復讐に向かない復讐者の日記   作:ビスマルク

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曇らせが書きたかったんだ……。

主人公も曇るし、復讐相手も曇るし、仲間もみんな曇る奴。(ただし世界は希望に向かうとする)


日記 ①

▽月☆日

 明日から勇者学校に通うことになった。苦節10年、ようやくと言ったところか。節目を迎えるということで今日から日記を書くことにした。孤児院の先生達が勇者学校に合格した時に欲しい物はと言ったので日記帳が欲しいと言ったらくれたのだ。厳しい所もあったが、なんだかんだ甘いのかもしれない。

 いや、勇者学校を卒業したら天使様の元で悪魔共と戦うのでその時の為のアピールだろうか?……いけない、人の善意を疑うのは悪いことだろう。天使様の元で戦う勇士になる為にも僕……俺は変わらなければならない。

 そう、全ては十年前に俺から全てを奪った奴に復讐する為に。その為に全てを捧げなければ。明日は早いので今日はもう寝る。

 

 

▽月○日

 奴だ。奴がいた!!俺から全てを奪ったアイツが、こともあろうか勇者学校に入学生として存在していた!!何故奴がここにいるかという疑問で他の殆どのことを覚えていない。共に勇士として戦うことになるだろう同級生たちの顔も名前も何もかも。

 奴の姿が俺の脳に焼き付いて離れなかった。天使様達は奴のやったことを知っているのだろうか?十年前に俺の故郷である村を焼き払った奴のことを。知らない訳がないと思う、思いたい。だが奴が俺の想像以上に狡猾で天使様達を騙しきっている可能性もある。油断は出来ない。もしそうであるのならば奴の危険性を知っているのは俺だけとなる。

 何とかしなければならない。奴に近づきその行動の一々を監視しなければ。学校側に報告したとしても公式的に俺の村に生き残りはいないということになっている以上信憑性に欠ける。

 もし、奴がその力を再び善良なる人々に向けることがあるのであればその時は俺が止める。奴に近づく為の作戦を練る為に今日はもう寝よう。

 

 

▽月△日

 屈辱だ。何故俺がこんな目に合わなければならないのだろう。天使様、俺が何か悪いことをしているのでしょうか?清く正しく生きてきてたと思うのだが。

 …………いけないいけない、天使様を疑うなどあってはならない事だ。それに今更何を言ったとしても彼らの勘違いを正すことなど出来ないだろう。

 結論から言おう。なんか俺が奴に惚れているということになっていた。昨日ずっと見続けていたのが原因だそうだ。確かに奴の容姿は美しいと言わざるを得なかった。

 光を反射し輝いて見える銀髪も、神秘的と言わざるをえない。右が夕日のように鮮やかなオレンジ色で左が雲一つない青空のような蒼色をしたオッドアイもまたその印象に拍車をかけている。十年前見た、あの時と変わらない姿が目に、脳に焼き付いている。その美しさを否定は出来ない。

 今日友達になったトゥモーがそれを教えてくれた上で分かる分かると背中をバシバシ叩いてきた。背中も心も痛かった。

 だがよくよく考えてみれば悪いことではないだろう。俺の風評が最悪になることは間違いないが惚れていることにすれば奴に接触を図ることに対して誰も疑問を持つことはない。

 奴を監視して、俺の故郷にした事をやろうとした時斬る。その為にも今はこれを利用していくべきだ。

 ……ただ心情的に非常に疲れたので今日はもう寝るとする。

 

 

▽月▽日

 腹立つ、腹立つ、本当に腹立つ!!あの女、俺が話し掛けまくっても一切反応しなかった!!!それどころか話題を振っても必ず鼻で笑って馬鹿にしてくる!!!上等だ、無視できなくなるまでずっと話し掛け続けてやる!!!他の生徒の目なんて無視だ無視!!!!

 ……落ち着け、悪い癖だ。一度熱くなるとそれ以外が目に見えなくなる。日常生活ならまだしも戦いの中でこんな癖を残していたら間違いなくすぐに死ぬ。奴に復讐する前にそんなことになったらそれこそ死んでも死にきれない。

 それに悪いことばかりではない。完全に無視されてもなお関わろうとしているというのは今後どんな状態になろうと話し掛けるのに周囲からも奴からも違和感を覚えられることはない。

 奴を監視する、その目的の為にも俺はへこたれてはいられない。それでも腹の虫は収まらないので今日はもう寝る。寝れば大抵のことは忘れられる。覚えているのは故郷を焼かれた時の怒りだけでいい。

 

 

◇月☆日

 入学から一ヵ月以上経った。結論から言おう。奴は化物だった。

 うん、いきなり何を言っているのか読み直した時分からなくなりそうなのでもう少し分かりやすく言おう。奴の才能、現時点での能力はあまりに高すぎる。勇者学校に通う勇士候補達の中でも間違いなくトップだろう。上の学年を含めて、だ。既に同級生達の中には奴に対して勝てないと諦める者達が多い。俺やトゥモーはまだ奴に勝つことを諦めていない。もう一人、魔法主体の女子生徒がくらいついている。

 俺は事情があるから諦めることなどないが、彼ら二人は本当によくやっていると思う。その心の強さを本当に尊敬する。そして勝つことを諦めた彼らを責めることなど誰にもできはしない。あの力を見た上でそれでも自分に出来ることをと奮起している人もいる。本当に、俺とは違いここにいる勇士候補は心から凄いと思わせてくれる。彼らと共に学べるというのは幸運だと断言出来る。

 明日は奴との模擬戦がある。俺と奴の今の差を知る絶好の機会だ。どうにかして奴に全力を出させたい。どれくらい鍛えればいいかの目安を手に入れたい。

 その為の作戦を考えるためにも今日はここで終わろう。

 

 

◇月△日

 一日日記を書かない日が出来てしまった。サボったわけではない。ただ単に書ける状態ではなかったというだけだ。

 その原因は昨日の奴との模擬戦にある。全力で、何度地面を転がろうと諦めずに向かって行ったら面倒くさくなったのか奴がいつも動かさない眉を顰めながら俺の腹部に強めの蹴りをぶち込んでくれたのだ。地面を転がってもまるで勢いは落ちないでそのまま校舎の壁に埋まることになった。おかげで俺の身体はズタボロになった。

 天使様による祝福により身体能力が向上していていなかったらあの一撃で死んでいただろう。本当に天使様には感謝しかない。“愛”を捧げるのに一切の疑問は要らないと誰かが言っていたがその通りだと思う。悪魔共と戦うのに心強い味方だと言わざるをえない。

 それにしても奴も奴である。普通一ヵ月も話し掛け続けた人間に対してあの面倒そうな顔をしながら蹴りをお見舞いしてくるのはどうなのだろうか。

 ……いや、よく考えたら日頃から好きでもない人間に話し掛けられ続けるとかストレスが半端ないだろう。ストレス発散だと考えたら大分まともなのかもしれない。

 自分の行いを見返して死にたくなりそうだ。だがへこたれるわけにはいかない。奴が再び悲劇を起こさないかを見張り、そして奴にいつか俺の故郷を滅ぼしたことを後悔させる為にも関わり続けなければ。復讐の為にも、世界の為にもこの身を焼き尽くそう。今の俺にはそれしかないのだから。

 蹴られた腹部が痛くなってきたのでもう寝ることにする。一日休んでも治らないとか、明日もまだ治ってなければ治癒術師に頭を下げなければ。

 

 

◇月▽日

 なんか学校に行ったら滅茶苦茶囲まれた。なんでもあそこまで食らいついたその気合をみんな評価してくれたらしい。凄い凄いと言ってくれるのは少し、いやかなり嬉しかった。あそこまでやったのは俺だけだったと教官も褒めてくれた。同時に実力をちゃんと付けなければ味方を巻き込んで死ぬだけだとも言ってくれたが。

 その通りだと思う。無謀な行動はそれだけで周囲を巻き込んで破滅することになるのだから。だが今回の模擬戦は大成功と言わざるを得ないだろう。なにせこれを機に互いを刺激し合うということで奴としばらくの間だがパーティーを組むことになったのだから。奴に友好的に接し、何を狙っているのかを知る絶好の機会だ。

 まぁ、今回のことがなかったとしても奴が他の人間とパーティーを組めたかと言えばノーだったが。だって無表情だし。容赦がないし。顔は可愛くても態度が可愛くないので初期は沸き立っていた生徒達も今じゃ遠巻きに見ているだけだ。その気持ちは非常によくわかる。俺も理由がなければ関わろうとしなかっただろう。そもそも悪魔達との戦いの為に全てを捧げているのだから女にうつつを抜かす必要などないのだから。俺の全ては故郷を滅ぼした奴と、その背後にいるであろう四大魔王に復讐する為だけにあるのだから。

 明日から憎い奴と過ごす日々が始まる。蹴られた腹部は治療されたはずだがまだ痛む気がするので寝ることにしよう。




 多分3・4話くらいで終わるかな。
 本当だったら全部含めて1万5千文字くらいで書くつもりだったけど小出しの方が読みやすいと思うのでこの形式で。
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