うきうき魔王のパーティバイキング   作:mrr

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3.魔法使いの復活-9

盗賊らしく、という命令に従う気はあるらしい。

御者を人質にとった盗賊達は、姿を現したケイトへ一斉に視線を向けた。

皆揃いの覆面を付けている。

その下が人の作りをしていないと知っているのは、依頼したケイトだけだ。

 

『どういうつもりだ。予定よりずいぶん早い』

『いいや、予定通りさ』

 

ジョセフィーヌに聞かれぬよう、魔物達で交わす言葉を使う。

盗賊達の様子は、どうにも二分されているように見えた。

なぜこんな場所で接近したのか戸惑っている者、そしてやけに反抗的な態度の者。

盗賊の一人がそう言い放った瞬間、反抗的な態度の者達が一斉に武器を構えた。

 

武器は出すが、本気で打ち合いはしない。

そんな約束だったはずだが、こちらをにやにやと眺める彼らの雰囲気は、どうにも八百長やふり、といった言葉とはほど遠い。

 

『今ここで殺して、馬車ごと奪った方が割がいい』

『あんたの手引きで人国に侵入できたんだ、好きにやらせてもらうぜ』

『力の弱いひょろがりのお前に従う奴などいるものか』

 

下卑た笑い声が、ケイトに降りかかる。

紳士的でないと知りつつも、舌打ちをせずにはいられなかった。

裏切り、本物の盗賊と化した魔物達にも、計画通りにことを進められない己にも腹が立つ。

 

「低脳が……!」

 

魔物は実力主義だ。

特に爪や牙、周りを圧倒させるようなわかりやすい攻撃手段を持つ者に、周りは追従する。

現に戸惑っていた者達も、状況を読んで武器を構え始めた。

敵地に潜り込む才はあれど、純粋な力勝負で他の魔物に勝ったことのないケイトにとっては、忌々しい思想だった。

 

剣を抜き払い、抵抗の姿勢を見せる。

こうなってしまっては、もはや己一人の身を守るしかない。

御者もジョセフィーヌも二の次だ。

突破口を見つけ出し、逃げ出す手段を考えるために頭を回している、そんな時だった。

 

「あのう」

 

この緊迫した状態に、あまりにも呑気な声が響き渡る。

馬車から降りてきていたジョセフィーヌだ。

いつの間にかすぐ横に降りてきていたことに、今度はケイトがぎょっと目を見開く。

 

「なにをしているのですか、危険ですよ! 戻って!」

「ごめんなさい。ですが、お話で解決しようとしていたのが決裂したのですよね?」

 

暴力を行使する他ないが、できたら穏便に済ませたい、ということで合ってますか?

急に方向性を問われ、ケイトは戸惑いながらも頷く。

 

「でしたら、良い方法がありますよ!」

 

明るい声が響き渡るのと、なにかがへしゃげたような音がしたのは、ほぼ同時だった。

その場にいた全員が、同じ方向を向く。

 

ジョセフィーヌはいつの間にかケイトの隣から移動していた。

並木道の端に立つ彼女が伸ばした腕の先には、木の幹があった。

多少力を込めてパンチしたとしても、枝葉をかすかに揺らすことくらいしかできなさそうな丈夫な木。

ケイトが両腕を回してようやく両の指の先が触れ合うくらいの、しっかりと育った木だった。

それが、幹の真ん中に手刀を叩き込まれた形でジョセフィーヌの手がめり込んでいる。

 

かわいそう。

ケイトの中に純粋な感想が浮かんだ。

 

「よいしょ、っと」

 

少々重い荷物を持ち上げるために気合を入れる、そんな軽い響きでジョセフィーヌは声を上げる。

続いてめりめりとなにかが割れる音がした。

その場にいた全員が、音のした方向へ視線を下げる。

 

割れていたのは地面だった。

木が長い時間を掛けて張った根が懸命な抵抗を見せるも、凄まじい力によって絡まった土ごと引き抜かれていたのだ。

天に向かって伸びていたはずの木の先端は、今やケイトが手を伸ばせば届きそうな位置にある。

 

「せぇの」

 

また声がした。

かわいらしい響きの元で、ジョセフィーヌが片手で引き上げた木に、反対側の手を添える。

まるで死刑執行人が、首つりの台の床を落とすスイッチに手を添えたような、そんな錯覚を覚えた。

 

「そぉれ」

 

次の瞬間である。

ジョセフィーヌの両手に挟み込まれた木が、へし折れたのは。

直前まで生きていた生木である。

水分を多く含んだそれは薪のように景気よく割れるなどということはなく、繋がった繊維が飛び出た無残な姿となった。

 

更にジョセフィーヌはそれだけに飽き足らず、二撃、三撃と力を加えていく。

一体木がなにをしたというのか。

轟音に次ぐ轟音が響いたしばらく後。

ジョセフィーヌの近くに生えていた、それだけの理由で哀れな木は薄茶色のボールと化した。

ごとり、と地面に重い音を立てて転がる。

 

『ナメた口きいてすみませんでした』

 

ボールが落下し切るや否や、その場にいた盗賊達全員が地に平伏した。

何も悪くないはずの御者まで伏せていた。

ケイトも、魔物としての任務と誇りを抱いていなければガタガタ震えて命乞いをしていたかもしれない。

 

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