起きたら仁義なき転生、それから。   作:函南

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仁義なき商魂-倉元の貿易奮闘記-

初めまして。広能組会長の倉元猛と申します。広報の方から伺っております。本日は弊社の歴史についてお聞きしたいと伺っております。どうぞお座りください。どうぞ。広島銘菓、もみじ饅頭とほうじ茶です。ここのもみじ饅頭はほうじ茶が合うんです。

何?…小沢夏樹…?

いえ。随分と懐かしい名前を聞いたと思いましてね。そうですか。小沢夏樹。どこでお聞きになったんですかね。どこまでご存知です?

そうですか。そうでしょう。彼は当時、暴力団だった頃の広能組の若い衆でした。懲役にも行ってますし、なんでしたら多分、言えない様なこともしていますね。被疑者不明で時効となっている事件もいくつかは彼が関わっています。その点については私も黙らせていただきます。私は広能組でお世話に…部屋住みですね…になった時、彼の下で学ぶ様に言われました。

ちょっと私素行が良くなくてですね、母親が小学校の恩師に頼りまして。教え子だったという広能昌三に頼ったんです。今では考えられませんね。時代です。それで…私の教育担当の彼は、当時の広島では彼を知らない界隈の人間は…いなかったでしょう。よくも悪くも有名でした。当初は金魚のフンの様について回るだけでした。そう。出会った当日、時計を貰いましてね。当時で…二十万円はしたんじゃないしょうか、スイス製の時計です。初日はいろいろ顔つなぎに行きました。大久保憲一、上田透、若杉寛、大友勝利…暴力団の歴史書があるとしたら絶対出てくる様な人物ばかりでした。

そう…彼の言葉で忘れられないのは’極道は力、最後は暴力’でした。ですが、私には運転手とお付きの者くらいしかさせてくれませんでした。

あの時代の広能組にいたのに拳銃どころが、刀にも触れた事がないんです。

 

さて、なにから話しましょうか…そうですね…彼は某国大使と縁を持ちましてね。そこからテキーラを輸入を始めたんです。

 

 

 

アニキはどうやら自分の子分たちを使って、中南米の酒を輸入し始めた。何かの経済誌で読んだが、あの辺りはコカインの生産が盛んでそっちを輸入しないのはアニキの方針らしい。ポンを始め、薬物は厳しく禁じられている。興味があって接待に同席させて貰った。

一応の接待では瀬戸内海を一望するオーシャン観光のホテルで食事をし、ちょっとした雑談をしてきた。ここで俺は一つの疑問をアニキにぶつけてみた。

 

「日本までテキーラ積んで、帰りは何積んどるんです?」

 

二人とも硬直してしまった。マズい事を聞いてしまったのだろうか…?

 

「大使、何積んでます?」

 

「いや、ミスター小沢こそ。何か輸出してるんじゃないのかい?」

 

もしかしてだが…この二人…まさか、あれだけ頭の切れるアニキがまさかそんな訳はないはず…

 

「「空荷で返していた⁉︎」」

 

衝撃である。一方的に輸入しかしていなかった。アニキも人の子だった…。

 

「大使、これは由々しき事態だ。我々がチャーターしているコンテナは50%しか稼働していない。これは商機を半分失い、正気は完全に失っていることになる。」

 

「そうですね。ミスター小沢の言う様に、全く完全に狂気の沙汰です。早急に何か輸出するべきです。」

 

「と言っても国民一人当たりの経済力の差が激しい。」

 

「そうですね…我が国は日本ほど豊かではない。」

 

「日本で売れたから貴国で売れるとは限らんのか…」

 

仕方ない。ここは一つ聞いてみるのも手だろう。ここ何年かで得た知識、人脈、伝手で何とかなるかもしれない。

 

「ちょっとええですかのう?」

 

「なんだ?倉元、何か案でもあるのか?」

 

「大阪の商社なんですがの、ちくと株主総会で相談されとりますけん。」

 

「総会屋かぁ…大阪といったら近畿商事か。それで?」

 

「総合商社ですけん。何か探してくれるんやないかと思うんですがの…。」

 

「なるほどな…とりあえず総会屋の対処だな。大使、申し訳ないが我々は用事ができてしまった。関村を部屋で待たせています。この後の接待は彼に言ってください。」

 

 

大使と別れ、アニキと急ぎ事務所に帰った。全く意外な手落ちを見た。珍しいものを見たと言える。

 

「倉元、お前に課す条件は三つだ。二週間ごとに3トン用意出来る物、常温でいいもの、広能組に50%、大使に20%、残りの30%を中間に立つヤツの上前にしていい。総会屋は明石組に聞いてみる。」

 

「大使との契約は25%では?」

 

「それはテキーラだ。輸出は安定するまで低く伝える。」

 

「わかりました。ちくと聞いてみますけん。」

 

「ってかなんで総会屋の相談されたんだ?」

 

「広能組の方にご相談が…って感じですけん。不味かったですかの?」

 

「いや…なんで先方がそれ知ってるの?」

 

「だって名刺に書いてありますけんの。」

 

「マジか…」

 

アニキは頭を抱えてへたり込んだ。何か良くない事をしたのだろうか?

自分の名刺を取り出してみるが…何が悪かったのだろうか?

アニキの尺度は独特なので、深読みしすぎないのが重要だろう。

 

 

後日、大阪にて件の商社の担当者に指定された喫茶店に来ていた。

 

「広能組の…倉元さんでしょうか?」

 

「あ、近畿商事の…」

 

「壱岐正と申します。」

 

「倉元猛言います。よろしゅう願います。」

 

「こちらこそよろしくお願いします。」

 

「総会屋の件ですがの、アニ…上の方で対処を考えて貰える言う話ですけん。お待ちいただけますかの?」

 

「ありがとうございます。内々に解決したいもので…それにいつも通りで構いません。本題ですが商品をお探しとか?」

 

出来るビジネスマンってこんな感じなんだろうか?ただ雰囲気というか、空気感がアニキに近いものを感じる。

 

「はい。アニキは中南米某国と船便で交易していますけん。来る時はテキーラを40フィートコンテナで満載、帰りは空荷だったそうで。」

 

「なるほど。広島で流行っているテキーラはそちらさんの商品ですか…空荷とは勿体無い。勿体ないですね。」

 

「ですけ、何か輸出したいと考えとるんです。先に条件ですがの、こちらで50%、大使に20%、中間に立つ御社には30%の取り分で考えとります。」

 

「それだけ…ですか?」

 

「少ないですかのう?この条件はアニキに相談せんと動かせんのですけ。」

 

「いえ、もっと何かあるのかと…なんと言うか…」

 

あぁ…ヤクザだからタカられると思ったんだろうか?だよな。こっち、ヤクザだしな。

 

「タカる気はありゃせんです。言うて自分もこがな名刺は持っとりますが、それらしい事は何も。ヤクザなのか商人なのか不安になりますけん。」

 

「それは倉元さんのアニキさんの見解と思っていいですか?」

 

「問題ありゃせんです。’カタギさんに嫌われたら飯の食い上げだ’言うとりますけん。」

 

「そちらの方にしては珍しいですね。」

 

「アニキは元海軍ですけん。少し変わっとるんです。」

 

「海軍、ですか。」

 

「へぇ。予科練だったとか言うとりましたけん。」

 

「そうですか…ところで商品はどのくらい欲しいでしょうか?」

 

「常温でいいもの、二週間ごとに3トンと聞いとります。」

 

「なるほど…結構、幅広く探せそうですね。」

 

「船便ですけん。壊れ物もあかんですの。聞いたところでは日本ほど豊かでもない言うてましたけん、安価で大量に持ち出せるもんがええですの。」

 

「そうですね。かの国の国民は日本の五分の一くらいの経済力と考えていいでしょう。」

 

五分の一と聞いてちょっと困る。少し前まで貧乏ではないが、余裕でもなかった頃がある。その時の五分の一と考えると…何に金を使う?

 

「食品…」

 

「はい?」

 

「それくらいの収入なら何に金を使うか考えとりましての。食う事はやめられん思うたんですわ。」

 

「その線で行きましょう。珍しい日本の食品、安価であれば売れますよ。いい視点です。アメリカ支社があります。リサーチを頼んでみましょう。一週間ほどいただけますか?」

 

「ほうならお願いしますけ、連絡は組の方にしてつかあさい。では、よろしゅう願います。」

 

 

広島に戻り、事務所に戻って使える予算やらを確認していて気がついた。アニキの資産預かってるけどこれはまずいかもしれない。まぁ菅原さんに一言相談しよう。あれやこれやの仕事をしている内に、壱岐さんから連絡をもらった。提案書を送ってくれたそうだ。

届いた提案書は面白かった。実に面白い商品を提案して来た。なるほど、全ての条件を満たしている。

軽く詳細を詰めて、アニキに時間を貰い、提案書と見積もりをみせた。

 

「先方が提案してきたんですがの、即席麺の輸出はどうか言うてるんです。」

 

「即席麺?お湯注いで三分ってか?」

 

「へぇ。安価で大量、しかもこれなら税関や、遠方まで運んでも然程、値段も上がりませんけ、かの国で誰でも買えると思うんですがの。」

 

「商社もいい物持ってるな。で、なんぼの取り分で収めたよ?」

 

「5:2:3で変わりなく。」

 

「そうか…よくやった。総会屋は岩井さんの方で締め上げるそうだ。そっちは心配いらん。」

 

「ありがとうございます。一応、早ければ来月から調達できる言う話ですけんどういたらええですやろか?」

 

「始められる時から始めていい。契約してくれ。全力でやっていいぞ。」

 

「ええんですか?」

 

「商社が調べて、倉元が乗るって言ったんだ。いいだろう。やっちまえ。」

 

「ほうなら買い付けますけ。よろしゅう願います。」

 

俺は壱岐さんに承諾の連絡をして、契約書を交わした。

 

 

取引当日になり、壱岐さんと積み込みを確認し、受領書にサインをした。

 

「順調な取引で。ありがとうございます。お支払いですが…」

 

「へぇ。初回なんで現金でお持ちしました。」

 

「え?」

 

「次回からは末締め翌末日入金です。大丈夫でしょうか?」

 

「いや現金ですか?」

 

「本日は現金ですけ。手形か、何か別の形で回しましょうか?」

 

「現金で構いませんが…なんとなんと。豪快な、あなた方らしい。いいですね。稼業の方なのが勿体無い。」

 

壱岐さんは上品に、静かに笑った。

 

「ケースに三つありますけん会社まで届けさせますかの?」

 

「いえ、車に積めるので大丈夫です。」

 

「ほうじゃそうしましょう。」

 

「今後もいい取引をお願いします。出来ればテキーラなんかもうちで扱いたいですね。」

 

「あれはアニキのところの、松永組のシノギですけん。自分は触れませんのじゃ。」

 

「それはそれは…では今度はアニキさんともお会いしたいですね。」

 

「そうですの…商売が大きゅうなったら機会もありますやろ。」

 

「そうですね。それと総会屋の件、ありがとうございます。助かりました。」

 

「今後もええ付き合いしてつかあさい。裏の腹なぞありゃせんです。」

 

「倉元さんのアニキさんは明石組を動かして、後腐れなく使う事が出来るんですね。」

 

「まぁ…明石組長に直、会いに行くくらいですから。」

 

「はぁ?やっぱり常識外の人らしいですね。」

 

「未来から来たのか、それとも宇宙人か超能力者くらいに思っとかんと帳尻が合わんです。それか預言者…あ、ここだけの話ですけ。」

 

「聞かなかった事にしましょう。」

 

二人で高笑いした。アニキはどこでも話題性がある。

 

 

 

こうして即席麺をかの国に輸出する事業を始めたんです。これが大当たりしましてね、そういう人だったんです。

申し訳ありません。次の予定がありますので、本日はここで。こちら私の名刺です。何人か通じる人を紹介します。もし興味があれば行ってみても面白いでしょう。

では、では。




不毛地帯、すごく好きな小説なんですよね。
倉元商売記でした。
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