いわくつき鎮守府に青二歳提督が着任しました。   作:当店

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お 久 し ぶ り で す

いやあ…学業との両立ってむずいっすね()
自分の要領の悪さを痛感する今日この頃。10000字くらいはいったろと思って字数を見たらまさかのその半分もいかんくらい。
駄文ではございますが、暇つぶし程度に見てやってください。


ブラック企業ってのはいつの時代でもあるもんで ~上~

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暗い暗い、海の中。

 

それが私の中の、初めての記憶。

 

いや、海の中じゃないな…ドック。そう。建造ドックの中だ。

 

あそこ(ドック)の中は海の中に似ている。

 

艦として沈んだ時の、海に似ている。

 

心地いいあたたかさがあって、包み込んでくれる優しさもあって。だけど、どこかどうしようもなく冷たくて。

 

縦にも横にも、どこまでも続いてるように見えるし、底も見えない。あそこも海も。ほんと、あの小さい箱みたいなとこのどこにあんなスペースあるんだか。いや、おっきかったけ?覚えてないや。

 

あんまり、というかほとんどドックをまじまじと観察することはなかった。せいぜい私が建造されたとき、物珍しさでドックを見たり触ったりしたくらいだ。

 

入渠施設が同じ部屋にあったけど、滅多に使わせてもらえなかったし、使わせてもらえたとしてもわざわざドックなんて見る暇も余裕もなかったから。

 

閑話休題。

 

あの中は心底退屈だった。体は動かない、否、体の感覚がない、と言った方が正しいだろう。

 

意識だけがそこにあった。どれくらい中にいるのは忘れちゃったけど、いつしかぼうっとしているのにも飽きて、いろんなことを妄想した。

 

司令官はどんな人かなあ。いい人だといいな。

食事は美味しいのかな?美味しかったらいいな。

日々の仕事はどんなのだろう。あんまり難しいのは嫌だな。

出撃の頻度はどのくらい?戦艦はもう建造されてるのかな?一緒に出撃したいなあ。

そのほかにもいろんな、くだらないことを妄想した。

 

 

そのほとんどが、妄想の域を出なかった。

 

 

司令官は、典型的な軍人気質だった。つまり、艦娘(バケモノ)風情が自分たちと肩を並べて戦うことを激しく嫌悪するひとだった。

 

振り返ってみれば本当にひどいところだった。反乱やらが起こっても、何ら不思議ではないくらいに。だけど、そんなのは起こらなかった。

 

でもそれは別に、司令官への優しさでも怯えでもなんでもない。私たちは“そうなる”ように造られたから。司令官に逆らえないように造られたから。

 

 

 

 

 

 

 

建造ドックでは艦娘を造る時に司令官、もとい提督に”逆らえる”艦娘か、”逆らえない”艦娘かを選ぶ機能がある。

 

“逆らえる”艦娘というのはそのままの意味で、提督が何かを命じても、それに反対することができるし、提督の許可なしに艤装の展開もできる。

もし耐えられないことがあれば手を上げることももちろんできる。

 

つまり、いつでも提督を殺せる。

この『艦娘による提督の殺害』というケースはごく稀ではあるものの確認されている。呉でも一回だけあったみたい。

 

このような特性があるため扱いは難しいが、その反面余計な制限がない分、常に全力で戦える。

また、提督と艦娘の間に強い信頼関係を構築すると限界以上の力を発揮することもできる…らしい。

らしいというのは、理論上そうではあるが、その実例が未だ見つかっていないからだ。

これは日本中全ての提督が艦娘(私たち)の存在を否定しているからではない。提督の中には艦娘という存在に対して好意的な人もいるし、そういった人たちが集まってできた派閥もある。俗に言う「親善派」である。

けれどそういう人ほど艦娘に感情移入してしまう。大切にしているからこそ一線を引いてしまう。だから艦娘との間に微妙な溝が生まれてしまう、らしい。あるいはただ「親善派」の皮を被っただけの臆病者か。

 

私はそういったひと(司令官)にあったことがないからわからないけど。

 

私たちはそうじゃないほう、つまり”逆らえない”艦娘だ。提督の言うことは絶対。逆らえない。抵抗といった抵抗は苦言を呈することで精一杯。行動にも多くの枷があって、満足に体が動かない。

 

だけどあいつ(司令官)は“逆らえない”艦娘しか作らなかった。散々艦娘という存在を見下しておきながら、心の底で怯えていた。自分で言うのもなんだけど外見は幼い子供である駆逐艦にも少しビクビクしていたのは滑稽だと思う。

それでも呉、横須賀、舞鶴、佐世保のビッグ4(ビッグセブンにあやかったんだろう。もうちょっとネーミングセンスはどうにかしてほしい。)を除けば、日本国内の全鎮守府の中でも武功を立てている方だった。

あいつ(司令官)は「私の知略謀略の前にはどんな深海棲艦であろうが敵わない!」なんて言ってる。

まあ、最低限のコストで駆逐艦を量産して、盾にしながら北上さんと龍驤さんと武蔵さんとで強引に押し切るなんていう劣化版米国式物量作戦を“知略”だとか“謀略”だとか言うのならそうなのだろう。

暫くはそれで押し切れていたんだけど、深海棲艦だってバカじゃない。私たち(駆逐艦)は実戦経験どころか演習をしたこともない、自分の艤装だって今日初めて扱う正真正銘のただの的だ。

 

それを悟られたのだろう。岩礁に忍ばせた伏兵を用いた挟撃なんてされた日にはたまらなかった。

 

イ級の顎が首をえぐる。ホ級に海の底へと攫われる。リ級の腕の一振りで首と胴が泣き別れ。ヌ級に一口でガブリ。ヲ級の杖で喉元ぶすり。

地獄絵図だってもっと生ぬるいんじゃないかと思えるような、一方的な殺戮現場。私も腰が完全に抜けちゃって、吹雪ちゃんが庇ってくれなかったら私は海の藻屑になってた。

…かろうじて、全滅は免れた。と言っても、10数隻いた艦隊は片手で数えられるほどしか残らなかった。対して敵は6隻。まごうことなき敗北だった。

 

“あの日”からだと思う。この鎮守府が本格的に狂っていったのは。

 

大本営元帥である親のコネでなんとかなあなあになってきた資材供給も誤魔化しが効かなくなっていき、功を焦っては無意味な出撃と大敗の繰り返し、遠征部隊に回すような余力もなくなる事態に。

 

そのせいで補給だって満足にさせてくれなかったし、誰かが沈んで(死んで)も舌打ちと悪態ばっかり。初めのうちは怒ったり、泣いたり、悲しくもなったけど、もういちいち泣くのも疲れちゃった。

 

艦娘は生前、つまり軍艦であった頃の記憶を持っている。自分(艦娘)と言う存在が、兵器に人間のガワを被せただけの化け物だってことを理解してる。

あの戦争(太平洋戦争)がどんなに酷かったのかを、いやと言うほど知っている。だから誰かが沈ん(死ん)でも、ある程度は割り切ることができる。「これは戦争だ、誰かが死ぬのなんていっぱい見てきた、これくらいでへこたれてちゃこの先やってられない。」ってね。

 

…いや、割り切れてなんかいないな。思い込んでるだけ。

建造された瞬間に悪態をつかれてへこんでた私に「災難だったね。」って笑って、施設の見学をさせてくれた吹雪ちゃんも。

「私、あんたら(駆逐艦)嫌いなんだよね〜。」とか言いながらなんだかんだ優しくしてくれてた北上さんも。

「ほーんと、アタシらイヤなとこで造られちまったよなあ。」ってカラカラ笑ってた朝霜姉さんも。

初めての出撃で緊張してた時、「もうちょい肩の力抜きぃ。大丈夫や。ウチがフォローしたる。」って言ってくれた龍驤さんも。

…初めてあった時、「あなたも駆逐艦?」って聞いた時には、ムキーッ!って擬音が似合いそうな感じで怒ってたなぁ。

「あいつ(司令官)にはナイショだぴょん!」って言って、卯月ちゃんと一緒に隠れてお菓子を食べたこともあったけ。結局見つかって殴られて、その上3日間ご飯抜きにされちゃったけど。まあ正直ご飯抜きは別に良かったかな。食事は絶対に必要ってわけでもないし、そもそもあってないようなものだったし。

そして…武蔵さん。

武蔵さんはあそこで唯一の戦艦で、1番最初に建造された。

冷静沈着で大胆不敵。

ひとたび砲を放てば巡洋艦クラスの深海棲艦でもまとめて屠る圧倒的な火力を持ちながらも常に戦況を冷静に見つめ、最善策を選び抜ける頭脳も併せ持ち、私たち(壁役)のことをいつも気にかけてくれる優しさも持つ。

自身も例に漏れず“逆らえない”という枷を背負いながらも自他ともに最少の被害に抑える姿は正に完全無欠。大喰らい(燃費が悪い)なのが玉に瑕だけど。でも、そういうところもカワイイでしょ?

ともかく。武蔵さんはあそこ(鎮守府)でも圧倒的に練度が高くて、なんと呉や横須賀などの最重要拠点である鎮守府よりも先に、最も早く“改ニ”へと至った艦。

その知らせは“あの日”以降すっかり荒みきった私たちの心を潤してくれた。

 

___改装について。

 

艦娘は一定の練度になったら大規模改修を受け、いわゆる“改”と呼ばれる形態になることができる。

まあ、大規模改修と言っても艤装関連の外見はほとんど、というか全く変わらない。ある駆逐艦は改になったら髪がはねるようになっただとか、またある正規空母は服の色が変わったとかいう話は風の噂で聞いたけど、まあ外見に変化があると言ってもその程度だ。

だが“改”になった艦とそうでない艦とでは反応速度や砲撃の威力に劇的な差が生まれる。

 

もちろんリスクもある。

 

“改”へとなる際の負担だ。

大規模改修ということは、つまり“体全体を弄る”ということであり、想像を絶する痛みを伴う。

それゆえ通常は”改”になった艦娘は2〜3日はグロッキーになる…らしいんだけど。

武蔵さんに“改”になる時の感想を聞いたら「ん?ああ、確かにチクチクと痛むが…まあ、慣れればそれほどでもないさ。」とか言われた時にはドン引いてた。主に要求練度の関係で先に”改”になってた北上さんと龍驤さんが。

そして“改”になった後しばらくは自身の運動能力の向上に戸惑い、振り回されてしまうことが多く、実際にその隙をつかれて沈んでしまった子(艦娘)も少なくない。

ビッグ4でも"改"となった艦娘の力を最大限発揮できているかというとそうではないほどである。

そして艦種によっては、改修時に要求される資材の量も洒落にならない。武蔵さんが”改”になった時は弾薬と鋼鉄の備蓄量が1ケタになった。

 

そして、それよりもさらにもう一段上の第二次大規模改装、“改ニ”。

 

と言っても最近になってやっと基礎理論構成が完了したばかりの“プロトタイプ”ではあるけど。

“改ニ”実装のために要求される練度は非常に高く、かつ体にかかる負担も"改"の時とは桁違い。

しかし、その艦の動きに最適化された艤装に、専用チュー二ングを施した新兵装もつくというのだから凄まじい。

ビッグ4の中でも呉の那智、舞鶴の瑞鳳、佐世保の時雨、横須賀の長門の4隻は改ニ実装可能であったが、どの提督も「「「「そんな不安定なものに安易に手を出せるものか」」」」と突っぱねた。

そこで「我が鎮守府の武蔵ならば、あの臆病者どもとは違って改ニ実装なぞ朝飯前だ!」と食いついたのが私が所属していた串間鎮守府の司令官、塩沢智宏(しおざわともひろ)。

“改”になる時とは比べ物にならないほどの要求資材はコネで用意し、武蔵さんの同意なんぞはもちろんとらないで、“改ニ”の実装を強引に決定した。

私たちは武蔵さん(精神的支柱)まで失ってしまったらどうしようかと怯えていたが、実際はケロッとした様子で帰ってきたことを覚えている。流石に引いた。

 

 

…今思えば、あの時もっとちゃんと頭を使っていれば異変に気づけたのだろう。ともかく、武蔵さんが無事に帰ってきてくれたという事実に私たちは大いによろこんだ。

 

 

あいつ(司令官)が五月蝿(うるさ)く自慢していたのを嫌でも覚える。

「見ろ!この武蔵の崇高な姿!」

「やはり私は天賦の才を持っているのだ…あの!いけすかん呉の小僧よりも!横須賀の耄碌爺(もうろくじじい)よりも!舞鶴の雌豚よりも!佐世保の蟻どもよりも!先に!この私が!改ニ実装を成し遂げた!」

なんて言って舞い上がってた。“不完全なシステム”をコネと駄々でむりくり押し通しただけなのに。

でも、

「これほど強くなれば、もう貴様たちを沈めるようなマネもしないだろうよ。」

なんて言ってくれた武蔵さんには、痺れちゃったなあ…やっぱり戦艦ってすごいなあ…

みんなも笑ってた。

 

みんな、みんないい人だった。

 

辛くても、どうしようもなくても、幸せだった。

 

まだいける、まだ頑張れるって思えてた。___________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

______“アレ”に遭うまでは。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




これからものんびりだらっと書いていきますので、どうか温かい目で見ておくんなまし…
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