秀乃は宇宙傭兵である。報酬さえあれば、猫探しに召使い、殺人、果ては一国傾城まで何でもござれ。そんな存在である。
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「うぇひひ♪やっぱりお酒好き好き♪だーい好き♪」
地球から遠く遠く離れた星、惑星カルテの都市廃墟ハビット。そこにたった一人、孤独に住むご機嫌そうな少女がいた。少女は茶色を基調としたカウボーイ風の衣装を身に纏い、右目に眼帯、戦闘用のピストルを仕舞うホルスターがあった。傍から見れば演劇のお遊戯会に出た少女。しかし、彼女にとってはこれが普段着である。
ハビットには光は当たらず、冷たい夜風だけが吹く。水も枯れ、残っているのは倒壊しかかっているビル群とかつて都市だったと物語る巨大な電気塔、切れかかった数々のネオンの看板だけであった。
こんな地で少女が純朴な笑顔を浮かべて酔っている。
その少女の名前は秀乃。種族機械少女、職業宇宙傭兵のアル中。彼女は宴会をしている。宴会場には机と椅子、そしてレアモノのお酒を三、四十本入れたショーケースがあった。
「今日も俺生きてて偉い!明日も楽しく生きよう!」
彼女はただ一人でパーティーをする。今日も昨日も一昨日も果てには一年前のこの日も。お酒を飲むための理由作りに。彼女は大きい瓶をきゅうと恋人を抱くように抱きしめながら机に置いてある大量のお酒を浴びるように飲み続けていた。
真っ赤になった耳たぶ。消えぬ気分の高揚、手足の震え、発せられる笑い声。どれも彼女が重症であることを示すサンプルだ。
「とても……きもちよーくなってきたぁ?頭くるくるで楽しくてぇ?ナハハ!これ度数65度じゃあん!こりゃ頭おかしくなるのも当然なのよ!ナハハハハハ!」
――そしてまたサンプルが増えた。
彼女は酔いの余り、机を叩きながら笑う。その歓喜の極まった声は誰も存在しない街に悲しく木霊した。
「レヴァたん?俺をトリップさせてくれてありがとなぁ?うぇひひ♪」
秀乃にはお友達がいる。レヴァテイン。通称レヴァたん。とある星で手に入れたレア酒だ。レヴァたんは秀乃にとって最大の理解者の一人であり、最高に場を盛り上げてくれる芸者であり、生活に彩りを与えてくれる希望であった。
秀乃はそんなレヴァたんを愛し、密着するくらいに抱きかかえていた。それどころか、悪酔いが進行し、何度も何度もそこら中に自身のモノであると刻みつけるべく、キスマークを重ねていた。飲み口は勿論、何語か分からぬ文字部分、ラベルの端、底にまで付けていた。
「やっぱこれだめぇ……。かなーり良い感じに酔いがぁ……。好きぃ」
目がトロンとし、欠伸を今にもしそうな表情を浮かべる。
――目の前がチカチカする。視界に虹色が沢山見える。何も分からない感覚がとっても気持ちがいい。
秀乃は恍惚としていた。だが幸せな感覚は長くは続かない。暫くすると秀乃は頭を押さえ始めた。
アルコールは決して幸せだけを齎すモノではない。代償も当然ある。
痛みは秀乃を蝕む中、取った行動はさらに口にアルコールを注ぐことだった。
「あ――うま」
秀乃は変わらない。恐るべき程に。
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「うえ……?どうしてた俺……?」
秀乃は目覚めた。迎え入れたのは昨日吹いていた夜風。トリップにトリップを重ね、眠っていたことにさえ気づいていないようだった。秀乃は手元を見る。レヴァテインを抱き枕のようにしていたようだと一瞬で分かった。そして。
「レヴァたん後夜祭!今宵もパーティーしよう!」
またもや飲み始めた。
暫くすると昨日のような快楽に溺れきった顔になっていた。超退廃的アルコール塗れ生活。それが秀乃の日常にしてスローライフ。
だが、宴をしている最中に秀乃のポケットから振動が鳴る。秀乃は無意識上に携帯を取る。
「ふぁい……?だれれすかぁ……?」
秀乃は泥酔状態でフワフワした感覚を抱きながら通話を開始した。
「国をお一つ」
電話の相手は秀乃とは対称的にいたって真面目そうにだった。
「あ――はいはい……。報酬はぁ……?」
「弾む」
「りょ〜かい。後でメールくださぁい……」
そう言った後、秀乃は電話を切り、再び晩酌へと戻る。
「国かぁ……。めんどくさいぜぇ……」
仕事が来た。お金が無ければ気持ち良さに浸る事は不可能。秀乃にとってはそれが非常にうざったい事実だった。
「はぁ……」
秀乃は思わずため息を漏らす。タダ酒飲んで永遠にぐーたらしたいのだと主張するが如く。
宇宙傭兵は暇つぶしとお金稼ぎをきっかけに始めたモノである。大好きな宴会より当然優先順位は下だ。
暫くして秀乃の携帯にメールが届いた。依頼主は惑星フィーアのトリンプ国の官僚、そして抹消対象は同惑星のヌル国であった。
「ま、がんばろっと。カプセル船準備をして……明日にしゅっぱーつ」
秀乃の新たなミッションがゆるくスタートした。