もう感想に冷や汗が止まりません。組んだプロットがどこかに流出…いや自分の構成能力の浅さですね。Hellsingでも読んできます。
三合会にロアナプラ入りを許してしばらく、華僑の店が増えている。地元住民と問題も起こさず、みかじめ料も払ってくれるので何も問題はない。
ここまでは順調。馴染んでくれればなお宜しい。人口増加は経済の発展に繋がる。単一民族の街ではないのでいい事と言える。
「トーゴー、よろしいか?」
「おう、キャクストンどうした?」
「今月の総司の成績だ。優秀だな。」
「ああ賢い子だよ。俺の仕事も手伝ってくれる。」
「ルワンの仕事を?トーゴーそれはやり過ぎじゃないのか?」
「総司の意思だよ。もう直ぐ20歳だ。自分で考えるさ。それに週三回、給料も払ってる。」
「はぁ…優秀なのはあんたに似たのか。」
「トーゴーの子だが血は繋がっていない。そこは触れないようにしてください。」
「そうなのか。わかった。」
「ところでトーゴー。今週末、リトル・トーゴーは家に泊まりに来るそうだが、何が好きなのだろうか?」
そういえば週末はダイスラーの家に行くって言ってたな。家じゃいつも和食だからな…何が好きだろうか。
「そうだな…あぁチーズを使った料理は好きだ。あまり高カロリーなものは避けてやってくれ。最近、彼女が出来たらしい。太って嫌われたら困る。」
「そうですね。太らせたらカーテに叱られる。」
ん?総司が太るのとダイスラーの娘との関係性が見えないな。
「それとこれの関係がわからんな。」
「カーテと仲良くしてくれていますからね。」
「それは…恋愛的な交際なのか?」
ルワンは口を鯉のように開閉し、キャクストンは目を背けた。お前ら、さては知っていたな?
「トーゴー、私は知らなかった。ここで聞いたことは総司には黙っていてくれ。」
「責めてる訳じゃないし、反対もしない。よろしく頼むよ。」
「寛大なコマンデールで助かります。」
「娘、何歳だっけ?」
「妻とは国で結婚したのですが、カーテとオスカーはこちらで生まれました。カーテは一つ、オスカーは三つリトル・トーゴーの下です。」
「そうか…」
「それはそうと、聞きたいんだが、トーゴーは結婚しないのか?」
「キャクストン、こんな商売だ。ジャスト30秒で高跳びできない物は持たないことだな。」
「いざとなったら総司は置いていくのか?」
「そうならない為のアクシズだ。」
「なるほど。」
キャクストンは優秀で、ここの環境に慣れるのが早かった。助かっている。
「そういえば、トーゴー。トーゴー宛のアポを取ってきたアメリカ人がいる。」
「あれか。ビッグブラザーの手か?」
「違うな。港湾宛で来てはいるが、個人だ。」
「ふん…明日か明後日に来て貰えるように伝えてくれ。」
「わかった。明後日で伝えよう。」
明後日、会社に来たのは黒人の…少年に近い青年だった…総司と歳は近いだろう。とりあえず、総司とダイスラーに同席してもらう。
「代表を務めるトーゴーです。後ろにいるのがダイスラーで隣は息子の総司だ。」
「ダッチ…と名乗らせていただきます。」
「ここいらにいるアメリカ人は少ない、だが従軍したにしては若いな。」
「年齢を誤魔化してたのでね。」
「腹も据わっている。要件を聞こう。」
「運送業を始めたくてね。ここいらを仕切ってるお宅に仁義を通しにきたんだ。」
「そうか。で、あるなら余っている乾ドックを貸そう。倉庫とちょっとした事務所もついている。船はどうする?」
「そこも先逹に倣って魚雷艇にしようと思っている。どこかで手に入らないかな?」
「紹介しよう。で、荷上げと規則だが…」
「全てアクシズに依頼する。薬物は素通り以外は禁止、武器弾薬は教会を通すこと…であっているかな?」
「そうだな。付け加えると人身売買、薬物に取り扱いは事前に申告してくれ。」
「禁止とは言わないのか?」
「禁止したところで絶対にやる奴はいる。島国じゃない以上、なくならないなら線引きして統制する。」
「凄い割り切りだな。」
「理想はなくすことだ。上に立つ以上、理想を語りながら現実も見なければならない。」
「まるであんたら…」
「軍閥か?」
「自覚はあるんだな。」
「根を下ろした地をよくしたいと思うのは人の性だろう?」
「どうやらあんたは文明的な人間らしい。」
「口のきき方に気をつけろ黒人。」
「やめろダイスラー。若者のむこう見ずを許容するのは大人の義務だ。総司、契約書を。」
「はいよ。これ用意してた。」
「段取りがいい。ダッチ君。これでここいらで運送業が出来る。細かいことは総司に聞いてくれ。」
別室に行きダイスラーを宥める。
「ダイスラー、落ち着け。ここは人種の坩堝だ、ああ言う人間もいる。ドックに修理待ちの艇があったろう。修理が済み次第売ってやれ。」
「しかし…‼︎」
「完全武装にして一個中隊と少し、魚雷艇が七隻、この前ケッテンクラートも五台買ってるだろう?流石にやばい。」
「申し訳ありません。」
「アメリカの要人が訪タイする度に、うちに警護を発注してなければ今頃、解体されてる。ダイスラー、俺たちの祖国は軍拡の果てにどうなったか知ってるだろう?ここでは上手にやろうじゃないか。」
「少し冷静さを欠いていました。」
「しばらく拡大は控えてくれよ?」
「承知です。申し訳ありません。」
「いいさ。ダイスラーの良心から始まったことだ…いや待てよ?」
「どうしました?」
明日は我が身と思い考え直す。間違ってたのは俺か?
「すまないダイスラー。間違っているのは俺だった。今直ぐキャクストンを呼んで来てくれ。」
「はぁ…わかりました。」
キャクストンが揃って俺は今後の長い計画を説明する。
「さっき、ダイスラーと話していて気付いた。これから先、ソ連は計画経済の破綻で軍拡に付き合う余力を失い、国家ごと破綻する。そうなるとどうなると思う?」
「唐突だな。いつものことなのか?」
「残念だがいつもだ。そして、嘆かわしい事にいつも正しい。ソ連が破綻すると人材のインフレが起きますね。」
「つまりどう言う事だ?」
「キャクストン、自分を見てみろ。損切りが始まった米軍から君をスカウトした。ソ連でもそれが起きる。しかも、格安に。」
「ソ連の場合、KGBやチェーカー、内務省からも人材が流れる。それらに目をつけるのはマフィアですね。」
「つまり?」
「ソビエトマフィアはソ連軍だ。」
キャクストンは驚愕している。まだだ。まだ甘い。
「で、あるなら私は部隊ごと拾い上げるでしょう。南ベトナム軍に我々がしたように。」
「つまりソ連が破綻した後、ソ連軍が来るのか?」
「そうだ。それに備えて12年後の1990年に向けて緩やかに軍拡を行なう。」
「先程とは全くの逆ですね。」
「あぁ。大きな間違いを犯すところだった。」
「それで?どうするんだ?」
「ダイスラーは今の一個中隊を二個中隊まで拡大。近接戦闘、閉所制圧、市街地戦を重点的に訓練してくれ。」
「俺は?」
「ダイスラーの訓練から見所のある人間を選抜、キャクストンが受けた訓練を受けさせる。ダイスラーが基礎を教育して、キャクストンが更に専門性の高い教育をする。その上でキャクストン、信用できる友人をスカウトしてくれ。」
「なるほど…それは面白いかもな。」
「彼らの受けた教育の成果は驚異的でした。理に適っています。」
「あんたらの方こそ意味不明だ。グリーンベレーに対抗できる民兵ってなんだよ。」
「何を言っている?彼らは東部戦線を生き延びる事が出来る警備員だ。もっと言えば人種と思想こそ違うが、武装親衛隊だ。」
「あんたSSあがりか!?強いはずだ。」
「さて諸君、次代の安寧のため、ひと汗かこうか。」
中長期の目標を決めたところで、事件は起きる。何故か街でまたも麻薬が売られているのだ。あれ程の思いをしたのに、懲りずまたかと思ってエセ教会を締め上げようとしたが、縋りつく勢いで否定され、会計士も間違いないと言うのでそうなんだろう。では、どこか?
「ラオさんラオさん、申告外の麻薬なんてあるー?」
って聞いたら
「ないよー。来月から出荷増えるけどねー。」
と言われた。むしろ彼らには街で捌く薬より、安定して安全に出荷する方が利益は大きい。つまり、決まり事を違える方が不利益が大きい。
「ルワン。これは街の人間じゃねぇなぁ。」
「だろうな。探してみたんだが、流通量に対して懐が暖くなっている奴が見当たらない。」
「つまり、外部から売っている者がいる訳ですね。」
「今回も共同作戦だ。売人の狩出しと元締めの捜索だな。」
「チャイニーズではないと言うならアメリカか、コロンビアかメキシコ、イタリアあたりは海外進出可能な体力があるでしょう。」
「トーゴーの国の可能性は?」
「多分まだ内紛の最中だ。海外といっても半島か大陸が精々、東南アジアはまだだと思う。」
「まず売人の捜索から始めましょう。それと再度、強く布告を出しましょう。」
「俺は警察に行ってくるよ。問い合わせが来てたんだ。」
「問い合わせ?」
「ああ。ここいらでヤクを押収したってな。」
「それで疑われたのか?」
「そんなところだ。」
「馬鹿馬鹿しい。」
「ともかく行動に移しましょう。まずはマンハントですね。」
「よし、二人とも頼んだ。」
出ていこうとする二人を見てて、ふと気が付いた。
「ルワン、ピンさんに許しを得てヤクを使っている人間を二人か三人捕まえて来てくれ。」
「なにするんだ?」
「ひん剥いて晒すんだ。」
「使ってるのは地元の人間だぞ?」
「だからピンさんに許諾を取るんだ。使おうと思う人間がいるから売れるんだ。使った人間がどうなるか分かってれば、買おうとは思わんだろう?荒療治だが仕方ない。」
「需要があるから供給されるって論理だな。なるほど。」
「そう言う事だ。」
「急いで許可を取り付ける。」
「お願いするよ。」
つーかなんでヤクなんて需要があるんだよ。いや、そもそも自分のところで売れよ。なんで人様の庭で売ってるんだ。でもって、他人の庭でも売らないとノルマが達成出来ないなら、まずそのビジネスプランの再構築から始めたらいいのに。と言うか折角、掃除したのに散らかすなってんだ。そして、買う奴も買う奴だ。そんなもん買ってる余裕あったら、もう少し生活水準上げろっての。インベーダーやってろって。
「まぁいいや。総司、もう二十歳になるだろう?進路はどうするんだ?」
「このままアクシズに就職する。」
「どうしても?」
「どうしても。」
「絶対?」
「絶対。」
「ヤクザになるの?」
「ヤクザになる。」
「じゃあここで一つ、極道としての教育をしよう。最初で最後の俺の授業だ。」
「わかった。」
「極道は侠気と性根が大切だ。弱きを助け、強きを挫く。上前をハネる以上、カタギさんの事を守ることを優先する。だが、ヤクザは力だ。最後は暴力が物を言う。そして、上に立つなら下を養う必要がある。上納金を取るんだから面倒は見る事だ。子分舎弟の後ろに隠れる様な事は絶対に許されない。率先垂範、指揮官先頭。二十歳になったら男磨きな。それが日本にいた頃の俺が見たヤクザだ。この国では難しいかもしれないが、いつか合法になれ。」
「ありがとう。」
「なんでだ。」
「本当の意味で父さんを知った気がする。」
「自分の戸籍を見た事はあるか?」
「いや、ない。」
「俺の本名はーーーーだ。」
「じゃあ俺はーー総司?」
「そうだ。」
「なんか…くすぐったいね。」
「悪かったな。すまない。」
「なんで?俺は父さんに拾われて救われたよ?」
「そうか。そうならいいんだ。」
こうして俺の息子も極道になる決意をした。