円卓杯   作:AF

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追跡者①

 

 

 

 

 巨大な石碑の眼前に、男は立っていた。

 冷徹な暗殺者という顔を持ちながら、内側では誰よりも戦いの中に享楽を求めるような男だ。

 

 だが男は今、その軛から己を解き放っていた。使命…否、指令の元でしか振るわないその実力は今、標的とは別の存在に向けられていた。

 

 

 

 

 

「もう一度と見られるとは…思いませなんだ」

 

 人形は言う。その隣では、二人の戦士が戦いの行く末を見守っていた。

 

「転送の概念は聞いた事があります。が、ここまで大規模なものだとは想像もつきませんでしたね」

 

 学者はそう呟く。

 

 狭間杯。

 狭間の地に集いうる実力者達がその力を競い、また高め合う戦いの場。以前、円卓一の怪力である無頼漢がその狭間杯の勝者となったものの、狭間杯を開催していた一種の転生門である石碑は、光ることはなかった。

 

 だが、学者、葬儀屋らが大空洞の調査より戻ったあと、石碑は再び光を発し始めた。第二次となる、狭間杯の幕開けなのだろう。

 

「錚々たる面子…というやつですな」

 

 人形は、円形の闘技場の中心部にずらりと並ぶ円卓の戦士たちを一望した。

 

 巫女にして優れた技量と知恵の持ち手。

 暗殺術を極めた弓使い。

 

 死霊を巧みに操る人形。

 類い稀なる魔術の使い手。

 

 鉄壁の守りを誇る鳥人の騎士。

 力に関して右に並ぶ者はない近海の覇者。

 

 最も優れた刀の使い手にして、坩堝の獣。

 

 …そして、一族の仇を望む剣士。

 

 その全員が、円卓に招かれたる優れた戦士であり……かの地を染める()を終わらせるに値する実力を持つとされた者達。

 

 本来であれば、このように戯れていることなどないだろう。しかし、不測の事態が発生した。詳細は分からないが、幾人かの円卓の戦士が瓦礫の王なる存在と交戦した後、夜が発生しなくなってしまったのだ。

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 何らかの異常事態であると、巫女は言った。

 それに対し、酒でもやりながら気楽に待とうや、と無頼漢は豪快に笑う。

 

 巫女は夜を終わらせるために戦士達を円卓へと呼んだ。対して、それに応じた無頼漢は強者と戦う機会の為だけに円卓へと集まった。その認識の差が、こうした意識の差をも生んでいる。

 

 そうした時、気晴らしにと散歩でもしていた隠者が、それを見かけた。

 

「石碑が、光っているの」

 

 それにいち早く駆けつけたのは、鉄の目だった。次いで追跡者や復讐者がそこに集まると、続々と集った面々は、円卓の戦士全員であった。

 

「これが狭間杯の開催を知らせたという石碑ですか」

 

 狭間杯が最後に開かれた時、まだ円卓には戻っていなかった学者は言う。鉄の目がそれに頷くと、人形は石碑に近付き、その内容を読み取った。

 

「ム…どうやら、この円卓の皆様が、招かれているようです」

 

 それは、鉄の目を昂らせる一言だった。

 

「…俺達全員が、一堂に会して戦うということか?」

 

「そういう事ですな。何が目的の杯であるかはわかりませんが……」

 

 鉄の目の言葉に、人形は返した。

 

「この停滞した状況を動かすきっかけにはなるだろう」

 

 守護者はそう呟く。

 …本来、夜の王たちの影響の色濃く出る今の状況で、夜が訪れない事などない。円卓の戦士たちは、夜の気配が色濃くなった時、招かれるようにしてかの地へと飛び立つのだから。

 それが無いことから推察されるのは、ただ一つ。

 

 王が倒され、夜が終わった。

 

 だが、夜の王を全て倒していない今、それは有り得ない話だ。夜を討ち滅ぼす戦いも、夜の気配が表れないままではできる事はない。ならば、こちらで起こった異常に関しては打てる手は打っておくべきだ、というのが守護者の考えだろう。

 

「…得体の知れないものだが、俺は歓迎だ」

 

 鉄の目が言う。

 

「次は仲間同士でやり合うってんだろ? 腕試しにゃ丁度良いじゃあねえか。俺ぁやるぜ」

 

 無頼漢がそれに同意した。

 円卓の戦士たちは皆、死に生きる者だ。何らかの因果により、本来あるべき生命の形を歪められた存在である。故に死なず、敗れることもない。

 あるとするなら、それは彼らが心折れた時だけであろう。その末路は各々がかの地で見ていた。

 

「……」

 

「お前も、来るだろう? 追跡者」

 

 鉄の目にそう言われた、物陰で愛用の剣を研ぎ続けていた男が、僅かに逡巡する。

 彼にとって刃を振るう理由は復讐のためだけであり、志を同じくする仲間にそれを向けたいとは思っていなかった。

 

 だが、鉄の目の熱意に根負けする形で、彼もまた戦いに加わる事と相成る。

 

 

 

 ・・・

 

 

 

 かくして、戦士が戦場に立った。

 

 狭間杯は、無頼漢と対戦相手による一対一の勝ち抜き戦だったが、今次の───言うなれば「円卓杯」だろうか───円卓杯では、どうやら円卓に集う夜渡り達が二個の団となってぶつかり合う形式を取るようだ。

 

 召喚されたと思えば、ふたつの組に別れて互いに顔を見合せているのが、その証左だろう。

 

「ふむ…」

 

 守護者が目を細める。

 周辺には、いくつかの武器が無造作に転がっている。その中には、彼の得意とする斧槍も見られた。

 

 それだけではない。

 短剣、大剣、特大武器、長弓に杖。それら全てが、まるでこの場に集まった戦士達のために何者かによって誂えられたかのようだ。

 

  それらを拾って戦えということなのだろう。

 確かに、各々が得意とする武器は、それぞれが円卓に置いてきてしまっている。

 

 それらは見たところ、特別な力もない、大したことのないようなものばかりだが、扱いに熟れた武器というものはそれだけで心強いものとなる。

 

「こいつらの中からひとつ選べって事かね」

 

 無頼漢がいくつか見繕ったあと、それらのうちのひとつから、適当な武器を拾い上げた。

 

 『闘士の大斧』。無骨で巨大な斧であるが、故に重く、扱える者は限られる。それを無頼漢は片手でひょいと軽く持ち上げると、試しに二度三度と振るって見せた。

 

「リムベルドで拾えるモンと、そんなに変わらねえ」

 

 それを聞き、各々が自らの得意とする得物を拾う。復讐者はいくつかの聖印を見繕い、執行者は一振りの刀と鞘を太刀紐に結ぶ。

 

 

 

 

 ──そうして、それぞれが武装を完了した時だ。

 

 追跡者の眼前を、鋭い一矢が通り過ぎた。

 いや、それは追跡者が避ける動作をせねば直撃は免れないような軌道を取っていた。放ったのは鉄の目。追跡者とは今、対戦相手の間柄である。

 

「避けるか」

 

「…何の真似だ」

 

「ここに来た以上、そして対面に立っている以上、やる事はひとつだろう。あんたも武器を抜くがいいさ」

 

 追跡者は、鉄の目の言葉に呼応するように大剣を掴み取った。

 

 君主軍の大剣、オーソドックスな両手剣であり、控えめな金細工がかつての勢力の旺盛さを窺わせる。それに、以前の使い手はよく整備していたのだろう、使い心地も悪くない。

 

「…不本意だけど、状況が状況ね。覚悟はできているわ」

 

 追跡者の隣に立ち、そう言うのは巫女──いや、外套を取り去り、仕事着を顕にしたその姿は、さながら義賊(レディ)か。

 レディは巫女という立場ながら、夜渡りとしても卓越した足捌きを武器とする優れた戦士である。

 

「我らは戦って死ぬわけではない。仲間内ならば尚更、修練のつもりで望むのも良いだろう」

 

「甘いぞ鳥騎士。私もお前達も夜の王を倒すための存在。同じヒト相手に負けるようでは、夜なぞ到底、討滅できん」

 

 守護者、復讐者が、その脇に並び立つ。

 

 

 鳥人騎士たる守護者は、大盾による防御術と斧槍術を学び、文字通り他者の守護と、そこから繋げる反撃を戦法の主軸に据えている。また、風を巻き起こす力により、前線の把握を得意とする生え抜きの騎士だ。

 

 復讐者は、信仰心の高さによる祈祷の威力が高く、それ以上に三人の霊体を使役する、独自の戦法を心得ている。そして何よりも一時己の内に秘めた怨念を解放し、仲間を僅かな間、不死と成す能力も持ち合わせている。

 

 追跡者は、どのような得物でも扱ってみせる、一流の戦士である。第六感にも優れ、命の危険を察知することで危地を乗り越える強かさを持ち合わせる。なにより、その腕に嵌められた絡繰は、その美しい意匠と共に滅んだ一族の象徴とする“楔”である。

 

 レディは、短剣による至近距離での攻防に長け、また魔術の適性も持つ。付近の敵が負った手傷をもう一度追体験させる妙技と共に、味方全体を敵の目から隠す独自の術は、彼女を決して捕らわれない義賊として大成させたほどの力である。

 

 

 

 

 

「───向こうはやる気になってくれたようだな」

 

「俺は元からそのつもりだぜ。大剣の兄ちゃんとは、一回やり合ってみてえとは思ってたんだ」

 

 鉄の目の呟きに、両拳を打ち合わせた無頼漢が笑いながら言う。暗殺者と、海賊。

 

 傍から聞けば、どうにも巡り合わせの悪いように思える両者であるが、来る者拒まずの性格である無頼漢、その強さに惚れ込む鉄の目と、気の合う仲間であるらしく、戦場での動きも洗練されている。

 

「………」

「わたしも、がんばる」

 

 執行者が刀黙々とを抜き、ゆっくりと腰を落として構え、その隣で隠者が杖を振るって輝く剣の円陣を呼び起こし、戦いに備えた。

 

 

 

 執行者は、東洋に用いられる刀の扱いに秀で、夜渡りの扱う刀術とは違う独自の術を会得している。また、腰に提げた妖刀は決して折れることのない刃であるといい、そして、執行者は原初の生命に近しい諸相を宿しており、その似姿は獣である。

 

 隠者は、その出自を魔術の根深い、深き森だといい、杖による魔術、祈祷の双方に長けており、特に隠者が操る独自の混成魔法は、戦局を打破しうる破格の火力を秘めている。また得意とする血の唄は、魂に出血を促し、周囲の存在の血を瀉血させ、また攻撃により吸魂するという。

 

 無頼漢は、比肩する者のないほどの怪力が最大の武器である。また、略奪と飢餓が共にあった海の男らしく、根性があり、攻撃を耐え、その場で即座に反撃に転じる、円卓の戦士の誰も持たない豪快さを持つ。大地に楔を打ち込み、巨大な墓石を打ち立てれば、その付近の友軍を振るい立たせるそう。

 

 鉄の目は、とある暗殺者集団の中でも腕利きの殺し屋であり、それぞれ得意とする得物が異なる中、弓による確実な死を仕事の上で武器としてきた。また、回避を兼ねた俊敏な切りつけは、狙った的を逃さないマークでもあるようだ。そして背に負う長弓は、何者をも穿つ一矢であり、旋風を巻き起こし全てを薙ぎ払う切り札でもある。

 

 

「最初の一撃はよ、ありゃあ殺すつもりだったのか?」

 

 無頼漢が尋ねる。鉄の目は僅かに頷いた。

 

「ああ。避けられたがな」

 

 鉄の目は、円卓では並ぶ者のいない弓の名手。遠距離で、尚且つ相手が不規則に動いているのならいざ知らず、近距離で、油断もしていただろう相手に不意の一撃を避けられたとあっては、滾ってもくる。

 

「そいつぁ面白え。早いモン勝ちだな!」

 

 無頼漢がその武器を肩に担ぎ、上半身を前傾させて素早く駆け出した。見た目からは想像もつかぬ瞬足である。

 戦闘が始まる。

 

 

 

「…来るな」

 

「戦術は?」

 

「そんなものが必要か?」

 

「危なくなったら私を頼れ。鉄の目は抑えておこう」

 

 追跡者が戦いの始まりを知らせ、レディが全員にどう戦うかの希望を尋ねる。

 

 復讐者はその戦い方から、孤立して霊体と協同するので戦術を必要とせず、ぶっきらぼうに返す。守護者は、己にできることを弁え、そして苦手な事は学び、仲間に頼る性格だ。返答にもそれが垣間見える。

 

「始めるぞ。手加減はしなくていい」

 

 追跡者がそう言うと、各々が狙った相手に向けて駆ける。復讐者のみ、霊体を召喚して祈祷を生じる構えを見せた。

 

 刃と刃がぶつかり合う。互いに近距離での戦いを得意とする者同士。初めにぶつかったのは───。

 

 

 

 

 

「おおっ…力強いな、兄ちゃん!」

 

「くっ……ぐ……!」

 

 無頼漢と、そして追跡者。

 無頼漢の膂力に対し、追跡者は真っ向から武器をぶつけ、鍔迫り合いの形に持ち込ませた。

 

 兜の下で苦い表情を浮かべる追跡者に対し、無頼漢は予想外の展開に愉快痛快と言わんばかりの顔だ。

 

 ただし、その力は間違いなく加減などしていない。少しでも力加減を誤れば、大斧に衣服や胴当てごと切り裂かれるだろう。

 

「…っ…!」

 

 鍔迫り合いをわざと止め、武器の重みをこちらに預ける形だった無頼漢のバランスを崩させることを目論む。

 しかし、無頼漢はそれを読んでいたか、力が緩まったことを感じ取った瞬間に武器を持ち上げ、その斧をもう一度叩きつけようとする。

 

「おぉ…らあっ!」

 

 咄嗟に回避し、横方向に体を投げ出した。転がった瞬間に耳に響くのは、闘技場の石畳を砕くような音だ。

 地面に穴が空くような威力の振り下ろし。直撃すれば、生身であれば即死は免れないだろう。

 

 それを横目に、追跡者は起きがけに大剣を横薙ぎで振るう。

 力の限り、遠心力を込めて振るう必死の一撃だ。大剣の重さが勢いを乗せて鋭く身体に向かっていく。当たれば間違いなく深手を追わせるものだ。

 

「──ふんッ!」

 

 だが無頼漢は腰を落として踏み込み、大剣を───生身で受け止める。刃が肉体に喰い込んではいるし、出血も見られる。だが、刃全体が肉を割くほどのものではない。せいぜい、片刃が僅かに皮膚の下の肉を切りつけた程度だ。

 

 それが無頼漢の戦い方だと分かってはいたものの、渾身の一撃を防具も着込まぬ生身に受け止められたというのは、目の前で見ると、より信じ難い光景 である。

 

「──らぁッ!!」

 

 そして、次が来る。

 咄嗟に盾で受けることを選び、左手の金属盾……カイトシールドを向けた。

 

 受けたそれは、ただの頭突き。威力としては、重みの増した拳というぐらいのものだろうし、追跡者の認識としてもその程度のものである。

 …盾から、かなり低い金属音が響かなければ、その認識は揺るがなかったはずである。

 

 なんと、重い一撃か。

 

「…チィッ…」

 

 小さく舌打ちをし、後ろに飛び退く。盾は僅かに凹んでおり、その威力の程が伺い知れる。

 

「強えなぁ、兄ちゃん! まだまだ行くぞ!」

 

 大斧を引き摺りながら突進してくる無頼漢に、追跡者は大剣を構え直し、備えた。そして、それを受ける直前───

 

 深く腰を落とし、姿勢を低く、大剣を盾とするように半身を斜めに向け、真っ向から攻撃を受けた。

 

 激痛は、反撃の意志を削ごうと追跡者を苦しめる。

 

 …だが、これまでの戦い、弱り切っている肉体に鞭を打ち、執念と怨みだけで動かしてきた男にとって、今更のその痛み程度は、問題にはならなかった。

 

「…おぉッ!!」

 

 踏み込み、そして切り上げる。

 無骨で、兎角に実戦性のみを追求した、シンプルな戦技。しかしそれは敵の攻撃を誘い、耐え、そして反撃の一発を見舞う。

 

 鎧など容易に砕く切り上げは、追跡者の膂力と、何より無頼漢にも劣らない力押しによってその威力を高められており、大男、かの無頼漢をすらかち上げた。

 

 

 …数瞬、空を舞い、無頼漢が大地に叩きつけられるも、すぐに起き上がろうとする。

 

 だが、すぐには動けない。

 死に生きる者とて、肉体は人間。いくら人間離れしようが、その枠組みから離れ切る事はなく、故に人にとっての弱点は彼らにとっても弱点となる。

 

 今回の場合は、頭を強打した事による、一瞬の混乱である。

 

 しかし、無頼漢は強い。一時の麻痺などすぐに立ち直り、そして反撃に転じるだろう。

 

 それを許す追跡者ではない。執拗に、執念深く対手を追い詰める男にとって、戦場での油断は無い。

 

 一歩下がり、大剣を後ろ手に構え、そのまま剣の重さと腕力に任せて勢いよく叩きつけ───。

 

 

 

 

 

 

 ───コォン。

 

 軽い音。だが、それは致命の一撃足り得る。

 すぐに身を翻し、後方へのローリングから立ち直ると、盾を構え始めた。

 

(気付かなかった。勘が鈍ったか?)

 

 間違いなく、何らかの投射物が兜を鳴らす音だ。そして今この戦場において、物理的な遠距離での攻撃手段を持ち合わせているのは一人しかいない。

 

 追跡者は、()による追撃を嫌い、左腕のクローを射出し、近場の地面に撃ち込む。そのまま距離を離すと、無頼漢の頭を拳で叩く鉄の目の姿が目に映った。

 

 

「しっかりしろ。アンタはそんな男じゃないだろ」

 

「おぉ…っと、悪ぃな、弓の兄ちゃん」

 

 これで、二対一……。

 

 兜に指を這わせる。

 

 …見つけた。

 こめかみの部分に相当する場所が、矢を逸らした際に穿たれていた。これを奴にとって適正な角度でまともに受けていれば、今頃はこうして立てていなかったはずだ。

 

 

「すまない、一瞬の隙を突かれた」

 

 追跡者の傍にも、守護者が駆け寄ってくる。

 盾には何本も矢尻が突き立てられ、折れ、弾けた形跡が見られる。相応にやり合ったようだ。

 よく見れば脇腹のあたり、鎧下に血が滲んでいる。隙というのは、鎧の守れない箇所を突かれたという事だろう。

 

「流石に、暗殺を仕事としていただけある」

 

「全くだ。あの男が味方であってよかった」

 

「…今は敵だがな」

 

 軽く言葉を投げ合い、視線は彼らへと向けたまま、何故か茹でたての拾った蟹肉を齧る。

 向こうも聖杯瓶の中身を飲み下し、何かしらの肉を齧ると、互いが武器を向けた。

 

「どっちをやる」

 

「弓を頼んでよいか」

 

「なら大斧は任せるぞ」

 

 短く作戦を練ったあと、巻き取り、再装填の完了したクローを再度、今度は鉄の目へ向けて放った。

 

 

 

 …円卓杯は、始まったばかりだ。

 

 

 

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