双子編、反響大きいですね…頑張ります。
地獄の半期締めが終わりを迎えました。
下期月初、忙殺編始まってます。
二日酔いが抜けた朝、元気になった三人を前に今日の予定を伝える。
「今日の夜中の予定だったけど、昼頃にはレイたちが帰ってくる。申し訳ないけど、夜から作戦を始めたいと思う。」
「レイたちも半日は休めるか。」
「そうですね。事態が事態なので多少の連勤は目を瞑って貰いましょう。」
「総司、街回りに出てる奴らからの報告だが、もうお祭り騒ぎだ。」
「張も言ってたよ。ルワン、今日の夜は街回りなしで。そう、三合会は今回も協力してくれる。」
街の地図を広げながら、作戦計画を検討する。
「まず、俺から言わせてもらうが、プレークを通じて商業組合には21時以降、作戦行動をとる事を伝えてある。」
「ルワンも慣れて来たな。こちらは街区を一区から六区の六つに区切った。第一、第二が分隊ごとに受け持つ。」
「指揮所は噴水広場に設置、ここを狩場として設定します。屋上には選抜射手を二分隊配置、キャクストンはここで指揮を取ります。」
「第三ヤードでメイドとレヴィを狩り出した時の拡大版だね。だが、相手は子供だ。不測の事態と賞金稼ぎの行動にも注意を。」
オスカーとキャクストンが手際よく地図に配置を書き込んでゆく。
「中央道路の出入口は厳重にした方がいいだろうな。本命と思わせておこう。こちらの本命はポイントBからFまでの路地だ。このルートを辿ると総司の待つ噴水広場へと通じる。他のルートは完全封鎖を徹底する。」
「大丈夫だね。街の人間は出来るだけ撃退、他所から来た賞金稼ぎは排除していい。」
「包囲線を構築する部隊は全員実弾を持たせる。狙撃班はゴム弾と拳銃は実弾にする。」
「キャクストン、総司は実弾でいいですね?万が一があります。」
「そうだな。総司は実弾でいいだろう。」
「ルワン、二個中隊と二個分隊分の装備を出しておいて。弾数は通常通りで、車載機銃の弾数は2ケースを各分隊に。」
「諒解した。準備してくる。」
ルワンが事務所を出ていくと、オスカーが質問を投げかける。
「三合会には何を依頼しますか?」
「多分、我々が動き始めたら敵は気付くだろう。街からアクシズが消えるんだ。ブーゲンビリアに張り付いて貰う予定だよ。それと一つ、噂を流した。」
「噂ですか?」
「アクシズが今夜、全力で狩りを始めるって噂だよ。」
「なるほど、上手い手だ。ギャラリーをまとめる訳か。」
「じゃあそういう事で。みんな準備にかかって。」
誰もいなくなった事務所で一つ、思い出して電話をかける。
『どうした?うちは予定通りブーゲンビリアの監視に入るが?』
「張にもう一つ頼みたい事があって。」
『聞こうじゃないか。』
「万が一と言うこともある。逃し屋を抑えてて欲しい。」
『身柄の確保か?』
「街から出たなら生死は問わない。この件で協力した逃し屋は廃業だろう。殺した場合は少し弾んだ金額を用意する。」
『そうか…分かった。手を回しておこう。』
「ありがとう。」
キャクストンとオスカーには言えない事だが…カルナップとタインの命、そしてシグの怪我。やっぱり腹に据えかねることには変わらない。だから、俺の前に来るならよし、来ないなら死んでもらう。これは温情だろう。生き残る道も用意した。
時計を見るとそろそろレイたちが帰って来た頃だ。デスクに仕舞っている睡眠薬をお湯で飲み下すと、事務所の端にある応接セットのソファーに体を投げ出した。しばらくの不貞寝に時間を費やす事にした。
「…司…総司‼︎」
迷彩服を着たオスカーに揺さぶられて目を覚ました。腕のタイメックスを確認するともう夕方になりつつある。
「ありがとう。よく寝たわ。」
「いや。いいよ。一つ聞きたいんだけどいいかな?」
敬語で話しかけてこないあたりを考慮すると、個人的な事なんだろう。
「なにか気になる?」
「本当に殺さないつもりでいるの?」
「街では殺さないよ。でも、出てしまったらどうしようもない。他のマフィアにも手を出してる。」
「そっか。ありがとう。」
「なんで?」
「義兄さんはやっぱり優しいよ。」
少し心が痛む。粘つく口を濯いでタバコに火をつける。目が覚めて来た。
「みんなは?」
「外に集まってます。総司を待ってます。」
「わかった。行こうか。」
アロハの上にタイガーストライプの迷彩服を羽織って、キャクストンが置いて行ったM1911A1を腰のホルスターに収める。グリップが白い象牙の物に変えられている。黒い本体に凄い映え方をしているが、張のウッズマンを悪趣味と言えないと思う。それでもワルサーは腰に差していく。
外に出ると夕暮れの広場に全員が集まっていた。レイの顔を見つけて懐かしい気持ちになる。久しぶりに顔を見た。
「みんなお疲れ様。外征組は呼び戻して悪かったね。事情は聞いてると思う。二人の犠牲者を出し、一人は負傷している。相手は銀髪の子供が二人。殺しにくいだろう?狩り出して俺の目の前に引き摺り出せ。作戦の詳細はキャクストンから各分隊長に説明があっただろうと思う。重要なことは多くない。必ず生きて帰ること。子供相手だが、抜かるなよ?特に外征組、相手は子供の見た目で殺しにかかってくる。悪ガキの教育だ…悲しいね。」
やれやれと言った素振りで言ってやると、みんな苦笑いしている。子供だからと言って舐めているわけではないだろう。
「朝には全てが終わる。事が終わったら交代で二日くらいは休みを取ろうじゃないか。憂鬱な仕事だ。みんな少し気勢を上げよう。故事に倣った手法で行こうか…」
深く息を吸って拳を握った右腕を振り上げる。
「ジーク‼︎」
「「「「ハイル‼︎」」」」
流石は義父さんが鍛えた連中だ。実は時々やっていた事でもある。意外とこれがみんなにウケると言うのは、組織自体の成り立ちに起因しているのは言うまでもない。キャクストンの号令でみんなが散らばってゆく。
「キャクストン、張から連絡が入り次第事を始める。」
「承知した。レイたちには先に陽動の封鎖を始める様に指示を出した。」
「ありがとう。」
そう言って事務所前の喫煙所に向かう。オスカーとゲールもいた。喫煙所の椅子に座って空を見上げる。日暮の港に黄昏るこの時間はいつもなら帰ろうと思う時間だ。
「やだな…」
21時半を回った頃、オスカーが報告を上げてくる。
「三合会から報告‼︎火が上がった‼︎ブーゲンビリアだ‼︎」
「キャクストン、出るぞ‼︎」
「応‼︎」
無線にキャクストンが指示を飛ばしていく。次々とジープが出ていくのを見送って、自分もジープに乗り込む。運転席のシグに声をかける。
「広場に直行するな。少し方々引っ掻き回してから行くぞ。」
「諒解です。」
「中央道路を回ってラチャダ、チャルクワン、海岸通り、ピンストリート…全部回れ。」
「ロアナプラ一周ですね。」
「そう言う事だ。」
ジープで各所を回りながら張に連絡する。
「無事かい?」
『いや久しぶりに冷や汗をかいたよ。お陰で帰りは徒歩だよ。』
「そっか。ブーゲンビリア前だろう?うちの連中が近くにいるはずだ。声をかけて送ってもらいなよ。」
『いいのか?』
「お祭り騒ぎらしいからね。」
電話を切るとそこら中に見慣れない連中が溢れていた。確実に陽動が効いているのだろう。全く用のないあたりにワンサカと揃っている。
「状況は把握した。広場へ行こう。」
噴水広場の近くで、ジープを降りて噴水へ向かう。ふと、思い出してシートにかけていた迷彩服を肩に羽織る。方々から銃声が響いてくる。MGとG3の音、一つ聞き慣れないのは双子の片割れが持っているというスプリングフィールド弾の音だろう。
噴水前まで来ると、キャクストンがもう既に待っていた。
「お待たせ。陽動は効いてるね。明後日の方向に賞金稼ぎどもは集中してる。」
「あぁ。現在、ポイントAでパッケージを確認、ポイントBへ誘導中。二人とも揃ってるのも確認済み。分隊はBからDまで展開が完了、EとFが展開行動中。」
「順調かな。」
「全部隊に徹底して狩り出しに務めている。相手方に状況が有利であるように錯覚させるように指示している。」
タバコに火をつけて噴水の縁に座る。時々聞こえる銃声が予定通りに進んでいる事を教えてくれる。待つだけと言うのもツラいものがある。
かれこれ数時間。そろそろ日付も変わる頃だ。持って来たタバコは既に一箱が灰と消えて、ボルヴィックは二本を飲み切ってしまった。
「現在ポイントD–2にて再捕捉。Dへと再度誘引している。」
「流石は子供か。思うようには動かないし、隠れるのも上手いね。」
「あぁ。展開しては撤収、再展開の繰り返しだ。」
「まるで鬼ごっこだな。酷いもんだ。」
ため息を吐くと、さっきまでの銃声と違う音がした。
「どこの分隊だ‼︎うちの連中じゃないな‼︎」
「あっちはレイたちの受け持ちだ‼︎レイ、応答しろ‼︎状況は‼︎」
『こちらレイモンド。ラグーンのレヴィとリップオフのエダだ。』
「キャクストン無線、貸して。」
「わかった。」
無線を受け取って話しかける。
「レイ、二人に聞こえるようにしてくれる?」
『諒解だ…いいぞ。聞こえる。』
「レヴィ、エダ、聞こえるか。総司だ。」
『なんだよ総司。うちは賞金対象外とか言うんじゃねぇだろ?』
「レヴィ、もうそれは重要ではない。これは我々の作戦だ。退け。」
『シケた事言ってんじゃ…』
「黙れ。二人殺されたまではまだしも、もう一人殺されかけた。こっちもこっちでトサカに来てるんだ。死にたくなかったら帰れ。以上だ。」
無線を切ってキャクストンに返す。
「街の人間は殺さないんじゃなかったのか?」
「レイに殺せとは言ってない。無駄な殺生はしないよ。」
「そうだな…今のアクシデントでパッケージをロストした。リュウの分隊をポイントDまで下げる。」
地図を広げて作戦を変更する。
「リュウたちが展開を終えたらAからCは撤収。DからFを無菌室にして追い込むんだ。」
「レイの分隊でここまで追い立てる。それでいいな?」
「そうだね。よろしく。キャクストンもそろそろ持ち場に。」
「諒解した。」
「早くこの馬鹿騒ぎを終わらせよう。」
「そうだな。」
持ち場へ向かって歩き出すキャクストンを横目に、タバコにまた火をつける。派手なM1911A1のスライドを引いて、初弾を装填する。その音を聞いて振り返ったキャクストンが声をかけてくる。
「総司、本当に子供は殺さないんだな?」
「もういいよ。殺さないって。」
鼻で笑いながら返してやると、キャクストンの綺麗な青い瞳がこちらを見ていた。
「信じていいんだな?」
「教官に嘘をついたことはないと思うよ。」
「そうだな…総司が嘘をついたことはなかった。」
歩き出したキャクストンの背中に思うところが幾らかあった。嘘ではないけど本当でもない。ごめんよ、教官。
長かった夜が明けようとしてる。太陽が少し水平線から顔を出していた。