星の無い夜空の下、ラスとメリルはトモリを連れ歩いてゆく。後から続いていた者達はいつの間にか道を変えていたようで、気付けばトモリにも気配が追えなくなっていた。
「もしかして、わたしって特別扱いされてます?」
「そらそうだろ、オレとメリルが直々に案内してんだぜ」
「ウチも含めるとなんか悪い意味になりそうだから数えないでくださいす……」
「いやならねェだろ。なァ?」
妙に気が弱く悲観的なメリルに苦笑しながら、ラスはトモリへ同意を求めようと振り返った。面倒だとトモリが無視をすれば、つれないねェとラスは再び苦笑する。
「眺めの悪い道だ、退屈だろ。質問がありゃ受け付けるが」
先を歩きながら、ラスは振り返らずにトモリへ声を掛ける。同時にメリルが歩調を遅め、トモリの背後へ回った。僅かに感じられる警戒と殺気に、この子供も見た目通りではないなとトモリは認識を一つ改めた。
「何個でも?」
「目的地に着くまではな。遠くにぼろい城が見えんだろ、あれだ。まァ着いた後も話し合いはするんだが、早めに解消したい疑問もあるだろうしな」
「親切なことで。血を吐かせる勢いでお腹殴ってきた人とは思えませんね」
「それはマジですまねェって……」
どうにも本気で反省しているように見えるけれど、実際のところトモリにとっては殴られた事はどうでもよい。そもそも殺し合いをしていたのだから、殴られたと恨むのも間違いだとトモリは考えている。
それはそれとして憂さ晴らしをしようと突いてみたけれど、やはり好意の無い相手をからかったところで何も面白くない。それに、状況がわからないままではいたくなかった。
「まず、ここは何処ですか」
「最初に言ったろ、棄てられた世界さ。今新世界人を名乗ってる連中にとっての故郷、魔族と呼ばれるオレ達にとっては牢獄であり第二の故郷ってとこかね。連中はテメェらの故郷である事を忘れたのか魔界なんて呼ぶようになったがね」
遥か昔、旧世界が終末を迎えた少し後の事。新世界人の祖先は隣の世界からトモリ達の故郷へ移り、新たに文明を築き上げた。それはトモリや他の勇者も知っている事だ。
彼らはトモリ達の故郷を侵した過去を誇りとして語り継いでいる。滅んだ世界を再生させてやったのだと信じている。耳を塞いでなお、彼らの誇る過去は耳に入ってしまう。
たとえトモリ達の業で滅んだとしても。あの世界がトモリ達のものである事に変わりはないというのに。再生したとして、侵された怒りは消えないというのに。
「元々連中はこの世界では神やら精霊やらに仕えていたんだが、ある時反乱を起こしたんだと。これは知ってるか?」
「いえ。続きをどうぞ」
「応。で、戦には勝ったものの世界は神々の遺した呪いで満たされちまった。赦しを乞うお上は全てテメェらで殺すか追い出しちまったからもうどうしようもない。呪いの侵食を防ぐ結界も少しずつ削られ狭くなり、いずれは全ての命が死に絶える。これがこの世界の民が迎えるはずだった終末さ」
「……でも、そうはならなかった」
「あァ。ここからがお前さんらの終末にも関わる話になる」
話を区切り、ラスがトモリを気遣うように視線を向けた。向けられたトモリは視線の意味が理解できず、首を傾げただけだけれど。
「――にんげん達は、終末に抗う術を探した。探し続け、抗う事を諦めた。にんげん達にはこの世界の終末を退ける力こそ無かったが、次元の壁に穴を開ける程度の力はあったんだ。テメェらの世界で価値がある城なんかをあっちへ転移させて、逆にあっちで邪魔なもんをこっちへ移して……お前さんらはあの歪な景色を上書きや侵食と呼んでるんだったか」
魔力というものに触れずに発展したトモリ達の世界は、魔法と共に生きてきた彼らにとって資源が潤沢で魅力的だったのだろう。ラスはそう締め、トモリの反応を確かめるように視線を向けた。
ラスの話は、トモリにも予想できていないわけではなかった。王国の民は特に旧世界人を蔑んでいる。こういった悪意には己らの過去を正当化しようとする意思が隠れている。侵略者とはそういうものだ。これは、トモリの故郷の歴史にもあった事だ。
彼らの誇る過去を何度も聞かされていれば、ある程度は予想と覚悟ができてしまう。ただ、何かがおかしい気もしているのは確かだ。
……そう、ラスの話には何か違和感がある。足りないというべきだろうか。終末を迎えた後のトモリ達の故郷を新世界人が侵して文明を築いたのは間違い無いだろう。けれど、どうにも違和感がある。その正体こそわからないけれど、何かがおかしいとだけは直感していた。
ラスは嘘を吐いているか、何かを隠しているのか。ただ長い時の中で情報が減り、魔族全体で真実が歪んでしまったのか。あるいは、トモリがこれが全てであると認めたくないだけなのか。
トモリにはわからない。けれど、どうしても拭えない違和感と頭痛がトモリを苛んでいる。何もわからないはずなのに、足りないと直感が騒いでいる。
知ろうとしてはいけない。思い出してはいけない。頭の奥で誰かの声がする。その声が正しいと感じながら、それでもトモリは知りたいと思ってしまう。思い出したいと望んでしまう。思い出したとして良い事など無いとわかっているのに。
「……知らないなら教えてあげますけど、
「知ってるよ。それにそうでもねェさ。こうして話していればいつか思い出すかもしれねェだろ。実際、記憶を取り戻した旧世界人は何人か知ってるしな」
「なら、その人達に聞いたらどうです」
「もう墓の下さ。百年は前の話だからな」
短く答え、ラスは歩調を速める。今のは禁句だったらしい。
トモリは溜息を吐きながら次の問いを考える事にした。乗せられている気もするけれど、それでも構わないとトモリは考える。記憶を取り戻したいのはトモリも同じだ。
「わたしを拐った理由、教えてくれてもいいんじゃないです? 他の勇者は……まあ、教えてくれるならくらいですけど」
「お前さんらは王国に不満を持つ者が多いだろ。テメェらが寝ている間に故郷を乗っ取られたのもそうだが、戦士としての扱いにも不満があるはずだ。だからさ」
なるほど、それらしい理由だ。実際半分程度は事実なのだろうとトモリも納得する事ができた。何人もの同胞を脱走兵として狩らされたのだ、トモリや他の追手が逃した中には魔族の手を取った者もいるだろう。
「そうして旧世界人を集めて、どうするつもりなんです」
「さてな、そいつァ陛下に聞いてくれ。同胞の言葉を借りるなら、共に明日を生きる友となってほしいそうだが。お前さん、ダチはいるか? オレァ少なくてな、正直感覚がわからん」
「どう、ですかね」
ラスの問いに、トモリは一瞬息を詰まらせた。旧世界の頃の友人は生きていたとしても互いに覚えていないだろう。考えると頭がずきずきと痛む。
……いや、例外が一名いるようだけれど。けれど、あれはもう人と呼べない存在だ。では、この新世界の時代では? こちらもまた、胸が痛んで考えたくない話だ。
キユとイザナをトモリは好ましく思っているけれど、二人がそう思ってくれているとは思っていない。陰湿な老人が気紛れに付けた監視だろうとはわかっている。それでもやはり、トモリにとってはこの新世界で珍しく好ましい人達だけれど。
ココネは新世界で初めてできた友人だ。けれど、王都が今何処で何をしているのかわからない。ラスの言を信じるのなら旧市街で無闇な殺しはしていないのだろうけれど、ココネが被害に遭っていないという確信は無い。
トモリや他に連れられていた勇者達は、恐らく脱走兵として扱われるだろう。ここから逃げて王都へ戻ったところでトモリでは騎士や王族の信頼を得られない。なにより――探し物はもう見付かっている。見付かってしまった。
次に王都へ戻るのは、あの塔を破壊する時だ。一度視界に収めてしまえばトモリはその衝動を抑えられない。どうあろうと、トモリノドカはナルカサテラ王国と敵対する事になる。
――キユやイザナがあの塔を守るのであれば。塔の倒れる先にココネがまだいようとも。トモリはあれを壊す。壊さねばならない。魔族もまた、障害となるのであれば。
「その陛下とやらが、お話好きで何でも答えてくれる人だと嬉しいんですけどね」
「……お喋り好きではあるんじゃないすか? 意地悪で陰気な女すけど」
トモリが独り言ちると、メリルが嫌悪感と悪意に満ちた声でそれに応えた。声から察するに、メリルはラスが陛下と呼ぶ魔族を相当に嫌っているらしい。ラスは何か言うのかとトモリが視線をやれば、困ったように額へ掌を当てていた。
「メリル……お前さんなァ、いい加減にしろよ」
「こればかりは譲らないす。刃を向ける気は無いすけど、忠誠を誓う事もありません。最初に言ったすよね、我が王」
「あァ、もうそれに関しては言わん。が、客の前ではよせ」
「それもできないと言ったす。誰の前であろうと、あれを認める事は無い。言ったすよね」
何か、トモリにはよくわからない言い争いを始めてしまった。巻き込まないでほしいんだけどなと内心で呆れながら、トモリは話題を変えつつ問いを続けようと考える。
ラスが陛下と呼んでいるのは、恐らくは魔王と呼ばれる魔族だろうとトモリにも察せられた。王都へ戻り信頼を勝ち取ろうとするのなら魔王の情報を集めるのも手だと思うけれど、どうせ拷問か脳洗いに掛けられるだけだなとこの案はすぐに却下した。
トモリが王国で暮らしてから一年にも満たないけれど、彼らの旧世界人――トモリへの悪感情はよく理解できている。一度監視下から離れてしまった以上、ジュウゾ・アンデッタはトモリを脱走兵として処する方向で動くだろう。彼らにそれができるかはさておきとして。
「……あの、陛下だかあの女だかの話は別にどうでもいいんですけど。もう一つ質問いいですか?」
二人の言い争いにどう割り込むかを考えている間に随分と時間が過ぎてしまった。ラスが目的地だと指を差していた城はあと数分もすれば門前まで着いてしまうだろう。
戦でもあったのか、半壊した後に無理矢理改築、補修したような跡がよく見える。石と木が混ざり合っているようで遠目にもちぐはぐでぼろぼろ、辛うじて城と呼べるかどうかという惨状なのがよくわかる有様だった。今も作業は続けられているようで、所々に足場が築かれているようだ。
魔族の長、あるいはその重臣であろう者の住居としてはどうにも貧相かつ脆弱に見える。信じていたわけではないけれど、王国の騎士や貴族が言っていた魔界とは違うようだ。
「おっと……すまんな。こっちで盛り上がり過ぎた」
「客人をほっぽるのは駄目すよね。じゃ、今日の口喧嘩もウチの勝ちってことで!」
「テメェ……はァ、今日はもうそれで構わん。で、トモリ。何が知りたい?」
ラスが溜息を吐きながらトモリへ視線を向ける。質問の許可が降りたと判断し、トモリは最後の問いを掛ける事にした。
「――――十時輝夜。貴方は、いえ、魔王は。どうして彼女の名前を知ってるんです。何をするつもりなんです」
トモリにとって、これが最も重要な質問だ。これだけはこの場で確かめておきたかった。
十時輝夜、その成れの果てである肉の塔。あれはトモリが王国に留まっていた理由の一つだ。ナルカサテラ王国が旧世界の日本の上に築かれた国であると知ってから、トモリはあれを見付けるまではと王国から逃げる事ができなかった。
月面砲撃塔かぐや。冒涜の果てに生まれたあの塔を破壊する事こそ、トモリに遺された使命だ。まだ生きている意味であり、きっとこの新世界に目覚めてしまった理由なのだ。何を犠牲にしてでもトモリはこの使命を果たさねばならない。
あの塔が姿を顕したのは魔族の仕業なのか。どうしてトモリが見付けられなかったそれを見付けられたのか。あれをどうするつもりなのか。トモリは知らねばならない。そして、トモリの使命の障害となるのであれば。
「……そう目の色変えるなよ。ついでに首輪も光ってるぜ」
ラスが困ったように肩を竦め、メリルが静かにトモリの首へ手を伸ばす。トモリが反応するより速くラスが視線で制し、メリルは不満気な表情ではあるもののトモリから離れた。
「そいつァ陛下に……と言いたいが、全てを陛下に押し付けるわけにもいかねェわな。御越しになられるまで日もあるし、何日も待てんだろ?」
「待つつもりはありませんけど」
「だろうな、面ァ見ればわかるよ。お前さんら勇者はわかりやすくて助かる。特にお前さんはな」
言いながら、ラスは門前に立つ守衛に軽く手を振った。尾と角の生えた守衛はすぐにラスとメリルに気付いたようで、門を開いた後に背筋をぴんと伸ばし槍を両手で高く掲げてみせた。
門を通り過ぎるまでの間、トモリには守衛の視線が突き刺さり続けていた。警戒、恐怖、憎悪。あるいは好奇。様々な感情の綯い交ぜとなった視線が幾つも突き刺さっている。それはトモリにというよりは、人間という種族に対してなのかもしれないけれど。
「すまんな、この辺りはまだにんげんに慣れてないやつのが多いんだ。そうでなくともあの量の勇者を招き入れるのは初めてだしな……」
「それは構いませんけど。回答は?」
「せっかちだねェ……まァ、結局詳しい話は陛下に聞いてくれとはなっちまうんだが。簡単にだけ言えば、オレらには旧世界人を祖に持つ者が多い。そこから伝わったってだけさ」
「それは」
「ありえねェってか? そうでもねェさ。お前さんらの世界は終末を迎えた。が、生き残りがいなかったわけでもねェ。勇者と呼ばれるお前さんらだってあれだこれだと生き残っちまった連中なわけだしな。お前さん、自分がどうやって終末を生き延びたか説明できるか?」
その問いにトモリは答えられなかった。実際、トモリは旧世界の最期に何があったのかの記憶が曖昧だ。心当たりが無いわけではないけれど、確信が無い。
「魔族だなんだと呼ばれるオレらだが、色々といる。にんげんや獣に生まれたはずが仲間と違う何かを持ち、あるいは持たずに生まれ同族から拒絶された者。次の生を認められず魂だけの存在となってしまった者。遠く昔、月から降る獣と交わり終末を生き延びた者の末裔……そういう、新世界人共が存在を認めない者達の総称が魔族ってェわけだ」
そして、追い遣られた末に辿り着いたのがこの魔界と呼ばれるようになった世界なのだとラスは言う。いつか魔族が絶えれば、次は勇者を魔族として絶やすのだろうと。
「……散々呪って気が済んだか、オレらを同じ敗者として憐れんだか。この世界は少しだけオレらを受け入れてくれたんだ。新世界人にとっては神々の呪いに満ちた魔界でも、オレらにとっては最後の楽園なのさ」
楽園。その言葉は、トモリの胸に棘のように刺さる言葉だった。遠く昔の、ずっと忘れてしまっていた友人の言葉を思い出してしまう嫌な言葉だ。
お花畑と揶揄されるような理想を語り、どれだけ否定され涙を流そうと決して希望を捨てなかった友人の。咲き誇る花のような笑顔を浮かべ、救われない者達の楽園へ手を伸ばし続けた少女を思い出して。胸と頭が痛くなる。
ずっと忘れていた己にそんな資格は無いというのに、隣にいてくれない今はひどく寂しい。何度でも殺してと、希望を託されたはずなのに。
「なんだおい、大丈夫か……?」
「何もありませんけど」
「いや、そうは見えんが……まァ、お前さんが無いっつうならいいさ。まァつまるところ、旧世界の終末をよく知る魔族もそれなりにいたって話さ。大体死んじまったろうが、話自体は語り継がれて今も残っている。納得できたか?」
「まあ、多少は」
「完全ではないのな……」
苦笑したラスが足を止める。話している間にもう城の前まで着いてしまっていたようだ。
継ぎ接ぎだらけの城はやはり見窄らしくはあるけれど、目の前まで迫ればそれなりに迫力があるものだ。あちこちに築かれた足場とそこで作業をしている者達の声が、トモリにここで生きる人々がいるのだという実感を与えてくれる。
「とりあえず、一つだけ。オレらはあの塔を利用しようとは考えてねェよ。きちんと眠らせてやりてェと考えている。これは陛下とオレ……魔王の怒りの共通認識だ。それを信じてくれるなら、中に入ってくれねェか」
先に城へ入ったラスが手を差し伸べ、トモリへ言う。メリルは値踏みするようにトモリを見詰めている。トモリはずきずきと痛む頭に顔を顰めながら、小さく溜息を吐き出した。
あの塔をどうするつもりなのか。トモリが魔族と敵対するか否かを判断するのに最も重視しているのはそこだ。ラスの言を信じるのであれば、今は敵対する理由が無いという事になる。
――信じるのであれば、ではあるけれど。そもそもを言えば彼らは王都を襲撃し、戦闘の末にトモリを拐っている。本来であれば信じる理由など微塵も無い。喚び出したのか隠匿を暴いたのか、いずれであれ魔族の仕業には違いない。
それでも今すぐに戦を再開しようと思えないのは、王国や新世界人への不信感からだろうか。よるべを探してしまっているのだろうか。トモリには、まだ理由がわからないけれど。
「……手は取りません」
大きな溜息を一つ。トモリはラスの手を取らず、城の中へ足を踏み出した。丁寧に掃除をされているけれどやはり継ぎ接ぎだらけの城に、何処か妙な懐かしさを感じながら。トモリは横に立つラスとメリルへ視線を向けた。
「新世界の人達を守るつもりはありませんけど、あなた達の味方になれるかもわかりません。とりあえず陛下とやらの話を聞くまでは休戦、それで良いですよね?」
「あァ、上々だ」
「ではそれで。話を聞いたうえで陛下とやらを討つ事になっても恨まないでくださいね」
「応、その時は臣下としての責を果たすさ」
一瞬、青年の口端から火の粉が漏れた。さて、次があるならもっと上手くやらなければと考えて――そうならなければと、甘い考えが過ったのを溜息で追い払ってみせたら。
「――改めて、自己紹介しましょうか。友守平和。友達の平和を守る、でトモリノドカです。トモリと呼んでください」
「魔王の怒りが一柱、ラス。よろしくな。んでこいつは配下のメリル」
「ぁ、どもす……へっ!? へへ、配下……配下って言われました……へへへ」
何かぶつぶつと言いながら妙な仕草をしているメリルに気味の悪さを感じてラスの表情を窺ってみたけれど、ラスはメリルを心配そうに見ているだけだ。悪意や何かを隠しているようには見えないけれど、トモリは妙に肩が重くなるのを感じてしまった。
トモリは一つの結論を出した。この連中と話しているとひどく疲れる。トモリは理解のできないものが苦手だ。ハクと初めて話した時の疲労感が再びやってくるのをトモリは感じていた。上手くやっていけるかすでに不安になっている。
――上手く、いくのだろうか。本当に彼らと手を組むとして。その時、ココネやキユとはどうなってしまうのだろう。いや、手を組もうと組むまいと。キユとイザナは、きっと敵になってしまう。
この不安と胸の痛みは、気付かない振りをして。そうでないと、使命を果たせなくなってしまいそうだから。