起きたら仁義なき転生、それから。   作:函南

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仁義なき遠征

「ダンプ部隊を編成して浜崎組の応援に行くったってねぇ…」

 

槇原の舎弟である浜崎組の応援に行くと言うことで、槇原を大将に松永、江田、広能の各組から人を出し、ダンプと車でワラワラと浜崎組の法事会場に押し掛ける…と言った所だ。上田は本家に詰めているそうだ。と言うことで、軽く作戦会議が広能組の事務所で行われた。

 

「小沢よ、岩国まで行くんはええんがの宿はどうすんなら。それなりに員数おるんど?」

 

「松永の兄ぃ、日帰りしますんで宿は要らないです。どっか温泉寄りたいなら各自でどうぞ。」

 

「日帰り出来るんか?そがな簡単な戦争しよるんか?」

 

「江田の兄さんは戦争やる気あります?」

 

「ほうじゃ江田よ。こらぁ山守がワシらの歓心買いとうて尻かいとるんぞ。ワシら素直に戦う義理はありゃあせんじゃないの。」

 

「オヤジの言うとおりで、山守のオヤジさんが影響力を保持したくて動こうってのが主題です。」

 

「そう言うても、岩国まで出張ればお目付け役がおるやないの。」

 

「兄ぃ、槇原のこと分かってませんわ…長いものに、多数に靡きます。兄ぃ達がやらんと言えば尻尾巻きます。」

 

ここらへんは槇原の性格と原作を知ってれば読める話だ。黙っててもそうなったろうが、今後を考えると出来るだけ原作登場人物には泥被りして欲しくないというのもある。

 

「昌三の所の参謀長は頭が回るようだがの、どういて帰るんじゃ。出張ったら戦争じゃろうが。」

 

「江田の兄さん、小森組は打本組の舎弟ですよ?御三方、兄貴分に弓引くんで?」

 

「あぁん…それは上手くないのう。そこを使うて引き上げるっちゅうことじゃの?」

 

「そうです。自分がそこを煽りますんで、乗っかっていただければ…と言う感じです。」

 

「そうじゃ。下のモンに示しがつかんことは出来んからの。」

 

「ほいたらそう言うことでの。」

 

「であればであれば。」

 

「あ、くれぐれも違法な物は持たずにお願いします。」

 

「なんぞ小沢、なんかある言うんか?」

 

「検問対策です。」

 

「ほうか。ほうなら丸腰じゃのう。」

 

こうして反槙原対策会議は終わった。俺はここからトラックの手配、日帰り旅行の参…浜崎組の応援のメンツ選び、往復の燃料代の計算、などなどの予算を算出して、悩み顔の水上に申請する。

 

「なぁ水上よ。これくらい予算つけて欲しいんだわ。岩国行きの予算だ。」

 

「おぉ…兄貴、こんなもんで済むんで?」

 

「日帰りだ。少し多めに申請したくらいだ。なんだ?なにか悩んでるのか?」

 

「それがですの、西条の受け持ちの店のみかじめ料が三ヶ月ほど満額払えとらんのです。減額の相談とかした方がええですかのう?」

 

「そうだな。無理に取り立てるのは良くない。少し事情聞いて、厳しいようなら減額しよう。オヤジへの相談は任せる。俺、店回ってくるよ。倉元、出るぞ。」

 

結果、夜の街に出たら西条に会うのが早かった。

 

「西条よ。丁度良かった。聞きてぇ事があったんだ。」

 

「アニキ、何事ですやろ?」

 

「ここ三ヶ月、上納額が足りてねぇ。上がりの悪い店に連れて行け。」

 

「いやいやいや…アニキにご足労いただくことじゃありゃせんですよ。」

 

「上納額がキツいなら相談に乗ろうと思ってな。」

 

「いえ今月からは払わせますけん。申し訳ありゃせんです。」

 

「わかった。じゃあ払えなかった店の名簿、出しとけな。」

 

「へぇい。」

 

「あぁ…最近、テレビ買ったんだって?」

 

「あっ、ええ、女が欲しい言いますけん…なんで知っとるんで?」

 

「耳は良くないとな。ヤクザなら。」

 

ああ…やりやがったな。どうしてやるか…こいつ追い詰めると倉元が死ぬ。あまり追い詰めたくない。まぁ…帰ってから考えよう。なんて甘かった。事務所にはオヤジと水上がいた。

 

 

「小沢、みかじめ料高いかのう?」

 

「あー…遅れたものの払えるって言う話なんで、大丈夫かと。」

 

「ほうか…払えんかのう…」

 

「いや払えるって…」

 

「こんなは大博打は出来るが、小さい嘘は苦手じゃのう。」

 

「ちょっと時間ください。」

 

「まぁ任せるわい。納めや。あとシマ内で暴れとったガキだがの…」

 

「え?また?」

 

氏家厚司、すっかり忘れてたがまた暴れてんのか…いや記憶がない分、何とも言えない。

 

「いやアニキ、違うんですわ。子分にしてくれ言うてさっきまで来とったんですわ。」

 

「聞いた話だと随分、小沢にやられた言うててのう。」

 

「お恥ずかしい次第で…泡盛勝負を吹っ掛けまして…」

 

「酒か…こんなも懲りんのう…まぁええわい。氏家とやら、うちで面倒みるけん、ようせぇわ。」

 

「俺は倉元見てるんで見れませんよ?」

 

「水上に見させるよって。安心せぇ。」

 

「いいですね。水上はきっちりヤクザですわ。」

 

「アニキはなんですか?」

 

「俺は屋台のニーチャンだ。」

 

 

翌日、倉元を車に待たせて、西条の家に押しかけた。ドアが開くと同時に襟首掴んで押し倒す。

 

「あぁっアニキッ…」

 

「西条、オメェ、みかじめ料ちょろまかしてんのは分かってんだ。今回は見逃してやるから以後、二度とやるな。次はぶち殺す。」

 

「あぁぁっ…」

 

「お前はみかじめ料をちょろまかしてない。ただ払えなかった店があった。いいな?」

 

「しゅんまふぇん…」

 

締め上げすぎてまともに話せない西条を放り投げて、次の予定地へ向かう。お茶でも出してくれそうな所に。

 

「アニキ、ここ県警本部じゃ…?」

 

「いいんだ。用事があるんだよ。」

 

「はぁ…」

 

そう言って’ヤクザでござい’なんて見てくれの二人が、ズカズカと警官を押し除けて受付に顔を突っ込む。

 

「捜査二課の海田昭一警部補呼んでくれ。小沢が来たって言ってくれたらいい。」

 

しばらく待っていると、案内に若い刑事が出て来て取調室に案内された。倉元と一緒に入って適当に座っていると、待ち人が来た。地図を渡しつつ会話を楽しむ。

 

「君から訪ねてくるとはどう言う風の吹き回しかな?そっちの彼は初顔だね。」

 

「ああちょっと海田君に手柄をあげようと思ってね。これは俺の舎弟みたいなもんだ。倉元挨拶しとけ。」

 

「倉元猛いいます。よろしゅう。」

 

「海田昭一だ。ヤクザなんか辞めて警察来ないか?」

 

「引き抜きはやめてくれ。で、だ。来週の水曜日、山守組は岩国の浜崎組と小森組の抗争に首を突っ込む。ルートはこの道だ。」

 

「それを僕に言って君にはなんの利益があるんだ?」

 

「台数も陣容も教えない。あぁ一応、法律に引っかかる物は持たないよ。茶くらい出してくれよ。」

 

「わからないな。山守組幹部槙原の舎弟に応援を出すのはわかるが、僕に教える意味がわからない。」

 

「検問敷け。そして、台数、陣容、行く人間を山口県警に伝えろ。」

 

海田は目を見開いて俺を睨む。睨まれてる間にお茶が運ばれてきた。

 

「やっとお茶が飲めた。抗争拡大は本意じゃないだろう?こっちも利のない喧嘩はしたくないし、仁義に反する行為は遠慮したい。」

 

「見えないな。君の本意はどこにある?」

 

「警察に妨害される事そのものが俺の利益だ。現地でも山口県警の機動隊がいてくれると更にいい。」

 

「妙な奴だな。どうして妨害されたいんだ?」

 

「海田警部補の点数稼ぎだ。本当にそれでいいんだよ。」

 

「奇妙な話だが、乗ってやろう。見返りはないぞ。」

 

そう言ってお茶を啜りながらメモを取る海田を眺めながら笑ってやる。

 

「いいさ。一緒にお茶を飲めただけでいいよ。今度は駅前の喫茶店でどうだ?」

 

「今回の話が本当だったら割り勘で行ってやろう。本当だったら…だ。」

 

「じゃあ遠からずだな。」

 

「小沢、お前もいつか捕まえる。」

 

「それじゃあな。」

 

こうして俺の打てる手は揃った。

 

 

そうこうしてるうちに当日、山守組の前には盛大なダンプの車列が並び、その前で槙原が気勢と拳を振り上げた。

 

「おぉうし‼︎これからみんなで岩国まで押し出しちゃるぞ‼︎」

 

「おう槙原よ。ワシんとこの小沢が掴んだんじゃがの、今日は県警が検問敷いちょるって話じゃ。ほうじゃとヤッパ一本持ち出せんじゃろうが。」

 

「小沢の兄弟が掴んどるなら確実じゃな…そうなると岩国に着く前に凶器準備集合で全員ブタ小屋行きじゃろうがの?」

 

「なっ…そがな話…どういて今日検問なんじゃ。」

 

「そらぁ…こがな台数のダンプ借りとれば怪しまれもするのう。上田に借りさせば良かったのう?」

 

もう、広能、松永、江田の三人すげぇ白々しい。そして、倉元は凄い目でこっち見てる。親分集があーでもないこーでもないと、まとまらない議論をしてる間に倉元のところへ寄る。

 

「あのな、ヤクザなら警察もうまいこと使ってやらんとな。」

 

「アニキはどうしたかったんで?」

 

「このゴタつきそのものが目的さね。結束もクソもねーだろ?こんなんで戦争できっか?」

 

「なるほど…自分にはまだよう分からんですけん。」

 

「まぁこれから学んでいけ。」

 

オヤジが大声で声をかけて来た。

 

「小沢、行くど。はよう乗らんかい。」

 

ワラワラと乗り込み、出発する。槙原組の面々も武装解除したらしく、ちょっと手間取ったが出発の運びとなった。多少、気勢は削がれたものの、槙原はまだ抗争の援軍になると思っているらしく、窓から身を乗り出し、拳を振り上げている。車列の最後尾で倉元にダンプを運転させて、悠々ダンプ旅…できれば寝台列車が良かったなんて、あらぬ方に意識を飛ばしていた。ああ良き天気、心安らかなり。

 

 

程なく県境で検問にかかり、一台ずつ車内を改められている。最後尾だったので、警官の中で見知った顔に声をかける。

 

「よーう海田君やぁ〜。約束は果たしたぜぇ〜?」

 

「笑止…と言いたいが君は本当の事を言っていたね。」

 

「いい点数稼ぎになっただろう?次は俺に付き合って貰うぜ?」

 

「ほら。さっさと行けって。」

 

ツラツラと車列は一路、岩国に向かう。物思い気味に倉元が話しかけて来た。

 

「アニキは戦争にならん方がいいと思うとるんですか?」

 

「この際だから言っておくけど、戦争がとっくに終わって、今じゃみんなが豊かになろうとしてるよな?」

 

「はぁ…」

 

「なのにヤクザはまだ殺し合いしてる。滑稽じゃねぇか。」

 

「それもヤクザの領分やないんですかの。」

 

「そう言うもんか?だとしたらお前、警察になったらどうだ?」

 

「アニキはヤクザ嫌っとるんですか?」

 

「親のため、アニキのため、舎弟のため、体張るのは美しいさ。でもな、俺たちはカタギさんのカスリで食ってる。人の不幸で食ってる。そう言う面がある事忘れたら外道だよ。」

 

「ワシら何のためにおるんです?」

 

「ヤクザから暴力取ったらただのゴミだわな。でも、極道は力だ。最後はやっぱり暴力なんだ。」

 

「矛盾しとらんですかのう?」

 

「いいんだ。その矛盾が許されるのがヤクザだ。暴力団だ。」

 

倉元がどう言う表情だったのか、それは見なかったことにしよう。倉元には悩み続けて欲しい。それでこそいい男になる道だろう。若いんだからやり直せなくもないんだが、ヤクザになるならカタギらしさを残していて欲しい。そんな事を考えている内に岩国の法要会場に到着した。

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