転生サトシの旅路   作:ナノブ

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10.ともに生きることを望んで

第17話 はぐれポケモン ヒトカゲ

 

 

旅を再開したものの、道には迷ったままの旅道中。

 

 

「クチバシティに向かってもう十日。もう一歩も歩けない~~~!!」

 

 

なんてカスミが音を上げるのを聞きながら、タケシ相手にバトルの特訓をしている俺達。

 

 

「焦るなよ、カスミ。時間はあるんだ、ゆっくり行こうぜ?」

 

「せめてポケモンセンターで休みたいのよ~~~!!」

 

 

泣き言を言うカスミにタケシと苦笑しながら、時間を有効活用してバトルの特訓は怠らない。

ポケモンセンターに着くまでは、ピカチュウ、スイクン、エーフィ、太陽、ロコン、バタフリーの面子で固定なので、しっかり鍛えておきたい。

特訓の仕方も決めておきたいし、フシギダネをゲットしたことで、早めに人間不信気味のフシギダネを手持ちに入れたいしな。

そんなこんなでゆっくりしていると、雲行きが怪しくなってきてついには雨が振り出した。

 

 

「やべっ。この先にポケモンセンターがあるはずだ!そこまで行こう!」

 

 

前の記憶からこの近くにポケモンセンターがあることを思い出し、先導して走り出す。

 

 

「もう~~~~!サトシとタケシがバトルなんてしてるからぁ~~~!」

 

「ごめんて!」

 

「さすがに天気まではわからないからなぁ。それでも悪かった!」

 

 

タケシと一緒にカスミに謝り、カスミに雨が当たらないように上着を貸しながらポケモンセンターまでの道を走る。

 

 

「ん?あれって……」

 

「なに?どうしたの?」

 

「明かり?」

 

 

雨が降って暗い時間帯。

雨で視界が悪いところに、峠の近くで上の方に薄ぼんやりと明かりが見えた。

 

 

「小屋でもあるのか?」

 

 

タケシの声を聞きながら近付いてみると、明かりの正体はなんと弱ったヒトカゲだった。

そういえばここでヒトカゲと会うんだった!

 

 

「ヒトカゲ!」

 

「まずい!尻尾の炎が消えかけてる!」

 

「早くポケモンセンターに行かないと!」

 

 

慌てて近寄って帽子で尻尾の炎が雨に濡れないよう庇う。

 

 

「カゲ、ッコォ………」

 

 

するとヒトカゲも俺達に気が付いたようで、妙にやつれて衰弱し、弱り切っているにもかかわらず、抱き上げようとする俺の手を拒否してきた。

 

 

「ヒトカゲ……」

 

「このままじゃ、お前の命にかかわるんだぞ!」

 

「カゲェ……」

 

 

タケシが強くそう言っても、ヒトカゲは受け入れようとしない。

それほどまでに、前の主人が恋しいのか。

前の主人を、信じているのか。

それでも命にかかわる以上、ヒトカゲを連れて行かない選択肢はない。

俺はヒトカゲの体に手を当て、ゆっくりと波導で覆った。

ロコンの時のように落ち着ける波導を流しながら、〝いやしのはどう〟を真似して少しでも体力が回復するよう波導で守る。

 

 

「カゲッ………?」

 

 

少しは体が楽になったようで、ヒトカゲも驚いて俺の顔を見上げた。

 

 

「俺達はお前の敵じゃない。ヒトカゲ、どうか拒まないでくれ。俺達はお前を、助けたいんだ」

 

「…………カゲ………」

 

 

呆然としているヒトカゲをそっと抱き上げて、尻尾の炎を守る。

あれだけ俺達の手を拒んでいたヒトカゲが大人しく俺に抱かれたことに驚き、固まっていたタケシとカスミを促して、ポケモンセンターに急ぐ。

あと少しでポケモンセンターだというところで、こんな大雨だというのに大勢で外に出てくる人影があった。

 

 

「なんだ…?」

 

 

タケシの驚いた声を聞きながらそのまま走ってポケモンセンターの入り口に向かうと、自然と話し声が聞こえてきた。

 

 

「いや~ダイスケさん、さすがですねぇ」

 

「でも惜しいっすね。その捨てたっていうヒトカゲ、弱っちくてもなんか役に立ったかもしれないのに…」

 

「いやいや、絶対無理だ。そのヒトカゲ、めちゃ弱っちくて、ニョロモ相手に手も足も出なかったんだからな。何の役にも立ちゃしねぇよ」

 

 

わはははは、と馬鹿にするような笑い声が響く。

ヒトカゲもその笑い声でその存在達に気付いたようで、俺の服の隙間から顔を覗かせた。

 

 

「カゲ!カゲッコォ!」

 

 

そしてダイスケと呼ばれた人物の顔を見るや否や、嬉しそうに俺の腕の中から手を伸ばす。

 

 

「ん?なんだ?」

 

 

ダイスケ達もヒトカゲの声でこちらに気付いたらしく、足を止めてこちらを見た。

 

 

「このヒトカゲ、もしかしてお前のか?」

 

「カゲ!カゲカゲ!」

 

「ヒトカゲェ?そいつ、峠にいたヒトカゲか?」

 

「そうだ」

 

「それなら俺が捨てたやつだな。馬鹿なやつでよ。捨てても捨てても付いてきやがるんだよ。だから、ここで待ってりゃ戻ってきてやるって言ったら、やっと諦めてさ。それでも、信じて尻尾を振ってやがったぜ」

 

 

わはははは、と再びダイスケ達の笑い声が響く。

それに怒ったタケシが、ダイスケの胸倉を掴み上げた。

 

 

「なんてことを!ゲットしたポケモンに、迎えに行くからなんて嘘を吐いたら、死ぬまでお前を待ち続けるんだぞ!」

 

「な、なんだよ。っせぇーな!おめーには関係ねーだろ!」

 

 

ダイスケは慌ててタケシの手を振り払う。

 

 

「弱いポケモンなんか、捨てて当たり前だろ」

 

「カゲッ………!?」

 

「迎えに行くつもりなんて端からねぇよ。俺に迎えに来てほしいなら、ちったぁ成長して強くなりやがれってんだ。育てる面倒がなくていい強いポケモンしか、俺は興味ねぇよ」

 

「ポケモンを育てるのがトレーナーの醍醐味だろ!」

 

「知るか。俺はそんな面倒くさいことごめんだぜ」

 

「貴様!ポケモントレーナー失格だ!」

 

 

タケシが熱くなり怒っているが、正直今はダイスケに構っている暇はない。

ショックを受けて伸ばしていた手をだらりと降ろしてしまったヒトカゲを、これ以上傷付けたくない。

 

 

「タケシ、こんなやつ放って置こう」

 

「そうよ!今はヒトカゲの治療を優先しないと!」

 

「!そうだったな!」

 

 

ダイスケ達の横を通り、ポケモンセンターの中に駆けていく。

 

 

「何だってんだ、ったく……」

 

 

ダイスケが呟いた言葉を背に、俺達の走る音に驚いたジョーイさんの元に駆け寄った。

 

 

「ジョーイさん!ヒトカゲをお願いします!」

 

「今にも死にそうなんです…!」

 

 

俺が抱えていたヒトカゲをジョーイさんに見せると、ジョーイさんは顔色を変えた。

 

 

「まぁ!すぐに治療を――!」

 

 

状態を見るために、一度病室に運び込まれる。

 

 

「大丈夫でしょうか……?」

 

「随分弱ってるわね……。こんなになるまで、どうして放って置いたの!」

 

「違うんです。俺達のポケモンじゃなくて、ダイスケってやつのせいなんです。あいつが峠に捨てて、そこで待ってるよう言ったから……。あんなやつでも、ヒトカゲにとっては大事なトレーナーだから……」

 

「そうだったの……」

 

 

ダイスケについて知っているのか、俺達の話を疑うことなくジョーイさんは信じてくれた。

 

 

「ジョーイさん!ヒトカゲの命を、救ってください!お願いします!」

 

「えぇ、もちろん。やるだけやってみるわ」

 

 

ジョーイさんに頭を下げて頼み込み、緊急治療室に運び込まれていくヒトカゲを見送る。

 

 

「ヒトカゲ………頑張れよ…!」

 

 

ヒトカゲの治療を待つ間、オーキド博士と母さんに連絡を入れ、自分のポケモン達のケアを行った。

コンディションを整え、旅の疲れを癒やす。

一際ヒトカゲを心配そうにする太陽を抱きしめて、寝ずに待つこと数時間。

緊急治療室のランプが消え、ジョーイさんが出てきた。

 

 

「!ジョーイさん、ヒトカゲは!?」

 

「あ……ふふ」

 

 

ジョーイさんはピースで答えてくれた。

俺達の緊張も緩み、ようやく太陽達にも笑顔が戻った。

 

 

「明日の朝になれば、元通り元気になるわ」

 

 

ジョーイさんの言葉にようやく安心できた俺達は、ヒトカゲの病室を覗いた後、ようやく一休みすることができたのだった。

そして、翌日。

ヒトカゲの病室に行くと、ヒトカゲはまだ寝ていた。

前の時のように峠に戻ってしまわないかと心配していたが、ダイスケから直接騙されていたことを聞いていたので、もう戻る気はないかもしれない。

 

安心していいのかわからない微妙な気持ちになりながら、ポケモン達とバトルの特訓を開始する。

今の手持ちはピカチュウ、スイクン、太陽、ロコン、ニドラン♂、フシギダネだ。

フシギダネは技スロット四つの、〝つるのムチ〟、〝たいあたり〟、〝やどりぎのタネ〟、〝ねむりごな〟を覚えていたので、スタミナを付けるとともにバトルでは〝つるのムチ〟が便利なので、〝つるのムチ〟の強化を行う。

 

そうしてヒトカゲの目覚めを待ちながらバトルの特訓をしていたが、昼になってもヒトカゲは目覚めようとしなかった。

おやつ時になっても目覚める気配がないので、さすがにおかしいと感じジョーイさんに調べてもらうと、ヒトカゲは捨てられた絶望のあまり心を閉ざしかけているのではないかと教えてもらった。

 

 

「体に何か異常があるわけじゃないのよ。むしろ元気いっぱいの状態。それでも目覚めないのは、捨てられたという事実を突きつけられて、この世界に絶望してしまったからだと思うの。絶望して、生きることを、投げ出そうとしている………」

 

「そんな!!」

 

 

カスミが悲鳴のような声を上げる。

俺とタケシ、ピカチュウ、太陽も呆然としてしまう。

ヒトカゲの尻尾の炎は、体が元気なはずなのに弱々しく見えた。

 

 

「このまま目覚めなければ、残念だけどヒトカゲは………」

 

「!!!」

 

 

言いにくそうにしながらも、ジョーイさんは現実をはっきりと教えてくれる。

そんな―――。

 

 

「そんなことが、あってたまるかよ…!」

 

 

いつの間にかきつくきつく握りしめていた両拳を開き、寝ているヒトカゲに近付いてヒトカゲの頭を優しく撫でる。

 

 

「ヒトカゲ……目を覚ましてくれ。俺は、俺達は、お前の命を絶対に諦めないぞ…!!」

 

「ピーカ!ピカチュウ!」

 

「グォォォォウ!!」

 

「…………サトシ……」

 

 

痛ましそうに見てくるタケシとカスミ。

カスミは涙すら浮かべている。

諦めてたまるか!

 

意識して、波導の力を分け与えていく。

もし仮に、はじまりの樹に波導を分け与えた時のように命を差し出すことになったとしても。

それでも、ヒトカゲが生きてくれるなら構わない。

それぐらいの気持ちでヒトカゲに呼びかけていく。

 

 

「ヒトカゲ。俺は、俺達はお前に、生きていてほしい。弱くても、なんて言うつもりはない。最初は皆弱いもんだ。成長して、特訓して、少しずつ強くなっていくんだ。あいつの、ダイスケの言うことなんて気にするな。本当に弱いのは、あいつの心だ。トレーナーとしての腕が未熟で、心が弱くて、お前のことを諦めた。悪いのはお前じゃない。お前が気に病む必要はないんだ」

 

「サトシ……」

 

 

俺の心が、波導を伝って心を閉ざしてしまっているヒトカゲの心に届くように願う。

 

 

「世界を嫌わないでくれ。世界を拒絶しないでくれ。あいつだけが、世界じゃないんだ。世界はまだまだ広い。世界は苦しいばかりじゃなくて、もっともっと、キラキラしている場所がたくさんある。俺達と一緒に、それを見に行こうぜ?なぁ、ヒトカゲ」

 

 

ヒトカゲの体が波導に覆われ、淡く蒼く光る。

 

 

「サトシ!」

 

「あんた、何をっ…!」

 

 

タケシとカスミの驚きの声が聞こえても、波導を送るのをやめない。

 

 

「ヒトカゲ……!生きろ……!俺は、お前と一緒に、色んな世界を見に行きたい…!」

 

 

渾身の想いを込めて、波導でヒトカゲを包み込んだ。

淡く青白く光ったヒトカゲの体は、光を呑み込むように輝きを放った後、徐々に光が収束していく。

そして、完全に光が収まった後――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………カゲ………?」

 

 

 

 

 

 

ヒトカゲは、目を覚ました。

 

 

「まぁ!」

 

「ヒトカゲ!」

 

「ヒトカゲ!よかった!」

 

 

ジョーイさんとカスミ、タケシの喜ぶ声を聞きながら、体中の力が抜けていく感覚に抗えずドカリと座り込む。

 

 

「はぁぁ~~~~~よかったぁ~~~」

 

「カゲ………カゲ、ッコォ!」

 

 

ヒトカゲは俺の声を聞くや否や、笑顔でベッドから起き上がり俺の腕の中に飛び込んできた。

おそらく波導を通して聞こえていた俺の声を、覚えていたのだろう。

 

 

「おっと………はは。おはよう、ヒトカゲ」

 

「カゲッコォ!」

 

「ピカピ!ピカピカチュウ?」

 

「ん。俺は大丈夫だよ。心配してくれてありがとな、ピカチュウ」

 

「ピカ~~~」

 

 

元気に擦り寄ってくるヒトカゲを撫でながら、心配してくれたピカチュウの頭も撫でる。

 

 

「ちょっと失礼するわね、サトシ君、ヒトカゲ」

 

 

ジョーイさんはそう一声かけて、ヒトカゲを抱き上げ、改めて診察してくれた。

 

 

「うん、元気いっぱい。もう大丈夫ね」

 

「ありがとうございます。よかったなぁ、ヒトカゲ」

 

「カゲ!」

 

 

ジョーイさんからベッドに降ろされたヒトカゲは、すぐさま俺の腕の中に戻ってくる。

 

 

「本当に……って、そうじゃないわよ!!あの蒼い光は何!?あんたは何でそんな疲れてるわけ!?大丈夫なの!?」

 

「まぁまぁ、落ち着けカスミ。一先ずはヒトカゲの無事を喜ぼうじゃないか」

 

「そうだけど…!!」

 

 

聞きたいことがありすぎるらしく、うがーーーーっとなっているカスミに太陽と一緒に苦笑した。

そしてその後、太陽とヒトカゲが交流している間に波導の力について、タケシとカスミに詳しく話した。

ジョーイさんも聞いたことだけはあったが実際に見たのは初めてらしく、驚いていた。

 

 

「波導の力、ね…………なんで今まで隠してたの?」

 

 

カスミは何故か、すねたように口を尖らせている。

 

 

「隠してたわけじゃないんだけどな。必要になったら話すつもりだったよ。ただ、何にもないのに波導の力を話したところで、自慢っぽくなっちゃうかな、って……」

 

「まぁ、波導の力を自在に操れる存在は、稀有も稀有。本当に珍しい存在だからな。ポケモンハンターとか、密猟者とか。そういった悪い連中に狙われないためにも、黙っておくことは必要だ。サトシはそこらへん、自衛意識が強くて判断としては正解だっただろうな」

 

 

付き合いの短いタケシにそう言われて、照れくさくなる。

カスミも多少は納得してくれたようで、膨らませていた頬の空気をぷすーっと抜く。

そして俺のことを理解してくれたタケシにも、スイクンのことを紹介することにした。

少し狭くなるが、人目のつかないヒトカゲの病室の中でスイクンをモンスターボールから出す。

 

色違いのスイクン。

その存在にタケシもジョーイさんも、しばらくは驚きで開いた口が塞がらなかった。

出会った経緯を話し、仲良くなった経緯を話し、仲間になった経緯を話す。

全てに納得し、スイクンに自己紹介してこれからよろしくと声をかけてくれるタケシは、やっぱり最高にいいやつだ。

ジョーイさんにも、トキワシティのジョーイさんのように内緒にしてもらうよう頼み、久しぶりにスイクンの健康診断をしてもらった。

結果は異状なし。

オールグリーンである。

 

 

「ヒトカゲ。お前は、これからどうする?」

 

「カゲ?」

 

 

スイクンを戻し、太陽を戻し、ピカチュウを肩に乗せて旅を再開しようと、ポケモンセンターを出ようとした俺達に付いて来たヒトカゲ。

俺にはもう太陽がいることはヒトカゲも知っているし、タケシにゲットされるのか。

少し寂しいがそれでもいいかと、そう考えていると、ヒトカゲは俺の足に抱き付いて来た。

 

 

「ヒトカゲ……」

 

「カゲ!カゲカゲ!カゲッコォ!」

 

 

ニコニコ笑顔で俺を見上げ、ヒトカゲは尻尾をブンブン振る。

波導の力を使わなくてもわかる。

俺と一緒にいきたいの、意志。

 

 

「いいのか………?俺と一緒で」

 

「カゲ!」

 

「ヒトカゲを救ったのは、サトシだもん。サトシと一緒にいきたいって思っても、何ら不思議じゃないわよ」

 

「サトシにはもう太陽がいるが、サトシの腕ならどちらのヒトカゲもリザードも、生かすことができるだろう」

 

 

少し不安に思った俺に返ってきたのは、ヒトカゲの飛び切りの笑顔と、信頼し切ってくれているカスミとタケシの言葉。

嬉しくて照れくさくて、頬をかく。

 

 

「へへ………サンキュー、カスミ、タケシ。よぉーし。一緒に行こうぜ、ヒトカゲ!」

 

 

空のモンスターボールを取り出し、ヒトカゲに差し出した。

 

 

「カゲッ!」

 

 

一瞬の間もなくヒトカゲは自らモンスターボールに入り、一度の揺れで収まった。

 

 

「ヒトカゲ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「よかったわね、サトシ」

 

「ヒトカゲもな」

 

「あぁ!」

 

「ピッカ!」

 

 

すぐにオーキド博士に連絡を入れ、ニドラン♂とヒトカゲを入れ替える。

 

 

「出てこい、ヒトカゲ!」

 

「カゲ!カゲッコォ!」

 

 

モンスターボールから出て来るや否や、ヒトカゲは俺に抱き付いてくる。

 

 

「はは。これからよろしくな、ヒトカゲ」

 

「カゲ!」

 

 

俺も笑顔でヒトカゲを抱きしめ返して、これから色々な世界を見に行くことを決めたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば、ヒトカゲには名前を付けなくていいの?」

 

「確かに。今更だけど、リザードの太陽にだけ名前が付いてるんだな」

 

「あぁ、太陽は、ヒーローとしての名が欲しいってんで、俺が頑張って付けたんだ。センスはないけどな……」

 

 

リザードに太陽という名が付いた理由を話し、太陽の由来も話す。

太陽はヒーローを目指し、ヒーローの名として太陽という名を付けたこと。

するとカスミとタケシは納得したようだった。

 

 

「カッコいいじゃない!ヒーローの太陽!皆を明るく優しく照らしてくれる、温かい存在!センスあるわよ!」

 

「そ、そうかな……」

 

 

カスミに褒められると、余計むず痒くなる。

タケシもうんうん頷いている。

こうして俺達の旅にまた新たな仲間が加わり、クチバシティを目指す旅を再開したのだった。

 

 

 

 

 

第18話 ゼニガメ軍団登場!

 

 

バトルの特訓を怠らず、タケシとカスミとバトルしながら旅を続ける。

今の手持ちはピカチュウ、スイクン、太陽、ロコン、フシギダネ、ヒトカゲである。

炎タイプが被りに被っているが、人間不信気味のポケモン達なのでロコンとフシギダネ、ヒトカゲはしばらくの間手持ちに入れておきたい。

太陽はヒトカゲを仲間にしたので、同族ということですぐに仲良くなり、特訓の方法を真似る等して交流を図っていたので、その意を汲んで手持ちに入れていた。

ただ特殊型で育てている太陽と違い、物理型で育てた方が伸びるだろうヒトカゲは、そのうち特訓内容が変わってくるだろうが。

 

そんなこんなで旅をしていると、いきなり落とし穴に落ちた。

咄嗟にピカチュウとカスミとタケシを引っ張って自分が下に来るように移動したので、ピカチュウとカスミとタケシに怪我はない。

 

 

「はぁ~………ピカチュウ、カスミ、タケシ。大丈夫か?」

 

「だ、大丈夫よ。あんたが、庇ってくれたから……」

 

 

カスミは庇われたことが屈辱だったのか、顔を真っ赤にしてごにょごにょ呟いている。

 

 

「……………俺も、平気だ」

 

「ピカピカチュウ」

 

 

タケシは何故か呆れたような顔をしていた。

 

 

「しかし、一体誰がこんなことを……」

 

「考えられるのはロケット団だけど……」

 

「「「「「ゼーニゼニゼニゼニ!」」」」」

 

 

突然、落とし穴を覗き込む体勢で姿を現した、黒い眼鏡を付けたゼニガメ五匹。

それで思い出した。

俺のゼニガメか!

ゼニガメ達は俺達が落とし穴に落ちた姿を見て、ゲラゲラ笑っていた。

捻くれてるなぁ。

 

 

「何なのよ、あんた達…!」

 

 

落とし穴から這い出し、カスミとタケシを引っ張り上げるとカスミがゼニガメに怒り出す。

まぁ、いきなり落とし穴に落とされて笑われたら、誰だって怒りたくなるよな。

あわやバトルになるか、と思ったところで、サイレンの音が聞こえてきた。

するとゼニガメ達は慌てて何処かに行ってしまった。

 

 

「何だったの……?」

 

「さぁ……」

 

「あなた達!大丈夫?」

 

 

サイレンの音を鳴らしながらやってきたのは、ジュンサーさんだった。

トキワシティの従姉妹のジュンサーさん。

前と同じように町の交番に案内してもらい、ゼニガメの事情を聞く。

 

 

「さっきのは、ゼニガメ団っていうの」

 

「ゼニガメ団?野生のポケモンと違うの?」

 

「彼らは、トレーナーに捨てられたポケモンなの」

 

「またか……」

 

 

怒っていたカスミも神妙な顔になる。

 

 

「悪戯ばっかりして、街の皆を困らせているのよ。あの子達も、ちゃんとしたトレーナーに育ててもらってたら、あんな風にはならなかったんだろうけど……」

 

 

トレーナーに捨てられた心の傷を、街の人達への悪戯で慰める。

空しくないんだろうか。

考えるだけで、こちらが寂しくなってくるというのに。

 

気を付けるよう忠告してくれたジュンサーさんにお礼を言い、旅を再開する。

街の近くの森に入ると、ゼニガメ団のリーダーが一匹で顔を出した。

 

 

「あ!ゼニガメ団!」

 

「また何か悪さを企んでいるのか!?」

 

 

カスミとタケシが警戒する中、俺はバッグから木の実を一つ取り出した。

 

 

「ゼニ?」

 

「腹減ってないか?よかったら食うか?」

 

「ゼニッ!?」

 

「サトシ……」

 

 

俺の言葉に驚いたように体をのけぞらせたゼニガメは、ブンブンと首を横に振ってぐんと胸を張って見せる。

 

 

「ん?」

 

「ゼニャーーーーー!!」

 

 

いきなり〝みずでっぽう〟をぶっかけられた。

避ける間もなかった。

 

 

「な、何するのよ!?」

 

「ゼーニャゼニャゼニャ!」

 

 

わはははは、と笑い、俺達の動きが止まった瞬間に後ろから縄で捕まった。

 

 

「な!?」

 

「何だ!?」

 

 

見ると他のゼニガメ団のゼニガメが、縄を使って俺達を捕えていた。

 

 

「ゼニガメ団!?なんでこんなことを!」

 

「ニャーハッハッハッ!よくやったニャア!ゼニガメ団!」

 

「ニャース!」

 

「ってことは、ロケット団!」

 

「ピピッカチュウ!」

 

 

ゼニガメ団の後ろから現れたのは、ロケット団のニャース。

しかし現れたのは、ニャースだけでムサシとコジロウの姿は見えなかった。

 

 

「何だってこんなことを!」

 

「決まってるニャ!おみゃーらのポケモンを奪うためニャ!さぁゼニガメ団!奴らを木に括りつけるニャ!」

 

「やめろゼニガメ団!お前達は、ロケット団に騙されてるんだ!」

 

「ゼーニ!」

 

 

ゼニガメ達に止めるよう声をかけてみても、ロケット団と何らかのやり取りがあったのかまともに聞いてくれない。

そのまま縄を引っ張られて各々木に括りつけられてしまった。

 

 

「ピカピ!」

 

 

ピカチュウだけは逃れているが、一人ではどうしようもない。

 

 

「ニャー!いい感じニャ!おみゃーらのモンスターボール、いただくニャ!」

 

 

ちょこまかとニャースが俺達の周りを動き回り、腰からモンスターボールを取り上げていく。

 

 

「ちょ、ちょっと!どこ触ってんのよ!」

 

「黙るニャ!ニャーは小娘なんかに興味ないニャ!」

 

「なぁんですってぇ!!?」

 

 

カスミがカンカンに怒っているが、正直今はそれどころではない。

スイクンのモンスターボールすら取られてしまった。

 

 

「ニャア?見たことないモンスターボールだニャ。きっと珍しいポケモンが入ってるニャ!」

 

「やめろニャース!」

 

「やめろって言われてやめる悪党はいないニャ!さぁピカチュウ!あとはおみゃーニャ!このモンスターボールを壊さないでいてほしければ、ニャーと一緒に来るニャ!」

 

「ピ……!」

 

 

モンスターボールにポケモンが入ったままモンスターボールが壊れれば、中のポケモンがどうなるかわかったもんじゃない。

ピカチュウは心底困ったような表情をした後、渋々とニャースの傍に寄った。

すると上からロケット団の気球が現れた。

 

 

「なんだかんだと聞かれたら」

 

「答えてあげるが世の情け」

 

「世界の破壊を防ぐため」

 

「世界の平和を守るため」

 

「愛と真実の悪を貫く」

 

「ラブリーチャーミーな敵役」

 

「ムサシ」

 

「コジロウ」

 

「銀河を駆けるロケット団の二人には」

 

「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ」

 

「ニャーんてニャ」

 

 

いつもの名乗りをし、ビシッとポーズを決めるロケット団。

その手には、黒い物が握られていた。

 

 

「何だ……?」

 

「とうっ!」

 

 

投げられたのは、爆弾。

あちこちに落とされ、火の手が上がる。

 

 

「ゼニ!!?」

 

「なぁぁ!?」

 

「なんてことを!?」

 

 

ゼニガメ団と驚いている間にも、気球から梯子が降ろされる。

 

 

「ニャース、よくやったわ。ピカチュウを連れて上がってきな」

 

「他のやつらは動くんじゃねーぞ。いいなっ!?」

 

 

爆弾片手に脅されてしまえば、そもそも動くことのできない俺達に抵抗する術はない。

ピカチュウも俺達の命まで握られてしまえば抵抗するわけにはいかず、ニャースに大人しく連れて行かれる。

ニャースが気球に上がった瞬間、再び爆弾が落とされた。

近くの岩場に当たり、岩が降り注いでくる。

 

 

「もうメチャクチャよ~!」

 

「ゼニガメ団!縄をほどいてくれ!」

 

「ゼニ!」

 

 

ゼニガメ団もまさかこんな事態になるとは思わなかったようで、急いで縄をほどいてくれた。

体が自由になったが、降り注がれる爆弾を避けるために一旦隠れるしかない。

 

 

「皆、とりあえず木の影に隠れるんだ!」

 

「おっけー!」

 

「あぁ!」

 

 

上がる火の手に驚いて、固まっていたゼニガメ団を促して木の影に隠れる。

 

 

「ゼニ!」

 

「!ゼニガメ!!!」

 

 

ゼニガメの声が聞こえて振り向くと、爆弾が爆発した風圧でかひっくり返ってしまっていた。

そこへ、爆弾が落とされる。

 

 

「危ない!!!!」

 

 

慌てて駆け寄り、ゼニガメに覆いかぶさって爆弾の衝撃波から守る。

 

 

「サトシ!」

 

「サトシ!!」

 

「っつぅ………大丈夫か、ゼニガメ」

 

「ゼニ………」

 

 

庇ったリーダーのゼニガメは、呆然と俺を見つめていた。

 

 

「さぁ、逃げよう、ゼニガメ。俺にはお前達の力が必要だ」

 

「ゼニ………ゼニーーーーー!!!」

 

 

手を差し出してゼニガメを助け起こすと、ゼニガメは感涙しながら火事場の馬鹿力で俺を持ち上げ、カスミ達が隠れている方へと走り出した。

 

 

「うわぁ!?ちょ、ゼニガメ――!」

 

「ゼニ!ゼニ!ゼニ!」

 

 

落とされる爆弾を華麗に避けながら走り、俺を持ち上げたゼニガメはカスミ達の方へとダイブした。

そのままここら辺に詳しいゼニガメ団に頼み、気球が飛んでいる距離まで技が届く高台に案内してもらう。

 

 

「「いい感じいい感じー!」」

 

「ニャハハ!大儲けニャ!」

 

「………ピカピ……」

 

「ピカチュウーーーー!」

 

「ピ!」

 

 

モンスターボールが全て取られている以上、ポケモンの力無しで自分達で何とかするしかない。

崖と崖の間に飛んでいる気球に向かって、思い切りジャンプした。

 

 

「「「なぁあああ!!!?」」」

 

「ゼニガ!?」

 

「ちょ、ちょっとサトシ!?」

 

「無茶だ!」

 

 

後ろで聞こえるゼニガメ達やカスミ達が驚く声は、一旦無視だ。

そのまま気球に乗り込んで、固まっているロケット団から一気にモンスターボールを取り返し、自分のモンスターボールは腰のホルダーに付け、カスミ達のモンスターボールはカスミ達の居る方に放る。

 

 

「ピカピ!」

 

「ピカチュウ!無事でよかった!」

 

 

最後に嬉しそうに肩に乗ってきたピカチュウと頬を寄せ合う。

 

 

「ニャア!!固まってる場合じゃニャース!」

 

「おのれジャリボーイ!」

 

「こうなったらピカチュウだけでも!」

 

 

その姿にようやく我に返ったらしいロケット団が襲ってきた。

波導の力を全開にして、掴みかかってくる手を避けまくる。

何度か繰り返していると気球が思い切り揺れ、ロケット団達が慌ててへりに掴まったのをいいことに、さっさと気球から飛び降りた。

 

 

「せっかく捕まえたピカチュウが!」

 

「逃がしてたまるかーー!行け、ドガース!」

 

「アーボ!あんたも行きなさい!」

 

 

無事に地面に着地すると、後ろからドガースとアーボが襲い掛かってきた。

 

 

「ピカチュウ!〝10まん―――」

 

「「「「「ゼニューーーーーー!!!」」」」」

 

 

〝10まんボルト〟の指示を出す前に、ゼニガメ団達が〝みずでっぽう〟で迎撃してくれる。

〝みずでっぽう〟に吹き飛ばされたドガースとアーボは、気球の中に戻された。

 

 

「今だピカチュウ!〝10まんボルト〟!」

 

「ピィィィカァァァァチュウウウウウウウ!!!!!」

 

 

渾身の〝10まんボルト〟が気球に突き刺さり、「「「やな感じーーーーー」」」とロケット団は吹き飛ばされていく。

しかし、これで終わりではなかった。

ロケット団が落としていった爆弾で、森に火の手が上がっているのだ。

街の方から、騒ぎを聞き付けてやって来たジュンサーさんがやってくる。

 

 

「このままだと、街まで火が届いちゃうわ!」

 

「大丈夫です!俺にいい考えがあるんです!」

 

「え!?」

 

「ゼニガメ。君達の力を合わせれば、山火事だって消せるはずだ」

 

「「「「「ゼニ!!!」」」」」

 

 

ゼニガメ団の力を借り、山火事の火を消していく。

前の世界でも消防団をやっていたこともあり、さすがの速さで鎮火した。

これを受けてジュンサーさんは、ゼニガメ団を表彰し、この地区の消防団に任命する。

事情を知らされた街の人たちからも許され、受け入れられ、一躍人気になったのだった。

 

一件落着。

よかったよかった。

カスミとタケシと微笑み合っていると、リーダーのゼニガメが近付いて来た。

 

 

「ゼニ!」

 

「ゼニガメ!よかったな。これからこの地区をしっかり守ってくれよ?」

 

「ゼニ………………ゼニガ!ゼニゼニ!」

 

「ん?」

 

 

ゼニガメは俺の腰に付いているモンスターボールを指差した。

 

 

「モンスターボール…………ゲットしろ、って言ってるのか?」

 

「ゼニ!」

 

「えぇぇぇぇぇぇ!!!?」

 

 

カスミの驚きの声が響き渡る。

 

 

「ゼニガメ………いいのか?俺で……」

 

「ゼニ!ゼニゼニ!」

 

 

ゼニガメは笑顔でコクコクと頷く。

ゼニガメの確固とした決意を感じ取り、俺も頬を緩めて空のモンスターボールを取り出した。

 

 

「一緒に行こうぜ、ゼニガメ」

 

「ゼニ!」

 

 

黒い眼鏡を取り、キラキラの瞳を俺に向けて、ゼニガメは自らモンスターボールに入っていった。

一回揺れただけで収まる。

 

 

「ゼニガメ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

 

ゼニガメのモンスターボールはオーキド研究所に転送されてしまったので、街のポケモンセンターに寄り太陽とゼニガメを交換してもらう。

そして改めてゼニガメをモンスターボールから出した。

 

 

「これからよろしくな、ゼニガメ」

 

「ゼニゼニ!」

 

 

抱き付いて来たゼニガメを抱きしめ返し、優しく頭を撫でる。

 

 

「もう~~~サトシのゲットって、こんなんばっかり。感覚狂うなぁ」

 

「まぁ、これがサトシなんだろう。俺達も慣れていこう」

 

 

こうしてまた一匹、新たな仲間が旅に加わったのだった。

 

 







・不満の声が多くなりそうなので先に書いておきますが、ダイスケに対して、今回の話では何も処遇がなかったですがこれで終わりではないです。
まだまだ調子に乗っているからこそ、色んな手を使って来るべき大舞台まで上がってきます。
そこで改めて決着をつけるつもりなので、悪しからず。

・カスミがすねたのは、自分はサトシのことを心から信頼しているのにサトシはそうじゃなかったのかと思ったから。





スイクン(色違い) Lv.45

エーフィ♀  Lv.35

リザード♂  Lv.36 -太陽-

ピカチュウ♂ Lv.34

ロコン♂(色違い) Lv.28

バタフリー♂ Lv.27

ピジョン♂  Lv.22→24

ニドラン♂  Lv.20→22

フシギダネ♂ Lv.18

ヒトカゲ♂  Lv.18 NEW!

ゼニガメ♂  Lv.18 NEW!

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