宇宙傭兵秀乃ちゃん!   作:tetois

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第四話 お仕事のお時間!

 

「呼んだあ?」

 

 少年との追いかけっこを終えた秀乃はレーグルの要請を受け、宮殿の近くの飛行場に来ていた。鳴り響く爆発音、舞う火の粉、風に乗って流れ着く焦げ臭い匂い。それらが充満し溢れ出していた。

 

 秀乃はというと足にローラースケート、髪にはトリンプ国で観光グッズとして売られているキャラのヘアピンを身に着け、お供の酒瓶も抱えている。

 

「ええ。それよりもお出かけ中に邪魔しましたね」

 

 レーグルは秀乃に目を細め、冷淡さをはらんだ瞳で見つめた。

 

「うぇひひ。報酬さえあれば」

 

 レーグルの表情を見て、秀乃は愉快そうに笑う。しかし、目は笑っていない。

 

「で、これ乗ればいいってことね」

 

「ええ。この戦いが正念場。今戦場になっているのは相手国の首都ですから。本拠地も近くにあるからお呼び立ていたしました」

 

 秀乃は本来は最後の追い打ちとして雇われた。長きに渡る戦いの火蓋を落とす為に。

 

「あ、同乗者としてこの者も一緒にいます。彼が目的地に連れていってくれるかと」

 

 そう言うとヘリの扉が開く。 

 

 ヘリの運転席にはスーツに似た服装を身に着け、鍛え上げられたと思われる強靭な触手を持つ男軍人がいた。胸元には国のバッジのようなものを着け、どこか威圧感のようなものをはらんでいる。

 

 そんな軍人に気を留めることなく、秀乃はいつも通りにお酒を飲みながらヘリへ搭乗した。

 秀乃が乗った後、ヘリは秀乃を空の旅へと誘った。

 

 ★

 

 上空、二人の空間はただただ静かだった。軽い会話すら起こらず。このヘリに存在する音は秀乃が何かをかみくだく軽やかな音のみだった。

 

「……あ、なくなた」

 

 胸ポケットに手を当てようとしたその時。見かねた様子で軍人が言葉を漏らした。

 

「……貴様、何を食べている」

 

「ん?コオリサトウてやつ」

 

「いらん。それよりも依頼をこなす気はあるんだろうな」

 

 コオリサトウを軽々しく渡そうとする秀乃の手を強引に祓い除け、軍人は高圧的に秀乃に接する。秀乃の行動、雰囲気、装備、服装――、軍人から見ると秀乃は巫山戯ているとしか思えなかった。

 

「……さあ?態度による」

 

「貴様ぁ!」

 

 舐めた返答についに軍人が内に秘めた激情を顕にする。今にも襲いかからんとばかりに胸元を掴みかかり、その影響か飛行機が左へ微細に傾いた。

 

「あ――服伸びちゃうじゃん」

 

「その言葉今すぐ撤――」 

 

 軍人が言い切る前に、金属音がヘリの中で響く。運転席側は紅く彩られた。

 秀乃はつまらなそうに欠伸をし、ポケットにしまい込んだお酒を飲む。

 

「ふぁあ……」

 

 ヘリの運転席側のドアを空け、軍人だったモノをゴミのように蹴り落とす。秀乃の表情は虚無。怒りも喜びも存在しなかった。

 

 運転席に移動し、秀乃は外を見渡した。宮殿に酷似した一際巨大な建物が目につく。

 

「落とせば楽」

 

 

 ★

 

 ヌル国の宮殿内部の庭園。本来花などが生い茂る庭園は火で燃え盛り、地獄に化していた。

 少女は両足で地獄に降り立った。

 

「んん……あ、やべ」

 

 秀乃は服に引火していたのに気付いた様子で手をスナップさせ火を消した。

 

「すげぇ。燃えてるけど」

 

 マイペースに降り立った秀乃。観光好きな彼女は庭園を見渡していた。だが平穏は永くは続かない。――異変に気付いた護衛兵の一部隊がやってきたのである。

 

「敵襲!敵襲!」

 

「国王の元に行かせるな!」

 

 ヌル国の敵は約五メートルほどの遠さから光線銃を構える。

 彼らは国直属の護衛兵だった。

 装備はヌル国の限られた者だけが持つことができる最新型超高濃度レーザー銃。掠めるだけでもその部位の内部組織まで焼き切る高性能のモノ。

 

「侵入したことを後悔させてやる……」

 

 ヘアピンに光線すら搭載されてないであろう古臭いピストル、そしてローラースケート。まるで子供の玩具の寄せ集めの格好をした秀乃などすぐに殲滅できる。

 

「………打て!」

 

 発砲合図とともにレーザーが秀乃に照射される。だが秀乃は火で燃え盛った庭園に夢中の様子で視界には入っていなかった。

 

 全てのレーザーが彼女を撃ち抜く。太腿、腹部、肩はレーザーにより貫かれ、内部の機械部分が露出していた。

 

「……ん」

 

「ああ――、そう」

 

 その瞬間、彼女は極めてつまらなさそうに始めて敵を認識した。瞬間、目を合わせることも無く、放たれる二つの銃弾。その銃弾は正確にレーザーを持っていた兵士の二人の手を灰に溶かした。

 

 二人がどれだけ悲鳴を上げて手を抑えようとも灰化は止まることはなかった。そして無情にも二発目が頭に着弾した。

 

「ちっ――お前ら止まるな行け!」 

 

 護衛兵のリーダー格がけたたましく声をあげた。全員が指揮の元、言葉にならない叫びで自身を鼓舞し、ヌル国の兵士の誇りを抱き、前進した。

 

 

 しかし、何も変わらなかった。

 リーダー格の男が見た光景は一人の少女がただの遊び道具で仲間を蹂躙していく姿。ローラーが駆動し火花を散らせ疾走し、次々と同士を轢き殺していく。かつて手を取り合い、生活を共にした同士らは細かく切り刻まれミンチへと変貌する。

 男はその現実にただ漠然としていた。そうしている間にもローラーの魔の手は既に彼を侵食しかけていた。

 

 

 それから庭園はとても静かになった。風情に相応しい姿を取り戻した。問題があるとすれば兵器改造されたローラーの摩擦に耐えきれず、やがて生い茂った芝生や花々も焼き尽くされることだが。

 

 あの時秀乃と遊んだ少年は知らない。あの遊びによって自身が人殺しの兵器を育てたということを。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

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