万年荷物持ちが今日も気分よく帰ります   作:エスカド

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3話:追放系でも今日も気分よく帰ります?

***

◆モノローグ

 

 今日はいつもと違うギルドに来ていた。

 理由は特にない。気分だ。

 冒険者ってのは、別に所属支部が固定されてるわけじゃない。

 日本国内のダンジョンはどこもギルド管理で、登録さえしていれば全国どこでも潜れる。

 

 ここは――神奈川県・海鳴(うみなり)ダンジョン支部。

 海沿いの街にある、そこそこ有名なダンジョンだ。

 特徴は「中層から急に水場が増える」「魔物がやたら湿っぽい」。

 冒険者の拠点としては広くて綺麗で、飯もうまい。

 ただし、冒険者の民度は……まあ、普通だ。

 

 俺は受付で手続きを済ませ、ロビーに向かった。

 そこで、ちょっとした“追放劇”を目撃した。

 

***

◆◆ギルドロビー

 

「あなた、ずっとそんなことしかできないのね」

 

 刺すような声が響いた。

 見ると、豪勢な装備を纏ったいかにも上級パーティといった風貌の女が、

 同い年くらいの女の子を見下ろしていた。

 

 女の子は小柄で、肩までの黒髪。

 装備は軽装の魔術師っぽい。

 年齢は……俺より少し上くらいか。

 

「ご、ごめんなさい……」

 

 女の子はしゅんと肩を落とす。

 だが、上級パーティの女は容赦しない。

 

「謝れば済むと思ってるの? どんくさいのよ、あなたは」

 

 後ろのパーティメンバーも同調する。

 

「マジで足引っ張るよなー」

「なんで来たのって感じ」

「才能ないんじゃね?」

 

 典型的なやつだ。

 

「あなたはもう来なくていいわ。

 “蒼風の爪”に役立たずはいらないの」

 

 そう言い放ち、上級パーティは去っていった。

 

 残された女の子は、しばらく立ち尽くしていたが、

 やがて小さく息を吐いて、受付の方へ歩いていった。

 

 俺は思った。

 

「あー……これ、追放系ってやつだ」

 

 最近よく見る。

 流行ってんのか?

 

 俺は追放されるより前に、

 “一回目でいらん”ってなるから経験ないんだよな。

 

***

◆ギルドロビー(続き)

 

 そんなことを考えながら、

 俺はこの地区の適当なパーティの誘いを待つことにした。

 

 今日は運が良かった。

 声をかけてきたのはCランクパーティで、ヨウジと名乗った。

 

「サポート希望のショウさん……?ですよね、宜しくお願いします」

 

 リーダーは柔らかい笑顔の青年。

 他のメンバーも礼儀正しく、俺のことを"荷物持ち"と呼ばず「サポートお願いします」と言ってくれた。

 善人パーティだ。

 さすがにここまで徹底してると、少し拍子抜けする。

 

「はーい、よろしくお願いします」

 

 俺は軽く返事をして同行した。

 

***

◆◆ダンジョン・上層

 

 海鳴ダンジョンは、上層は普通の洞窟だ。

 湿気はあるが、魔物も弱い。

 

 Cランクパーティは丁寧に進み、

 俺のことも気にかけてくれた。

 

「ショウさん、重くないですか?」

「休憩します?」

「無理しないでくださいね」

 

 ……優しすぎる。

 

 俺は荷物をウィンドウに載せてるだけなので、

 重いわけがない。

 

「大丈夫ですよ。俺、荷物持ちしかしてないんで」

 

「そんなことないですよ!ユニークスキルですよねそれ! すごく助かります!」

 

 ……本当に良い人たちだな。

 

***

◆ダンジョン・中層手前

 

 中層に入る前、リーダーのヨウジが言った。

 

「今日はここまでにしましょう。

 無理して事故るのが一番よくないですから」

 

 判断が早い。

 引き上げのタイミングも完璧だ。

 

 俺は心の中で感心した。

 

***

◆ダンジョン出口

 

「ショウさん、今日はありがとうございました!」

「また機会があればお願いします!」

 

 彼らは笑顔で手を振って去っていった。

 

 良い人たちだった。

 だが――

 

「……笑い飛ばせる相手じゃなかったから、

 ちょっと気持ちよくない日だったな」

 

 俺は苦笑した。

 気分よく帰るには、

 相手がちょっと嫌なやつのほうが都合がいい。

 

「帰るか……」

 

 そう思ったときだった。

 

***

◆ダンジョン入口(再び)

 

 見覚えのある姿が目に入った。

 

 ギルドで追放されていた女の子だ。

 

 彼女は一人で、

 ダンジョンに入ろうとしていた。

 

 装備は軽い。

 表情は硬い。

 足取りは震えている。

 

「……おいおい」

 

 俺は思わず声に出した。

 

「一人って、マジか……?」

 

 追放された直後のソロ潜り。

 しかもこのダンジョンは途中から急に危険度が増す。

 

 経験の浅い魔術師が一人で入る場所じゃない。

 

 だが、彼女は迷いなく入口へ向かっていた。

 

 俺は頭をかいた。

 

「……はぁ。

 面倒なことになったな」

 

 そして、彼女の後を追った。

 

 

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