宇宙傭兵秀乃ちゃん!   作:tetois

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第五話 れっつぷれい!

 

 火の海になった庭園を自分だけの道かの如く、秀乃は踏み慣らしていた。そこにあるのは燃え盛る草木とローラーによって生み出された肉片、そして灰だけだった。

 

 それらが彼女を何者かを示す証明となる。空っぽの世界の中でただ風は泣き、秀乃の長い髪を靡かせた。

 

「んおっ」

 

 靡いた髪が秀乃の顔を覆った。秀乃は冷静に髪を払う。

 

「……髪型変えたい」

 

 秀乃は機械少女である。彼女には選択権はない。それが彼女に課せられた呪いの一つ。彼女は不機嫌そうに舌打ちし、ポケットにあるコオリザトウを口をほうりこみ噛み砕いた。

 

「敵襲!敵襲!一人!」

 

「第三部隊急行する!」

 

 静寂だった庭園に騒がしさが蘇る。秀乃が歩く真正面。宮殿からの来襲だった。

 戦場にガリッと噛み砕く音が再び響く。

 

「またあ……」

 

 ため息にも似た声を秀乃は発した。彼女は飽き飽きした様子で天を仰いだ。

 

「ま、いいや」

 

 彼女はコオリザトウの入ったポケットから機械を取り出し、コードに繋がれたあるものを耳に入れる。それは地球の人類がかつて残した古のテクノロジー。

 世界との断絶。孤独の世界の創造。同時にそれらができてしまう人類の忘れ物。

 

 playという文字の書かれたボタンを押した瞬間。秀乃はローラーを再稼働した。火花を散らせ、護衛兵に向かい駆ける。

 

 縦横無尽に飛び回る光線に身体を捻らせる。彼女の調整は実に機械らしく精密だった。彼女は糸を通すようにレーザーを回避した。すでに身体に空いていた穴すらも利用して。

 

「ぱん」

 

 冷徹な声とともに発砲する。一発一発が全てを始めから無かったものへと変えていく。彼女の通った道は摩擦で生じた熱で燃え上がり、地獄と化していた。

 

 秀乃はそのまま宮殿の中に侵入する。

 彼女に音は届かない。声にならない悲痛な叫びもローラーの稼働音もパチパチと燃える火の音も。彼女はすでにこの世界にはいなかった。今聞こえるのはかつて滅んだ地にあったとされる音楽だけだろう。彼女は心なしかリズムを刻むようにピストルを回転させていた。

 

 ★

 

 ローラーで宮殿を駆けながら、秀乃はレーグルの言った依頼を思い出していた。ミッションは宮殿破壊と首相の始末の二つ。軍隊の来た方向を見るに宮殿内部にいる可能性が高いと判断していた。

 

 秀乃は庭園の二部隊に加えて、宮殿でも戦闘が勃発していた。全ての敵は宮殿の奥から共通して来襲している。それ程部隊を固めているということは敵にとって侵入させると不都合であるという結論に至るのは自然だった。残すは宮殿2階の2部屋のみ。そこへつながる長廊下を駆ける最中だった。

 

「ふああ……あっ――」

 

 部屋へ向かう秀乃の一瞬の油断。それが事故を引き起こした。視界が欠伸によって塞がれた刹那、ローラーのバランスを崩し、スリップした。

 転がる秀乃の背中を手前側の部屋のドアが迎える。そのまま立てかけのドアを倒し、動きは止まった。

 

「なっ!?何奴!?」

 

 偶然にもその部屋は暗殺対象の首相ラビがいた。

 

「あっちゃ……。………………いらね」

 

 ラビの存在に気づかないまま秀乃は事故の拍子に破損した機械を眺め、勿体なさそうに廊下に捨てた。コードの右側は転んだ反動で焼き切れ、本体の画面は文字の半分が消滅しかかっていた。――唯一つながっていた左のイヤホンからは何の音も発していなかった。

 

「あっつ!」

 

 服にはローラーが発した火が転んだ拍子に引火し、パチパチと燃えている。いつもの通りに服を振ることで火を消したものの、彼女の肩と右膝は既に露出していた。

 

 秀乃が気づかないでいる最中、一発の銃弾が彼女の頬に向けて発砲された。発砲元は触手を震わせ、汗をかいていた老いた異星人。

 

「ん」

 

「そのローラーにピストル……。何故我々を襲った!」

 

 その老人は無線機か何かで情報を得たのか目の前の少女こそが宮殿を荒らし、護衛兵を虐殺した張本人であることを既に知っていた。

 不意打ちで攻撃を老人は仕掛けたが、彼が持っていたのはレーザー銃でもなんでもない最低限の護衛用の銃。銃弾は鋼鉄の身体を貫くことなく、床に転がり落ちるだけだった。

 

「あれ……どこかでみたような」

 

 秀乃は記憶を回帰する。その老人の顔は彼女の頭に少しだけ痕跡があった。回帰している間にも老人は発砲を続けるが一切の効果を受け付けはしなかった。

 そして丁度。彼の弾が切れた時、彼女は老人を何者か思い出す。

 

「あ――酒くれる人じゃん」

 

 その言葉と同時に鈍い金属音が響いた。 

 

 

 あとは帰還し、報酬を貰うだけになった。彼女は鼻歌交じりにこう言った。

 

「事故には十分にきをつけろ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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