OVER REAL DOWNLOAD!! 人類最後の格闘ゲーマー   作:Monjiroh

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043 ツーリング・デンジャーゾーン

 モルタルで均された平坦な地平を、僕らを乗せた馬は走る。

 

 とにかく何もない、遠近感が狂いそうになる風景の先、目的地の輪郭がはっきり見えてきた。白い塀に囲まれ、白い立方体が立ち並ぶ、風情の無い巨大な墓地のような場所。

 

 サーバー施設に偽装した、巨大実験プラント。

 

「どれだけ猶予が残されているか分からん、最短で行くぞ!」

「分かった」

 

 クーリエの操縦で、骸骨馬が正面ゲートの扉に突っ込んでいく。

 

 最短だったら、よし、壊す。

 

 格ゲーは基本人が人を殴るゲームだけど、人以外の物を破壊してきた歴史が、実は数多く存在する。

 

 例えば、ミニゲーム。格ゲー黎明期、まだジャンル的な様式が定まる以前、一人用アーケードモードには、ステージとステージの間にミニゲームが用意されていた。

 

 格ゲーの操作で空手の板割りをしたり、制限時間内にどれだけの樽やドラム缶や積まれたレンガを壊せるかだったり。基本的には何かを壊してスコアを稼ぐのが、ミニゲームの内容だった。

 

 他にも、キャラの攻撃で背景グラフィックが破壊されたり、ステージの床がブッ壊れて舞台が様変わりしたり。格ゲーはその歴史の中で、多様なオブジェクトを破壊してきた実績がある。

 

 だから、行ける。

 

 僕はペイルホースから飛び降り、ダッシュで追い越し、

 

「はああっ!!」

 

 前ダッシュパンチで門を壊し、そのまま敷地内に突入した。

 

 途端、鳴り響く警報。侵入者排除のため、ゲームの武器を装備した最新式の飛行ドローンがわんさか出動してくる。

 

 けど、こっちにはクーリエ、ゴーストがいる。ジャミングが利いているのか、ドローン群はこちらを狙うことなく、破壊されたゲートの上空で、そのまま待機状態になった。

 

「乗れ、シン!」

「っ……!」

 

 僕が追い掛けてきた骸骨馬に飛び乗ると、クーリエはいよいよプラント群、敷地内を突っ切る道に進路を取った。

 

 両側に立方体の建造物が並び、グリッド上に整備された、狭い道。

 

 その途中、

 

「未覚醒の姉妹達が襲われる事態は避けたい。警備の数をある程度減らしたいのだが、やれるか?」

「やるよ」

「よし、ジャミングを解除する!」

 

 途端、待機していた警備用ドローン群が僕らを見付け、追ってきた。当然始まる集中攻撃。

 

 撃ち込まれる実弾にビームにレーザーにミイサルに、雨あられのように降り注ぐ攻撃を、骸骨馬がすいすい躱して走っていく。

 

 僕は馬の背骨に立って後ろを向き、

 

「はっ!」

 

 近寄ってきたドローンをジャンプ強キックで破壊する。

 

 僕達のゲームには、空中の敵を地上から迎撃する飛び道具がない。けど、相手が勝手に寄ってくるなら、話は別だ。

 

「はっ! はっ!」

 

 僕はアクションゲーのバッタ戦法よろしく、ジャンプで一体一体ドローンを破壊し、その数を減らしていく。

 

「はっ! はっ!」

 

 のだけど、正直面倒だ。だから、こうする。

 

「はっ!」

 

 僕はミサイルを装備したドローンを見付け、ジャンプでその射線に入り、

 

「っ……!!」

 

 ミサイルをわざと喰らい、僕もろとも他のドローンを破壊させた。同士討ちだ。

 

「ぐっ!」

 

 当然、僕はダメージを受け、地面に転がりダウンする。けど、ドローンの群れを半分ほど巻き込み、破壊するのに成功した。削れたライフは四分の一、これなら安い。

 

 僕がダウン即復帰から即ダッシュしていると、スピードを緩めたクーリエが、

 

「シン! 無茶をするな!」

「いや、するよ」

 

 もう少し、あと少しで、あの日の続きが終わるんだ。無茶くらい、いくらでもやってやる。

 

 と、進行方向頭上に、施設同士を繋ぐ大きなパイプを発見。僕はそのパイプに向かってダッシュジャンプし、

 

「はああっ!!」

 

 ジャンプ強キックで盛大に破壊。

 

 空中に散乱したパイプの部品が、僕らを追ってきたドローンに次々と直撃し、連鎖的大爆発を起こしていく。

 

 よし、これで数は減らせた。ドローンの追撃は、ひとまず阻止だ。

 

 着地し、僕が再び骸骨馬の背に戻ると、

 

「ジャミングを再開する!」

 

 クーリエがそう言った瞬間、骸骨馬が開けた場所に出た。

 

 海に面した大広場。その地面にぽつぽつ灯る、何かの光。航空灯火だ。

 

 青や緑で色分けされた灯りが、滑走路らしき形を描き――

 

「シン、あれだ!」

 

 白の進入灯で引かれたラインに、小型飛行機めいた真っ黒な輸送ドローンが移動してきた。

 

 その輸送ドローンが、僕らの目の前、離陸のための滑走を開始し、

 

「クーリエ、行ける! あれはまだ、そんなに速度を出していない!」

「ああ、間に合わせる!」

 

 クーリエが骸骨馬のスピードを上げる。紫色の炎をたなびかせたペイルホースが、真っ黒な機体に追い付き、並走し、そして、

 

「封印装置は対能力者用の堅牢な防御性能を備えている! 多少の無茶はやって構わん!」

「分かった!」

「行け、シン! 頼む!」

「せっ!」

 

 僕は骸骨馬の背から黒いドローンに向け、ショートダッシュからの大ジャンプ。

 

「はああっ!!」

 

 空中で拳を握り、振りかぶる。飛び付く、とにかくぶっ壊す。

 

 ドローンの胴体が目の前に迫った、拳が命中する、その直前、

 

「っっ……!?」

 

 僕の目の前で、輸送ドローンが爆散した。

 

 

 

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