無自覚にヒロインを沼らせるソシャゲの凡人(自認) 作:ヘルダイバー睦月
頭部には白い魔女帽。
腰まで伸びた銀髪はもふもふしており、銀のローブと白いワンピースを着た少女。
それがやってきた学院の教授だった。
普通の人間でないことは見て取れるが、とてもじゃないが教授と呼べるほど年老いているとは思えない。むしろピチピチで若盛り真っ最中という感じだ。
そんな少女が玄関から入って来たとなれば、俺でなくともハロウィンを連想してしまうと思う。この国にもそんな風習があることは既に把握済みだった。
もっとも、今は春と夏の間といったところ。ハロウィンにはまだ早いが。
「はい、俺がジャック・
「僕はスノウ・グレイトフル。アイリス錬金学院の第七教授だよ」
アイリス錬金学院……これも覚えがあるような気がする。
たしか13人教授がいて、世界を裏側から統治しているとかなんとか。
どこで見聞きした設定だったかな……。
「おお、来てくれましたか!!」
「感謝します、グレイトフル教授!!」
両親が俺の背後から嬉しそうに教授に話しかける。
彼らにとっては、上司であり、師に当たる相手になるんだろうか。
「二人とも元気そうで何よりだよ。今日はジャックくんの腕前を見せてくれるんだったね」
「はい!! ジャック、秘蹟をお見せしなさい!」
「了解しました」
言われて、掌に精力を集め、秘蹟のメダルを三種創造する。
つかこんなんでいいのか? 五歳児でも出来る簡単な術だけど……。
スノウ教授は俺の生み出した秘蹟をまじまじと手にとって見つめる。
「ほう、素晴らしい……精錬度合いが常人のそれじゃないね。なにより、この年齢でここまでの精錬ができるとは……」
そう言って、俺が生み出したメダルをポケットに突っ込んだ。
何に使うの、それ。爆発しなきゃ良いけど……。
「けれどもこのぐらいならまだのびのび自宅学習を勧めるよ。学院に入るなんてのはいつでも出来るんだしさ」
「お、お待ちください!! 今日はジャックが従者錬成を行うと言いまして!!」
「ええ、飼い犬のハチが死にそうだから、教授の元で行いたいのよね!」
そりゃあもちろん失敗なんてしたくない。ハチは俺の家族も同然だからな。
なんならこの両親よりも深い関係かもしれないし。せっかく教授が来てくれたんだから、手取り足取り教えてもらってしっかり成功することにしよう。
「ええ、ハチはもう10歳になるんです。寿命が近い」
「それで従者にしたいと? ペットの従者化はそう珍しいことではないけれど……」
「できれば教えてもらって勧めたいな……と」
ふむ、と考え込むスノウ教授。
だがやがて得心がいったのか、ポンと手を叩いた。
「わかったよ、協力しようじゃないか」
そう言って、俺達は家の奥──地下室へと向かった。
小さな豆電球に灯されている怪しげな地下室。
そこに描かれた魔法陣とその上にうずくまっているハチ。
たしか、従者錬成の方法は……。
「対象の魂を指定して、契約を結ぶ、でしたよね」
「ああ、なるべく負担にならない契約が良いと思うよ」
と言ってもどうしようかな……。
まず魂の指定からだよな、どうやるんだろう。
とりあえず精力をハチに向けてっと。
『ふむ、これで問題ないようである』
マジか。後は契約だけだな……。
どうしよう。なにか俺にしてほしいこととかあるのか?
『ならば……わらわとともにまだ見ぬ世界を歩もうではないか』
……ああ、わかったよ、ハチ。
新しい散歩ルート、いっぱい見つけようぜ。
『────契約、成立である』
魔法陣が怪しく光り輝く。
えと、このまま本に書かれていた呪文を唱えれば良いんだよな。
けっこう長いな、あーだこーだと……。
とりあえず、詠唱いたしましてっと……。
「我、盟約に従いそなたを従者とせん……!」
次の瞬間、ハチが光り輝いたかと思うとハチの遺体はなく、代わりにメダルが1枚落ちていた。
金色の枠に白い絵柄、そしてシルエット的な犬のシンボルが黒く描かれている。
これで従者錬成ができた……のか?。
「わぁ! すごいすごい!! この年齢で従者錬成なんてできないよ、普通!!」
パチパチと我が事のように喜ぶスノウ教授。
しかしメダルのままではあまりにハチが可哀想だが……。
「こっからどうすればハチを召喚できるですか?」
「君が設定したはずの触媒があるだろう? それに入れてみなよ」
つまり影か。というわけで俺の影に落としてみる。すると影に潜り込んでいき、代わりに真っ黒な犬のような影が浮かび上がってきた────それはハチの影であった。
ハチの影は俺に飛びついたかと思うと、喜び勇んで頬を舐めてきた。
「はは、ハチ、よせよ! くすぐったい!!」
『どうやら成功したようであるな』
「意思疎通も昔のままだな。よしよし」
しばらく撫でてやる。
それを見ていたスノウ教授はなにか決心したように腰に手を当てて、こう言ってきた。
「どうだい、ジャックくん。僕の弟子になるっていうのは?」
「弟子ですか。でも従者錬成が成功したのは、元から俺とハチが意思疎通できていたからだと思いますけど……」
「それでもだよ! 君の年齢で出来ることじゃない! 君は天才だ!」
それはまぁ……俺、転生者だからなぁ。
天才っていうより、転生アドバンテージがあるだけのように思えるが。
しかし、うん、ハチと約束したもんな。まだ見ぬ世界を見せてやるって。
「……良いでしょう、お願いしますスノウ教授」
「師匠でいいよ、ジャックくん」
俺は差し伸ばされた師匠の手を掴んだ。
そのまま地下室から出る。
「おお、成功したのかい?」
言われてハチを影から出す。
ハチは両親の周りを嬉しそうに駆けていた。
それを見て、両親も嬉しそうにハチを撫でだした。
「流石は俺の息子だ!! この歳で従者錬成をするとは……」
「本来ならば、15歳以上から挑戦する試験科目なのよ!?」
そう言って、俺の頭を撫でてくる両親。
俺はなんだかそれがいつになく小っ恥ずかしかった。
「ハチだから出来ただけだって……!」
「ははは、謙遜するな!!」
「それでグレイトフル教授、ジャックは……」
両親がスノウ教授────いや師匠の方に向き直る。
師匠はさっきからニコニコと微笑んでいる。
「ああ、彼にはアイリス錬金学院に来てもらう。
特待生……にしてもまだ早いから、しばらくは僕の内弟子だろうけどな」
「おお……!!」
「すごいわね、ジャック!」
そう言って両親が俺に抱きついてきた。
どうやらこの歳で教授の内弟子にしてもらえることは相当名誉なことのようだ。
「もちろん正月やクリスマス、長期休暇のときには帰すよ。どうかな?」
「ええ、是非もありません!!」
「私たちにとっても名誉なことです!!」
…………ふぅむ、そうか。この家ともしばらくお別れになるのか。
ちょっとそれは寂しいかもしれないな。まだ5歳なのに。
『貴公は転生者だろ?』
隣に座っているハチがぼやいた。
だからこそだよ。ガキの愛って大人になると素直に受け取れないんだよなぁ……。
まぁ、とはいえ学院っていうのも楽しみだったりするんだけどな。
『わらわとまだ見ぬ世界を歩むと言っただろう?』
それは……そう!!
ハチ
シャドウハチだ。影に引っ込んだり出てきたりする。ちょっと強そう
コアは白黒のメダルで犬の横顔みたいなシルエットが描かれている。ちょっとかっこいい。
『まだ見ぬ世界をともに歩む』という契約を結んだ。
スノウ・グレイトフル
アイリス錬金学院の第七教授。俺の記憶だと教授は全部で十三人いたはず。
なんかもう全身が白く、全体的にもふもふしている。胸部ももふもふだ。
俺の師匠になってくれるらしいけど?