OVER REAL DOWNLOAD!! 人類最後の格闘ゲーマー   作:Monjiroh

48 / 48
048 ハローどうも、僕はここ

 あれから、

 

 クーリエを装置から解放してすぐ、僕達は駆け付けた機動部隊の人達に保護された。

 

 護送される装甲車の中で、僕は事の顛末を、ゴーストに関わることを除き、全て話した。クーリエのことは犯罪実験の被害者として、保安部が関係するしかるべき医療施設で、責任を持って保護してくれるそうだ。

 

 明日、改めて聴取に応じると約束し、僕は東部学園地区の外れで降ろしてもらった。

 

 何故か。僕にはまだ、やらなきゃならないことがあるからだ。

 

 

 

 

 

 

「失礼します」

 

 東雲第三高等学校、その職員室。

 

 扉を開け、僕が入室すると、年齢不詳のあの先生がすっ飛んできた。

 

「ああああ一会君! 散々連絡したのにって、え、どうしたんですか、その怪我は!?」

 

 サイドテールにしたピンクブロンドに紫色の瞳。白いブラウスと紺のタイトスカートという服装の、見た目中学生な成人教師。

 

 僕の担任、湯ヶ村ユカリ先生だ。

 

「ええと、その、走行中の車から落ちまして」

「何ですかそれは!? また事故ですか!?」

 

 全身擦り傷痣だらけの僕のことは、一先ず脇に置いてもらい、

 

「考えがまとまったので、進路の話をしに来ました」

「え、進路!? わわ分かりました、ですよね進路大事ですもんね!」

 

 あの日と同じように湯ヶ村先生の机に導かれ、椅子に座る。そして、ここに来るまでの間、装甲車の中で作成した書類を提出した。

 

 ゲーム活動の停止。そして、今までの活動内容、その全ての記録の抹消。大学進学に専念するための、特別カリキュラムへの登録。

 

 その手続きの最後、空中に展開させた僕のプロフィールを前に、先生は、

 

「でも、一会君、本当にいいんですか?」

「はい、いいんです」

 

 僕は先生の確認に頷き、推しゲー欄の情報を、完全に削除した。

 

 これでいい。

 

 もし、僕が活動を続けて、それが上手くいったら。もし、格ゲーの存在が今の人に知れ渡ったら。超能力になった格ゲーを利用しようと、目を付ける人間が現れるかもしれない。

 

 それだけは、絶対に避けたいから。

 

 僕が叫ぶのをやめたことで、この世界から格ゲーが消え去ることになっても、構わない。世界中が格ゲーを忘れても、僕が忘れなければ、それでいい。

 

 僕が全ての処理を終え、プロフィール画面を閉じると、

 

「今更ですけど、すごく勿体ないです。一会君、本当に、本当にすごく頑張っていたのに……」

「活動にはしないだけです。好きは一生なので、ゲームはずっと続けます」

 

 そう、やめない。

 

 格ゲーは僕の生活で、人生の一部。だから一人でも、ずっと続ける。

 

 だけど、もし、僕のこれからの中で、本当に格ゲーを好きになってくれる人に出会えたら。その時は、喜んで紹介したいと思う。僕が関わった、『NO TITLE』っていう2D格ゲーのことを。

 

 ……って、あれ?

 

「先生、僕の活動の内容、知ってたんですか?」

「勿論です。実は先生、一会君の活動にかなり興味があったのですよ」

「え」

 

 寝耳に水すぎる。

 

「先生って、世界史担当ですよね」

「ええ。でも専門は、ゲーム史学なんですよ」

「でも、僕の配信にはアクセスしてませんでしたよね」

「はい、サムネイルだけ見て、スルーしてました。だって一会君のゲームって、見た目がよく分からないじゃないですか。だから、この子はシステム方面を勉強してるのかなー、と」

「あ、あー……?」

「先生の専門はですね、史学は史学でもゲーム美術史なんですよ。だから、見た目が無いのは、ちょっと……」

「あ、あー……」

 

 これはニアミス、なのだろうか。

 

 ほんのちょっと興味から外れただけで、こういうすれ違いが起きてしまう。人の気付きに気付くのは、本当に難しい。

 

 けど、父さんの言ったとおりだ。

 

 研究評価は専門家の仕事。もしかしたら今までも、その手の人は僕の活動に目を留めてくれてたのかもしれない。

 

「この際ですし、どうでしょう一会君、ゲーム史学を専攻してみては。実は先生、その分野では結構すごい人なのですよ。それでもって、そろそろ弟子が欲しいなー、なんて」

 

 きらきら笑顔で勧誘する先生に、僕は、

 

「これから保安部に行かなきゃなので、戻ったら、お願いします」

「保安部ですか?」

「はい。先日の事故の件で、まだ話さないといけないことがあるので」

 

 用事を終え、立ち上がった僕に、先生は、

 

「一会君、何だか色々あって心配してたのですが、もう大丈夫そうですね」

「はい、大丈夫です。失礼しました」

 

 先生にお辞儀をし、僕は職員室を出た。

 

 昇降口へと続く、リノニウムの廊下。部活か、ゲー活か、休日の学校の人の声を遠く耳にしながら、前を向き、歩く。

 

 ごめんなさい、先生。

 

 戻ったら、さっきはそう言ったけど、多分それは叶わない。

 

 あの日を境に、僕の現実は変わった。ゲームと現実、その境界が無くなってしまった。その変わり果てた現実に適応するために、僕も変わってしまった。

 

 僕はもう、人殺しだから。

 

 人を殺したことに、後悔は無い。でも、この世界の、人の社会のルールでの責は、きちんと負わなければいけない。

 

 だから、僕がこの先どうなるかなんて、分からない。先生と同じ何も知らない人の日常へは、帰れない。

 

 そして、それでいいと、今は思う。

 

 僕の今までは、勝負のステージに上がることすら許されない、そんな人生だった。

 

 でも、分かった。証明された。

 

 僕の九年間は、無駄じゃなかった。孤独に耐えた時間は、孤独に挫けそうな誰かの心を理解できる、力になった。ゲームが、格ゲーがそれを教えてくれた。

 

 それだけで、僕はもう、充分だ。

 

 けれど、もし、叶うなら。

 

 大きな窓から差し込む、眩しい朝陽。ちらちらと埃の舞う光の中、痛む体を引きずり、歩く。

 

 

 

 孤独に寄り添い、夢を支える。

 

 

 

 そんな人間に、僕はなりたい。

 

 

 

 

 

 




どもー、これにて第一章、終了です。

しばらくは連載用の繋ぎに用意した文面の削除や、誤字脱字のチェックをしていきたいと思います。第二章から先はしばらくお待ちくださいませー。



作者のモチベに繋がりますので、感想、推薦、評価など、是非是非よろしくお願いします。
それではどもー。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。