深夜 自転車で走っていると婦人警官に止められた

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第1話

仕事を終えて深夜、自転車で走っていたら警官に止められた。

 

婦人警官だ。

 

「ここは一方通行なので…、逆走になってしまいますので」

 

そう言われて驚いた。逆走?

てっきり防犯登録をチェックされるのかと思ったのに…

 

彼女は用紙を取り出しペンを握る。

 

「住所教えてもらえますか?」

 

えっ、嫌ですけど?

 

大体、本物かどうかもわからない。偽警官かもしれない。

 

実際に、偽警官による詐欺事件も起こっている。

 

しかしそんなことを言っても、通らなそうなので素直従った。

 

「お仕事は?」

 

えっ、そんなことも言わなきゃいけないの? 

個人情報じゃないの?

 

彼女は用紙を記入し終わると下のほうの部分を切ってこちらに渡した。

 

「指導警告票」と書いてある。

 

1、酒気帯び、2、携帯電話使用、3、信号無視など様々な違反が書いてある。

10番目が空欄の( )で、そこにボールペンで「逆走」と書いてある。

 

裏を見る(表かもしれない)。

 

自転車安全利用五則、と書いてある。 

 

1 車道が原則、左側を通行 歩道は例外、歩行者を優先

2 交差点では信号と一時停止を守って、安全確認

3 夜間はライトを点灯

4 飲酒運転は禁止

5 ヘルメットを着用

 

ヘルメット着用がいつの間にか原則になっていたのか?

 

ルールは守らなければいけない。

しかし、そもそも免許があるわけではないのだから、細かなルールは、わからなくてもしょうがないのでは?

 

居酒屋で1人で飲んでいたら、知ってる顔がいた。

 

彼女だった。

 

今日は私服で制服ではない。

 

目と目があった。意外にも彼女は俺を覚えていた。

 

自分の向かいの席に座るように促してきた。

 

俺は交通違反の切符を切られたことに恨み事を言った。

 

あくまで指導警告票だと彼女は言った。

イエローカードのようなもので、繰り返さなければ問題ない、らしい。

 

彼女はガンガン酒を飲み、だいぶ酔っ払ったようだ。

 

なぜ警察官になったのかと、俺は聞いた。

 

自分は本当は警官じゃない、ある人の命令で警察官のふりをして個人情報を集めていたがもうやめた。ばれるリスクが高い。

 

…?

 

警官じゃない?いったい何を言っているのか…

 

俺は騙されて個人情報を盗まれたのか?

 

でも毎回、そんなにうまくはいかないだろうからやめた。みんながみんな、あなたのように馬鹿だったらいいんだけど…

 

さすがに申し訳ないと思ったのか彼女は自分の家で一緒に飲もうと誘ってくれた。

 

彼女の家に行った。

 

彼女は、もう既に酔いが覚めているみたいだったが、また飲むつもりはないようだ。

 

そっと俺に唇を寄せてきた。

 

口づけを交わしてから、ふと俺は思いついて、尋ねた。

 

あの時の婦人警官の服はあるのかと聞いた。

 

あるけど、それがどうかした?

 

婦人警官の服を着て欲しいとリクエストした。

 

彼女は呆れながらも了承してくれた。

 

偽警官と婦人警官の服を着て交わった。

 

何を言ってるのかわからないと思うが本当だ。

 

後日、タバコ屋のおばちゃんと喋っている時、彼女がバイクに乗って通り過ぎた。

 

あの人、偽警官なんですよ、と言った。

 

何を言っているのか?自分はあの子のことを小さな頃からよく知っている、警察官で間違いない。

 

そういうふうにおばちゃんは言った。

 

つまり彼女は本物の警察なのに偽物のふりをした、ということになる。

 

わけがわからない。

 

ある日勤務中の彼女を見かけた。

 

彼女に詳しく話を聞こうと俺は話しかけた。

 

「なんですか?」 

 

完全に初対面の人間に対する態度だ。

俺に対する記憶だけすっぽり消えてしまったみたいだ。

 

俺は適当に駅への道順を聞いた。

 

彼女は微笑んで、とても親切に教えてくれた。

 

それ以降、道ですれ違っても、お互いに目を合わすこともない。

 

いつかもう一度ちゃんと話してみたい。

 

そういうふうに思っているが、果たしてそんな日は来るのだろうか。

 


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