ディストピアのネット友達が優秀すぎる   作:名無しのペロリスト

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艦長、まさか自力で脱出を!

<レジスタンスの少年>

 元工作員が言った通り、僕たちは暇を持て余していた。

 

 本来なら過酷な労働を強要されたり、拷問や尋問をして情報を引き出すはずだ。

 しかし、その気配は全くない。

 

 たまに看守や、かつての仲間が僕たちの様子を確認しに来たりする。

 だがそれだけで、反抗的な態度を取らずに、電磁格子の中で大人しくしていれば、特に何もされなかった。

 

 だからと言って、このままで良いはずもない。

 シティが役に立たない捕虜にリソースを使う余裕はなく、そう遠くないうちに処分されてしまうからだ。

 

 しかし焦りは禁物で、今は脱獄を機会を待つ。

 従順なフリをして、情報を集めるのだ。

 

 幸い制限や監視が厳しくても、ネットワークにアクセスできるのだ。

 今は更生施設やシティについて、できるだけ詳しく知らべる。

 

 何処で何が役に立つかわからない。

 思わぬところに、脱出のヒントが隠されている場合もあるからだ。

 

 

 

 シティニュースは偏向報道なので全く信用できないが、掲示板というのは隠された闇を暴くヒントになる。

 制限されていて書き込みはできないけれど、数々の陰謀論などを発見して、かなり信憑性が高そうだと判断した。

 

 ぜひ詳しい話や情報元を知りたいが、間違いなく都市統括人工知能に監視されている。

 それでもアカウントを削除されないのは、あえて泳がせている可能性があった。

 

 できればそれ以上の書き込みは、同志の命に危険があるので控えるべきだと警告したいが、僕たちには見ていることしかできない。

 

 幸い信憑性や情報元の質問をされると、危険性に気づいたのか曖昧な言葉で誤魔化すなどして、以降は書き込みがなくなった。

 

 彼には僕たちが更生施設を脱出するまで、何としても生き延びて欲しいものだ。

 きっと信用できる同志になってくれる。

 

 だがその中でわかったのだが、アリサの支持率が異常に高い。

 少しでも否定的な発言をすると、掲示板の治安を維持する目的の書き込みが増えたりと、これが今のシティの縮図なのだと理解した。

 

 さらに真偽不明だが、最近はシティの市長が頻繁に代替わりしているらしい。

 たとえ頭が変わっても上級市民には違いないので、僕たちが排除する目標だ。

 

 

 

 それはアリサも例外ではなく、もし彼女の功績が事実だとしても、都市統括人工知能と上級市民の力を強めている。

 やはり野放しにはできず、要注意人物であると同時に、最優先での排除が命じられるだろう。

 

 シティの市民にどれだけの犠牲が出ようと、必ずや成し遂げなければいけない。

 今のように機械に支配されるのではなく、人類の手による恒久的な平和だ。

 

 なので大義を達成するためには、アリサの存在は邪魔だった。

 

 

 

 しかし、空中に展開する半透明のモニターは、一つの牢獄に一つだけだ。

 複数同時には使えないため、僕は先輩に任せることにした。

 

 ベッドに腰かけながら、少しだけ呆れた声を出す。

 

「先輩って、そのバンド好きですよね」

 

 先輩が空中に表示しているウインドウを、横から覗き込んだ。

 

 ずっと気を張っていても疲れるし、今は看守ロボットは近くに居ない。

 割りと気を抜きながらの、情報収集である。

 

「都市統括人工知能や上級市民は倒すべき敵だが、音楽に罪はないからな」

 

 だが監視カメラや盗聴器、ネットワークも含めて、二十四時間体制で監視されているのは間違いない。

 

 なので周りを油断させるために、わざとシティの音楽を流しているわけだ。

 

「でも、その曲を流すの何回目ですか? そろそろ変えましょうよ」

 

 しかし、先輩はさっきから同じ曲を、何回もループ再生させているのだ。

 順番に切り替えていく機能もあるのだから、僕はそっちを使えば良いと思った。

 

「馬鹿! お前! 神曲は何回聞いてもいいんだよ!」

 

 そう主張したくなる気持ちはわかるが、好みは人それぞれ違うのだ。

 自分は先輩とは別の曲を、脳内ループさせるぐらい気に入っていた。

 

 そしてここは更生施設で、数多くの牢屋が隣接したり向かい合っている。

 あいにくイヤホンなどという気の利いたものがないため、音がダダ漏れだ。

 

 当然のように、反対意見も出てくる。

 

「お前ら! さっきからうるせえぞ! 少しは音量下げろよ!」

 

 正面の牢屋から、仲間が大きな声で怒鳴ってくる。

 それに、すぐに先輩が反応した。

 

「そう言う、テメエこそだろうが!」

「お前のせいで、ARISAちゃんの歌声が良く聞こえねえんだよ!」

「それはこっちの台詞だ!」

 

 僕としては双方の意見は良くわかる。だから、どうにも口を挟みにくい。

 今のシティには多種多様な音楽が溢れているのだ。

 一日中ずっと流し続けても、聞き終わることはないだろう。

 

 ただ誰も彼もがARISAのように上手ではなく、まだまだ発展途上と言える。

 

 しかし、人類統合軍として活動していた頃には、こんな世界があるとは想像もしなかった。

 表向きは機械たちを油断させるためと言っているが、興奮を抑えれそうにない。

 

 そして実際に凄く楽しい。

 別に非合法なドラッグを摂取したわけではなく、心身に異常はないはずだ。

 むしろ食生活の改善も含めて、中継基地や任務中、それに地下都市に居た頃よりも、ずっと調子が良いぐらいだ。

 

 

 

 何にせよ音楽を手放すことは、もう二度と出来そうにない。

 もし取り上げられたら、小さな子供のようにみっともなく泣き喚くだろう。

 

 それぐらい僕にとっては、なくてはならないものになった。

 他の皆も好きな曲は何度も繰り返しているし、鼻歌を歌っている。

 

 最近の更生施設内では、良くある光景になってきていた。

 

 今日もそんな日になると思っていたのだが、いつもよりも騒がしい。

 そう思って注意を向けると、僕らが良く知る人が通路を歩いていた。

 

 僕はそれを見た瞬間、ベッドから立ち上がって、電磁格子に駆け寄る。

 

「艦長! 無事だったんですね」

 

 彼は僕たちの上官だ。

 そして人類統合軍の中でも、優秀な戦士として知られていた。

 

 近くの牢屋には居なかったので、てっきり殺されたか機械に捕まって拷問を受けていると思っていた。

 だがどうやら、無事だったようだ。

 

「ああ、皆には心配をかけたようだな。

 少々込み入った事情があったんだ」

 

 そう言って、艦長は困った表情をしていた。

 だがここで先輩が険しい顔をして、警戒しながら声をかける。

 

「ちょっと待てよ! 何故アンタが外にいるんだ!

 首輪もないし、……まさか」

 

 確かに艦長には首輪はない。

 機械たちが、取りつけるのを忘れるとは考えにくい。

 ならば解除して脱獄したのかも知れないが、艦長は重苦しい溜息を吐く。

 

「簡単に説明すると、俺は人類統合軍を辞めて、シティに協力することに決めた」

 

 電磁格子の向こうに捕まっている僕たちは、例外なく驚きの表情を浮かべる。

 どんなときにも諦めずに抗い続けて、多くの機械たちを倒してきた。

 

 そんな誰もが憧れる艦長が、よりにもよって人類統合軍を裏切ると言ったのだ。

 

「じょっ、冗談ですよね?」

「悪いが本気だ」

 

 はっきり否定された。

 僕は急に目の前が暗くなって足がふらつくが、何とか踏ん張る。

 

 だが、しばらくはまともに喋れそうにない。

 そんな自分の代わりに、先輩が大声を出す。

 

「艦長! 正気に戻ってください!」

「俺は正気だ。そして洗脳もされていない」

 

 その言葉は、僕たちを絶望させるには十分だった。

 更生施設では無理やり知識をダウンロードし、従順な市民に作り変えてしまう。

 大抵は拒否反応で死亡するか廃人になるが、艦長は奇跡的に生き延びたのは良くても、どうやら洗脳されてしまったようだ。

 

 誰よりも人類のために、命をかけて機械と戦ってきたのだ。

 それなのに、敵に寝返ってしまった。

 

「そんな! とても信じられない!

 艦長ともあろう人が! 機械の味方をするなんて!」

 

 たとえ事情があるとしても、もう何を信じていいのかわからない。

 

 僕はよろけた体を支えるために。壁にもたれて天井を見上げて涙を流した。

 

 すると艦長は沈痛な表情を浮かべてネットワークにアクセスし、更生施設での上位者権限を使い、僕たちのウインドウを強制的に書き換えていく。

 

「俺がシティに協力する理由は、これを見ればわかる。

 過去に起きた悲劇と、本当に倒さなければならない敵が、一体誰なのかがな」

 

 正直、艦長が心変わりしたという現実を否定したい。

 目と耳を閉ざして、何も聞きたくはない。

 

 けれど彼は、そんな僕たちに何かを教えようとしている。

 理由があるなら、知っておくべきだ。

 

(艦長も辛いんだ! なら、僕も逃げずに立ち向かわないと!)

 

 それに、もしかしたら艦長は人類統合軍を裏切ったわけではない。

 機械に協力するフリをしているのかも知れない。

 

 僕たちに正直に言えないだけで、深い事情があるのだ。

 これから語られる何かに、そのヒントがあるかも知れなかった。

 

 今はそう思うことでしか、希望を持てそうになかった。

 僕は頑張って立ち上がり、先輩と一緒に空中に表示されるウインドウを、そらすことなくじっと見つめる。

 

 

 

 すると更生施設にいるはずなのに、いきなり目の前が暗くなって何も見えなくなる。

 自分の体の感覚もなくなり、堪らず恐怖で叫び声をあげる。

 

 僕が混乱していると、何処からともなく艦長の声が聞こえてきた。

 

「皆、落ち着け。今は映画を視聴するために仮想空間に入り、感覚の共有を行ったんだ。

 最初は混乱するだろうが、すぐに慣れるはずだ」

 

 言っていることがわからない。

 それでもどうやら、これは現実ではないということがわかり、少しだけ安心した。

 

「本当は椅子に座って視聴したかったのだがな。

 あいにく、映画館は連日満席。

 俺はアリサ様の口利きで、……まあその話は別にいいか」

 

 またアリサという名前が出てきた。

 本当に一体何者なのかと疑問を思える。

 

「俺たちは立ち見だ。

 今は専用のドローンカメラと感覚を共有しているが、どの視点から映画を見るかは自由に選べるぞ」

 

 そう言われても全てが始めてなので、何をどうしたら良いのか、説明されてもさっぱりわからない。

 

「ドローンカメラは、他者から姿も見えないし、声も聞こえない。

 これは身内専用のメッセージで、俺たちが居るのはスクリーン5だな。

 ……っと、そろそろ始まるな」

 

 艦長は、しばらくそのままで居るようにと告げる。

 僕は困惑しながら周囲を見回すと、良く見ると柔らかそうな椅子に座る、子供や大人や老人、女性や男性などを見つけた。

 とにかく世界中から色んな人々が集まっているようで、仮想空間と聞いたので本体ではなくアバターなのだろう。

 

 そして皆がとても嬉しそうな表情で、同じ方向を見ている。

 僕も釣られて、肉体はないけどそっちに視線を向けると、突然アリサアニメーションという大きな文字が、正面に大きく映し出された。

 

 もし声が外に漏れたら、驚きの悲鳴が響き渡っていたところだ。

 

 しかし僕の動揺などお構いなしとばかりに、次に音声が流れる。

 

「この映画は史実を元に作られていますが、実在の人物や団体などとは異なる表現もあります」

 

 誰が喋っているのかは、すぐにわかった。

 ARISAのバンドメンバーの一人だったからだ。

 

「惑星全土が氷に覆われる前、地上は生物が溢れ、美しい大地や海が広がっていました」

 

 説明に合わせて景色が切り替わり、鬱蒼と茂る大森林が前面に映し出される。

 木々の隙間から、空が見えた。

 

 そして生まれてから一度も拝んだことがない太陽が、明るく輝いて大地を照らしていた。

 

 動植物の殆どが死滅した氷河期と比べると、とても温暖で過ごしやすい気候のようだ。

 

 そのまま次々と場面が変わっていき、森や平野、山や海、そして人間が大勢暮らしていた各国の都市に切り替わった。

 

「かつての人類は──」

 

 都市の様子も、今とは大きく違っている。

 ドーム型ではないし、外に出る際には防寒具は必要ない。

 

 しかも世界は大勢の人々で溢れており、今のように都市統括人工知能によって統一されておらず、それぞれ思想や民族や風習などが違う数多の国々があった。

 

 その時代も、終わることのない戦争に明け暮れている。機械がいなくても関係はない。

 人類誕生以降、歴史は数え切れないほどの血と屍によって築かれてきたのだ。

 

 そのことを、ナレーションが説明していき、景色が切り替わる。

 

 今度の場面は宇宙だ。

 ある時、人類は巨大な隕石が惑星に迫っていて、このままでは地上に落下することを知る。

 

 当然のように、人々は大いに混乱した。

 何とか危機を乗り越えるために、各国の首脳が連日会議を行う。

 このままでは人類の危機のため、世界各国が手を取り合い様々な対策案が打ち出された。

 

 初めて戦争を止めて、難局を乗り切るために心を一つにしたのだ。

 

 映像が次々と切り替わっていき、ナレーションはそのことを説明する。

 

「最終的に人類は、核弾頭によって隕石を破壊する。

 もしくは軌道を変えて、惑星への落下を防ぐ案を出しますが、どれも上手くいきそうにありません」

 

 隕石の質量的に、核弾頭での破壊は困難だ。

 軌道を変えようにも、対象が近づかないと命中率が低下するどころか、爆発による破片を大量に生み出す。

 

 それに巨大隕石の周りの障害物が多すぎて、まずまともに当てることさえ難しかった。

 

 

 

 たとえ小惑星を破壊できても、欠片である流星雨が地表に降り注げば、それだけでも人類は壊滅的な被害を受ける。

 

「やがて各国の首脳たちは大いに悩み、人類の命運をある人物に託すことに決めます」

 

 そこでまた景色が変わる。

 そして今度は先程の重厚感は何処へやらで、軽快な音楽が流れた。

 

 ヘルメットを被って油田を採掘している、一人の女性が映し出された。

 黒髪黒目の二十代ほどの美女で、そんな彼女に何処かの国の役人やエージェントが接触して、会話が始まる。

 

「はぁ? 私に宇宙に行って穴を掘れって?」

「お願いします。アリサさん。貴女だけが頼りなのです。

 試作型都市統括人工知能の解答では、それがもっとも成功率が高いと出ました」

 

 アリサと聞いた瞬間に僕は驚いた。

 きっと記録映像を見ている仲間も、同じ気持ちだろう。

 

 とにかく役人は彼女と話をして、巨大隕石の中心で核爆弾を起動し、木端微塵に打ち砕く作戦を提案した。

 

「呆れた。各国の首脳が揃いも揃って、そんな作戦しか出せないの?」

「ですが、成功確率が十パーセントもあります」

 

 彼女がシティで改革を行っているアリサの先祖なのかは、全くの不明ではある。

 アバターなら簡単とはいかないが、どうとでも偽れるからだ。

 

 とにかくその後は、アリサという美女を中心に話が進んでいく。

 

 彼女は結局人類の生存のために、命をかけることに決めた。

 仲間と共にスペースシャトルに乗って宇宙に飛び立ち、様々な困難を乗り越え、何とか小惑星に辿り着く。

 

 穴を掘っている途中にも、何度もトラブルに見舞われた。

 だがそれでも決して諦めずに、機転を利かせて乗り越えていく。

 

 最後には何とか中心部に掘り進んで、核爆弾をセットすることができた。

 しかし機材の故障で、遠隔起爆ができなくなってしまう。

 

 結果、彼女は一人だけ残り、他の仲間を母星に帰す。

 十分に離れたあとに手動で爆破させ、小惑星の爆発に巻き込まれて帰らぬ人になった。

 

 

 

 しかし、彼女のおかげで人類は生き延びることができた。

 だが破片が地球に到達して落下し、大きな被害が出てしまう。

 大量の土砂を巻き上げて、太陽光を遮ってしまうが、大きな塊は地球を通り過ぎていったのだ。

 

 だが小さな欠片は核弾頭で破壊できたので、被害を少しだけ抑えられた。

 それでも深刻なのは違いないが、危ういところで絶滅だけは避けられたのだ。

 

 けれど隕石の落下で発生した塵は成層圏を漂い、太陽光を遮ってしまう。

 

 寒冷化に備えて新たな対策を講じなければならなかったが、実は既に動き出していたのだ。

 

 それが、シティ計画だ。

 

 その時代の科学者たちは、氷河期は長期的ではない。

 地下を掘り進んで新しく都市を作るには時間が足りないし、多くのリソースも必要になる。

 

 だが元々あった都市を、特殊素材で包み込んで外気を遮断するだけなら、その時代の科学力でも問題なく実現できる。

 あくまで一時凌ぎではあるが、多くの人類を救えると考えれば、各国の首脳陣も許可を出した。

 

 僕も納得はしたが、現在になっても雪や氷が溶ける様子はない。

 何故、氷河期が終わっていないのかはわからないが、きっと何かが起きたのだ。

 

 

 

 だが、映像はここで終わりのようだ。

 生き残った仲間のその後が語られながら、美しい音楽が流れる。

 

 さらに今回の映像を作成した人の名前や、協力した組織や団体のロゴが表示されていく、その際にアリサとマザーが中心になって制作していることがわかった。

 

 僕が壮大なドラマを見終わったあとの感動に打ち震えていると、艦長からメッセージが届く。

 

「これが三部作の一作目だが、どうだった?」

 

 僕は返事をしようとしたが、どうやって返信すれば良いのかよくわからない。

 取りあえず生まれて初めて見た映画は、驚きの連続だった。

 

 そして彼が何を思って僕たちにこれを見せようとしたのかは、不明である。

 

 しかし、笑いあり涙ありの大迫力の映像は、見る者の心を大きく震わせた。

 とても感動したし、今も興奮しっぱなしで考えがまとまらない。

 

「休憩時間を挟んだあとに第二作が上映されるが、その前に一度出るか」

 

 艦長がそう言うと、視界が元に戻った。

 電磁格子に閉じ込められているし、僕の体もちゃんとある。

 

 しかし、何だか凄く不思議な体験をした。

 

 周囲の先輩たちも困惑しているなかで、通路に立っている彼は慣れているようで動じずに口を開く。

 

「今の映画は、史実を元に作られた映像作品だ。

 何処までが事実かは、俺も良くわかっていない」

 

 そして少し間を置いて、難しい顔で続きを話す。

 

「だが人類統合軍にも、天から落ちた星によって永遠の冬が到来したと、断片的だが記録には残っている」

 

 つまり今までの光景は、過去に本当に起きた歴史的事実を映像にしたものなのだ。

 僕たちはそれを、たった今実際に見てきたかのように、追体験したのである。

 

「俺は科学には詳しくない。

 だから隕石の落下で惑星の地軸が狂った影響で、氷河期が終わらないと教わった。

 これまでずっと信じていたが、どうやらそれは間違いらしい」

 

 そのことを、艦長にはっきりと伝えられる。

 僕は信じ難い事実を告げられ、驚きのあまり体が震えてしまう。

 

「ここから先は、氷河期の以降の歴史になる。

 人類統合軍の暗部に触れるから、覚悟をしておいてくれ」

 

 艦長は真面目な顔で尋ねてくるが、僕たちは誰一人として逃げる気はない。

 

 先程の映画が面白かったというのあるが、過去に何があったのかが気になる。

 

 それに艦長は信じたかも知れないけど、自分たちは絶対に騙されたりしない。

 この映画でシティの情報が得られるかも知れないし、最後まで見届けるのだった。

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