OVER REAL DOWNLOAD!! 人類最後の格闘ゲーマー   作:Monjiroh

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011 VS『インセイン』(2)

「ぴルズヒアッ!!」

 

 襲い来る被害者を拳で気絶させ、階段を文字通りジャンプでひとっ跳びし、また殴る。

 

 予想通りエレベーターホールの奥にあった階段を見付け、僕は今、上階を目指している。何故か。それは敵の湧いてくる方向が、あいつの居所だからだ。

 

 被害者達を倒し、階段を上り、辿り着く。

 

 十三階。

 

 昇降口を出ると、大きな廊下にみっちり詰め込まれるように、被害者達が待機していた。

 

 エンカウント。

 

 一斉に集中する、狂った目線。自分がターゲットされた感覚に、コキリと首を鳴らして把握する。

 

 なるほど。ここから先は、ベルトアクションゲームだ。

 

「ぴルズ、ひアアアアアアッッ!!」

 

 一斉に襲い掛かってくる襲撃者達、その先陣を迎え撃つ。

 

「せっ!」

「るイスッ!!」

「せっ!」

「びビルッ!?」

 

 空中蹴りで出鼻をくじき、着地からの足払いでダウンを取る。牽制のジャブで距離を測り、後ろ回し蹴りで吹っ飛ばす。

 

 重要なのは、自己分析。

 

 自分に宿った『NO TITLE』という格闘ゲームが、この現実でどのように機能するか。

 

 立ち、しゃがみ、ジャンプ状態。パンチとキック、威力と判定の違う弱強それぞれ四種類の基本攻撃。計十二種類のモーションを一つ一つ確認するように繰り出し、被害者達を打倒する。

 

 弱パンチ、略して弱パンを二回。立弱キックである下段蹴りで怯ませ、立強パンの右ストレートで吹っ飛ばす。

 

「せっ!」

「ぞゾーイ!?」

「せっ!」

「ふらランシス!?」

 

 そして、ジャンルの原理。

 

 2D格闘ゲームは、本来平面モニタで遊ぶゲーム。演劇の舞台を鑑賞するような視点で遊ぶゲームだ。その性質上、カメラの移動は基本横スクロールのみ。プレイヤーにとっては、前後しか移動することが出来ない。

 

 だけどここは現実で、僕はその制約に縛られない。

 

 斜めに飛び退き、横にステップ、そしてスウェーバック。格ゲーのモーションを現実の動きで挟み、移動軸を合わせていく。

 

「対応しながらでいい、聞きたまえ」

 

 大乱闘の最中、後ろに付いてきていたクーリエが、

 

「オーバー・リアルにはゲームを実現する力の他に、副産物が存在する。ゲームを起動せずとも使用できる超能力、副次能力と呼ばれるものだが、君のゲーム、君の動きを観て確信した」

 

 打倒しながら話を聞く。対処しながら理解する。

 

「優れたダンサーは一度見ただけで踊りの振付けを記憶できると言うが、君はその発展。完璧に振り覚えが出来る人間。運動時の姿勢を視覚的に捉え記憶し、再現する」

 

 そこでクーリエは一息入れ、

 

「完全精密動作、コレクト・モーション・スキル。それが君の副次能力だ」

 

 分かる。

 

 今、僕が繰り出している攻撃、その手首の角度が少し変わっただけで、攻撃判定が発生しなくなるだろう。しかし僕は格ゲーの型を正確にトレースし、再現することが出来ている。

 

 この力は僕の肉体そのものが格ゲーに適応した証。超能力というには地味な力だけど、これでいい。今、この状況を打開できるなら、これだけで充分だ。

 

 突進してくる警備員の顔面に立強パンの右ストレートを叩き込み、そのまま振り抜いて後ろの職員の顔面を殴り飛ばす。そしてついに、

 

「せいっ!」

「れッフォ、でエエエエエェエッ!?」

 

 数え切れないほどの被害者をリタイアさせ、僕達はようやくフロアの最奥、廊下の終点に到着した。

 

「いるな、この部屋だ」

 

 狂気に侵食された扉の前で、クーリエは緊張したようにヒゲをピンとさせた。そして、

 

「言い忘れていたが、今のわたしの姿はゲームの副次能力で生成したものだ。見た目通り、戦闘能力は皆無と言っていい」

「つまり、君に助けは期待できない」

「その通り、私のことはNPCだとでも思ってくれ」

「分かった」

 

 僕は扉に手を掛け、臆さず、中へ。

 

 

 

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