『これは誰もが幸せになるロマンチックな物語』   作:綾瀬~><

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支部に投稿している作品を加筆修正しています
先の展開を書くためのケツ叩きです

https://www.pixiv.net/novel/series/14023910



第一章「往昔の彼方に在る翠緑の光/泡沫夢幻」
一波動くとき万波動く


 

 全知全能と言わしめるほどの知識と才覚、どんな人間にも満遍なく与えられる博愛の精神。ありとあらゆる事象を見据え、事前に対処する聡明さ。森の精霊のような美しく高潔な御身。

 

 最古の“黄金裔”の次に“黄金裔”となり、今まで人々を導いてきた彼女の名前は───

 

 

 「千樹の王」ブエル。

 

 

 人々は彼女を「マハールッカデヴァータ(偉大なる慈悲深い樹王)」と呼んだ。

 

 “神悟の樹庭”や“伝言の石版”……その他、数々の功績を生み出した我らが当たり前に享受するオンパロスの生活を作ったお方である。

 

 

 

 

 たまたま目に付いた新聞を手に取った。

 それだけだったのに、何故こんなにもメンタルを抉られなきゃならないんだ。

 

 

「(盛られすぎだろッッ!!!)」

 

 

 確かにマハールッカデヴァータ様は素晴らしい。

 私もマハールッカデヴァータ様の顔面に泥を塗らないようにあの手この手で奔走していた、それが目に見えて結果に出ていると思えばこの上ないことだ。

 

 だがしかし、“神悟の樹庭”の創設は「学び舎みたいなのがあったらな」と口にしただけで出来ていたし、“伝言の石版”という名のスマホの作成も「こんなのがあったら便利だよね」って話したら出来ていた。

 精々アイデアしか出してないのに全部が私の功績みたいに語られると、ちょっとモヤッとする。貢献者の人たちを褒めてくれ、学問に旗を上げた人が凄いからね?

 

 そもそもの話、私はこの状況に納得していない。

 

 なんで私がマハールッカデヴァータ様に成り代わって、よく分からない世界に転生しているんだ。

 マハールッカデヴァータ様……『原神』というゲームに登場する、初代草神。全知全能で博愛の神とも呼ばれ、姿が見えなくなった今でもスメールで根強い信仰を誇る。

 禁忌の知識に最初から最後まで抗い続け、最後には己の抹消という手段でこの世から禁忌の知識を根絶させた強い神さま。

 

 私は彼女が大好きだった、彼女から派生した存在であるナヒーダも大好きだった。だからといって成り代わりたかった訳では無い。

 マハールッカデヴァータ様はマハールッカデヴァータ様であるから大好きなのであって、私という存在が成り代わるのは解釈違いだ。

 ……グダグダ言っても成り代わってしまったものはしょうがない。私が最強のマハールッカデヴァータ様になるしかない。

 

 

 そうして全速力で人生を駆け抜けて、一息ついて漸く私は周りからどう評価されているのか自覚したのだ。

 

 

 “黄金裔”とかいう半分人間を辞めた“半神”となり約500年、何人もの人間を見送ってきた。戦争で人を殺めてきた。愚かな人間を知ってきた。

 神に相対するということは怖い、怪我をするのも怖い、血を見るのも怖い。でも、それでも、武器を手に取り先へ進むのは人が愛おしくて仕方がなかったから。

 長きに渡る人生で精神崩壊しかけても、子供が笑顔で母親に抱き着いている姿を見れば不思議と力が漲って踏ん張れた。

 

 腐っても私な初代草神マハールッカデヴァータ成り代わり、人を慈しむ神なのだ。

 まだ彼女の足元にも及ばない私だけど、彼らが私のことをマハールッカデヴァータと言う限り、私は“黄金裔”のマハールッカデヴァータとして彼らを守る。

 

 

 とはいえ話を盛られすぎるのは勘弁して欲しい。

 

 私はそんなに凄くないです、他の黄金裔の方が有能です、マハールッカデヴァータ様のスペックが高すぎるだけです。

 お願い、そんなにキラキラした目で見ないで!身体中に穴が空きそうだから!

 

 

「あ!いたいた、ルカちゃん!お部屋にもいないから、すっごく探したんだよ?」

「……トリスビアス?ごめんなさい、少し散歩をしていたの。それで、何かあったの?」

 

 

 思考の海に沈んでいると聞き馴染みのある弾んだ声で呼び止められる。

 振り返れば良く似た顔をした小さな赤毛の女の子が三人いた。ひとりはプンプンと腰に手を当てていて、どうやら随分探されていたらしい。

 この子は“トリスビアス”又は“トリビー”、“トリアン”、“トリノン”。元々は私と同じくらいの女性だったが黄金裔となる時に1000に分裂して子供の姿となってしまったのだ。ちなみに最古の黄金裔とは彼女のことだったりする。

 ……って誰に説明してるんだ私は。

 

 それはそれとして、探されているとも露知らず呑気に散歩していたのが申し訳ない。

 

 

「もう!たくさん探したんだぞ!えっとねルカちゃんに、アナちゃんの面倒を見てほしいんだ」

「“アナちゃん”?」

 

 

 プンプンと怒っていた“トリノン”が、要件を話し始める。

 

 よくよく見ればトリスビアスたちの後ろには一人の少年がいた、あまりにも気配を消しているものだから一瞬気づけなかった。

 薄緑色の髪に、特殊な色彩をした瞳、不相応な黒い眼帯、そして仏頂面。あまりにも癖が強そうな子だ……。

 恐らくこの子供がトリスビアスの言う“アナちゃん”だろう。トリスビアスは名前の一部をあだ名にするから、“アナ”が名前に入っているということ。

 

 

「こんにちは、私はブエル。気軽にマハールッカデヴァータと呼んでちょうだい」

「……アナクサゴラスです。アナイクスと呼ばなければ、なんでも構いません」

「アナクサゴラスって言うのね、とってもいい名前だわ」

「、ありがとうございます……ブエルさんも素敵な名前ですよ」

 

 

 いやホント。確かアナクサゴラスって古代ギリシャの哲学者と同じ名前だったはずだ、名前に負けない聡明をしてる。

 だって目線を合わせて自己紹介すれば、躊躇いつつも自己紹介を返してくれる。名前を褒めたら照れながらも、褒め返す。

 この年齢の子供は私が黄金裔と知っていても、礼儀が理解できていないことが多い。まあ、子供だし気にしてないけどね。子供は元気が一番です。

 でも、この子は無礼にならないか気にしながら私と接している。ウーーーン、賢い子だ。そんな子には優あげちゃう。

 

 私とアナクサゴラスの会話を聞いていたトリスビアスもニコニコしてるから、初手の掴みはバッチリ……なはず。私はトリスビアスと違って子供と接する機会は多くないからなあ…。

 

 

「うんうん、仲良くなれそうだね!ルカちゃん、アナちゃんのことよろしくね。お勉強とか色々と教えてあげて」

「トリスビアスの頼みだもの、任されたわ」

「そうでした、アナイクスさん。今度からは人体を使った実験はダメですよ、アレはすごく奇跡が重なった結果なんですから」

「…」

「人体を使った実験???」

 

 

 なんて???

 

 

「アナちゃんが自分のお目目を使ってお姉ちゃんとお話してたの!だから、ルカちゃんしぃっかりアナちゃんのこと見ててね!また自分の体を使った実験をするかもしれないから!」

 

 

 もしかしなくとも引き受けるの早まったかな。

 

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