砕氷のアンカー、あるいは熱病の抱擁   作:エスカド

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1話:年上の妹、年下の姉 後編

◆◆◇◇◆◆

 

 1. 逆転の質量兵器

 

 シュティアが席に戻り、アンカーのトリガーに指をかける。

「行きますよ。振り落とされないでくださいね」

 レデアが操舵桿を一気に倒した。作業船が悲鳴を上げながら猛加速し、巨大な鉱石の塊の周囲を旋回する。

 

「今です!」

 

「了解、お姉ちゃん!」

 

 シュティアが放ったアンカーが、数トンの質量を持つ鉱石に食い込む。

 船体の旋回速度とエンジンの噴射が合わさり、アンカーに繋がれた鉱石は巨大なフレイルと化した。

 

「消えて」

 

 シュティアが冷たく呟き、アンカーをパージした。

 

 アンカーから切り離された鉱石の塊はそのまま大きな岩石のボールとなる。

 

 岩石のボールはすさまじい勢いで飛翔、回避運動中のレイダーに直撃した。

 

『な、うわぁぁぁぁぁぁ!!』

 

 レイダー船は互いにぶつかり、一つの大きな塊となる。

 

 そして、そのまま彼方まで吹き飛んでいってしまった。

 

◆◆◇◇◆◆

 

 2. 飾っておきたい愛

 

 拠点のステーションに戻り、二人は居住区のソファーに並んで座っていた。

 

「お疲れ様でした、シュティア。あなたのアンカーさばき、助かりましたよ」

 

 レデアがいつも通り丁寧な手つきで、自分よりも大きな妹に紅茶を差し出す。

 

「お姉ちゃん……さっきの、本当に怖かったんだからね」

 

 シュティアは紅茶を受け取らず、隣に座るレデアをそのまま横から抱きしめ、自分の膝の上に乗せた。

 

「……シュティア、重いでしょ。降りさせてください」

 

 シュティアはレデアの銀色の髪を撫でる。ついでに肩をもみもみとほぐす。いつものスキンシップである。

 

「ダメ。充電中。……ねえ、お姉ちゃん。本当はさ、こんな仕事やめてほしいんだよ」

 

 シュティアの腕に力がこもる。鼻先をレデアの髪に寄せ、深く息を吸い込む。

「誰にも見せたくないの。綺麗なショーケースに入れて、私だけが見える場所に飾っておきたい。そうすれば、今日みたいに怖い思いもしなくて済むし、悪い虫も寄ってこないのに」

 

 レデアは紅茶を一口啜り、その重すぎる言葉を霧のように受け流した。

 

「またそうやってー。お姉ちゃんはシュティアのものじゃないんですよ。動けないのも困ります」

 

「じゃあ、私が一生動かしてあげる。……いいでしょ?」

 

「……冗談はそれくらいに。明日のシフトは早いですから、もう休みましょう」

 

 さらりと流して立ち上がろうとするレデアの服の裾を、シュティアは離さない。

 微笑む24歳の成人した妹の瞳の奥には、いつか本当に姉を「閉じ込めて」しまいそうな、甘く濁った執着が渦巻いていた。

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