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1. 招待状と銀の髪、至高の休日
「お姉ちゃん、見て。これ、先日お手伝いした輸送ギルドの重役さんから届いたんだ」
シルバーアンカーのコックピットで、シュティアが二枚の電子チケットをヒラヒラと振った。
「……『ゲーミングギャラクシー』への特別招待券? あの、スバル・ステーションの第七区画に新設されたという……」
「そう! 入場料だけで結構なクレジットを取られるっていう、あの超大型レジャー施設。お姉ちゃん、最近仕事詰めだったし、たまにはパーッと羽を伸ばそうよ」
レデア・メイスの瞳が、ふわりと輝いた。普段は冷静沈着、大人びた言動を崩さない彼女だが、こうした未知のレジャーや文化的な刺激には、年相応の好奇心が顔を出す。
「……いいのですか? 今日の定期メンテナンスを前倒しにすれば、確かに時間は作れますが」
「メンテナンスなら、私が昨日のうちに終わらせておいたよ。お姉ちゃんは、ただ楽しむことだけを考えてて」
シュティアは、レデアの隣に滑り込むと、その繊細な銀髪を優しくなでた。
「ふふ、わくわくしてるお姉ちゃん、本当にカワイイ。……よしよし、今日は一日、私のエスコートに身を任せてね」
「シュティア、髪が乱れます……。ですが、そうですね。せっかくの招待です、存分に楽しみましょう」
二人は身支度を整え、ステーションの喧騒の中へと足を踏み出した。
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2. ゲーミングギャラクシーと光の海
スバル・ステーションの一角を占める「ゲーミングギャラクシー」は、その名の通り、光と音が支配する銀河のような場所だった。
広大な吹き抜けのフロアには、最新のホログラム技術を駆使した巨大な筐体が所狭しと並び、各所から爆発音や電子的な歓声が響いている。
「……圧倒されますね。これが、現代の娯楽の最先端ですか」
「お姉ちゃん、まずはあっちの射撃コーナーに行ってみようよ!」
シュティアに手を引かれ、二人が最初に向かったのは、実体弾とエネルギー弾の両方を模したハイブリッド・シューティング。
シュティアは大型のライフル型コントローラーを軽々と手に取ると、画面に現れる標的を次々と撃ち抜いていく。
「ターゲット確認。射線クリア。……はい、おしまい!」
百発百中の精度。隣で見ていた一般客たちが、そのプロ顔負けの腕前に度肝を抜かれている。
「シュティア、流石の腕前ですね。……ですが、私だって負けてはいられません」
レデアは対照的に、片手で扱えるハンドガンタイプのコントローラーを選び、最小限の動きで急所だけを的確に射抜いていく。二人のハイスコアが交互に塗り替えられる光景は、もはや一つのパフォーマンスのようだった。
次に二人が足を止めたのは、ひときわ古めかしい、筐体型のゲームが並ぶ「クラシック・アーカイブ」コーナーだった。
「……これは? ホログラムではなく、物理的な画面が埋め込まれていますね」
「古代地球の『ベルトスクロールアクション』っていう形式らしいよ。お姉ちゃん、二人プレイができるみたい」
二人は狭い筐体の前に並んで座り、ドット絵のキャラクターを操作して、画面左から現れる暴漢たちをなぎ倒していく。
「お姉ちゃん、右からモヒカンの敵が来た! ジャンプキックだよ!」
「了解しました。……えい。……ふふ、単純なルールですが、意外と熱くなりますね」
「でしょ? 協力して進む感じが、なんだかシルバーアンカーの仕事みたいで楽しいな」
画面の中で背中を合わせるドットのキャラクター。それは、現実の二人の絆をそのまま投影しているようでもあった。
その後も、二人は最新のVR五感没入型レーシングで宇宙の最速を競い、ホログラムのダンスゲームで踊り、大型の対戦型パズルで火花を散らした。
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3. 鋼鉄の巨人、あるいは不意打ちの雷光
「……ふぅ。お姉ちゃん、ちょっとトイレに行ってくるね。少し長くなるかもだけど、お姉ちゃんも一緒に来る?」
三時間が経過した頃、シュティアが少し申し訳なさそうに言った。
「いえ、私はあちらの最新機種が気になりますから、ここで遊んでいます。一人で大丈夫ですよ」
「……ええー、残念。じゃあ、五分、いや三分で戻ってくるから! どこにも行かないでね? 変な男に声かけられたら、即座にアンカー……じゃなくて、通報するんだよ?」
「わかっていますから。早く行ってきなさい」
シュティアの過保護な視線を背中で受け流しながら、レデアは一台の大型筐体の前に立った。
それは、人型メカを操って広大な戦場を駆け巡る、人気シリーズの最新作『マキナ:ゼニス・リベリオン』だった。
レデアは慣れた手つきでログインし、自分の機体を選択した。
「……機動性重視の軽量型。武装は、スナイパーライフルと高周波ブレード。……行きます」
人型兵器マキナが、高精細な仮想空間を滑るように移動する。
レデアの操縦は、非常に手慣れたものだった。敵の弾幕を最小限のスラスター吹かしで回避し、遮蔽物を利用して死角から一撃を見舞う。
ミッションは順調に進み、ついにエリア最深部のボス敵へと到達した。
それは、複数の砲塔を持つ巨大な多脚戦車。
レデアは冷静に、相手の攻撃パターンを分析する。
(……左側面の装甲が薄いですね。あそこを破壊すれば、コアが露出するはずです)
流れるような機動でボスの懐に潜り込み、ブレードで装甲を切り裂く。レデアの狙い通り、ボスの心臓部であるクリスタル・コアが露わになった。
ハイスコア更新まで、あと一撃。
レデアはスナイパーライフルの照準を合わせ、トリガーに指をかけた。
――その、瞬間。
画面の端から、レデアの放とうとしていた一撃を遥かに上回る、極太の極太の赤いレーザーが突き抜けた。
ドォォォン!! という凄まじい爆発音と共に、ボスのコアは塵すら残さず消滅した。
画面には無情にも、ボス撃破のファンファーレと、最も高いダメージを与えたプレイヤーに贈られる『ラストショット・ボーナス』の文字が躍る。
「……え?」
レデアの手が止まる。
自分が完璧にお膳立てをし、あとは仕留めるだけだった獲物を、横から掠め取られた。
ゲーム内ログを確認すると、その「横取り(キルスティール)」を成し遂げたプレイヤーの名前が表示されていた。
【 プレイヤー名:Kanoa 】
「…………」
レデアは筐体から顔を上げ、すぐ横にある隣のプレイ台を、ゆっくりと見た。
そこに、彼女はいた。
燃えるような赤い髪を長く伸ばし、アシンメトリーな前髪が特徴的な少女。
どこかで見たことがある。
少女は、レデアを眠たそうな目で見つめ、少し笑った。
レデアの中の闘争心が芽生え始めた。