起きたら仁義なき転生、それから。   作:函南

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感想、ここすき、誤字訂正、ありがとうございます‼︎

自分の構成力の低さに冷や汗が止まりません。


背徳の市街

事務所に主だったメンツが集まる。他の人間は日暮まで一時帰宅にした。出来るなら、最後の団欒とならないことを強く願うばかりだ。

事務所の壁にロアナプラの地図を貼る。四か所にピンを刺し、書き込みをしながら話し始める。

 

「では、始めよう。まず、ピンの爺さんには通達したが、サンカンパレスを中心に二キロ圏を今夜19時から、無菌室にする。その中の三か所に奴らは潜伏している事がわかっている。便宜上各所をA地点、B地点、C地点とする。そして、ルワン、リサーチありがとう。」

 

「どういたしまして。」

 

「なので、まずクローゼは海上封鎖、一部は河川も見張って貰いたい。」

 

「承知‼︎」

 

「そして、中隊を三つに分ける…と言うか小隊ごとに行動してもらう。第一をダイスラー、A地点を。第二はキャクストン、B地点。マクドゥガルは第三を率いて地点Cを頼む。」

 

「承知‼︎」

「了解‼︎」

「ちょっと待ってくれ‼︎」

 

ダイスラーとキャクストンは即答だったが、マクドゥガルが異を唱えた。何を言われるかはわかってる。

 

「俺はこっちに来て日が浅い。土地勘もない。万一があれば取りこぼしが出るかもしれない。」

 

「そう言うと思っていた。総司、マクドゥガルの補佐につけ。」

 

「わかった‼︎」

 

「総司は俺よりここに住んで長い。これで問題なかろう?」

 

「むぅ…息子を新入りの俺につけて不安じゃないのか?」

 

「ダイスラーの訓練と、ルワンの教育、キャクストンの見る目、総司の努力。そして、君の人柄が総司の無事を担保してくれる。君の人柄がもう少し違っていたら別な人間をつけたところだ。」

 

「…わかった。その信頼に応えよう。」

 

渋々だが納得はしてくれた。俺は続ける。

 

「不測の事態が発生しない限り、20時キッカリに突入。制圧する。」

 

「トーゴー、敵の生死に関しては?」

 

「キャクストン、基本的には生け捕りだ。オロホフ氏に依頼して、閃光手榴弾と非殺傷の9mmゴム弾、ウージーを全員分用意して貰った。突入前に室内へ閃光弾、ゴム弾で制圧が基本方針だ。相手の武装状況は調べたところ、拳銃程度だ。ここまで配慮して出た死人は致し方ない。ちなみに頭部に当てたら死ぬこと間違いない。拳銃は実弾を入れておけ。」

 

「生け捕りにした後は?実弾の使用は任意か?」

 

「サンカンパレス前に本営を置く。その噴水前に全員連行だ。実弾は俺に確認してくれ。」

 

「待ってください。敵指揮官はサンカンパレスにいるのでは?」

 

「支配人からも、ホテルに貼り付けた奴らからも外出の報告はないぞ?」

 

「なら尚の事、本営はそこに置く。中隊以外に20人ほど余るだろう?ルワンと彼らを連れていく。」

 

「まるでトーゴーが率いる様な言い方ですが?」

 

「当たり前だ。舎弟や子分を戦わせて、事務所でコーヒーを啜っていては俺の沽券に関わる。」

 

「ちょっと待て。トーゴーがやられたら俺たちの負けだぞ‼︎」

 

ルワンが悲鳴にも似た叫びをあげた。そう言うわけにはいかんのだ。

 

「トーゴー、私もルワンに同意です。」

 

「俺もどうかと思うな。」

 

なんだ。ダイスラーとキャクストンもか?

 

「これがヤクザの戦争だ。勉強になるだろう?」

 

「で、父さんは全員集めてどうするの?」

 

「降伏勧告を出す。どの道、連中は進出してくる。こちらの流儀に従わないのなら、ここに拠点は置けない事を学んでもらうのが目標だ。もっとも、一人も死なせず帰国したシーゲル氏のその後についてはこちらの関知するところではない。」

 

一同から笑いが漏れてくる。いいぞ。余裕があるってのはいいことだ。

 

「それと一番重要な事を伝える。ここにいる人間は配下を全員連れ帰れ。怪我は許容するが死なせる事は許さない。質問がなければ準備に掛かって欲しい。」

 

「トーゴー、お前も帰るんだ。」

 

「ルワンは俺とサンカンパレス前だ。ルワンが死ななければ生きてるさ。」

 

 

それぞれが事務所を出て行こうとするところで、ダイスラーと総司を呼び止める。

 

「総司、こいつをやる俺がここに来てからずっと持ってたワルサーだ。」

 

「いいの?」

 

「ダイスラーとの交渉、三合会との会談、コーザ・ノストラへの宣戦布告、いつも俺を守ってくれるためにいた。総司にもご利益あるさ。ダイスラー、代わりの拳銃ないか?」

 

「では、私の拳銃を。」

 

「ブローニングハイパワーじゃん‼︎でも、いいのか?」

 

「東部戦線からベルリン、ロアナプラで戦った戦友です。私はもう一挺、ルガーを持っていますので。」

 

「ありがたく。ルガーか…渋いな。」

 

「トーゴー、万に一つを考えないのですか?」

 

「さっきも言ったが、君たちがいて起きる事態なら、この街でそれを防ぐことは不可能だ。」

 

「そうですか…では。従いましょう。」

 

 

日が暮れ、全員が集まる。全員が米軍のタイガーカモの戦闘服を着ていた。そういえば、コンテナに山積みだったな。流石にキャクストンとマクドゥガルはサマになっている。ダイスラーは武装親衛隊のコートを羽織っていた。よくも持ってたな。アロハ着てる俺が浮いてるじゃん。

 

「総員、傾注‼︎」

 

「諸君、夜だ。是非に及ばず。俺と同じ名の司令官の言葉を少し引用しよう。この街の興廃この一戦にあり、各員一層奮励努力せよ。無事に戻ってくるんだぞ。」

 

「指揮官に敬礼‼︎」

 

ちょっと敬礼はやりすぎだ。第三帝国的敬礼じゃなかったからよしとしよう…かかれの合図で全員が散っていく。総司とマクドゥガルが駆け寄って来た。

 

「父さん、行って来ます。」

 

「ん。マクドゥガルは街に慣れていない、頼んだ。そして、蛮勇と勇気を履き違えるなよ。」

 

「わかった。意識する。」

 

「本当に連れていっていいんだな?」

 

「第三の指揮官はマクドゥガル、君だ。死番でも後詰でもその采配はマクドゥガルに預けた俺の責任だ。」

 

「わかった。必ず総司は連れ帰る。」

 

「違う。全員連れ帰れ。」

 

「そうだったな。行ってくる。」

 

「じゃあ父さん、行ってくるよ。」

 

「武運長久を。」

 

 

サンカンパレス前に本営を設営し、連絡を待つ。やっぱり落ちつかない。

 

「トーゴー、落ち着かないか?」

 

「誰かについて行けばよかったよ。」

 

「ここにいるのさえ反対なんだ。誰も着いて来させないよ。」

 

それもそうか。仕方ない。ソワソワしていると無線が入る。

 

『第一、配置完了。』

 

『第二、いつでも。』

 

『第三、配置よし。』

 

「よし、では定刻通りに。」

 

腕の時計を見る。始まる。

 

20時。街の方々からここから確認できる程の光が見える。

 

『制圧‼︎突入‼︎』

『行け行け‼︎抵抗する奴は撃て‼︎』

『全員捕縛だ‼︎制圧しろ‼︎』

 

無線から聞こえる各指揮官の声に緊張する。建物に反射する銃声が木霊してくる。

 

『反撃を受けている‼︎グレネード‼︎グレネード‼︎』

 

第三で反撃があったらしい。部屋の構造的に初弾で無力化出来なかったか?

 

『制圧射撃‼︎数で圧倒しろ‼︎』

『こちら第一、七名捕縛。』

『第二、九人制圧。』

 

「第一、第二は双方の負傷者を報告してくれ。第三、焦らず対処するんだ。」

 

『第一、双方死者なし、敵に一名負傷者。』

 

『第二、死者ゼロ、敵負傷二名。』

 

「よし。本営まで引きずって来てくれ。」

 

ルワンが必要事項の確認と指示出しをする。第三が手間取っているな。と思った瞬間、ウージーとは思えない連射音が木霊して来た。

 

『本営‼︎敵は自動小銃を保有している‼︎二名負傷‼︎実弾使用の許可を‼︎』

 

「自動小銃か…ルワン、これは抜かったな。」

 

「すまない。」

 

「マクドゥガル、実弾使用を許可する。が、あくまでも無力化だ。」

 

『承知した‼︎実弾使用の許可が出た‼︎俺が先頭に立つ続け‼︎』

 

明らかに先程までと違う銃声が響く。激しく撃ち合っていたが…止んだ。

 

『こちら第三、制圧完了。三名軽傷。命に別状なし。十二名捕縛、内四名負傷。比較的軽傷だ。』

 

「コマンデール、お待たせしました。状況は?」

 

「トーゴー、待たせた。レイはまだか?」

 

「第一と第二はほぼ状況は一緒だった。同時に報告が来るくらいに。」

 

「では第三は‼︎」

 

「十二人いたそうだ。自動小銃の反撃があった。」

 

「無事なのか?」

 

「合わせて七名軽傷だと。彼も優秀だ。」

 

そんな事を説明していたらマクドゥガルたちが戻って来た。

 

「済まない。手間取った。」

 

「いや。自動小銃はこちらの手落ちだ。よく全員連れ帰った。ありがとう。」

 

「総司もよくやってくれた。優秀だ。」

 

「気を遣わせたな。」

 

全員が集まった。一人も欠ける事なく。

 

「では第二、第三はサンカンパレスを包囲しろ。ルワン、本営を頼む。ダイスラー、何人か選抜してくれ。総司、降伏勧告にいくぞ。」

 

「承知‼︎」

「はい‼︎」

 

 

支配人に挨拶をしてエレベーターを呼ぶ。

 

「あぁ支配人、極力配慮するが汚損や、備品の破損があったら請求書をくれ。」

 

「心得ました。ありがとうございます。」

 

エレベーターを降りて、ホールに出る。タバコに火をつけて大きく吐き出す。もう一台のエレベーターから、八人の武装した人間が降りる。

 

「よし。ダイスラー。始めよう。」

 

「かかれっ‼︎」

 

ドアを蹴破り、ウージーを構えた八人が突入してゆく。ブローニングの遊底を引いて装弾する。

 

「動くな手は頭の後ろに組め‼︎」

「貴様、手を見えるところに出せ‼︎」

「動くんじゃない‼︎撃たれたいのか‼︎」

 

手際よく制圧している様子を見て安心する。いい腕をしている。件のイタリア人の目の前に腰掛けながら話しかける。

 

「シーゲル氏、また会えましたね。」

 

「なっ…トーゴーっ。」

 

「どうも。田舎者のトーゴーです。」

 

「こんな事して済むと思っているのか‼︎街には…」

 

「二十八人いましたね。外の広場をご覧ください。」

 

シーゲルは慌てて窓に駆け寄る。

 

「貴様ら…警察まで使って…それでも…」

 

「警察?あぁ。彼らは弊社の社員ですよ。どうです?田舎者のやり方は。」

 

「望みはなんだ…?」

 

「そうですね。一度、帰国されてはどうです?タイ支部の在り方を検討しなおされては。」

 

「そんな事したら…」

 

「帰って頂こう‼︎ここは俺の、俺たちの街だ。従えないと言うなら、下にいる連中とここにいる貴様らは沖でサメと海水浴して貰ったっていいんだ。」

 

「今に本国から兵隊が雲霞の如く来るぞ。」

 

「歓待してやるよ。明後日、全員街から出て行け。トラックは用意してやるから街の境まで送る。ダイスラー、明後日の朝六時チェックアウトだ。シーゲル以外は広場に連れ出せ。」

 

「承知しました。」

 

「総司、支配人に状況を説明してこい。補償と弁済の話を詰めて来るんだ。」

 

「わかった。やっておく。」

 

 

部屋を出て、広場に戻る。全員集まったな。

 

「みんな良くやってくれた。ありがとう。終わりだ。日常に帰るぞ‼︎」

 

一帯を歓声が支配する。怪我人こそ出したが、死人は出していない。

 

「こいつらどうする?」

 

「全員繋いで明後日まで晒しておけ。立て看板にいつもの文言を書いてな。」

 

「ハチミツは?」

 

「もったいない。そのままでいい。ダイスラーに言って、四交代で見張りを立てろ。殺すな。」

 

「死なせなくていいのか?」

 

「今回のはメッセージだ。この街で従わない者がどうなるか…ってな。次来る人間は文明的だといいな。」

 

イタリア人勢力、コーザ・ノストラはロアナプラ進出に失敗した。俺たちが「ここはコーザ・ノストラだ」と言いたい。

明後日、街の境の山道に二十九人のイタリア人が放り出された。そう言えば、あの辺は山賊が出るとか出ないとか。

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