OVER REAL DOWNLOAD!! 人類最後の格闘ゲーマー   作:Monjiroh

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032 【NOW LOADING...】蔵瀬セイジン(3)

「もおおおおいいいいいかあああい!?」

 

 特区は南の倉庫地区。天井から吊るされた巨大な人工筋肉がきしきしと揺れる、秘密車両整備用倉庫。

 

 その中を、私、蔵瀬セイジンは悠々と歩いている。辺り構わず銃弾を放ち、お決まりの文句で部下を気遣いながら。

 

 そう、部下、保安部は情報機動部隊。あれから私達は衝突した。ああ、実にいい戦闘だった。彼等は火器使用不可能という不利を抱えながらも、よく善戦してみせた。

 

 しかし、結果は残酷、いや当然。勝利したのは、この私。彼等は今、何とか私の追撃を逃れ、この倉庫内の何処かに潜伏している。そして、私はそれを狩っている真っ最中、という訳だ。

 

 こうして耳をすませば……、むう、息づかいひとつ聞こえん! 実に優秀! 素晴らしい!

 

 全ては私の手の内、オール・コントロール! 外の部隊を一掃する仕掛けも見事に働いたようであるし、完璧以外の言葉が見付からん!

 

「まあああだかなあああ!? ふっ、ふっはははは! むあっはははは!」

 

 これはいかん。笑いが止まらん。

 

 実現能力を使ったマン・ハントは散々やってきたが、ここまで愉快なものは初めてだ。ああ、実感する。私はいいままで、己自身を押さえつけてきたのだと。

 

 しかしおっと、その前に、私は浮かれ気分を落ち着かせ、

 

「対戦車特殊弾を購入! そしてえ!」

 

 倉庫の奥に停まっていた多脚戦車を攻撃! 特殊弾が当たった車体上部、おそらくはゲーム製タレットは木っ端微塵!

 

「分かっていますぞ、博士え! あんたはまだ死んじゃいない、そのように撃った! そのあんたが仕掛けてくる前に、手を打たせていただいたあ!」

 

 戦車の傍ら、無言で伏す老人に向かい、敬老精神たっぷりの警告を放つ!

 

 杞憂の種は全て摘み取る。そう、つまらんミスなど絶対にせん。これぞ我がコントロールである。

 

 さあて、隠れんぼの再開だ。どれ、我が可愛い部下をリソースにせんとなあ。

 

 というところで、

 

「蔵瀬、保安正いいいいい!!」

「おおっとお! まだ生きていたのかね!」

 

 人口筋肉の遮蔽物から、新峰隊長が拳銃片手に飛び出してきた! いいぞお、優秀だ! よくぞ私の隙を狙っていた!

 

 そして繰り広げたるは、小銃を用いた超接近戦!

 

「おおおっ!」

「はいはあい! はいはいはあい!」

 

 拳銃を握ったまま、お互い正拳突きで仕掛けに仕掛ける! そして捌く! 仕掛け、そして撃つ!

 

 空手統計学的に有利な間合いを計算し、被弾率を最小限に、攻撃効率を最大限に! そして、正拳突きの延長で銃弾を放つことにより、射撃の精度を必中の域にまで到達させる!

 

 これぞ、現代最強の近接銃拳術! これこそ、私が機動部隊に勝利した理由である!

 

 ぬはははは! 捌く! 殴る! 撃つ!

 

「ぬああああっっ!!」

「そぉい! そいそいそぉい! さぁすが新峰隊長!! 朝稽古の頻度を上げた甲斐があったというものだなあ、んんっ!?」

「黙れ!」

 

 この手応え、素晴らしい! やはり肉には、噛み応えが無くてはならん! というところでえ!

 

「弾丸を購入し、リロードォ!!」

「くおおっ!」

 

 お互い残弾ゼロ! 全くの同じタイミングで弾倉を交換! 再び近接戦を繰り広げる! と見せかけ!

 

「ボディアーマーの隙間に、そぉい!」

「ぐはっ!?」

 

 現代ゲーム技術の結晶たる機動部隊装備とて、完璧ではない。装甲の隙間に銃弾を撃ち込みさえすれば、これこの通り。コオオオントロオオオル!!

 

 新峰隊長の巨体が、膝を突いてくずおれる! そこに、その顔面にい!

 

「そう、らあっ!!」

「ごうっ!?」

 

 体を正面に向けたまま、全体重を乗せるだけのシンプルな蹴り技をお見舞いする!!

 

 爽快! 新峰隊長は吹き飛び、仰向け大の字になってバンザイ・ダウン!!

 

「これぞ日本の伝統芸能、ヤクザ・キックである! むっははははははは!」

 

 攻略とは、相手を知ることから始まる! そして、この私蔵瀬セイジンは保安部の全てを熟知している! これぞ、我がセルフ・コントロールよ!

 

「さあ、新峰隊長。そろそろ終わりにしようじゃないかね」

 

 常人なら即死してもおかしくない一撃を喰らい、苦悶の声ひとつ漏らさない。実に、実に見事である。

 

 私はそんな男を見下ろし、狙いを定め、

 

「さらばだ、新峰君」

「がっ!!」

 

 止めの一発! 実に名残惜しい! 新峰隊長は眉間に銃弾を喰らい、一巻の終わりである!

 

 しかし、

 

「むっ……?」

 

 何故か、新峰隊長の体が消滅せん。これはおかしい、能力の不具合か? 彼は間違いなく非能力者の一般人、現実同様死んで当然のはず。

 

 なのだが、私は思わず笑みをこぼし、

 

「いかんなあ、これは。いかんいかん、これはいかん。ここまでやってもまだ死亡判定にならんとは、全く、君のタフさも相当なものだなあ! おおい、早く死んでクレジットになってくれんかね! この弾だってタダじゃないんだ! 人の命で賄っているんだ、よっ!!!」

「ごっ、ぐっ、があっ!」

 

 続き三発、巨漢の胴に銃弾をブチ込む! おほう、新峰隊長、いい声で鳴くじゃあないかね!

 

「むむっ……?」

 

 しかししかし、まだ死なん? これは一体、どうしたことか?

 

 私が小さな疑問にコントロールしていると、

 

「保、安正……、この……」

「うん?」

 

 おやおや、何だ? 遺言か?

 

 新峰隊長は、正に鬼の形相で顔を上げ、

 

「この、クソ犯罪者が……!」

「誰が何だって?」

「ごふっ!!」

 

 無礼な口を利く元部下に、今度こそ止めの一発! これでもう、何も言えまいて!

 

「ふあっははははは!!」

 

 笑い出す、体を反らし、思い切り!

 

 止まらん……!

 

 武力! 権力! 実現能力!

 

 それが可能であるなら、実現せずにはいられない! それが人間の本能だ! 故に、私は止まらん! 止められる訳が無い!

 

「ふあっははは! むっはははは! ぬわっははははは!」

 

 笑う、笑う! 思いの丈で、そのままに!

 

「全く、なんて口の利き方だ! 私は品行方正、部下からの信頼も厚い、仮想特区保安部の特級保安正だぞ!?」

 

 そうだ、足りなかった! 私にはまだ、勝利が足りていなかったのだ!

 

 ああ、勝利の香り! 血と硝煙の香り! 本物の勝利の香り!

 

 これこそが、本当の私であるのだっ!!

 

「ふあっははは! ぬわっははははは……!」

 

 その時、

 

「へえ」

「誰だッ!?」

 

 突如入った横槍。振り返って誰何すれば、倉庫の入り口に立つ小さな人影。亜麻色の髪に緑色の瞳の、おそらくは少年。

 

 何奴ッ!? 野生の実現能力者かッ!?

 

 その少年は逆光を背負い、人形のような無表情で、

 

「そうは見えませんけどね」

 

 

 

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