OVER REAL DOWNLOAD!! 人類最後の格闘ゲーマー   作:Monjiroh

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018 【NOW LOADING...】ブラント様(1)

「くはっ!?」

 

 ボクの名は、ブラント・ヴァンダーカップ。アメリカ国籍の二十四歳、ブルジョワさ。

 

 そのボクは今、大の字で地面に寝そべり、夜空を見上げている。小さく瞬く星を湛えた、雨上がりの夜空だ。

 

 アーハン? 何故こんなことに? この高貴なボクの身に、一体何が?

 

 よく分からないが、綺麗な夜空だ。こんなに落ち着いた気持ちで星を眺めるのは、いつ以来だろうか。ちょっと背中がズキズキするが、この美しい星空に比べれば、些細なことさ。んん、メルッヒェン。

 

 御覧、あれが春の大三角形。ああ、しし座おとめ座うしかい座があんなにくっきりと、って何かに隠れて見えないぞ? これは、おや、ライフゲージとMPゲージか。ライフならやむなし、何故って、今はゲームの時代だからね。

 

 そう、視界に映るライフゲージ、そのゲージが……、一割ほど削れている!

 

「ノオウッ!?」

 

 ボクはがばりと立ち上がり、思い出す! そうだ、ここは仮想特区! ボクは今、キッズを分からせバトルの真っ最中であったはず!

 

 そしてHP! HPが減っているということは、キッズの攻撃を喰らったということ! 一体何ががあああ――

 

「オオオウッ!?」

 

 混乱の最中、ボクは何故だか再ダウン! またまたHPが減ってしまった! あと何か足が痛い!

 

 何だ!? 何も見えなかったぞ!? ボクは一体何をされた!?

 

「くおおッ!」

 

 剣を支えに、立ち上がる! キッズは何処だ! いたぞキッズ正面だ! キッズが正面から向かってくる! 今度こそ! 盾を構えて迎え撃つ!

 

 ……盾?

 

 いいや、盾を下げろ! 何のために!? そう、キッズを見失わないために! このキッズを見失ってはならない! 直感だ! ボクはそうしなければならないッ!

 

 ボクのHPが減り、ダウンしていたということは、ボクはキッズから攻撃を受けたということ! ヴァリアント・ウォールを起動したこのボクに、一体どうやって!? そうだ、ボクはその謎を解かねばならない!

 

「オオオウッ!?」

 

 そして見る! 判明する!

 

 異様にして意外! キッズが、高速で屈伸しながら近付いてくる!

 

 ただでさえ小さいキッズの体が、しゃがんだことで更に小さくなり、盾の陰に隠れて見えなくなっていた! これが! ボクの視界からキッズが消えた理由ッ!

 

 盾を構えた守護騎士の視界は、確かに狭い! これは、プレイヤー視点を考慮した非常にクレバーなテクニックと言わざるを得ない! メイク・センス!

 

 何より奇妙なのは、あの屈伸! 残像すら見える、あの速度! なんだあれは!? 一体何のためのシステムなんだ!? 煽りか!? ティーバッグにも程があるぞッ!!

 

 そして来る! 攻撃だ! これは、蹴り! 足払い! そんなもの、盾を構えるタイミングさえ合わせれば――

 

「せっ!」

「ガード! オウッ、ノウッ!?」

 

 何故かキッズの攻撃を喰らい、ボクは再々ダウン!

 

 何故だ!? ボクはガードしたぞ! 何故、ヴァリアント・ウォールの効果が発動しない!?

 

 すぐに立ち上がり、盾を構えなおす! 思い出せ! 立ち返れ! そうだ、装備やアイテムが現実化されていなくとも、ゲームにはルールというものがある! キッズは、自分のルールを押し付け、ボクを転倒せしめたのだ!

 

 ルールだ、キッズのゲームのルールを読み解け! ゲーム・ヴァーサス・ゲームは、お互いのルールの抜け道を探す作業だ!

 

 姿を消すテクニックは理解した、攻撃は間違いなく足払いだった。

 

 足払い……?

 

 閃きかけたボクの眼前、再び迫るキッズの攻撃! しかあし!

 

「せっ!」

「ッイエエス! アイキャン!」

 

 ジーニアスなボクはキッズの攻撃を見事にガード! キッズは反動で後ずさる! イエア!

 

 足払い! そうか、下段! このキッズの攻撃には、高度の設定があったのだ! 下半身を狙った攻撃を防ぐには、しゃがんでガードしなければならない! これが、キッズのゲームのルールか!

 

「中々に小難しいルールを内蔵しているじゃないか! しかあし、タネが分かればノー・プロブレム!」

 

 見えた、キッズの攻略法! ボクはしゃがんで盾を構え、守護騎士らしく鉄壁スタイル! これが正解! これで無敵だ!

 

 来るがいいキッズ! お前が何をしようとも、ボクのゲームは――

 

「ふっ!」

「無敵な、オウッ!?」

「せっ!」

「ノォオウッ!!」

 

 しゃがんで盾を構えているのに、何故だか喰らうジャンプ攻撃! そして怯んだ隙に、またまた喰らう足払いッ! ボクは大の字になってやっぱりダウン!

 

 何故だ!? いや、分かったぞ!

 

 これは、さっきの逆! 上半身を狙った攻撃、またはジャンプ攻撃を防ぐには、立ってガードしなければならない! そういうことか!

 

 つまり、キッズの攻撃は、常に二択を迫られるということ! オノーレ!

 

 いや、落ち着けボク! もう問題ない! キッズのゲームには、これ以上底が無い! と思う! きっとそうだ!

 

 ……おや?

 

 そこで感じる、不思議な感覚。地面をズルズルと引きずるような音に、ボクは仰向けのまま足元に目を向け――

 

「っっ?!?!?!?!」

 

 そこで見る! 倒れたままのボクに向かい、ダッシュしているキッズの姿ッ!!

 

「ななッな、何をするしてるんだあああああッッ!!」

 

 キッズに押され、ボクの体がズルズルと移動している! キッズとの間に、バチバチと火花を散らすエフェクトが見える! 判定だ! このキッズ! ダウン状態のボクの体を、判定ごと押し続けている!!!!!

 

 何故だッ!? 何故こんなことをおおおおおおッッ!?!?

 

「何って、寄せてんですよ」

「YOSERUッッ?!?!?!」

 

 ああああれか!? 仮想で他人のアバターを押してイタズラするヤツ!! あれを、倒れたままのボクにやってるのか?!

 

 ハウウェバー、何のために! オウ、そうか! いや、ダメだ!

 

「ノノノノノウッッ!! ダメダメダメだああああッッ!!」

 

 何故ならここはビルの屋上ッ!! このままではこのシットなキッズに、無駄に高いビルの屋上から突き落とされることになるッッ!!

 

 高い所から落ちたら、人は死ぬんだぞ!! 仮想のゲームでの死因は、殆どが落下死なんだぞ!!

 

 ボクの『エターナル・オーダー』だって落下死はライフ全損だ!! そうなったら即ゲーム・オーバー!! 意識不明でリタイア!! つまり、ジ・エンド!!

 

 それをこのキッズ!! 無表情でシレッと実行し続けている!! 正気か!?

 

「おおおああああああッッ!! まま待ッ、ウェウェウェイ!!」

 

 おおお正気じゃない!! このキッズ、押すのを止めない!! 絶対に正気じゃあない!! このまま行けばボクは断崖絶壁、四字熟語ッッ!!

 

「やめやめろ! このッ、このおッ!」

「……」

 

 半身を起こし剣を振るうも、オオオウ!? 姿勢が悪い! 絶妙に届かない!

 

 こ、このままじゃダメだ!! そうだ、立つ!! 立つ立たねば立たぬ時!!

 

 しかし、どうする!? ボクほどではないが、キッズのガード性能は侮れないものがある! 加えて、高度設定を内蔵した小難しい攻撃! この戦闘、長引かせるのはベリーデンジャー!

 

 何故なら、そう! マイ・ライフ! キッズの攻撃を喰らいに喰らい、ボクのライフは残り三分の一を切っている!

 

 どうするどうする!? シールド・ラッシュはクールタイムがまだだ! ホーリー・バーストはボクも眩しい! あれを至近距離で撃つことは、キッズを見失うも同義!

 

 ピンチッ!! 窮地ッッ!! ボクの人生とは無縁の言葉、この状況!!

 

 思い付け、打開策!! ボクは思い付ける!! 大丈夫だ、問題無い!!

 

 しかし、事実! 体力差! この体力差を、一発で帳消しにする方法は……、

 

「……ハッ!!」

 

 そうだアレだ、アレがあった!! いや、またしても流石ボク!! 手段はイン・マイ・ヘッド!!

 

 ブレイド・オブ・ベンジェンスだッ!!

 

 セルフで説明しよう! ブレイド・オブ・ベンジェンスとは! 失った体力が多ければ多いほど威力が倍増する、一発逆転の極大ダメージアーツである! サンキュー・ミー!

 

 そうと決まればやってやる!! 何を!? 読み合いだッッ!!

 

「スタンダッ・トゥ・ザ・ヴィクトリィイイイ!!」

「っ!!」

 

 立ち上がりざまに渾身の斬り払い! しかし、当たらず! キッズは読んでいたように一度後退!

 

 そして最接近! キッズが高速でスクワットしながら近寄ってくる! そうだろう、そう来ると思っていた! だが問題ない、ボクは既に心を決めているッ!

 

「お、おおお……」

 

 迫る迫る! キッズの攻撃!

 

 だが、まだだ、まだ、よく見ろ!! 上か下か!! アップ・オア・ダウン!!

 

「おああああああッッ!!」

 

 上か!? 下かああああッッ?!

 

「せっ!!」

「ッッ!! 下ァッ!!」

 

 半ばギャンブルッッ!! しかしッッ……!!

 

「ガード!! サクセエエエスッッ!!」

 

 キッズの足払いを、ボクは見事にガード成功! キッズはヴァリアント・ウォールの反動で仰け反り、後ずさる! そこにいいいいいいッッ!!

 

「喰らえ!! 今、必殺のおおお!!」

 

 窮地を脱した僕は、距離を開けたキッズに向かい、ゲーム通りのアーツ・モーションを開始する!

 

 勝った!! 読み勝った!! もう上も下も関係ない!! ブチかます!! 勝った!! ゲーム・クリアーだッッ!! 

 

「ブレイド・オブ・ヴェンジェエエエエエエンス!!」

 

 そして、ボクは伝説へ――

 

 

 

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