うきうき魔王のパーティバイキング   作:mrr

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3.魔法使いの復活-6

ふと気づく。

ジョセフィーヌがついているならば、おそらくケイトに絡んでくるような命知らずはいないだろう。

しかし、それにしてはジョセフィーヌの反応は芳しくない。

通りの屋台に並ぶ品々を見ないように、足取りも余裕のなさそうな早足だ。

 

「その、私が苦手なのです」

 

疑問に思っていることを勘づかれたのか、ジョセフィーヌはぽつりと言葉を交わす。

故意か偶然か、屋台を担ぎ直した拍子に、ケイトからはジョセフィーヌの顔が見えなくなってしまう。

 

「魔物は……確かに戦争中は敵、でしたけれど。ものを考えることができて、同じ言葉を話せる存在を、家畜のように扱うところが、どうしても好きになれなくて」

 

ケイトはぱちくり、と大きな瞳を瞬かせた。

ジョセフィーヌに近づく際、彼女の素性はある程度調べている。

元冒険者であることも。

魔物を殺すことが仕事であった彼女が、そのようなことを言うのはどうにも違和感があった。

 

「おい、あれ」

「『仲間殺し』の」

「よせ、聞かれるぞ」

 

ふと。

なにかの毛がついたままの皮を取引している店の奥から、こそこそと呟きが漏れる。

幸いにもジョセフィーヌには聞こえなかったようだ。

声の主が姿を見せぬまま、ケイトとジョセフィーヌはその店を通り過ぎていった。

 

 

 

露天を更にいくつか越えて、入り組んだ道を歩いた先に、ようやくジョセフィーヌが借りているという倉庫へたどり着く。

少々お待ちを、と言われ、ケイトは倉庫の入り口で待機することとなった。

立て付けの悪い扉を開けた途端、薬草特有の匂いが漂ってくる。

カビ臭さはない。

経年劣化の著しい建物の中でも、中のものが丁寧に管理されている証拠だ。

 

ターゲットがいなくなり、一時的とは言え警戒する必要のなくなったケイトは、深く息をつく。

空を見上げれば雲が流れていく様がよく見えた。

雨が降りそうな気配はない。

 

なんとなしに脳裏に浮かぶのは、先ほどの魔物のパーツを取り扱う露店での出来事だ。

少しだけこみ上げた吐き気を、むりやりのどの奥へ押し込む。

ケイトにとって、人間とは魔物をバラバラにして売りさばく、おぞましい生き物だ。

例え言葉が通じようと、同じような姿を模して交流しようとも、心を通わせられるとは到底思えない。

 

『魔物は……確かに戦争中は敵、でしたけれど。ものを考えることができて、同じ言葉を話せる存在を、家畜のように扱うところが、どうしても好きになれなくて』

 

だからこそ、人間であるはずのジョセフィーヌが、ケイトのような魔物に寄り添うような意見を述べたのが、信じられなかった。

 

事前に集めた彼女の経歴を知るならば、なおさら。

なにせ彼女は、己の放った魔法で周辺一帯を消し炭にした過去がある。

敵も味方も全てを巻き込んだ一撃から、囁かれるようになった異名は『仲間殺し』。

ジョセフィーヌが魔法使いを辞するきっかけになった出来事でもある。

 

短いながらも言葉を交わし、抱いた丁寧な印象とは、随分とかけ離れている。

 

「見た目は俺より魔物に近いのにな」

「なにかおっしゃいましたか?」

「ほぁっ! いいえなにも!」

 

あまりに気を抜きすぎたせいか、ジョセフィーヌの接近に気づかず、ケイトは王子らしからぬ素っ頓狂な声を上げてしまった。

ジョセフィーヌは不思議そうに小首を傾げるばかり。

どうやら漏れ出た言葉の真意はわかっていないようである。

 

 

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