万年荷物持ちが今日も気分よく帰ります   作:エスカド

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8話:新宿アンダーシティから気分よく帰りたい

***

◆新宿アンダーシティ

 

 新宿アンダーシティは、地下街の奥に突然出現したダンジョンだ。

 これまでのダンジョンと大きく異なる点は――

 

 『まるで地下街がそのまま延長したように、奥へ奥へと続いていること。』

 

 照明が生きている区画が多く、

 魔術師が明かりを灯す必要もない。

 地形は規則的で、入り組んだ場所もあるが、

 上に行けば出口、下に行けば深層という分かりやすさ。

 

 落石や落とし穴の心配もない。

 その代わり、ここは冒険者の数が少ない。

 理由は単純で――厄介な魔物が多いからだ。

 

 ダンジョンに直通する地下街は、すでに一般人立ち入り禁止。

 俺とミヤはゲートを抜け、アンダーシティへと足を踏み入れた。

 

***

◆地下街型ダンジョンの光景

 

「これが都市型ダンジョン……地下街タイプなんですね」

 

 ミヤが感心しながら歩く。

 照明の明るさに目を細め、周囲をきょろきょろ見渡している。

 

「見通しが良いですね」

 

「まあまあ厄介なところですよ、ここ」

 

 俺がそう言うと、ミヤはぴしっと背筋を伸ばした。

 

 ここに来るまでの間、ミヤはほぼ一方的に喋っていた。

 Aランクパーティ“蒼風の爪”に所属していたが、

 本人はCランク冒険者だという。

 

 なぜそんなパーティに?

 と思ったが、ミヤは語らず、話さないのなら詮索する必要もないと思った。

 

 追放されたことについても口をつぐんでいたが、

 怒りのような感情は感じられなかった。

 むしろ、どこか納得しているようにも見えた。

 

***

◆店の前で

 

「ダンジョンなのに……お店が……」

 

 ミヤがシャッターの半分開いた店の前で立ち止まる。

 

「お宝はこの店の中にありますが、注意してください。

 ここの魔物は待ち構えてます」

 

 そう言った瞬間だった。

 

 ミヤの死角から、影が飛び出した。

 

「――っ!」

 

 制服姿で、手には警棒のような武器。

 パッと見は人間の警備員だが、実態は魔物。

 

 《ガードマン・シェイド》

 このダンジョン特有の“警備員型魔物”だ。

 

 ミヤは驚き、そのまましりもちをついた。

 

 ガードマン・シェイドが警棒を振り下ろす――その前に。

 

 俺はミヤの前にウィンドウを展開した。

 

 ぱん、と透明な板が空中に固定される。

 

 警棒がウィンドウに阻まれ音もなく止まる。

 

「こ、これ……!」

 

「こんな感じです。結構厄介なんですよ、ここ。

 それに、人型の魔物って……抵抗感あって」

 

 俺は別のウィンドウを横に展開し、

 それを魔物の側頭部に叩きつけた。

 

 ガードマン・シェイドは吹き飛び、

 光の粒となって消滅した。

 

***

◆店内の探索

 

「……っ、た、助かりました……」

 

 ミヤは何とか起き上がり、服の埃を払った。

 

「こういう感じです。

 とりあえず、この店には他の魔物はいなさそうですね。

 ちょっと見てみましょう」

 

 店内に入ると、棚には

 日本語らしき文字が印刷されたビニール袋入りのお菓子が並んでいた。

 

「これは……ダンジョンのアイテムですか?」

 

「そうですね。でも、これらは毒が入ってることもあるので、

 基本的に食べちゃダメですよ」

 

「そ、そうなんですね……」

 

「ここの戦利品は目利きが重要です。

 それも、ここに冒険者が少ない理由のひとつですね。

 なんでもかんでも持って帰りたいなら、

 無尽蔵に物を積めないといけない」

 

「なるほど……」

 

 ミヤは素直に頷いた。

 

「それじゃあ、もうちょっとだけ探索してみましょうか」

 

 俺は店を出て、アンダーシティの奥へと歩き出した。

 

 ミヤは一歩遅れて、俺の後ろをついてくる。

 

(まあ、適当にやって帰ればいいか)

 

 そんな気分で、俺はさらに奥へと進んだ。

 

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