起きたら仁義なき転生、それから。   作:函南

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感想、評価、ここすき、誤字訂正、ありがとうございます‼︎

感想の返信ですがあまりしているとボロがでるので、ある程度進んでからお返しします。
で、面白い方は取り入れたいと思います(他力本願)


背徳の我等

今日は、ちょっとした打ち合わせをしに、商業組合のピンの爺さんをルワンと訪ねにきた。

 

「道路ですか…。」

 

「そーなのよ。もうタイヤの出費が酷いモンで。」

 

「ピンさん、役所には顔見知りいないかい?」

 

「そうですね…伝手はありますが、息子にやらせて貰えるだろうか?」

 

ピンの爺さんももう杖が必須な年齢だし、最近は出歩かないと言う。

 

「それは構いませんよ。我々が直で寄付とかしてると、外聞というものがあれだし。」

 

「そんな事もありません。トーゴーたちは街に寄与しています。リトル・トーゴーのエアクルーズ、私も行ってみたいものです。」

 

「ご興味がおありで?」

 

「自分たちの街を空から見下ろせる体験なんてそうそう出来ません。」

 

「トーゴー、ピンさんを招待出来ないだろうか?」

 

「総司に聞いてみてくれ。是非にピンさんにも来て欲しいね。」

 

観光客向けの事業なので、地元の人らには少し高かっただろうか?

栄えてきたとは言えまだまだ、裕福な…とは言えないのがこの街の実情ではあるが、海沿いにはビルも立ち並び、港の近くには商社の出張所も増えてきた。

 

ピンさんの息子、プレーク君のお陰で街中の主だった道を舗装する事業が始まった。これで少しはタイヤ代が浮くといいんだが。後日、ピンさん一家は総司とカーテがエアクルーズにお連れしたらしい。歳の割にはしゃいでいたと聞いて、心温かくなった。

 

 

そんな日々の中で、俺は初めての経験をする。俺は久しぶりにビシッとスーツを着て、サンカンパレスのレストランにいた。こんな街でもフランス料理は緊張する。

 

「ダイスラー、今更だがこれは必要だったのか?」

 

「当たり前です。これは儀式です。我々に盃が必要だったように、総司とカーテに必要な手順です。」

 

「ダイスラーさんの言う通り。それに二人のスーツ姿なんて滅多に見れないからね。」

 

「私もトーゴーのスーツ姿は久しぶりですよ。」

 

「ミスタートーゴーのスーツ姿はオスカーの成人祝い以来かしら?」

 

「奥さん、これはドレスコードだ。ここはアロハでは入れないと支配人に言われた。」

 

「あら?トーゴーさんのスーツも似合ってますよ?」

 

「カーテ、俺はこう言う格好が苦手なんだ。」

 

俺と総司、ダイスラーとカーテ、その奥さん。そう両家顔合わせという事である。遂に総司は結婚を決めた。堅苦しい格好をしていなければ号泣である。いや、むしろ事務所で「結婚したい」と聞いた時はルワンとダイスラー、キャクストンの前で号泣した。毎度の展開だったが、彼らは知っていた。解せぬ。

 

「失礼致します。こちら我々サンカンパレスホテル従業員一同より25年もののウイスキーです。リトル・トーゴーの生まれ年のものです。おめでとうございます。」

 

「支配人、いつぞのスウィートのドアは済まなかった。それにこんな気遣いまで。」

 

「トーゴーと氏とダイスラー氏のお子さん方の婚姻となれば我々も喜ばしい。てっきり、バンコクで行うのかと。」

 

「支配人さん、俺はこの街で生まれて、街のみんなに育てられた。ここでやりたい。」

 

「ありがたい限りです。」

 

ピンさんの助力を得て…というかもう仕切って貰って、結婚式は地元の伝統的な様式で執り行った。パレードの様に街を歩き、寺院での儀式。披露宴はサンカンパレス、その後の飲み会はイエローフラッグという鉄板の流れだ。

参列してくれた人たちを見て思う。商業組合、ブーゲンビリア貿易、三合会、オロホフ一家、ファンさん始め街の人たち。ルワン、クローゼらドイツ系、キャクストンにマクドゥガルたち米兵やうちの連中。ピンさんのお陰とも言えるが、街中の人たちが祝ってくれた。ちょっとした祭りだった。意外なのは、地元のストリートギャングやラグーン商会の看板を揚げたダッチ、リップオフ教会も祝いに来てくれた事だ。何の事は無い。総司が真摯に向き合って、付き合っていた。むしろシスターヨランダはリップオフ教会で式を挙げて欲しかったらしい。

イエローフラッグでの飲み会は席が足りず、外にまで席を増設した。もはやオープンカフェである。

日本では遂に見なかった平和だった。ヤクザもカタギも、元軍人も民間人も一緒に飲んで、騒いでいる。合法性は微妙だが、これはこれで俺の望んだ結末と言えるかもしれない。

 

「トーゴー、我々の引退後も安泰ですね。」

 

「そうだなぁ…ダイスラーは引退するのか?」

 

「ソ連戦までは現役でいますよ。」

 

「多分それが俺たちの線引きになるだろうな。」

 

「おや?総司が何か言う様です。」

 

グラスを持って総司が叫ぶ。

 

「今日は集まってくれてありがとう。母と別れて約10年、みんなに育てて貰った。ダイスラー…いやお義父さんやルワン、キャクストンには随分とシゴかれている。」

 

爆笑の嵐だ。日々の訓練に参加しているしな。デスクワークはルワンが教えた。

 

「そして、オロホフ氏やピンさん始め、街の人たちに支えられている。そんな支えてくれる皆さんに感謝を。」

 

拍手喝采、俺も感無量である。立派になられて…うんうん。「いいぞ二代目‼︎」などとルワンが叫んでいる。まだ跡目は決めていないなどと無粋なことは今日は言うまい。カーテの腰を抱き寄せて、話を続ける。人前でやめなさい。カーテ嬢が赤面しているぞ。

 

「そして、俺を拾って育ててくれた我らがトーゴー、父さんのお陰で俺はみんなに愛され、カーテに出会うことが出来た。最大限の感謝を。」

 

みんながこっちを見て拍手してくれる。おいちゃん泣きそうだぜ。知ってたか?総司がキッカケで俺はこの街に認めて貰ったんだ。本当は俺が総司に感謝する立場だ。いい男に育ったよ。

 

「今日は俺の奢りだ‼︎みんな飲んでくれ‼︎」

 

「「「「うおぉぉぉぉぉっ」」」」

 

「それはヤメろぉぉぉぉぉっ」

 

俺の感動を返せとか、感謝したのは間違いだとか、お前は跡目にしないとか、金の使い方を考えろとか、色々あったのだが、最早群衆レベルの来客者たちに俺の声はかき消された。

後日、イエローフラッグからの請求書はそっと払っておいた。申し訳なさそうに請求書を持ってきたバオの前で突然の眠気に襲われ、寝てしまったのは仕方ない。この請求書は俺の遺書に挟んでおく決意はした。

 

 

好景気のあとは不況と言われている。いい事の後にには凶事だ。

 

「トーゴー、プレークから葬式の案内状だ。ピンさんが亡くなった。」

 

「そうか…いつかはと思ったが…。役付きは全員出席させていただくと返事をしてくれ…いや。一度伺おう。」

 

ルワンとダイスラーを連れて、俺はピンさんと対面した。思えばこの爺さんのお陰で総司は俺のところに来たんだ。感謝してもしきれまい。

 

「プレーク、お悔やみ申し上げる。ピンさんには実に世話になった。出来ることはいつでも協力するよ。」

 

「ありがとうトーゴー。父はトーゴーを非常に気に入っていた。これからもいい付き合いをして欲しい。」

 

「ヤクザ風情にもったいない言葉だ。いつでも頼って欲しい裏の腹なぞない。」

 

街の名士とあって葬式は盛大なものだった。市長からの役人連中、街の人たちはもちろん。ロアナプラの表裏が集まったと言えた。総司は泣きっぱなしだった。思えば、総司が泣いたところを見たのは初めてだったかもしれない。

舗装された道路の脇には、ピンさんの貢献で道路が舗装され、街の発展に寄与した事を記した石碑が設置された。そこはロアナプラを見上げ、海を見渡せる公園として整備されている。石碑の前には花や酒が絶えず供えられている。

 

 

事業は万事順調、詳細は聞かずにいるが、警備会社は交代で海外旅行に行っている様だ。本当に海外旅行だろうな?アフガニスタンで何を見ているのか。南アフリカで動物観察でもしているのだろうか。事務所の給湯室にチャイとコーヒーを飲むための道具が揃ってきている。チャイの淹れ方でも学びに行っているのだろうか…。総司も同行していて、「カーテは土産を楽しみにしているんです。」とか微笑ましい事をダイスラーに言われた。旅行ならカーテも連れて行けばいいのに。

現場はほぼ、キャクストンたちが回している。クローゼたち海上チームは先日、沖で消息を絶った民間航空機の捜索協力をタイ海軍に依頼され、最低限を除いて出払っている。

港はその立地から太平洋とインド洋のハブ港として盛況だ。ルワンは人材募集にカンボジアやフィリピンまで足を伸ばしていた。

 

忙しい日々に、南米からの客人が事務所にやってきた。見覚えもないし、中南米ならいざ知らず、南米は付き合いもないはずだ。

いつも通り総司とルワン、ダイスラーを連れて挨拶をすると、懐かしい名前を聞いた。

 

「某国大使をご存知でしょうか?」

 

「あぁ…あのボンクラですか?」

 

「ええ。その紹介状を持って参りました。」

 

「紹介状ですか。お預かりします。」

 

読んでみると相変わらずだった。隠居した先でマフィアを引っ掛けて、商売に誘い儲けていたらしい。で、毛色は違うが、薬物の産地の近くに拠点を持ちたい客人ことマニサレラ・カルテルの特使…モスケラ氏に「あー知り合いいるよー。仲良くした方がいいよー。」とお気軽に俺を紹介してくれた訳だ。ダメだ。ボンクラはボンクラだ。腐敗した挙句の盆暗とは始末が悪い。

 

「氏の紹介とあれば…と言いたい所ですが、少々この街は特殊で。我々が仕切らせていただいています。そこには我々の守る秩序があります。」

 

「我々同業の間では有名です。シチリアの方々が、イタリア人が追放の憂き目に遭ったと。コーザ・ノストラが為す術も無く赤子の様に捻られたと。聞いた噂ではニューヨークのイタリア人たちは恐慌状態だとか。」

 

「懐かしい話です。どうやら彼らは都会的で、田舎の空気には馴染めなかったようです。」

 

「詳細は存じないのですが、その‘空気’と言うのをご教授いただけますかな?」

 

「いいでしょう。」

 

こうして俺はいつもの説明をモスケラ氏にする。全てを聞くと、モスケラ氏は吹き出してしまった。

 

「いやいや失礼。もう聞けば聞くほど。秩序ある土地だと思ってみれば、その実、この世の果ての様なアウトローさもある。いいでしょう。ボスに進言してきます。是非ともあなたの所領に、我らも進出したい。」

 

「ここは私の領地ではない。皆の街だ。」

 

「でしたら、我らも住人にしていただきたい。」

 

「友好的な移住であれば歓迎しますよ。」

 

「一つ、お願いをよろしいでしょうか?」

 

「なんでしょう?」

 

「そうですか。わかりました。…と言って帰ってしまっては私も叱られてしまいます。子供の使いでもない。あくまでボスの代理です。なにか土産を用意いただけますと嬉しく思います。」

 

「それはそうでしょう。総司、何を持たせる?」

 

「そうだなぁ…ルワンさん、薬物の荷上げ賃は通常の何%増しですか?」

 

「25%増しでやってるよ。」

 

「違法な物品の輸出入をこの港を通す事を条件に、薬物の荷上げ割増し分の免除、出荷順序の優先権の二点。どうかな父さん?」

 

「いかがですか?モスケラ氏。」

 

「十分な結果でしょう。」

 

「では、モスケラ氏、赴任される方が良き友人になる事を期待します。」

 

「こちらこそ、よろしくお願いしたい。」

 

三合会に続いて、あらたなマフィア、マニサレラ・カルテルが隣人となった。

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