うきうき魔王のパーティバイキング   作:mrr

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2.僧侶は祈りを-13

 

 

 

 

大聖堂のとある廊下。

同じような装飾の扉の一つが、やや乱暴に開けられた。

飛び出したのは一人の修道女。

ベールも被らず、瞳と同色の髪を振り乱したまま早足で駆けていく様は、淑女としてやや相応しくない振る舞いであった。

去り際に散った涙が廊下に落ちる頃、開け放たれた扉の奥では。

 

「う……ぐ、ぅ」

 

うめき声を上げ、ベッドに伏すディーンの姿があった。

ボタンがいくつか外れ、着乱れたその格好は、到底人に見せられるようなものではない。

なんとか整えたいものの、力を込める度に痺れでぶるぶると震える腕に、ディーンは苦戦していた。

 

決定的なことにはならず良かった、と言うべきか。

そもそもこのような事態に見舞われたことを嘆くべきか。

 

「く、そ」

 

珍しく直接的な悪態をつくディーンだったが、致し方ないとも言えた。

なにせ身体が思うように動かない。

まだボタンを摘むまでに至っていない指先は、大きく震えては枕やシーツに引っかかった。

 

びり。

 

怒りに任せ、強く力を込めた指が、枕のほつれを解いてしまう。

生地の裂けた穴は大きくなり、

 

ぽとり。

 

なにかを落とした。

 

「は、」

 

虫か何かかと、動揺したディーンの視界がブレた。

落ち着きを取り戻し、時間をかけて焦点のあったそれが見えてくる。

 

「……は?」

 

腑抜けた一音が溢れる。

落ち着きは一瞬で消え去り、代わりに再びの動揺がディーンを襲った。

 

ディーンはそれを知っている。

朝の祈り、握り込んだペンダントトップと同じ色の鎖。

一部だけ種類の違う鎖が継がれているのは、彼女が修復したからだ。

 

『落としてなくさなくてよかった』

『本当にいいのかい、鎖を買いなおさなくて』

『いいのよ、継ぎ足せばまだ使えるわ』

 

そう言って笑う彼女の首には、二人の写真をはめたペンダントが光っていた。

彼女は首がごちゃごちゃするのを嫌って、エリス教シンボルの用具をいつも手に持っていた。

常に首から下げていたのは、ペンダントの方だ。

 

だから、この鎖がここにあるわけがない。

彼女がここを訪れていない限りは。

 

「はあ?」

 

落ち窪んだ目から、光が消える。

 

 

 

「あの子ですか? ハーライルへの慰問の手伝いに行くと、先程この町を出立しましたよ。急に決まったのか、相当慌てた様子で……」

 

孤児院の院長から、話を聞く。

ディーンは、頭が受け取る情報を制限しているのを自覚していた。

なにせあれからどう移動し、院長にどんな質問をしたのか記憶がない。

視野が狭い。

真っ黒な壁に押しつぶされそうな感覚は、これまで感じていた喪失感によるものとは全く違う。

 

「あの、ディーン? 大丈夫ですか?」

 

老婦人の気遣わしげな声に、自分が返答できたかどうかもわからなかった。

 

 

 

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