OVER REAL DOWNLOAD!! 人類最後の格闘ゲーマー 作:Monjiroh
あれから、
クーリエを装置から解放してすぐ、僕達は駆け付けた機動部隊の人達に保護された。
護送される装甲車の中で、僕は事の顛末を、ゴーストに関わることを除き、全て話した。クーリエのことは犯罪実験の被害者として、保安部が関係するしかるべき医療施設で、責任を持って保護してくれるそうだ。
明日、改めて聴取に応じると約束し、僕は東部学園地区の外れで降ろしてもらった。
何故か。僕にはまだ、やらなきゃならないことがあるからだ。
「失礼します」
東雲第三高等学校、その職員室。
扉を開け、僕が入室すると、年齢不詳のあの先生がすっ飛んできた。
「ああああ一会君! 散々連絡したのにって、え、どうしたんですか、その怪我は!?」
サイドテールにしたピンクブロンドに紫色の瞳。白いブラウスと紺のタイトスカートという服装の、見た目中学生な成人教師。
僕の担任、湯ヶ村ユカリ先生だ。
「ええと、その、走行中の車から落ちまして」
「何ですかそれは!? また事故ですか!?」
全身擦り傷痣だらけの僕のことは、一先ず脇に置いてもらい、
「考えがまとまったので、進路の話をしに来ました」
「え、進路!? わわ分かりました、ですよね進路大事ですもんね!」
あの日と同じように湯ヶ村先生の机に導かれ、椅子に座る。そして、ここに来るまでの間、装甲車の中で作成した書類を提出した。
ゲーム活動の停止。そして、今までの活動内容、その全ての記録の抹消。大学進学に専念するための、特別カリキュラムへの登録。
その手続きの最後、空中に展開させた僕のプロフィールを前に、先生は、
「でも、一会君、本当にいいんですか?」
「はい、いいんです」
僕は先生の確認に頷き、推しゲー欄の情報を、完全に削除した。
これでいい。
もし、僕が活動を続けて、それが上手くいったら。もし、格ゲーの存在が今の人に知れ渡ったら。超能力になった格ゲーを利用しようと、目を付ける人間が現れるかもしれない。
それだけは、絶対に避けたいから。
僕が叫ぶのをやめたことで、この世界から格ゲーが消え去ることになっても、構わない。世界中が格ゲーを忘れても、僕が忘れなければ、それでいい。
僕が全ての処理を終え、プロフィール画面を閉じると、
「今更ですけど、すごく勿体ないです。一会君、本当に、本当にすごく頑張っていたのに……」
「活動にはしないだけです。好きは一生なので、ゲームはずっと続けます」
そう、やめない。
格ゲーは僕の生活で、人生の一部。だから一人でも、ずっと続ける。
だけど、もし、僕のこれからの中で、本当に格ゲーを好きになってくれる人に出会えたら。その時は、喜んで紹介したいと思う。僕が関わった、『NO TITLE』っていう2D格ゲーのことを。
……って、あれ?
「先生、僕の活動の内容、知ってたんですか?」
「勿論です。実は先生、一会君の活動にかなり興味があったのですよ」
「え」
寝耳に水すぎる。
「先生って、世界史担当ですよね」
「ええ。でも専門は、ゲーム史学なんですよ」
「でも、僕の配信にはアクセスしてませんでしたよね」
「はい、サムネイルだけ見て、スルーしてました。だって一会君のゲームって、見た目がよく分からないじゃないですか。だから、この子はシステム方面を勉強してるのかなー、と」
「あ、あー……?」
「先生の専門はですね、史学は史学でもゲーム美術史なんですよ。だから、見た目が無いのは、ちょっと……」
「あ、あー……」
これはニアミス、なのだろうか。
ほんのちょっと興味から外れただけで、こういうすれ違いが起きてしまう。人の気付きに気付くのは、本当に難しい。
けど、父さんの言ったとおりだ。
研究評価は専門家の仕事。もしかしたら今までも、その手の人は僕の活動に目を留めてくれてたのかもしれない。
「この際ですし、どうでしょう一会君、ゲーム史学を専攻してみては。実は先生、その分野では結構すごい人なのですよ。それでもって、そろそろ弟子が欲しいなー、なんて」
きらきら笑顔で勧誘する先生に、僕は、
「これから保安部に行かなきゃなので、戻ったら、お願いします」
「保安部ですか?」
「はい。先日の事故の件で、まだ話さないといけないことがあるので」
用事を終え、立ち上がった僕に、先生は、
「一会君、何だか色々あって心配してたのですが、もう大丈夫そうですね」
「はい、大丈夫です。失礼しました」
先生にお辞儀をし、僕は職員室を出た。
昇降口へと続く、リノニウムの廊下。部活か、ゲー活か、休日の学校の人の声を遠く耳にしながら、前を向き、歩く。
ごめんなさい、先生。
戻ったら、さっきはそう言ったけど、多分それは叶わない。
あの日を境に、僕の現実は変わった。ゲームと現実、その境界が無くなってしまった。その変わり果てた現実に適応するために、僕も変わってしまった。
僕はもう、人殺しだから。
人を殺したことに、後悔は無い。でも、この世界の、人の社会のルールでの責は、きちんと負わなければいけない。
だから、僕がこの先どうなるかなんて、分からない。先生と同じ何も知らない人の日常へは、帰れない。
そして、それでいいと、今は思う。
僕の今までは、勝負のステージに上がることすら許されない、そんな人生だった。
でも、分かった。証明された。
僕の九年間は、無駄じゃなかった。孤独に耐えた時間は、孤独に挫けそうな誰かの心を理解できる、力になった。ゲームが、格ゲーがそれを教えてくれた。
それだけで、僕はもう、充分だ。
けれど、もし、叶うなら。
大きな窓から差し込む、眩しい朝陽。ちらちらと埃の舞う光の中、痛む体を引きずり、歩く。
孤独に寄り添い、夢を支える。
そんな人間に、僕はなりたい。
どもー、これにて第一章、終了です。
しばらくは連載用の繋ぎに用意した文面の削除や、誤字脱字のチェックをしていきたいと思います。第二章から先はしばらくお待ちくださいませー。
作者のモチベに繋がりますので、感想、推薦、評価など、是非是非よろしくお願いします。
それではどもー。