中の人が8月17日から連勤が続いている為に、体力的に止まる可能性があります。ご容赦願います。CVT38なんて嫌いです。
命を狙われる経験からしばらく、各種事業は好調。旭日重工との取引も始まり業績は右肩上がり、海外遠征組も絶賛研修中である。そろそろ海外企業の誘致でもしてみようかな。
「総司、旭日重工から依頼だ。」
「え?この前、商品送ったばかりじゃん。もう必要なの?」
「いや。護衛だ。南米で希土類の鉱床が見つかったんだが、治安に不安がある地域らしい。見込みあるかを検討するに、現地を一度見に行きたいので護衛が欲しいと言う話だ。」
「その業務、本当に依頼してくるのかよ…キャクストン、人選を。要人警護だ。」
「分かった。エーカーの分隊を出す。演習場にいるはずだ。行ってくる。」
キャクストンの背中を見送って、必要なことを探す。
「南米か…オスカー、アブレーゴに仁義を切っておいてくれ。武装した人間を派遣する。現地で責任者を挨拶に向かわせるので繋いで欲しいと言えば大丈夫だろう。」
「わかりました。‘手土産’は必要でしょうか?」
「うーん…どうだろうな。この場合はいいだろ。むしろモスクワにシマを用意してやったんだ。逆に何かしらくれってレベルだ。」
「承知しました。連絡を入れます。」
それぞれが仕事を回して、利益を上げる。最近では港の方が忙しい。オロホフさんもちょいちょい顔を出してくれる。子供が大きくなったので、家族旅行に来るそうだ。ロッジの予約をして帰った。
そんな日々を送ってると、ダッチとロックがアクシズにやって来た。
「ダッチ久しぶりだね。最近、海賊に追われたらしいね。お疲れ様。ロックも久しぶり。街には慣れた?」
「あぁ。とんだくたびれ儲けだった。そっちもエラい目に遭ったらしいな。元凶は総司が始末してくれたって聞いてる。感謝するぜ。」
「まだまだわからない事だらけです。」
「まったく。驚いたよ。で、今日はどう言う要件?」
予想外に、海図を取り出しながら口を開いたのはロックだった。
「スペインの古物商からの依頼で。この辺の海域の沈没船からのサルベージを依頼されました。」
「あぁ…いつだかオスカーが聞かれてたって言ってたな。古物商からかケーブル会社かは覚えてないけど、海域での活動許可の問い合わせがあった。こっちは問題ないって答えたはずだ。」
「おそらくそれが今回のクライアントです。ラグーン商会としてもアクシズに一度、お話ししておこうかと。」
「あの辺はお宅のクローゼ戦隊の縄張りのはずだ。ウチも勝手に何かしたなんて言われちゃ後が怖いんでね。」
「アレクにも伝えておく。ルートと日程を提出してってくれたらいいよ。」
「諒解だ。あとで送っておく。」
「じゃあ今日もご安全に。」
後日、ちょっと不思議な話をオスカーが持って来た。
「総司、先日許可を出した海底調査の件ですが、少々疑問が。」
「え?ダッチには許可したし、予定は全部送って貰ってたはずだけど?」
「いえ。ルワンの方に来てた海底調査の通告がラグーン商会の申請海域と被ってまして。航路は全く違うのですが、日程は同日でして。」
「どこからの話?」
「フィリピンのサルベージ業者です。書類も身元も特別問題はありません。」
「じゃあ気にする事はないだろうけど…ってか通告?」
「通告ですね。それはもうかなり高圧的と言うか、見下した感じというか、そんな文面でした。なんとなく知ってる感じの文面でした。」
「そっか…なんかシャクに触るな。」
「はい。次は却下したいと思います。」
「いいんじゃない?今回も断りたいくらいだけど。アレクにも通達を。」
「諒解しました。」
そもそも人の庭先で何かするって言うのに、高圧的に見下した文章を送りつけてくるってどんな教育を受けたのやら…かく言う自分はジュニアハイしか出てないのでなんとも言い様が無いが。
言われなければ思い出せない事もある。
「総司、多分、客だ。」
「ルワン、客に多分もへったくれもないだろう。客じゃないのか?」
「キャクストンの言いたい事はわかるんだが…その…なんと言うか…仮装してるのかな…?って感じで…話を聞いても責任者に会いたいとしか言わないし…とりあえず応接室に通してる。」
「はぁ?」
「ルワン、俺、全然、理解できてないんだけど。」
「総司の言う通りです。ルワンにしては全然伝わって来ません。」
えーと、なんと言うか、あの、としか言わず唸るルワンを見ていると本当に謎の人物が来ているのだろう。
「いいよ、とりあえず。会おう。面白そうだし、みんなで会ってみよう。」
「済まない。取り次いでおいてあれだが、この後アポがあるんだ。俺は外させてくれ。」
「わかった。じゃあオスカー、キャクストン。行こう。」
二人を連れて応接室に入ると、そこにいた二人はルワンの言動を確かに納得させてくれた。まるで第三帝国の突撃隊の出立をしていた。とりあえず向かいに座って挨拶をする。すげぇデカい上に、天然記念物レベルのケツアゴである。
「お待たせして失礼。アクシズ総代、東郷総司です。」
「我が輩は白人社会主義団結党、行動隊長のブリッツ・スタンフォードである。この度我々は党躍進の手始めとして、この片田舎に眠る優性民族白人の財産を回収すると言う偉大な業績を達成せんが為にまかり越した。この猥雑な街を仕切っているのはここにいる日本人と聞いた。我々の探している財産とは高名なるアーリア人画家であるアウグスト・ヤンケの…」
「失礼。悪いんだが要件が掴めないんだ。端的に説明してもらえると助かるんだが。」
「仕方ない。わかりやすく説明しよう。ブリュンヒルデに導かれし十二人の騎士と言う作品と対を成すと言われる‘ラグナ…」
「だから、要件をだな…」
「ふん。人の話を聞かん奴だ。絵画を探している。油絵だ。聞いた所、日本人のようだ。東方アーリア人か。なら協力するだろう。渡して貰う。これで理解できたか?」
図体と同様にかなり上から物を言ってくれる。珍しいことにキャクストンは貧乏ゆすり、オスカーに至っては頬が痙攣している。それを見ている俺は胃が痛い。
「いくつか言わせて貰っていいだろうか?」
「なんだ?絵を渡せば事は済むのだ。別行動を取っている我らが指導者ラッチマン党首と同志たちと早々に合流し…」
「まず‼︎口数が多すぎる。そして、人に物を頼む物言いじゃねぇ。でもって、俺は行動隊長殿の半径2m以内にいる。声量を考えてくれ。その上で回答を。うちに油絵はない。以上だ。」
「それはおかしい。以前にも問い合わせたはずだ。所有者はここに勤めていると調べもついている。フォン・ダイスラー氏だ」
「私がオスカー・フォン・ダイスラーだが?」
「む?そんなに若いのだろうか?話と違うが。」
一瞬の沈黙の後、オスカーが思い出したように言葉を発した。
「あ、総司、それはもしかして父の言っていた…」
「あぁ…あったな。なるほど。行動隊長とやら。そのアウグスト某の絵なのかは存じないが、その絵は個人所有だ。それに既に退職している。こちらでどうするとは言えない。これがこちらとしての回答だ。」
「ふむ。そうか…では、その退職者はどこにいる?」
「個人情報だ。お答え出来かねる。」
「話の分からん奴だ。絵を持ってくるように言えばいいだろう。総代と言うなら上司であろう?命じたらいいではないか。」
「では、そこのデカいのに教えてやろう。貴様が探しているフォン・ダイスラーだが、元武装親衛隊大尉でな。我々アクシズをここまで訓練した超絶怖い私の義父だ。義父は東部戦線からベルリンまで戦い抜いた歴戦の武人でもある。その息子が、オスカー・フォン・ダイスラー、ここのNo.2だ。そして今、私の部下はモスクワで勢力を堅持しているが彼の大伯父はベルリンで最後まで戦った将官でもある。血筋に敬意を払えとは言わないが、格好からするに彼の国の後裔とでも言いたいのだろう?君らの行為は彼らを貶める行為だ。俺の義父を、部下を侮辱している。お引き取りいただこう。」
一頻り言いたいことを言ってやるとデカブツの眉間には、マリアナ海溝もかくやと言うシワが刻まれる。当たり前だ。するとデカブツは矛先を意外な人物に向けた。
「話にならん。そちらのフォン・ダイスラー氏と白人のお方からも、これになんとか言ってもらえんだろうか?」
「なぁ。話は聞いてたか?総司はここの総代、お宅の組織で言う党首。我々の担いでいる人間だ。君は自分の担いでる人間を見下す態度をとる人間の話を聞けるのか?」
「キャクストンに同意します。私も、私の父も総司をコマンデールとして仰いできた。それにもし、その絵があったとしても、あなた方のような俄かに父が渡すとは思えない。」
「白人が名誉ごときに使われて恥いる気持ちはないのか‼︎」
「俺は同じ白人がそう言う物言いをしていることを恥ずかしく思う。」
「全くです。赤面するしかありません。自身が民族的優位性はないと立証している。」
「日本人は小器用で小狡賢くて、手先として使うにはちょうどいい民族だ。」
「は?」
「なんだよ。我が闘争読んでないのかよ。本当に見た目だけだな。総統閣下の日本人評だよ。出直せ。」
嵐のような奴だったが、ようやく消え去った。なんか安心すると同時に暗澹たる気分になる。事務所の空気はどことなく濁っている気がする。
「キャクストン、義父さんとオスカーの身辺警護を。もうバレてもいい。」
「そうだな。うん。それと最近、街に白人が増えているのはあいつらが原因だろう。少し巡回を強化しよう。」
「そうですね。なんか納得が行きました。ローテを組み直しましょう。」
「何事もなく出て行ってくれると助かるんだがな。」
その願いは虚しく、翌週問題は発生する。