起きたら仁義なき転生、それから。   作:函南

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お気に入り、感想、ここすき、ありがとうございます‼︎

大尉、やっぱ反応すごいですね…ご期待に添えます様…
そして、感想欄に自分の親族と似た様な経験をされた方がいますね。人気一辺倒ではない辺り面白いと思います。

少しだけ長いです。(当社比)


背徳の指令

事務所に戻って最初にした事と言えば、アタッシュケースに札束を急いで、しかし丁寧に詰める事だった。ダイスラーや総司はもう事が始まっても良い様に支度に向かっている。

 

「トーゴー、どうしたんだ。高跳びでもするのか?」

 

「ルワン、車回してくれ。三件ほど回りたい。」

 

「あぁ…いいがその金は?」

 

「時間を買いに行く。」

 

そう言って一抱えもありそうなアタッシュケースを車に放り込んで、自分の体も飛ばす。

 

「で、そんな大金、どこで買い物するんだ?」

 

「ロアナプラ署だ。」

 

そう言うや否や、ルワンは飛ばしてくれる。やる事に察しがついたらしい。一番長い付き合いだ。さすがだ。

署の入り口に横付けして転がり込む様に玄関ホールを抜けていく。

 

「ワトサップ‼︎どこにいる‼︎トーゴーだ‼︎」

 

もう勝手知ったるなんとやらの要領で、署長室までの道のりをズケズケと立ち入る。こっちは特急に急いでいる。許されたいと思う。署長室に入ると内線を終えたワトサップがいた。その机にアタッシュケースを叩きつける。

 

「トーゴー、場所は弁えて欲しいな?」

 

「悪いが、今日に限っては無理な相談だ。いいか?明朝から俺が終わったと言うまでこの街では何も起きていない。いつも通りの日常だ。ベイルートかローデシアの様になっていても、しばらくしたら元に戻る。何も無かった。いいな?何も起こらない。」

 

そう言いながらケースを開けてワトサップに向ける。いつも渡している‘捜査費’三年分だ。

 

「オーケイ。何も起きないんだな?」

 

「ついでに言うとパトロールもなしだ。交通事故に遭いかねん。」

 

「こりゃ休暇だな。」

 

「そうしろ。」

 

言うが早いか部屋を出るが早いか。物の数分で車に戻るとルワンに次を知らせる。

 

「プレークに会う。」

 

「仰せのままに。」

 

 

市場の組合事務所に駆け込むと、立ったまま俺は話始めた。

 

「済まない。明朝から戦争になる。すべての被害をうちが補償する。なので、一時うちのロッジに避難して欲しい区画がある。協力して欲しい。」

 

「ルワンから電話をもらっていた。指定を受けた街区は空けておくよ。前金はもらっているしね。」

 

「理解が早くて助かる。申し訳ない。力不足だ。」

 

「トーゴーが出来なかったのなら、誰がやっても同じ結末でしょう。むしろここまでの配慮を頂けたか疑わしい。」

 

「ありがとう。必ず報いさせてもらうよ。」

 

「死なないでくれよ。父に叱られてしまう。」

 

「あぁ。死ぬ時は畳の上で孫に看取ってもらうさ。」

 

 

プレークの協力を得たところで車に飛び乗ってタバコに火をつける。

 

「あと一件は?」

 

「あぁ…三合会だ。」

 

「また意外な…」

 

三合会の事務所が入っているビルの前まで来た頃にはもう陽が傾いていた。時間がない。受付で要件を伝えると、張の部屋に通された。

 

「ミスタートーゴー、アポイントという言葉があるのをご存知か?」

 

「済まない。今日に限って思い出せん。」

 

「至急面会したいとしか聞いていないが、大方ロシア人のことだろう?こちらにも接触があった。」

 

「そうだ。いくらか頼みたいことがある。」

 

「出来る事なら聞こう。先代からの恩義がある。」

 

「指揮権の序列を設定している。指揮権が序列四位まで継承された時点で、我々は戦闘を放棄する。」

 

「ほう…そりゃ思い切っている。」

 

「序列四位の人間に予め指示を出しておく。なんとか逃して貰えないだろうか?」

 

「お宅の港から逃げる手があるんじゃないか?」

 

「あれは一応別の会社だ。あらぬ疑いをかけられてしまう。カタギに極力迷惑をかけたくない…今更すぎて恥ずかしいが。」

 

真面目に話していたのに大笑いされてしまった。わかっている。お笑い種だ。

 

「なるほど、先代が膝を折るわけだ。信奉するは剛力か。いいだろう。乗った‼︎」

 

「は?」

 

「加勢しよう。依頼があった時点で三合会はアクシズに加勢する。」

 

「何言ってるんだ?戦争だぞ?抗争じゃない。」

 

「俺はこの街を気に入っている。マフィアを気取る軍閥か、軍閥を気取るマフィアか知らんが、悪党には居心地がいい。トーゴーが作って、アクシズが守ろうとしているモノに三合会は乗る。勝ち馬で頼みたい。」

 

「善処しよう。」

 

「だが、もしもの時はトーゴーの配下を逃そう。」

 

「ありがとう。感謝する。」

 

「トーゴーの感謝か。万金の価値があるな‼︎」

 

 

全てのスケジュールを消化して事務所に戻ると、事務所は指揮所になっていた。ダイスラー、総司、ルワン、キャクストン。みんな集まっていた。

 

「ダイスラー状況は?」

 

「避難は今日中に完了します。二個中隊と二個小隊は編成を完結、いつでも。」

 

「よし。第二倉庫を今日中に空にしてくれ。屋根と壁にデカデカと誰が見ても分かる様に赤十字を書け。総司、スティンガーはどれだけ用意した?」

 

「十五本。他にもオロホフさんから色々と貰ってる。」

 

「よろしい。指揮権の序列を伝えておく。基本的に全体の指揮は俺か、ダイスラーが執る。指揮権は全体の決定権と思ってくれ。次席は総司、総司が指揮不能になったらダイスラー。ダイスラーに何かあったらキャクストン。ダイスラー、納得してくれるか?不満であれば総司と入れ替える。」

 

「トーゴーをコマンデールと仰いで戦ってまいりました。その子をコマンデールと呼べるならば名誉に思います。」

 

「ありがとう。総司を頼む。キャクストン、特別に頼みたいことがある。」

 

「聞こう。なんだ?」

 

「上位三人が死亡、または指揮不能になった時点で相当の損害が出ている。第二、第三の優先事項は無かったことになっているだろう。ルワンと相談して続行するか、ケツ捲るか判断してくれ。もしケツを捲るとなったら残存部隊をまとめてずらかれ。」

 

「どこに行けっていうんだ?海か?」

 

「三合会だ。話はつけた。逃げろ。」

 

「準備のいいことで。」

 

「そして、ルワン。」

 

「おう。」

 

「有金、全部積んでもみんなを守ってくれ。非武装、無抵抗の人間には手を出さないと約束してくれている。」

 

「その時はなんとかするさ。トーゴー考えすぎだ。」

 

「よし。いいか。勇ましく死んでやろうと思うなよ?尺寸の余地がある限り抗うぞ。ここは俺たちのシマだ。守るぞ。」

 

「了解しました。」

「おうよ‼︎」

「わかった。」

「イエッサー。」

 

「みんな、死ぬ覚悟と逃げる覚悟、恥辱に塗れる覚悟、済まないね。頼む。」

 

「いいさ。俺たちはトーゴーに賭けた。夢も見たしな。」

 

「ルワンの言うとおりだ。違いない。」

 

高笑いする四人、意地でも守る。そう腹に決めた。

 

 

払暁、全ての人員が各所に着いた。俺はダイスラーのいる前線指揮所にきていた。もちろん前線も前線。最前線である。何せ、双眼鏡を覗けばホテル・モスクワの陣地と思われる土嚢の積み上げられた陣地から、RPGの弾頭が見え隠れしている。

スピーカのマイクを手に取って呼びかける。

 

「バラライカさんよ、近くにいたら返事をしてくれ。トーゴーだ。」

 

しばらくの沈黙の後、叫ぶ様に返事が返ってきた。

 

「今更なんだ‼︎降る気になったのか‼︎」

 

「残念ながら、そう言った予定は今のところない。」

 

「ならばなんの用だ‼︎」

 

「試しに、この街の流儀に従ってみないかね。」

 

「それは出来ないと言ったはずだ‼︎」

 

「悲しいね。お茶でも誘おうと思ってたんだが。」

 

「それは残念だ‼︎それより最前線に居ていいのか‼︎」

 

「アクシズは図体の大きさに反して、鉄火場に立つ人間が足りんのだ。」

 

「それでよく我々の前に立てたな‼︎降伏するか‼︎」

 

「一つ手合わせ願おう。」

 

「お互い忙しかろう‼︎また会う時まで‼︎」

 

「武運を。」

 

ここで講和できたらよかったんだがな。そうもいかなかった。残念だ。

 

「コマンデール、お願いします。皆、聞けます。」

 

武装親衛隊のコートを羽織ったダイスラーが無線を渡してくる。

 

「うん。みんな、聞く余裕があるなら聞いて欲しい。」

 

同じ陣地にいるみんながこっちを向いている。真剣な表情だ。余裕を持たせてやろう。

 

「俺とダイスラー、過日、辞職願を持ってきたクローゼは引退して優雅な老後の旅に出る予定であった。」

 

一瞬、呆気に取られた後、陣地は爆笑に包まれた。いいぞ。仕事は楽しくせねば。

 

「しかし、ロシアから来客が来てしまった。甚だ困ったことに、彼らは対話もせず、我々の征く手を阻むなら排除すると言ってきた。我々の、この街でだ。かつて、イタリア人には闘争の根幹を教育してやろうと言った。今回の客はマフィアではない。ソビエト連邦軍だ。プロ中のプロと言える。」

 

息を呑む空気が伝わってくる。そうだろうな。

 

「だが、心配することは何もない。ここには私と君らがいる。訓練通りだ。各指揮官に従って欲しい。そして各指揮官、忘れるな。指揮官先頭、率先垂範。部下の後ろで死ぬな。かつて日本の指揮官が言った言葉を引用しよう。予は常に諸子の先頭に在り。よし、みんな、征こうか。」

 

街中から気勢を上げた叫び声が響いてくる。自信をもって言えるのは、いい仲間を持ったと言うことだ。

 

 

朝靄が晴れた頃、口火を切ったのはホテル・モスクワだった。本来の陣地の前方に設置された囮の陣地が、消し炭になった。鉄火の舞台として設定された街の各防衛陣に、轟音が響き渡った。

 

『RPGによる攻撃だ‼︎偽装陣地が吹き飛ばされた‼︎MG撃ち方始め‼︎』

『焦らなくていい‼︎ただの花火だ‼︎次弾を撃たせるな‼︎』

『リロード‼︎カバーしろ‼︎グレネード‼︎煙幕を張れ‼︎』

 

「銃身の温度に気を配れ‼︎予備銃身は各三本だ‼︎交換時は小銃手は援護に入れ‼︎キャクストン、総司は中隊の被害状況を把握、報告‼︎オスカー、迫撃砲はまだか‼︎そこ‼︎冷却マットを踏むな‼︎」

 

『第二中隊、キャクストンだ。被害は偽装陣地のみ。』

『こちら第一、被害なし。予定通りだよ。』

『こちらオスカー、迫撃砲用意完了。』

 

「よろしい。各防衛陣前方に敵射撃陣地がある。各陣地の指揮官はオスカーにポイントを報告、至近弾を叩き込め直撃させなくていい。」

 

 

唸る様な機関銃の掃射音に気の抜けたグレネードランチャーの音が混じる。戦争交響曲とは、よくもまぁ言ったもんだ。

 

「コマンデール、敵は無反動砲による攻撃をかけてきました。迫撃砲による効力射で陣地転換を迫り、追撃をかけます。」

 

「ん。無闇に殺すなよ。」

 

「無論です。現在、八地点に設けた防衛陣の内、六地点が攻撃を受け現在反撃中。敵を追撃すると同時に、屋上各所に配置した観測手により敵戦力を計測します。状況から見て二個小隊か一個中隊と見られます。」

 

「そうか。やれそうか?」

 

「この状況の不殺は至難の業です。善処とさせていただけますか?」

 

「頼む。」

 

やがて迫撃砲弾の炸裂音が響く。ロシア語の叫び声と共に観測手からの無線が入る。

 

『敵は陣地転換を開始、退いています。』

 

「よろしい。敵戦力の観測に務め、執拗に深追いはしなくていい。」

 

『こちらブルクドルフ。申し訳ないが3ーEの敵を抑えられないだろうか?狙撃手がいる。頭が上げられない‼︎』

 

「よし。ダイスラー、四人か五人貸してくれ。ブルクドルフの負担を軽くしてやろう。」

 

「コマンデールが!?危険です‼︎」

 

「初日だ。少しくらい働いておかないと示しがつかん。」

 

「であるなら…アンドラス、貴官の分隊はコマンデールについて行け。」

 

「承知‼︎」

 

白人の青年が四人連れて前に来た。全員G3のカービンモデルを装備していた。どう言う選抜だろうか。他の連中はM16か改良型のA2を装備していたが、彼らは少し違う。

 

「強行偵察分隊であります。指揮官のアンドラスはマクドゥガルの友人です。」

 

「アンドラス、よろしく頼んだ。」

 

「はっ‼︎」

 

 

事前に構築した建物を渡る回廊を走り抜ける。旧軍の坑道戦術を、建造物を繋げる事で再現した。改築費用に、戦後の撤去費用。産廃処理費用、復旧費用に、人工代。街中に施工したのでかなりの額になるだろう。頭が痛い。

 

「コマンデール、この建物のバルコニーに出ると3ーEの上部後方に出ます。」

 

「よし、行こう。」

 

バルコニーに出ると…六人のロシア人を確認した。内一人が狙撃手だ。

 

「始めるか…俺が狙撃手の肩を狙う。他は銃器か足を狙え。極力…」

 

「殺すな、でありますね。」

 

「そうだ。」

 

「分隊、単射、構え。」

 

それぞれがそれぞれの目標に銃を向ける。人に向ける事に慣れてしまった自分に嫌気がさす。

 

「撃てっ」




開戦‼︎
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