起きたら仁義なき転生、それから。   作:函南

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背徳の名前

順調にみかじめ料を払ってもらえる様になり、港はダイスラーの協力により今日も全力運転。いいぞいいぞ。キャッシュフローが貯まってきたのでそろそろ何か始めてもいいかもしれない。教育上よろしくないが、家に一人置いておくのも可哀想なので、事務所に机を用意して、総司にはそこで勉強をして貰っている。逐一わからない事を聞いてくるので効率もいい。教育上よろしくないのが問題だが。

 

「トーゴーこれの決済してくれ。」

「トーゴー、こちら揃ったので、予算の見積もりです。」

「トーゴー先月のアガリこれです。」

 

「ん?」

 

なにか可笑しい。今、サラッとダイスラーが書類を置いていった。顔を上げたら、そこに居たのは間違いなくダイスラーだった。

 

「トーゴー、どうしました?」

 

「いや、普通に今、俺、受け取ったけど、なんでダイスラーがウチの事務所にいるの?」

 

「あぁ。でしたらルワンにも言ったのですが、こちらの乾ドックを拠点にするので我々もここに引っ越してきました。その方が効率もいいですし。」

 

「へぇ…ルワン、聞いてないよ。俺。」

 

「あれ?ここの乾ドック使うならそう言う事じゃないの?」

 

「いやここ、ルワンの会社だし、いいけど…」

 

アウトローが多いこともあって、ここに海賊がいても何も不思議に思えないところが、ここに染まってきた事を実感する。

 

「ところでこの魚雷艇の見積もり、四隻になってるけど間違い?」

 

「いえ、間違いなく四隻です。物の写真が送られてきましたが、修繕可能なレベルの損傷と判断し、四隻を確保。トーゴーが出してくれると言った金額で買えます。修繕と武装の追加は今の船を処分すれば十分です。」

 

「あ、そうなの?じゃあそれで。でも、操縦というか操船の仕方とか分かるの?」

 

「ええ。それに関しては南ベトナム軍の脱走兵を雇う事になっています。その見積もりも一緒に。」

 

「なるほど…ってかなんで俺に決済求めるの?」

 

「私はトーゴーの部下では?」

 

「は?」

 

「いえ、ドックの提供に燃料の融通、資金の提供まで来たらもう配下でしょう?」

 

「いや…そういうつもりじゃなかったんだけど…お宅の部下とか手下とか…」

 

「納得済み…というか発展の見込みがあるので喜んでいます。」

 

「ほら、ルワンの会社だし。ルワンの意向も…」

 

「ああ。会社は俺のだけど、ここいらを仕切ってるリーダーはトーゴーだろ?」

 

深刻な理解の相違により俺は街を仕切り、海賊を従える頭目となっていた。聞いていない。

 

「よし…理解した。知らぬうちにとんでもない事になっていた。うん。」

 

「今更、状況を把握したのですか?」

 

「まぁ…ってか南ベトナムの兵士雇うって言ったじゃん?それって増やせるの?」

 

「ええ。旗色が悪くなって脱走兵が増えているので。」

 

「なるほどな。ダイスラーの昔の友人で経験豊富、優秀な人っている?」

 

「何人かいますね。というか部下に何人か国から連れてきた者達がいます。」

 

「よし。積極的に…と言っても30人か40人雇ってダイスラーの部下に訓練してもらおう。」

 

ダイスラーもルワンも「何したいの?」と言わんばかりの表情だ。

 

「警備会社を立ち上げよう。そうだ。スクラップ業者から米軍の廃棄する銃器、軽火器も買えないか聞いてくれないか?それか脱走兵に売ってくれそうな上官の情報をくれないかと。」

 

「しかし、トーゴー。兵士を軍人に訓練させたら警備員とは言えないのでは?」

 

「そうだ。これからは戦場でサラリーマンが戦う時代が来る。それに、みかじめ料を払ってくれてる店の安全も保証しなければならない。」

 

「トーゴーは時々、突拍子もない事を言う。ダイスラーさん慣れてくれ。」

 

「ルワン、さんはいらないよ。それに面白い。乗ってくれそうな友人に心当たりがある。」

 

「では、そう言う事で。ダイスラー、もう一回見積もり作ってくれないか?ルワン、手頃な物件ない?」

 

「承知しました。」

 

「空きアパートが何軒かあったはずだ。ピンさんに聞いてみるよ。」

 

こうして我々は新しく警備会社を立ち上げる運びとなった。

 

「ところで我々の名称はなんと言うのでしょう?」

 

「ドイツ、日本、タイ。枢軸国だな。アクシズと名乗ろう。」

 

「いいですね。アクシズ。そうしましょう。」

 

「やっと港湾組合から卒業か。」

 

諸々の段取りがついた所で、一息ついてコーヒーを啜る。

 

「父さんは本当にヤクザなの?」

 

「当たり前だ。街の人たちから上前をハネて、海賊の武装強化、兵士を教育して軍隊を持とうとしている。これをヤクザと言わずしてなんと言う?」

 

「でも、きっかけは街の人たちのためから始まってる。」

 

「カタギに嫌われたらメシの食い上げだ。」

 

「やっぱり父さん目指すよ。」

 

「ロクな人生じゃない。」

 

不思議そうな顔をしていたがいつか分かる。これだけは勧めたくない。

 

 

数日が経って、時間通りに事務所に着くとボコボコにされた若者たちとルワンとその手下がいた。

 

「どういう事?」

 

「これも相談されて。こいつらヤク売ってて。時々喧嘩騒ぎ起こしてるんだよ。」

 

「あーね…とりあえず総司は勉強してていい。どうしたものか…結構、当たり前に売ってるモン?」

 

「ああ。今から総司に頼んだら一時間後にはここにあるだろう。」

 

「じゃあルワン、こいつら倉庫に連れていって卸元を聞き出してくれ。」

 

「薬物も取り扱うのか?」

 

「いや。ダイスラーの海賊行為と一緒だ。流通を制御する。立地的に禁止は出来ないだろうし、取り扱いもしたくない。ので制御するんだ。」

 

「なるほどな。秩序に組み込むのか。じゃあ、荷上げしている物もヤクは荷上げ料を上げよう。」

 

ルワンもそもそも頭がいい。と言うか理解が早い。

 

「それでいい…まさかと思うが人間は荷上げしてないよな?」

 

「さすがにそれはないさ。」

 

「ならいい。」

 

薬物が当たり前だと人間もかと思って不安になったが、さすがにそれはなかった。よかった。

 

昼を過ぎた頃、ダイスラーが事務所に来た。

 

「トーゴーいいかな?」

 

「どうした?」

 

「米軍の破棄された銃火器ですが、トン単位で購入可能です。どうします?」

 

「そんなに?」

 

「ええ。一部退却時に放棄していった物がありまして。北はソ連製の武器なので金に出来るなら…と言う事で。」

 

「ちょっとアテがある。その話、保留していいかな?」

 

「構いません。ですが、女神は前髪しかありませんよ?」

 

「急ごう。」

 

いくつか電話をかけて、折り返しを待った。折り返しの電話でアポが取れた事を確認すると、目の前にいたルワンに声をかける。

 

「ルワン、ちょっと出かけてくる。総司、ついてくるか?」

 

「うん‼︎」

 

そんな期待する目でこられても困る。少し仕事を見せておこう。こうなりたいとは思わなくなるはずだ。ロッカーに入れてるワルサーを腰に差してアロハを羽織る。

 

「あぁ。ダイスラー。こいつのホルスターが欲しい。」

 

「これは…純正のワルサーP38ですね…しかも前期の仕上げの綺麗な物だ。懐かしい。探しましょう。」

 

「頼んだ‼︎」

 

 

総司を車に乗せて目的の場所までサラッと走る。懐かしい人物に会いに行く。日本にいた頃の知り合いに会うのも久しぶりだ。

目的の建物…懐かしのブーゲンビリア貿易…で受付を済ませると応接間に通された。紅茶か…コーヒーがよかったんだがな。

 

「お待たせしました。お久しぶりですね…トーゴー。港から街までを仕切っているとか?」

 

「ご無沙汰している。お変わりなくて結構です。クルツコワさん。大袈裟だな。」

 

「で、今日は業者をお探しとか?」

 

「ああ。近々、大量の小火器、米軍の物が入荷する。それらを捌ける人物を探している。」

 

「武器商人…と言う事ですか?」

 

「ざっくり言えばそうなる。が、無節操にテロリストからギャングからゲリラまでを顧客にしている様な人間は遠慮したい。」

 

「でしたら心当たりが一人。まだまだ若いですが、見どころのある人物が。」

 

「いいね。では、サンプルを用意するので弊社までご足労願いたい。」

 

「連絡をとって、アクシズに行く様に伝えます。」

 

「クルツコワさんも同席願いたい。」

 

「承知しました。ご連絡差し上げますわ。そちらの可愛い男の子は?」

 

「息子だ。自己紹介しておきな。」

 

「東郷総司です。よろしくお願いします。」

 

「よろしく総司。息子がいたなんてね。初耳だわ。」

 

「そうだろ?俺も最近知った。」

 

クエスチョンマークを大量に浮かべるクルツコワを横目に退席する。車中、総司からの問いかけは意外な面だった。

 

「なぜ顧客を制限したの?」

 

「当たり前だ。いつも言っているが、ヤクザでも秩序は大切だぞ?」

 

「ふーん…そうなんだ。」

 

「ヤクザにはなって欲しくないんだが、そう言うことはどこの社会でも一緒だ。」

 

「父さんは日本でもヤクザだった?」

 

「そうだ。ここでもまたヤクザだ。勘弁して欲しいね。」

 

 

 

クルツコワのお陰で見通しが立ったので、事務所にいたダイスラーに指示を出す。

 

「売り先を確保できそうだ。サンプルをいくらか用意して欲しい。」

 

「承知しました。来週には用意できるでしょう。その後の入荷は船便できます。」

 

「なるほどね。じゃあここで積み替えだのをしよう。そうすればルワンの会社も上がりが出る。」

 

「トーゴー気遣いありがとう。助かるよ。」

 

「みんなでいい思いしようじゃないか。」

 

「それでは話は進めさせて貰います。総司、この数学のテキスト、貴方にあげます。役立つでしょう。」

 

「ありがとうダイスラーさん‼︎」

 

「すまんね。」

 

「いいんですよ。数学は面白いですよ。」

 

日々の業務を回しているとサンプルと同時に魚雷艇が届いた。

 

「トーゴー、エンジンは三隻はそのまま、一隻は載せ替えで外装はそのままでいいでしょう。キャビン、エンジンルームと操舵席ある程度は装甲化します。」

 

「いいね。出力は足りそう?」

 

「四隻ともターボチャージャーを後付けで追加します。」

 

「大丈夫そうだね。」

 

「武装は魚雷の他にM2重機をそれぞれに二挺ずつ追加します。」

 

「もう軍隊だな。」

 

「ええ。この一帯の制海権の確保を目指します。」

 

「夢は大きく…だな。」

 

「一週間もあれば活動ができます。」

 

「トーゴー、ブーゲンビリア貿易のクルツコワさんから電話だ。」

 

「ありがとうルワン。」

 

電話に出ると件の商人が来月に来ると言うことだった。これで更に儲けも大きくなるだろう。ところでヤクはどうなったんだろう?

 

「そう言えばルワンよ、ヤクの元締めってどうなったの?」

 

「ああ、アポは取れたんだけど折り返し待ちなんだ。」

 

「そっか…まぁ連絡来たら教えてくれ。」

 

「催促はさせてるから大丈夫だろう。」

 

今日も順調、世界は回っている。だが、ここまで待たされると言うことは少々手こずるだろう。

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