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1. 期待に胸を膨らませて
「シュティア、急ぎましょう! 情報によれば、この座標のデブリ群に純度の高い金を含む破片が混ざっているそうなんです!」
操舵席のレデアは、いつになく声が弾んでいた。140センチの体がシートの上で心なしか浮き立っている。
「ええ……。でもお姉ちゃん、その情報、出所がかなり怪しい酒場だったよね? 本当にあてになるのかな」
後ろでアンカーの点検をしていたシュティアが、半信半疑で首を傾げる。
「シュティア、こういうものは鮮度が命です! 疑う前にまず確認、それが『何でも屋』の鉄則ですよ!」
頬をわずかに赤らめて熱弁する姉の姿を見ていると、シュティアの気持ちはすぐに切り替わる。
お姉ちゃん可愛い、すりすりしたい。
「そうだね、お姉ちゃん。お姉ちゃんがそう言うなら、きっと金塊の山があるはずだよ。さあ、どんどん行こう!」
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2. デブリの迷宮
二人の作業船は、大型船なら敬遠するほどの高密度デブリ帯へと進入した。
「……前方、破砕した装甲板。右へ回避します」
「了解。邪魔な小石は焼いちゃうね」
レデアの精密な操舵と、シュティアが放つ採掘レーザーのコンビネーション。二人はダンスを踊るような滑らかさで、浮遊する宇宙のゴミを掻き分けていく。
しかし、数時間の探索虚しく、センサーに金の反応は現れない。
「……やはり、そう上手くはいきませんか」
レデアが肩を落とし、深いため息をつく。その消沈した様子を見て、シュティアはチャンスとばかりに席を立った。
「大丈夫だよお姉ちゃん。金なんてなくても、私にはお姉ちゃんっていう黄金よりも輝く宝物が……。さ、元気出して。抱っこしてあげよ――」
その時、コックピットに無作法な通信が割り込んだ。
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3. ライバル(?)登場
『――そこのボロ船! 間の抜けた顔をして漂っているのはどこのどなたかしら?』
高飛車な女の声。モニターに映し出されたのは、姉妹の船よりは少しだけ新しく、けれど趣味の悪い金ピカの装飾が施された作業船だった。
『このエリアのお宝は、この私……銀河のトレジャーハンター、カトリーヌ様がいただくものよ! さっさと帰りなさいな!』
「カトリーヌさん……ですか。申し訳ありませんが、このデブリ群は誰のものでもありません。先に探索していたのは私たちです」
レデアが冷静に反論するが、相手は聞く耳を持たない。
『そんなことは私が決めるわ! 弱肉強食、早い者勝ちよ!』
「……シュティア、話になりませんね。どうしましょうか」
レデアが困ったように妹を振り返る。しかし、シュティアは既に手元で何かを操作していた。
直後
いつの間にか射出していたアンカーは近くに浮いていた小型のデブリをガッチリと掴み、凄まじい勢いでカトリーヌの船の鼻先へ放り投げた。
『な、なにするのよ! 危ないじゃない!!』
咄嗟に回避したカトリーヌが叫ぶ。
「ちょっとうるさいなって思って」
シュティアの静かな、本当に鬱陶しそうに思ってそうな声色に、カトリーヌは苛立ちを覚えた。
『いい度胸ね! だったら、こっちだって容赦しないわよ!』
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4. デブリ投擲合戦開始
カトリーヌの船からも牽引アンカーが射出される。彼女が掴んだのは、古びたソーラーパネルの破片だ。
『食らいなさい! お宝は渡さないんだから!』
「シュティア、左舷より飛来物! 回避します!」
レデアが鮮やかにスラスターを噴かし、回転しながらパネルをかわす。
「お姉ちゃん、そのまま右に回って。あそこの廃材を拾うよ」
「了解しました!」
レデアが船体をスライドさせ、シュティアが流れるような動作でアンカーを放つ。
掴んだのは、エンジンブロックの残骸。
「お返しだよ、おばさん」
「誰がおばさんよ!!」
宇宙空間で、ミサイルでもレーザーでもない「ただのゴミ」が猛烈なスピードで行き交う。
シュティアはまるで雪合戦でもしているかのように、次から次へとデブリを掴んでは投げ、投げたデブリで敵の投擲を撃ち落とすという離れ業を見せる。
「シュティア、あそこに大きな構造物があります! あれを遮蔽物(シールド)に使いましょう!」
「了解! お姉ちゃん、そのまま押し出して!」
二人の息は完璧だった。レデアが船体でデブリの山を押し込み、シュティアがその隙間から正確に「変化球」の投擲を見舞う。
『ちょっと! なによそのコンビネーション! 卑怯よ!』
カトリーヌの叫びが通信越しに虚しく響く。
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5. 結末と、いつもの二人
結局、弾(デブリ)が尽きることはなかったが、カトリーヌの船は度重なる「ニアミス」による振動で、金ピカの装飾がボロボロと剥がれ落ちてしまった。
『もうっ! 覚えてなさいよ! こんなゴミ溜め、こっちから願い下げだわ!』
捨て台詞を残して、カトリーヌの船は全速力で逃げ去っていった。
「……行ってしまいましたね。結局、お宝は見つからず、変な人に絡まれただけでした」
レデアががっくりと項垂れる。
「そんなことないよ、お姉ちゃん。お姉ちゃんの操舵、今日も最高にキレてた。私はそれが見られただけで満足かな」
シュティアはニコニコしながら、今度こそレデアを背後からギュッと抱きしめた。
「……シュティア、暑いです。それに、次の仕事の準備もしないと」
「いいじゃん、少しだけ。あ、お姉ちゃん、さっき投げる時に拾ったあの石……ちょっとだけキラキラしてない?」
「えっ!? どこですか、シュティア!」
必死に外を見ようとするレデアの首筋に顔を埋め、シュティアは満足げに目を細めた。
金塊なんて、どうせ見つかっても見つからなくてもよかった。
どんな鉱石より、今ここにあるこの匂いの方が、ずっとずっと好きなのだから。