起きたら仁義なき転生、それから。   作:函南

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ここすき、感想、評価、ありがとうございます。

やっぱりブックマン、人気ありますねw
ニコラス・ケイジ顔のオロホフ、モデルになった人間が通じる人がチラホラいて嬉しい限りです。

広島にいたのでカープ…となるべきなんですが私、虎党でして…しかも負けが込んでくると燃えるタイプでして…すいません私情です。



背徳の前夜

ロアナプラに帰るとそこは地獄だった。あらゆる仕事がキッチリと回されていた為に、決済待ちの書類が未決の引き出しから溢れていた。地獄。まさに地獄。ラバウルでさえもう少し平和だった。変わったのは何故か元気になったダイスラーが訓練指導に戻って、キャクストンも会議以外は訓練に出ている。あとは時折、オスカーが事務所に詰めているくらいか。

 

「そろそろ決済用にハンコ作ろう。老体にはペンを持ち続けるのはツラい。」

 

「トーゴーがそれで良いなら良いんだが、どの道、決済者の署名は手書きだぞ?」

 

「なんだそれ。コンピューターが導入されてもまだ手書きなのか?」

 

「アドミラル、偽造防止です。諦めてください。」

 

「父さんは突拍子もないこと言うからね。オスカーに限らず、みんな最初否定するよ?」

 

そうそう。最近、なぜか若い世代からは「アドミラル」と呼ばれる事が多い。由来も理由も薄々気付いているが、非常にくすぐったい。

 

「それとそのアドミラル、なんでだ?」

 

「もう総司もリトルって歳でもないし、折衝に出ることもトーゴーより多いだろ?ラグーンやマフィア連中以外はトーゴーと言えば総司を指す事が多い。」

 

「トーゴーへーハチローに肖っているのと、魚雷艇を十二隻も持っていればそう呼ばれます。タイ海軍の担当者もそう呼んでいますよ。」

 

「なんだかな。慣れないよ。」

 

「慣れてくれ。色々煩わしくなる。」

 

後日仕方ないので、署名欄にアドミラル・トーゴーと書いたらオスカーに突っ返された。「アドミラル、これは公式文書です。ふざけないで下さい。」と。え?ダメなの?

 

 

帰国してしばらく、総司が真面目に書類をまとめて来た。なんだ突然。代替わりしろって勧告書か?

 

「二つ相談なんだけど。」

 

「なんだ珍しい。」

 

「屋台を集めてマーケットを形成したい。」

 

「突然だな。どうした。」

 

「日本ではサンカンパレスでしか食べれない様な料理を、家族で毎週末食べに行ける。卵も生で食べられる。野球場の料理はここの屋台を遥かに超えるクオリティだった。ミズガミの天ぷらバーガーはハワイにもあるってキャクストンが言ってた。食は豊かさの象徴だと思う。俺はここがそうありたいと思う。」

 

「なるほどねぇ…。で、どうする?」

 

「制約は設ける。既に店舗をロアナプラに持っていること、新規の出店であること、地元の人間であること。この三点を基本条件に新しくマーケットを作りたい。みかじめ料無しで。」

 

上に立つなら理想は口に、行動にせねばならない。良いことだ。だが、これは正直、微妙だ。と言うか、やってはいけない事の部類だ。だが、道はある。

 

「各所に交渉して同意を取る事だな。各所、だぞ?一つでも漏れていたら決済はしない。同意が取れずに強行した場合、アクシズは本当に公共の敵になる。で、もう一つは?」

 

「ありがとう。一人雇いたい。ドイツ人なんだけど、南アフリカで知り合った。」

 

「ほう…ダイスラーを呼んでくれ。会ってみよう。」

 

「実はもう応接室にいる。」

 

「わかった。行こう。ルワン、この書類、目を通してくれ。」

 

「あいよ。」

 

 

ダイスラーと合流し、応接室に行くと金髪碧眼の青年がいた…総司と近いか上くらいだろう。白人は年齢が読めない。

 

「お待たせした。アクシズの代表、トーゴーだ。総司の父でもある。こっちはダイスラー。おそらく君の同郷だ。」

 

「はじめまして。ナイトハルト・ブルクドルフです。ドイツ人ではありますが、ドイツにいた事はありません。」

 

「ブルクドルフ…失礼だが、ご親族に国防軍関係者はいるかな?」

 

「大伯父が。ベルリンで亡くなったと。」

 

「そうか。面識と言うほどではないが、お会いした事がある。忠義に厚い素晴らしい軍人であった。」

 

「そうですか…。聞いています。おかげで国にはいられなくなったと。」

 

どこかスレてるな。どうしよう。できれば遠慮したい手合いだな。

 

「君の経歴を聞こう。どこで何をしていた?大伯父上に対する認識も。」

 

「元ローデシア軽歩兵連隊所属、その後は南アフリカを転戦。総司に出会いました。優秀な軍人だったと。尊敬に値すると思います。赤軍に追われることに成る程は優秀だったのでしょう。」

 

「なるほど。トーゴー、良い人材でしょう。キャクストンに預けては?」

 

「うーん…陳腐だが、志望動機は?」

 

「アクシズを見ていて羨ましくなった。軍人ではないのに、軍人らしい。なのに青臭い。だが精強。矛盾を軍隊にした感じに惹かれた。」

 

「はい。採用。総司、キャクストンと話し合って配属を決めろ。」

 

廊下に出てしばらく、ダイスラーに呼び止められる。

 

「即断即決は悪くありませんが、意図が見えません。」

 

「アレ、野放しにしたら戦争狂になる気がする反面、本質は見えている。」

 

「確かに。経歴と観察眼は素晴らしいです。」

 

「総司の目を信じるさ。もう、俺が決める事じゃない。」

 

 

事務所に戻って、ルワンに向き直る。

 

「トーゴー、これはよく出来てる。よく出来てるからこそマズいぞ。」

 

「実にマズい。まずマーケットを仕切って家賃収入を取っては商業組合を敵にする。みかじめ料を取らなければ他のマフィアに突き上げを喰らう。衛生環境の向上、これは行政にケチをつけている事になる。」

 

「これ、合意とって来たらすげぇな。」

 

「凄いんだけど、今は困る。だってこれ…」

 

「皆まで言うな。総司の可能性を信じよう。」

 

しんみりした空気でいると、ダイスラーと総司が見たことない形相で入って来た。

 

「なんだ。二人して。足の小指ぶつけたか?」

 

「総司、さっきの書類見せてもらったんだけど、聞きたい事が…」

 

「お二人とも聞いてください。こちら、先ほどブーゲンビリア貿易から届けられた書状です。」

 

「なんだ。そんなことか。どれ。見せてくれ。」

 

ダイスラーの持っていた手紙を受け取り目を…通せなかった。ロシア語だ。もう、なんとなくわかった。たった数行だったが、一文字も読めないが、わかってしまった。

 

「ダイスラー訳してくれないか?」

 

「トーゴー、落ち着いて聞いてください。」

 

「これ以上なく冷静なつもりだし、腹も出来てるよ。」

 

「では読みます。」

 

「おう。」

 

「この街の頭目に告ぐ。明後日、朝九時までにブーゲンビリア貿易まで出頭せよ。来ない場合は降伏したと見做す。ホテル・モスクワ タイ支部 バラライカ…以上であります。」

 

「トーゴー、落ち着けよ。深呼吸だ。総司、水を持って来てくれ。ダイスラー、その文面は間違いないんだな?」

 

ルワンが一番焦ってると思うんだがな。いやこれは凄い。本当に凄い。もう超絶凄い。語彙力無くすくらい凄い。

 

「言いたいことありすぎて…どうしたら良いかね。」

 

「とりあえず…このバラライカなる人物に会いましょう。」

 

「叩き潰そうよ。」

 

「いや総司、このバラライカって聞いたことある。ホテル・モスクワの最大戦力だ。それこそソ連軍だぞ。」

 

「ルワン、これは舐めすぎだよ。」

 

「総司、敵戦力が読めません。迂闊な手は取れません。」

 

「シーゲル氏より文明的である事に期待しよう。みんな、ソ連軍に会おうじゃないか。」

 

散々囂々。もう怖い。ここまでバシッとやられるとは思ってなかった。普通、話する所じゃないのか?

 

 

翌々日、ダイスラーと総司を連れてブーゲンビリア貿易の前まで来た。総司と俺はいつものアロハ、ダイスラーは武装親衛隊のコートを羽織っている。喧嘩腰だな、おい。もう凄く帰りたい。ってか、本当に軍隊だな。入り口に歩哨と思しき男が二人立っている。

 

「あーすまない。バラライカさんから出頭命令をもらってね。ここいらの頭目だ。」

 

受け取った書状をヒラヒラさせて歩哨に声をかけると、無線で何かやり取りしている。しばらくすると、顔に大きな傷のある男が出て来た。うん。軍人だな。

 

「こちらへ。大尉がお待ちです。」

 

「大尉ね…なるほど。俺の最終階級よりは上だな。」

 

「私は同格です。」

 

「そうなの?知らなかった。」

 

「野戦任官でしたが。」

 

応接間に通されて待つこと数分、身体検査すらなかった。自信の表れだろうか?これもまた顔に火傷痕のある女性が入って来た。ソ連軍の制服を羽織っていた。さっきの男に上着を渡して向かいに座る。

 

「お待たせした様で失礼。こっちに来たばかりでバタついていたの。」

 

「ご多忙の中、お時間をいただき恐縮です。アクシズの代表…」

 

「トーゴーでしょう?思う所ある名前ね。」

 

「深い意味はないのですがね。」

 

「アドミラルと呼ばれていては身構えてしまうのよ。我々は。それもトーゴーではね。」

 

「では、ノギでも結構です。」

 

「言葉遊びはやめましょう?みかじめ料をとっているクラブ、風俗店、個人、商店、組合のリストを出してもらう。そして、他のマフィアからとっているみかじめ料、アクシズからのみかじめ料を我々に納めてもらう。もちろん港湾組合も。」

 

後ろのダイスラーと隣の総司からピキッと聞こえて来た。ここは冷静に行こう。

 

「申し訳ないが一つも従う事は出来ない。逆にこの街のルールに従って商いをしていただきたい。シマも用意する。」

 

「あら?おかしいわね。お願いしたり、交渉してるように聞こえたかしら?」

 

「この街は我々の秩序で治めてるのでね。皆がそうしている。先代のクルツコワ氏もそうだった。」

 

「では、わかりやすく言ってあげる。我々に降れ。」

 

「ダイスラー、総司黙ってろよ?バラライカ氏、どこかで折り合いはつかないだろうか?」

 

「軍閥だろうが、マフィアだろうがホテル・モスクワは征く手を遮る全てを容赦しない。」

 

仕方ない。帰ろう。ダイスラーのシワがこれ以上深くなって、かっ開いた目から青い瞳が落ちる前に。立ち上がろうとした時に、口を開いたのは意外な人物だった。

 

「待ってくれ大尉‼︎俺は君に貸しがあるはずだ‼︎アフガニスタンでの貸しだ‼︎」

 

「総司どうした。」

 

「そうね。誰かが収容所の巡回ローテーションを教えてくれたと聞いたわ。そして、急に撤収したとも。」

 

「貸しをここで返してほしい。」

 

「釣り合う返済額なら返してもいいわ。」

 

「住民と非武装、無抵抗な人間の安全の保証を。」

 

「難しいわね。我々は現地民とあなた達の区別が出来ない。」

 

「俺たちは戦闘服を着ている。見たことあるだろう?ここではタイガーカモの戦闘服だ。」

 

「信じろと言うの?」

 

「民間人の殺傷は不本意なはずだ。」

 

「わかったわ。留意してあげる。返済の額面はそこまでよ。」

 

「それでいい。それだけでいい。」

 

「では、我々は‘立て込んで’いるので、これで失礼する。同志軍曹、おかえりになる。」

 

「バラライカ氏、お時間をいただいてありがとう。それでは。」

 

帰りの車中、俺は一つ決意する。帰ったら胃薬飲もう。違う。また戦争だ。次は本当に戦争だ。ほとほと嫌になる。




バラライカ襲来‼︎
主人公、胃袋陥落寸前‼︎
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