無自覚にヒロインを沼らせるソシャゲの凡人(自認)   作:ヘルダイバー睦月

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俺の武器は攻撃力120ぐらいのメダルしかない

「まぁああああ!! またジャックがハチに御本読んでもらってるわ!!」

「ハハハ、あの歳で本が読めるわけ無いじゃないか。めくって遊んでるだけだよ。ハチだって文字が読めるわけ無いし」

「でも可愛いわよ……?」

「可愛いね……」

 

 親バカがいる。俺の両親だ。

 俺は毎日のようにハチを小脇に抱えこんで、錬金術の本を読んでもらっていた。

 これがまたなかなか難解で、読んでもらっても理解がしにくい。

 

『錬金術には秘蹟が必要である』

 

 だからその秘蹟ってなんだよ。

 

『秘蹟にはブレイク、アサルト、チャージの三種類があり……』

 

 なんだかソシャゲのシステムっぽいな?

 聞き覚えがあるような気がするぞ。

 ていうか、まず秘蹟の出し方を教えてくれよ。

 

『秘蹟を得るにはまず精力を認識する必要があり……』

 

 用語で用語を解説するなぁああああ!!! 図解されているが、なんか魂とか精力とか生命力とか色々描かれててよくわからん!!

 なんかチャクラとかオーラとかと同じ感じだろ!? 漫画で読んだよ!

 

『心身を統一し、体内で練り込むと描いてあるな』

 

 なんだかうんこみたいだな……。

 まぁいいや、とにかく心身を統一すればいいんだろ?

 統一、統一………ぐぅ………。

 

「あ、見て! ジャックが寝てしまったわ!!」

「あらら、ベッドに連れて行こう」

 

 少なくともハイハイ前後のガキにはかなり重労働のようだ。

 すぐ体力がなくなって寝てしまうのである。

 

 そんなこんなで俺は毎日少しずつ錬金術を読み解いていった。

 やがてハイハイではなく、歩けるようになるとハチを連れて散歩に行くようになった。

 両親もハチは賢いと思っているのか、この辺りは治安がよく車の通りも少ないからか外出を許してくれてよかった。まぁ多分最初はこっそりついてきてたんだろうが。

 

「錬金術とは関係なく、体力は何より大事だからな」

『うむ、わらわをめちゃくちゃ散歩させるといい』

 

 錬金術どうのこうのじゃなく、体力があったほうが人生というのはよりよく回る。

 ガキが筋トレなんかしても仕方ないので、とにかく散歩である。

 

 ついでに情報収集……っと。

 この辺りはおそらく海外の住宅街であることが判明した。

 

 どこの国かはよーわからん。アルファベットを使ってるが、英語って感じでもちょっとないんだよな。似て非なる異世界なのかもしれないし、俺の知らない国が生えた並行世界って可能性もある。

 

 ハチに聞くと、ドレンティーナという小国らしい。

 冬はめちゃくちゃ寒いが、夏はけっこう快適。北欧にある国かもしれない。

 

「飯がうまいのが、良いところだよな。ほぼ文明も現代だし」

『うむ、そのパン、わらわにも食わせろ』

「ちょっとだけだぞ。犬には塩が多いからな」

 

 パン屋でパンを買い、適当に街を散策する。スマホがないのが悲しいが、古き良き20世紀という感じで落ち着く世界ではある。

 

 でも、俺が成人するぐらいになると、出てくるのかな。スマホ。

 父さんがパカパカする携帯持ってたから、いずれは出そうだよなぁ~~。

 

『そういえば、秘蹟とやらは出せるようになったのか』

「ああ、見てくれよ」

 

 俺は安全そうな川岸に行き、体内の精力とやらを掌に集める。

 するとそれがメダル状になり、赤、青、緑の三種類になった。

 

「これが秘蹟だよな?」

『ふむ、川に投げてみよ』

 

 言われて川に投げる。

 赤の秘蹟は川に入った途端、ドォンと大爆発を起こした。

 

……なかなか扱いが危険そうだな。川に来て良かった。

 あ、魚が浮かんできてるよ。

 

赤の秘蹟(ブレイク)は破壊のエネルギー。適当に与えればああなる』

 

 次に青の秘蹟を投げ込んでみる。何にも起きない……というか凄まじい勢いで水を切っていき、向こう岸まで飛んでいって消えた。なんなんだこれ。

 

青の秘蹟(アサルト)は順動のエネルギー。周りの勢いを強化する』

 

 川の流れとか反発力を強化した結果、潜らず飛んでいっちゃったのね。

 なかなか面白い現象だ。

 

 最後に緑の秘蹟を投げ入れてみる。

 ……なんか川に氷が張ったみたいにつるぅ~と滑っていって消えたぞ。

 

緑の秘蹟(チャージ)は固定のエネルギー。力を集め、固定する』

 

 ふぅ~~ん、なんか防御とかに使えそうだな。

 ていうかますます俺が生前やってたソシャゲに似ている……。

 他にも色々あった気がするが、基本はこの3つらしい。

 

『それらを他者や道具に付与するのが錬金術師の基礎よ』

「なるほど、基礎の基礎を覚えてしまったわけだ、俺は」

『うむ、両親には次の誕生日ぐらいに教えればよかろう』

 

 この犬、超助かる。

 パン屋で貰ったパンの耳をやろう。ほれほれ。

 とりあえず秘蹟の生成は出来るようになったから、次は付与だな。

 

 幸い、川岸には大量に石があるからこれに付与してみるか。

 生物に付与するなら魚とか虫とかもいるしな。

 

 ククク、この世界全てが俺の実験場ってことだ。湧いてきたぜ。

 そんな風に俺は幼少期を過ごしていたのだった。

 

 五歳の誕生日。

 俺は本を読み、秘蹟が使えることを両親に打ち明けた。

 既にすっかりこの国の文字も覚え、自分一人で本を読めるようになっていたし。

 

「すっごいぞぉおおお!! もう秘蹟を使えるなんて!!」

「それに難しい錬金術の本も読めるなんて天才すぎるわ!!」

 

 両親は大喜び。早速飛び級させようだのなんだのとそういう話になってしまった。

 まずいぞ。俺って中身は凡人だから、飛び級とかさせられると普通に転生のアドバンテージが無くなってしまう。

 丁重にお断りしたが、舞い上がった両親を止めるには至らなかった……。

 

 結局、近いうちに錬金術を教えている学院のおえらいさんが見に来ることに。

 はぁ……憂鬱だ……。

 

 それよりももっと憂鬱なことがあった。

 

 ハチがそろそろ死にそうなのである。

 いくら錬金術で改造されているからって、もう十歳ぐらいになるらしい。

 すっかり老犬である。

 

 俺は必死こいて家中の本を調べ尽くし、ハチを長生きさせる方法がないか調べた。

 ワンチャンありそうなのはこれだ。

 

『従者錬成の術』

 

 つまりなにかしらに魂を転移させるという術である。

 しかしモノかなんかに転移させるのは忍びないし、かといって動物に転移させるのもどうかと思う。困ったなぁ~~と思っていたのだが、どうやら術者本人の一部にも転移させられるらしい。それなら影にでも魂を転移させてみるか、と考えた。

 

「というわけなんだが、どうだろうハチ」

『仕方ないな……まだ貴公は甘ちゃんだし……世話が焼ける……』

 

 本人の了承を得たので、両親に相談してやってみることに。

 ちょうど、学院から人がやってきた時に手伝ってもらうということになった。

 

 そうしている合間に、ハチはドンドン弱ってきて、もうほとんど犬用ベッドから出なくなっていた。ヤキモキしていると、ようやく学院の教授と名乗る人がやってきたのである。

 

「やぁ、君がジャック・フォースメントかい?」

 

 魔女帽を被った銀髪の少女だった。

 




このままでは犬がメインヒロインになってしまう

俺  ジャック・フォースメントっていうらしい。五歳。
ハチ もう死にそう。老犬だからね。
少女 学院のお偉いさんらしいが……?

ドレンティーナ
俺らの住む国。アルファベットを使っているが、英語じゃなさそう。
20世紀末ぐらいの文明でパカパカ携帯ぐらいならある。割と和やかな気風。
冬は寒いが、夏は穏やかで過ごしやすい。多分北欧付近にあると思われる。
小国らしいけど情勢とかどうなってるのかな。難しいことはまだわからない。
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