無自覚にヒロインを沼らせるソシャゲの凡人(自認) 作:ヘルダイバー睦月
ともあれ次の車両へと行くことに。
扉を開くと、やはり爆弾男たちが居る……ものの、流石にガトリングを超えてくるとおもっていなかったのだろうか。ちょっとくつろいでやがった。爆発するのにタバコを吸うな。
「キィイイイイイイイイイイイ!!」
声とも呼べぬ耳障りな機械音。
それを叫びながら、こちらへと駆け寄ってきた。
あいつらの戦闘能力は単純。近づいて爆発するだけ。
さっきみたいに武装されているとやや厄介だけど、武器も尽きたみたいだし……とりあえず、やってみるか。
まずはアサルトで、ハチの速度を強化する!
俺は青の秘蹟を作り出し、自分の影に投擲。すると俺の影は凄まじい勢いで影の波となり、近づいてきた爆弾男たちを凪いだ。
「なるほど、アサルトはこうなるのか……」
純粋な速度と勢いの強化。
連撃とかを繰り出すのに使えそうだな。
多対一のシーンで使いやすい。
次はブレイクだ。
赤の秘蹟を作り出し、爆弾男たちを吹き飛ばした影に投擲。
すると巨大なハチの顎が現れ、爆弾男を食べてしまった。
「うわぁ……ブレイクはこうね……」
しかしこれは爆弾男の処理に楽そうだ。
爆発する前に食べてしまえば良い。影内で爆発しても大丈夫だし。
破壊のエネルギーと聞いてどうなると思ってたけど、膨れ上がる感じなのね。
最後にチャージも試しておくか。
影に緑の秘蹟を投げ込むと、俺の影から一直線にハチが伸び、さながら影の剣のように遠方の爆弾男たちを切断した。
爆弾男たちは爆発する間もなく、そこから崩れ落ちる。
「チャージも意外と便利じゃないか」
応用次第で影の武器とかを色々作れそうだな、これは。
さて、これで目の前にいる爆弾男たちは処理できたが……。
「おつかれ、ハチ」
『うむ、便利であるな。この体は』
パチパチパチ、と背後にいる師匠が拍手をする。
どうやら期待通りの成果を上げられたようだ。
「やぁやぁ、流石だね。僕がそこまでになるのは学院を卒業して以降だったよ」
「ありがとうございます。ええっと……次の車両はどうします?」
「おそらく、そろそろ術者が来ると思うんだけどねぇ」
そう言いながら、次の車両への扉を開く。
現れたのは長方形の真っ白な部屋。
その最奥には今回の下手人と思わしき男がいた。
車掌の格好をしており、白いスーツと帽子を被っている。
「やぁ、ようこそいらっしゃいました、スノウ・グレイトフルさま」
「君が、この領域の術者かい? 今、解除するなら許してあげるよ」
「ハハハ、自分が必ず勝てるようなことをおっしゃる」
車掌がそう言うと、天井のスプリンクラーから黒い泥が噴射され始めた。
とっさに師匠が氷で傘を創り出す。
だが、ミシミシと嫌な音を上げていた。
「なるほど、ただ爆発するだけの異能じゃないみたいだね」
「爆発など副次効果の一つに過ぎません。私の異能は”質量の圧縮”ですよ」
「異能の開示……本気だね」
そういえば本には自分の異能を開示した相手にはより効くと描かれていたな。
さながら呪詛、あるいはプラシーボ効果のように。
こころなしか、氷の傘から鳴る音もより響いてきて、罅が入ってきた。
とっさに俺は影を伸ばし、傘の上に展開する。
上から降ってくる泥を取り込む形だ。
……よし、いけそうだ。
「ほう、懐刀というわけですか。ですがこれならどうでしょう」
次の瞬間、部屋の最奥から大量の黒い泥が流れてくる。
俺は自分の周りに影を伸ばし、それらを吸収する────が。
次の瞬間、周りの泥からアサルトライフルが飛び出してきた。
「────児戯だね」
師匠が泥にメダルを投げ込む。
すると、たちまちそれらは凍りつき、動かなくなった。
相手の車掌も、周りのアサルトライフルすら。
次の瞬間、師匠が右手を振るう。
それらはガラスのように叩き割れ、周りに色が戻ってきた。
場所は────どうやら大陸横断鉄道の一車両のようだ。
目の前にいるのは、さきほどの車掌。
だがまともなのはスーツだけで、しわくちゃの老人になっていた。
「精力の使いすぎだね。もう助からないよ」
「ククク……私が何も設置していないとお思いですか?」
「僕がのろのろとあんな領域に付き合っていたと思う?」
「…………!!」
バキンッ、と老人の肌が凍りついていく。
師匠がなにかしたようには思えないが……おそらく車両に設置していた爆弾を凍りつかされたノックバックでも受けたのだろうか。
バリンッ、と老人の体が粉々になり、あとにはスーツしか残らなかった。
ただ術を行使するだけでもリスクが発生するようだな、錬金術は……。
ともあれ、これでなんとか刺客を倒したようだ。
「ふぅ、助かったよジャック」
「あまりピンチには見えなかったですけどね」
「いやいや、そんなことないって」
とりあえず周りを見てみるが、問題はなさそうだ。
刺客の襲撃は終わったのか……。
俺がほっと一息つくと師匠は俺の頭を撫で、にこやかに微笑んだ。
「じゃあ、食堂車に戻ろうか。一応他に刺客がいないか確認しとかないとね」
「またあんな刺客が来たら困りますもんね」
「しかし、背後関係を聞けなかったな……どこの組織だったんだろ」
そう言いながら、俺たちは食堂車へと戻っていった。
まぁ仕向けた組織なんてわかったところで、師匠の敵はどのみち多そうだからな……師匠というか、アイリス錬金学院の敵が、かもしれないが。
その後、1~2日は列車に揺られることになった。
食堂車の料理は美味しいし、時たま泊まる列車の景色も心地よかった。
そうこうして、俺たちはセントリアに着いたのであった。
セントリア中央駅。
様々な列車が集まる集合地点にして終点。
列車が止まると、複数の車掌たちが入り込んできた。
「ご苦労さまです、グレイトフル教授」
「なにかしらの刺客がやってきたということでしたか……」
「おそらくエンティティというグループでしょう」
「最近活性化しておりますからな」
「待て。決めつけは良くない。調査せねば……」
口々に思い思いのことを呟く車掌たち。
どうやら変装した学院の人間みたいだ。
「ご苦労、事後処理は任せるよ。僕は一旦、学院に帰る」
車掌たちに一言返して、駅の外に出る俺たち。
俺を見た偽車掌たちはというと……。
「アレがフォースメントの末裔か?」
「たしか後継に恵まれなかったはずでは?」
「錬金術でなんとかしたんだろうか」
「教授が連れているということは、内弟子にするのだろうか」
「フン、まだガキではあるまいか」
けっこう色々言われてるな……。
聞こえているっつーの。というか俺の両親、そこそこ有名人なのかね?
けれど、迎えに来た黒い自動車に入ると、師匠はハァ、と肩をすくめた。
「気にすることないよ。すぐに君の才能は皆が知るところになる」
「そんな……俺はただの凡人ですよ」
「子供のくせに謙遜なんてするんじゃないよ」
ケタケタと笑う師匠。そのまま自動車は発進し、アイリス錬金学院へと向かった。途中の街並みはドレンティーナと比べるとビル群が多く、現代に近い。
俺の故郷よりは風情はないが、便利そうだ。
……なんて考えていると、中世の古城みたいな建物が見えた。
「ほら、あれがアイリス錬金学院だよ。一般人からは普通の大学と思われているけど」
「やっぱり一般人は錬金術のことを知らないんですか?」
「実際にあるとは思ってないね」
つまりはフィクションだと思っているわけだ。
そこらへんは前世と一緒っぽいな。
「じゃあ、君はこれから僕の内弟子だ。よろしく頼むよジャック」
「ええ、こちらこそ」
こうして俺の学院生活が始まったのであった。
赤=ブレイク、青=アサルト、緑=チャージ。
FGOのカードみたいな感じです。