起きたら仁義なき転生、それから。   作:函南

61 / 62
すいません。立て込んでまして…

感想、お気に入り、ここすき、ありがとうございます。

休みがあればコメントお返ししようと思います。


背徳の影響

最近、なぜかは知らないが尾けられている。

白人の日もあれば、中国系の日があったり、現地人の日もある。

 

「気のせいかな?気にしすぎか?」

 

「総司はこの街を仕切ってる人間だからな。正直、殺してしまえば利益につながる人間は多いだろう。」

 

「ルワン、それは短絡的では?総司を殺して得られる利益と報復では釣り合いが取れないと思うのですが?」

 

「そうだな。少なくとも完全武装の二個中隊には追い回される。それに対抗できるのは…バラライカの戦力があったら少しは善戦するだろうってところだろうな。」

 

「ともかく、会社から家まで誰かしら尾いて来てるんだよ。」

 

「護衛をつけるか、毎日送迎をつけるか、だろうな。出来れば両方だ。あと総司は常に銃の携帯を。」

 

「キャクストンに同意します。」

 

「そうだな。家と家族にも警備をつけよう。ローテで一個分隊出す。」

 

三人で警備をつける事になっているが、個人的な事に付き合わせるのは申し訳ない。

 

「いやさ、大袈裟じゃない?」

 

「こういうのは‘警戒してますよ’ってのが伝わることが重要なんだ。」

 

「そうだ。そもそもトーゴーや旦那もそうだったが、家から歩いて来ているのがおかしかった。部隊訓練ばかりで失念していた。」

 

「そんなに狙われるような事したかな…」

 

「「「は?」」」

 

この日一日、冷たく扱われ反省を促されて終わることとなった。

 

 

家には歩哨、周辺警備に一個分隊と送迎付き…というVIP待遇を受けること数日、冷たく扱われた意味を学んだ。運転手の死亡という結果を伴って。

事は早朝、家の前に着いた迎えの車に乗り込む時に起きた。

 

「おはよう。いつもありがとう。今日の担当はタインか。よろしく。」

 

「総代、おはようございます。よろしくお願いします。」

 

いつもの挨拶を済ませて車に乗り込もうとする。初日に至ってはドアの開閉までされそうになった。ちょっと勘弁して欲しい。ドアを開けて乗ろうとした瞬間だった。

 

「総代‼︎伏せろ‼︎敵襲だ‼︎」

 

歩哨の叫び声にMP5とウージーの音が混じった。

 

「排除していい‼︎」

 

叫びつつ地べたに転がって、襲撃者に向かってワルサーを撃ち返す。車のガラスは全て砕け散り、いくらか家の門に弾痕が刻まれる。十数秒の銃撃戦の後、朝の珍客は死体へと成り果てる。

 

「撃ち方やめぇっ‼︎」

 

地べたに座ったまま周囲を見回しつつ、歩哨と銃声を聞いて走って来た警備兵たちに囲まれる。

 

「総代、お怪我は?」

 

「左肩を掠ったくらいだ。被害報告を。」

 

「門扉と自動車が穴だらけに。それとタインが…」

 

言い終わる前に車を覗くと丁度、背後になる位置にいたタインの後頭部と首から血が流れていた。

 

「…タインに家族は?」

 

「確か母親と妹がいたはずです。妹は障害があるとかで入院しています。」

 

「病院に行こう。会社に連絡しておいてくれ。車を回せ。」

 

「諒解です。」

 

「それと客の素性を洗え。」

 

ゲールに付き添われて病院でタインの家族と会うことが出来た。ただただ頭を下げる事しか出来ない自分が不甲斐ない。

母親には感謝された。今の仕事のおかげで妹は高度医療を受けられるようになったそうだ。心臓に持病があるらしく、このまま行けば来年、日本で手術を受ける事になっていたそうだ。

早急に日本行きの手配と今後の事について説明をさせて貰った。タインの給料は今後母親に、その後は妹さんに支払う事、見舞金と葬儀は会社が出すことなどを話している内に虚しくなる。

 

「総代、肩の手当てを。」

 

「うん。」

 

「レイが迎えに向かっています。申し訳ありませんでした。」

 

「なぜ謝る?」

 

「護衛対象に傷を負わせました。」

 

「多分だけど、その護衛任務は対象の命を守ることであって、無傷でいさせることではないと思う。」

 

「ありがとうございます。」

 

「むしろこれは僕の手落ちだね。マトにかけられるとは思ってなかった。」

 

各種検査と左肩に消毒とガーゼを当ててもらい病院を出ると、もう昼に近かった。病院の前には、そんな怖い顔が出来るのかと言う表情でレイが立っていた。

 

「わざわざ迎えに来てくれて…」

 

「ふざけるな。みんなどれだけ肝を冷やしたと思っている‼︎」

 

「悪い。でも、生きてるよ。」

 

「とりあえず事務所に行くぞ。みんないる。」

 

 

事務所まで無言の圧力という物を、これでもかと言うほど堪能した後、自分のデスクに座る。最初に口を開いたのはキャクストンだった。

 

「はっきり言って‘やっぱり来たか’としか言えん。総司への襲撃は想定内。むしろよく今までなかった。」

 

「しかし、実際にやられると腹が冷えた。狙っても実行しないだろうと言う慢心があったな。」

 

「同意です。正直、成功させるには総司から幹部、分隊長クラスまで一気にやらないと意味がないです。」

 

「ルワン、タインが死んだ。ご家族には説明した。葬儀の手配と見舞金の用意を。」

 

「わかった。手配する。」

 

「それで、問題の賊は…」

 

そこまで言いかけたところで廊下から騒がしい声と、予想外の人物が縛り上げられ、顔中腫れ上がった男を引きずって入って来た。

 

「よーう。総司、朝から災難だったな。」

 

「え、張?」

 

「うちの連中が総司を殺す人間を探してるって話を聞いてな。その出元を調べてみたら一瞬で分かった。陳だ。」

 

「コレ、陳?もう分からないんだけど…」

 

「ちょっとしたラッピングだ。先代のラオ大哥の葬式の香典返しだ。」

 

「報告は上がっています。陳がルアクと組んで総司とラグーン商会を狙ったようです。今朝の賊もルアクの一味でした。」

 

オスカーの報告を聞く前に犯人は目の前に転がっている。タインのことを思い浮かべると込み上げる物がある。

 

「張、この礼はいずれ。」

 

「いや結構だ。モスクワといい、先日の葬儀といい、俺の顔は月に届くほどに聳え立ってる。」

 

「そうか。ありがとう。」

 

「じゃああとは煮るなり焼くなりと。それとこれはおまけだ。こいつの‘高飛びセット’だ。」

 

そう言うと札束と貴金属がびっちりと詰まったトランクを放り投げてゆく。

 

 

張が事務所を出て行ったあと、俺は転がる陳をみやった。

 

「さて、どうしたもんかな…キャクストン。」

 

「どうした?」

 

「ゲール分隊に任務を。この貴金属は即換金。その金をゲールの分隊は使いきれ。」

 

「分かった。伝える。」

 

「ルワン。金は…ワトサップの封筒に使ってくれ。他に使い道が浮かばない。」

 

「うん…向こう二年かそれくらいにはなるな。承知した。」

 

「で、こいつはどうしますか?」

 

「とりあえず口のガムテープは剥がしてやれ。」

 

そう言うとオスカーは陳の口を塞いでいたガムテープを勢いよく、力任せに剥がした。

 

「なぁ聞いてくれ。こりゃあ酒飲みながらちょっと話せば与太話だってことがわかることだ…」

 

「与太話…今朝俺は与太話で殺されかけて、部下を失い、ラグーンの連中は武装船に狙われてる訳だ。」

 

「そう。ちょっとした行き違い…」

 

「行き違いで家にも銃弾が叩き込まれたと?」

 

「話はそんな難しくねぇ。だからもう一回…いやアクシズの下についたっていい‼︎」

 

全員の顔を見回すと、呆れている。だろうな。言い訳にもなっていない。

 

「我々は我々の流儀に従ってこの事態を収める。敵を処断するのはケジメとして必要だ。陳、死んでもらう。この街の古参と言う事で、慈悲を。自裁してくれ。」

 

「ちょっ、ちょっと待ってくれ…そこのアメリカ人だってトーゴーの命を狙って生きてるし、ロシア人だって参加に入ったって言うじゃねぇか‼︎」

 

「陳、君はキャクストンや、ホテルモスクワと同じようにアクシズの役に立てると?」

 

「あぁ…絶対、役に立つぜ…」

 

「キャクストン、コイツは君と同類だって言ってるよ。」

 

「それはそれは。光栄ですね。」

 

「キャクストンは軍人として父を狙い、父が見込んで僕の先生になった。今のアクシズの…ロアナプラの繁栄は彼の功績を無視できる物ではない。バラライカ始めホテルモスクワは正面からかち込んで、負けた。結果、見合う手打ちの条件をクリアして、今や外地でキッチリ成果を上げている。陳、何を差し出せる?」

 

そろそろ問答を終わらせていいかと思う。時間の無駄だな。

 

「…金だ。そのトランクの金は…」

 

「これは張が押収した物を我々が譲り受けた物だ。貴様のものではない。」

 

「そっ…そんな話が…」

 

「ルワン、張を急ぎ呼び戻してくれ。」

 

「分かった。ちょっと待ってくれ。」

 

5分ほど待っていると、先ほどここにいた洒落た男が戻ってくる。

 

「なんだ急ぎの用事ってのは。」

 

「200万ドル用立てて欲しい。即金で。」

 

「どう言う風の吹き回しだ?小一時間もあれば用意するが…アクシズが金に困ってると聞いたことはないな。」

 

「借りるのは陳だ。利息はそちらのレートでいい。」

 

「ちょっ…ちょっと待ってくれ‼︎三合会の利息って…」

 

「なるほどな。そうか。本家に鉱夫を募集してる奴がいたな。分かった。用意する。」

 

「陳、鉱山は衣住食が保証される。次の就職先が見つかってよかったな。順当に行けば70年程度で返済ができる。気張ることだ。張、よろしく。」

 

喚く陳を引きずる張たちを見送って、事務所に戻る。

 

「三合会の言う鉱山って…」

 

「キャクストン、やめましょう。これは通りに蜂蜜を塗って晒すより恐ろしい。陳は殺されなかったことを後悔するでしょうね。」

 

「アイツの行く末は想像したくないな…にしてもなんで殺さなかったんだ?」

 

「殺すにはうちの人間の手を汚す事になる。そんな価値はない。キャクストンの同類って言った時は即殺してやろうと思ったけど。」

 

「流石に俺もトサカに来た。」

 

「と言うわけで、ルワン。今回の稼ぎはタインが稼ぐはずだった金だ。この金はそのままタインの家族に渡してくれ。」

 

「諒解した。」

 

「よし、みんな。仕事にかかろう。ところで陳は70年くらいで返済できるのか?」

 

「総司…知らなかったんですか…って言うか三合会から200万も借りて利息も入れたら鉱夫の給料じゃ120年かかりますよ。寮費、食費、その他貸与品代、陳の手取りは1ドルあるかどうか。」

 

「あらー…陳には長生きして貰わないとな。」

 

翌日、張の差金か街中に一つの噂が流れた。

 

「アクシズに逆らって鉱山送りにされた奴がいる」

 

と。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。