍はソース系な美形、だがお前は只の強面ヤクザなんだよ!エンコ詰めた後にブチ殺して豚の餌にしてやるッ!!」

「あ、ぷっつーーーんッ!!!もう殺しまーす!!!悪いけど遺言は聞かないからねぇェ!!!」

ちょっと待つっす!

 

 

 

一触即発、俺がこのクズ共をこの世からサヨナラさせようとした瞬間だ。

イチカさんが俺の前に割って入って来た。なんでだ??!俺の後ろに居ろと云った筈だが…。

 

 

 

「あ、あの!ちょっと待つっす!3人共落ち着いて下さい!」

「止めるんじゃねぇイチカさん!」

「そうやお嬢ちゃん!此処は危険やどいてぇな!!」

「それにこのアホのクソボケの前に立たない方が良い!筋肉の圧で殺されてしまいますよ!」

「あぁ!?んだとクズ共g」

「シンタロウさん!落ち着くっす!そこの御二人もどうか矛を納めて下さい、問題にはしたくないですし……お願いっすから」

 

 

 

イチカさんの決死なお願い。

むぅ……なんでだイチカさん。このゴミとカスを前に何故そんな感じで居られるんだ?

 

よく分からんが……女の願いだ。

 

 

 

「……おい」

「分かっとる……ふぅ」

「よく分からないが、仕方ない。お前等をぶっ殺すのは先延ばしだ」

 

 

 

俺、神崎、桜庭はイチカさんの願いを承諾。

 

チッ……此処でこのムシケラ二匹を駆除できると思ったんだが………仕方ない。

俺とムシケラ二匹、そしてイチカさんは数秒の間を空け……。

 

 

 

「その、先ず第一として……貴方達は何なんすか?」

 

 

 

イチカさんに、コイツ等の事を紹介する事に成った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「────く、腐れ縁……?」

「ん~まぁそう言われっとそうなんやが、そんな生易しいモンちゃうんやがなぁ」

「どっちかっつーとアレだな、怨敵?」

「いやムシケラ達と一人の貴公子だろ」

「奇行種の間違いやな」

「ふははは!間違いないねぇ!」

「お前等ァァ……」

「はいはい喧嘩はなしっす!!」

 

 

 

イチカがシンタロウ達によって3人がどういう関係か聞く。

とはいえ、全てが大雑把。この三馬鹿は口を揃えて言ったのは【腐れ縁】という単語のみ。

 

そして、目を逸らせば直ぐに喧嘩を始め兼ねん馬鹿共にイチカが辟易するが……シンタロウが発語する。

 

 

 

「やっぱ腐れ縁って言葉は違くね?」

「腐るほどワイ等長く居てないしなぁ」

「え?小学校からの仲とかじゃ……?」

「いえ、私達は今年の新学期に入る前、まぁ1月くらいに同時に知り合ったんですです。不覚にもこのクズ共とですがね」

「え……えぇぇ…?」

 

 

 

イチカがドン引きする。

それはそうだ、新学期前と云えばまだ数ヶ月しか経っていない。彼等は1年生の後期に会ったというのか。

知り合って間もないのに、何故こうも殺し合いそうな仲になるのか……イチカは少し気になった。

 

 

 

「一体どういう出会い方をしたらこうなるんすか…?」

「まー色々あるんやで!そういや自己紹介がまだやな!えっと、仲正イチカちゃん、でええんやっけ?ワイは神崎レン。ミレニアムの2年やっとるで!宜しくなぁ~」

「私は桜庭ケイスケ、貴女さまと同じくトリニティの2年です。貴女さまの事は認知しておりましたが、こうして自己紹介できる間柄に成れた事大変嬉しく思います。宜しくお願い致します、仲正さま」

「あ、あぁコレは御丁寧にどうも。改めまして、トリニティ総合学園正義実現委員会の仲正イチカっす!よろしくっす!」

 

 

 

改めて自己紹介をするイチカとケイスケ、レン。

 

輝くほどの笑みを乗せ、確りとした挨拶を交わすイチカ。

そんなイチカを見たクズ二人は……。

 

 

 

「……なぁ丹花」

「んだよ」

「もうええやろ。さっさと催眠を解いてやらんかい」

「私はもう彼女が可愛そうで仕方ない……」

「テメェ等マジでいい加減にしろよ……」

 

 

 

まだ催眠されてると言い張っている。

だが、イチカは怒りそうなシンタロウを前に冷静に告ぐ。

 

 

 

「え、えっと、私は別に彼から催眠とかは受けてないっすよ?知り合ったのは一昨日ですけど、こうして仲良くさせて頂いてるっす!」

「イ、イチカさん…っ!」

「……マジで催眠じゃないみたいやぞ?」

「脅しっぽくも見えんしなぁ……」

「聞こえてるぞクズ共…ッ」

「あ、あはは……」

 

 

 

疑心暗鬼が二人の胸中に渦巻く。

とはいえ、イチカの発言は清く正しい。

 

信じられないが、シンタロウ初の女友達である。

 

……無論、同盟云々は伏せているが。

 

 

 

「それにしてもっすけど……何だか意外っすね?」

「なにがだ?」

「いえ、シンタロウさんとレンさんは会話する時は私にも普通っすけど……ケイスケさんだけ私には凄く丁寧な喋り方なので」

「あぁ…」

 

 

 

イチカが引っ掛かったのはケイスケの事だ。

同じトリニティ。ケイスケは知らなかったようだが、イチカは少なからずケイスケの事を認知していた。

 

とはいえ情報は少ない。シンタロウ、レンと同じく【超級の危険人物の一角】として恐れられ、キヴォトス内では【トリニティの鬼神】、又は【彗星の貴公子】の異名を持っている。

 

巷ではトリニティ最強戦力の『剣先ツルギ』と同格とまで云われている怪物。

 

そんな彼だが……クズ共と話す時とイチカと話す時で全くの別人だ。

 

 

 

「こんなでもトリニティの生徒なので、仲正さまや他の生徒さまには対応を変えて頂いているだけですよ。とはいえ、このクズ共には砕けていますがね」

「あ、そういう事っすか」

「俺等と初めて会った時は”さま付け”だったんだぞ?」

「丹花さま、神崎さま~ってな!ぷ~~っくっくっく!きんメェのう!」

「だな!ふはははは!!」

「……仲正さま、差し支えなければ避難を。あの汚物共を即刻処刑いたしますので」

「い、いやぁ……ダメっすからね?」

 

 

 

この三馬鹿は冷静に会話が出来ないのか、一瞬の隙で喧嘩を始める馬鹿共。

イチカはそろそろウンザリしてきた。

 

 

 

「ふぅ……と云う様に、仲正さまと云った淑女の方々にはこの様な話し方をしています。無論理由はありますが……そういう男であると認知して頂ければと」

「あ、はい!分かったっす!でも良いんすか?私にそういうの見聞させて……あっ!勿論誰かに言うとか、そういうのはしないっすよ!?」

「くはは、勿論分かっています。仲正さまの評判は帰宅部である私風情でも耳に届いております。義理堅く、後輩や先輩からの信頼も厚い、正義実現委員会の中枢を担う才女であると。そんな仲正さまですから、大丈夫であると判断しました」

「あ、あーはは、なんだか照れるっすね……でも、ありがとう御座います!」

「えぇ。あーそういえば、以前正義実現委員会の『羽川さま』とは騒動の日に────」

 

 

 

イチカとケイスケが会話を弾ませる。

同じトリニティ生、そして同学年だからかお互いに気も入らず楽そうだ。

 

 

 

「……もう寝取られてるがな」

「寝ても無いわボケ」

「そんで?あのトリニティの嬢ちゃんにも告るんか?今までゲヘナだけやったのに」

「いんや、俺とイチカさんはそういうんじゃない。ただ一昨日知り合った、潔白な友人関係なだけだ」

「ほ~ん?」

「んだよ」

 

 

 

何か言いたげなレン。

シンタロウのイチカを見る目を見聞し、懐疑的な視線を送る。

 

レンが続ける。

 

 

 

「まぁ好きにせぇ。どうせ振られるだけやしな!んなはははははは!」

「面白い遺言だな。気に入った、明日まで覚えといてやる」

「落ち着けクズ野郎。そんで、テメェに聞きたい事がある」

「あぁ?んだよ」

「────『フウカ』ちゃん、元気にしとる?」

 

 

 

レンが問うてきたのは、とあるゲヘナ生の事。

 

 

 

「あぁ?あ~~~……今頃また攫われてんじゃねぇかな」

「クソォ、あの女共かッ」

「ってかテメェ、まだ好きなのかよ?随分と長い片思いだな。あと別に神崎のタイプの女って訳じゃねぇだろ?」

「はぁ~これだから童貞はアカンわ」

「テメェも同じじゃボケ」

 

 

 

レンが聞いているのは『愛清フウカ』

 

ゲヘナ学園【給食部】の2年。その部長に充る人物だ。

混沌渦巻くゲヘナでは珍しい善良な生徒の一人で、後輩である『牛牧ジュリ』と共に二人でゲヘナの食堂を回している苦労人でもある。

 

そんなフウカだが……実は、レンとそれなりの因縁がある。

 

 

 

「……俺が言うのも何だがな、会いに行ってもいいんじゃねぇか?」

「アホ抜かせ、行けんから態々テメェに聞いとんのやぞ」

「つってもなぁ……」

「元気ならえぇんや。あぁ、それでえぇ。それにあの女共とも何だかんだで仲良ぉしとるんやろ?」

「そうだが……まぁ、そこら辺は神崎に任せるぞ」

「そうしてくれ」

 

 

 

先程までの覇気もなく、レンはシンタロウにフウカが元気かを、ただ聞いた。

シンタロウは一貫して元気だという。それを聞いたレンの顔色は、少し優しくなった。

 

シンタロウのみならず、ケイスケもレンとフウカの事情は知っている。だからこそ、面倒だとも思っているが。

 

 

 

「御二人共、なんの話をしてるんすか?」

「うおっと……いや何でも。ソッチはもう良いのか?」

「はい!正義実現委員会の事で少し盛り上がっちゃったっす、えへへ」

「それで?お前等こそなにを話し込んでたんだ?」

「レンの面倒くさい恋バn」

「噴ッ!!!」

「ぐぉぉ!?」

 

 

 

”ドサ……”

 

 

 

「え、ちょっ!?」

 

 

 

レンがシンタロウの鳩尾に正拳突きをブチかます。

イチカがあわあわとするが、クズ共は続ける。

 

 

 

「丹花のアホがまだモブ美ちゃんのこと引き摺っとってなぁ?ワイが慰めてやったんや」

「ち、ちが…ッ」

「お前まだモブ美ちゃんに恋してんのかよ。彼女レズだぞ?」

「同性愛は流石に厳しいって言ってんのに、このアホ、それでも~とか言ってのぉ」

「テメェ、マジで、殺す…ッ」

「(この人達って友達なんすよね…?)」

 

 

 

倒れるシンタロウにゲシゲシと足蹴りを行うレンとケイスケ。

その様子はまるでイジメだが、今日は偶々シンタロウだっただけでいつもは攻守交替で人が変わっている。

 

すると、レンがケイスケに話しかける。

 

 

 

「ふぅ……まーえぇ。おい桜庭、メイド喫茶行くで」

「なに?」

 

 

 

なんと、レンがシンタロウの粛清を先延ばしにしたのだ。

これにはケイスケも驚きを隠せない。ケイスケは疑問符を浮かべレンに問いかける。

 

 

 

「おい待て、この下衆野郎の処刑はどうするんだ」

「今日は気分ちゃう。それにどうせ振られるんや、死刑はその後でもえぇやろ」

「む、それもそうだが……」

「それに今日は記念日や!テメェとワイのお気に入りが居るんやぞ?閉まっちまう前に行くしかないやろが!!」

「ッ!そうだな。では、すみません仲正さま。私と神崎はこれで失礼いたします。そこのゴミクズは放って置いて構いませんので、それでは」

「え?あぁ、ちょっ」

 

 

 

”ドヒュゥゥゥンッ!!!”

 

 

 

まるで嵐が如く騒動を巻き起こした後、クズ二匹はその場を後にした。

瞬き一回、まるであの時のシンタロウ並みの速さで消え去った。

 

やはり、実力的にもこの三人は拮抗しているのだろう。

イチカは全身に嫌な悍ましさを感じて、そう思った。

 

 

 

「な……何だったんすか?本当に……」

「ってて……クソ、あのゴミ共が」

「あ、大丈夫っすかシンタロウさん?結構いいの入っちゃったっすけど……」

「ん?あぁ大丈夫だ。もう治まったしな。だがあのクズ共は必ず殺す」

「あ……あはは」

 

 

 

マジモンの殺気を放ちながら言うのだから、乾いた笑みしか出せない。

イチカの認識ではこの三人は友人関係だと思っているが……なんか確認が怖いので、そう思うだけにした。

 

その場に残ったのはイチカとシンタロウ。

 

 

 

『それにどうせ()()()()んや、死刑はその後でもえぇやろ』

 

 

 

ふと、イチカはレンが放った一言を思い出した。

 

 

 

「……振る、なんてことは……」

「ん?今なんか言ったか?」

「え?あ……い、いいえ!?なんでもないっす!」

「そうか?はぁ~にしても疲れたな。イチカさんは疲れてないか?」

「あ、えっと…いえ私は全然大丈夫っす!」

 

 

 

顔がボッと、僅かに赤く染まるが、直ぐに切り替える。

 

危なかった、本当に。

危うくこの男に変な感情を湧いてしまう所だった。

 

手でパタパタと顔に風を送るイチカを一瞥したシンタロウ。

瞬間……シンタロウが顔を近づける。

 

 

 

「んぅ?でも顔赤くね?本当に大丈夫か?」

「はっ……ちょ、あ、はぁ!?」

「ほら、汗掻いてるしよ。女の子の日じゃないよな?体調悪かったら言えよ?近くまで送るから」

 

 

 

己に流れる汗と頬の赤みを見て、そう告げるシンタロウ。

この男、本物のアホだ。

 

シンタロウは余計すぎる一言を入れてしまった。

 

 

 

「────よ…余計なお世話っす!!」

「うぇ!?」

「普通女の子にそんなこと聞くっすか!?ホント最低っすね貴方は!妹さんが居るとは思えないっす!!」

「ッ……お、俺はただイチカさんが心配で…………ごめん」

「あっ…~~~ッ……はぁ。もう、貴方と云う人は」

 

 

 

悪意のない善意。

意外とこれが厄介で、本人は真面目なのだ。

 

だが、イチカは聡い子だ。感情任せにシンタロウをただ叱責するだけではない。

 

 

 

「良いっすか?そういうのはデリケートなんす!ただ普通に体調はどうか聞くだけで良いんすから」

「そ、そうなのか?余計な一言だったのか……」

「マジで余計っす!本当にもう……私じゃなかったらマジでぶん殴られてるっすよ?それだけで済めば良いっすけど」

「そうか……分かった!気を付ける」

「本当に?怪しいっすね……」

 

 

 

メモを直ぐに取って、快活な笑みを浮かべそう言うシンタロウ。

強面の癖して、笑顔は何だか子供っぽい。

 

妙なギャップにやられそうになる。そんな自分が更に嫌に成る。

 

 

 

「全く、じゃあ行くっすよ!」

「あぁ、行こうか。あのスーパーには美味い飯屋が一杯なんだぞ!」

 

 

 

そうして、シンタロウとイチカは並んで歩み出す。

普通、こんな経験をすれば……普通の女の子ならもう去っているだろう。

 

アホで馬鹿な男に振り回され、ヤバすぎる友達が居て、そしてまた振り回されて。

 

普通なら、とっくに消えて当然なデート。だが…

 

 

 

「(私も、大概な女っすよね~……ホント)」

 

 

 

イチカは、そんなシンタロウに……少し、ほんの、ほんの少し、惹かれている。

 

本当だ。ほんの、ほんの少しだ。誇張じゃない、ほんの少し。

 

 

 

「なんか、アレだな」

「ん?なんすか?」

「いやほら、イチカさんって俺の事ちゃんと叱ってくれるだろ?」

 

 

 

すると、シンタロウがイチカにとって思いも寄らぬ発言をする。

 

 

 

「────イチカさんが【彼女】に成ったら、尻に敷かれそうだな~って」

「は……」

「イチカさんって何かそんな感じするわ!さっきの俺みたいな事したらちゃんと叱るからさ、何でか、容易に想像できるんだ!」

「ば……~~~~~っ!!!な、なに言ってんすかあんたはっ!」

「あだだだだだ!!脛は痛いぞイチカさん!ってか何で怒ってんだ!?ちょ、いてっ!いってーーーッ!!!」

 

 

 

あぁ、本当にこの男は…!

やっぱ嫌いだ!きらいきらい!デリカシーの欠片もない!ばか!

 

 

そう、心の中で思う。

ついでに脛も蹴る。己の羞恥の痛みを思い知れと言わんばかりの勢いで。

 

 

あぁ、でも……本当に困った。

 

 

さっきシンタロウ以外の二人の男子に会ったけど。

 

二人共、シンタロウよりもまだ良識はあって、ケイスケに関しては丁寧で。

 

普通にシンタロウよりも顔も良い。

 

なんで、なんでだろう……。

 

 

────丹花シンタロウから、目が離せなくなっている自分が居る。

 

 

 

『俺には素で居ろ。我慢なんかしなくていい』

『友達だからだ』

 

 

 

「……ばか」

「え?今俺に馬鹿って言った?なんで分かったんだ?」

「…………ばかだからっすよ!このおばか!」

「あいってーーー!!」

 

 

 

あぁ、こんな男に、己は……。

 

その事実に。

その心の訴えに。

 

イチカはただ……悶絶するしかなかった。

 

 

 

 

 

次回

 

知られざる真実。




この三馬鹿には過去があった方が面白そうなので、書く事にしました。

丹花シンタロウと桜庭ケイスケのそれなりに、神崎レンは甘酸っぱい系にしたいな~と!

多分、冒頭を読んだら分かると思いますが、シンタロウは少し出てますね。



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