転生サトシの旅路   作:ナノブ

11 / 36
11.電撃と炎の対決

第19話 マサキの灯台

 

 

バトルをしながら旅を続け、何度目かわからず道に迷っていると、砂浜がある海に出た。

 

 

「わぁぁぁ!夕日が綺麗!」

 

 

カスミが感嘆の声を上げるのを聞きながら、ふと砂浜に目をやると、小さな小さなクラブを見つける。

間違いなく、俺のクラブだ。

じっと見ていると、目が合った。

目が合ったので、空のモンスターボールを差し出してみる。

 

 

「俺と一緒に、来ないか?」

 

「へっ?」

 

「ん?」

 

 

状況をわかっていなかったカスミとタケシが素っ頓狂な声を上げながらこちらを見た。

クラブはというと、俺の顔と俺が差し出したモンスターボールを交互に見る。

 

 

「コキコキ」

 

 

じっと真摯に見つめていると想いが伝わったようで、クラブは頷いて自分からモンスターボールに入っていってくれた。

数回揺れて止まる。

 

 

「な、え、えぇぇぇ!!?」

 

「クラブ、ゲットだぜ」

 

「ピッピカチュウ!」

 

 

カスミの驚きの声を背に、いつもの台詞を言うとクラブのモンスターボールはオーキド研究所に転送されていった。

 

 

「ななな、なんであんたはそういうゲットが多いわけ!?というか、最近はそういうゲットしかしてなくない?普通はバトルして弱らせてからゲットするもんよ!?」

 

「俺はもう、サトシだからで慣れてきたぞ」

 

「タケシは順応早すぎ!」

 

 

カスミが何やら騒いでいるのを聞きながら、辺りを見渡す。

前と同じなら、この辺りに灯台があるはずだ。

 

 

「ピカ!ピカァ!」

 

「ん?あ!」

 

 

ピカチュウが見つけてくれた。

ピカチュウが指差した方、崖の上に、灯台があった。

 

 

「灯台!きっと人が住んでる!人が住んでりゃベッドがある!固い寝袋はもうたくさん!」

 

「少なくとも、ここがどこだかわかりそうだな」

 

「よし、行こう!」

 

「「おー!」」

 

 

灯台までの道のりを走り出す。

意外と長い道を歩き切って、何とか灯台まで辿り着いた。

灯台に着くだけで日が暮れてしまったので、今夜は泊めてもらうのがいいかもしれない。

しかしマサキの家って、ゲームだとハナダシティの上にあるんじゃなかったっけ…?

クチバシティとは真逆の方向だ。

しかしクチバシティは近くにあるはずなので、この灯台は一体どこに位置しているのだろう。

 

 

「はぁぁぁ、遠かったぁ」

 

「こりゃただの灯台じゃないな」

 

 

灯台の門前に付き、インターホンを鳴らす。

すると教会の鐘のような重々しい音が響き渡り、カスミとタケシが驚いて俺の背に隠れた。

思わずジト目で見る。

 

 

「誰ですかー?」

 

「あ、あの!俺達旅の者ですけど……」

 

「よかったらふかふかのベッドを貸してくれませんか?あたし達、ここのところずーっと野宿なんです…!」

 

「あの、台所をお借りできれば、美味しい卵炒飯をお作りできるんですがね」

 

「炒飯より焼きそば作れます?固焼きの餡かけ食べたいなぁ。どぞ、ご自由にお入りください」

 

 

許可が出たので、中に入っていく。

 

 

「ブイブーイ」

 

「わぁ!イーブイだ!可愛い!」

 

 

中に入ると、可愛らしいイーブイがお出迎えしてくれた。

マサキの灯台にイーブイなんて居たっけか?

まぁいい。

膝を折り、目線を合わせて挨拶する。

 

 

「こんばんは、イーブイ。ちょっとの間だけお世話になるな」

 

「ブイ!ブーイ!」

 

 

とても人懐っこいおっとりしたイーブイのようで、俺の挨拶に合わせて挨拶を返してくれ、頭を撫でさせてもくれた。

カスミがメロメロになって抱き上げ、頬擦りしている。

 

 

「ブイ~~~」

 

「随分と人懐っこいな」

 

「可愛いイーブイだなぁ」

 

「ピカチュウ!」

 

 

イーブイと戯れてから改めて中に進んでいくと、左手に公衆電話が見えたので、再びマサキに許可を貰い母さんとオーキド博士に連絡を入れる。

オーキド研究所にいるエーフィ、太陽、バタフリー、ピジョン、ニドラン♂、そして先ほどゲットしたばかりのクラブの様子を見る。

全員元気でバトルの特訓に励んでおり、新人のクラブは先輩達にもまれていた。

思わず笑ってしまう。

 

カスミに抱っこされたままのイーブイが、物珍しそうにエーフィ達の様子を見ていた。

そしてオーキド博士から、灯台にいるマサキがオーキド博士をも凌ぐというポケモン研究家だと教えられた。

オーキド博士が直々にマサキに頼んだことにより、マサキが姿を現してくれた。

 

 

「僕が灯台のマサキや」

 

 

何故か、カブトの着ぐるみを着て。

 

 

「お、俺、マサラタウンのサトシです」

 

「ピカ、ピカチュウ!」

 

「あたしはカスミです」

 

「俺はタケシだ、よろしく。それにしても、その姿は……」

 

「ごめんごめん。僕はカブトやない。悪いけど、ここのボタン押してくれへんか?」

 

 

マサキに頼まれ、着ぐるみについているボタンを押す。

すると中から青年が現れた。

絶滅したはずのカブト達の心を知りたくて着ぐるみに入っていたらしい。

 

 

「この星ができて四十六億年。色んな生き物が生まれて、それぞれ色んな思いを持ってこの星を生きてきたに違いない」

 

「色んな思いを持って、この星を……」

 

「君達はポケモントレーナーや。この全てのポケモンをゲットするのが目標や。それはそれでえぇ。でもな、そんな数知れんポケモンには、それぞれの生き方がある。ポケモンにもこの星に生まれてる意味がある。それを考えることが、僕達人間が、何でこの星におるんかを考えることにもなるんや。この星におる、ありとあらゆる生き物に、生きている意味がある」

 

 

マサキは格好いいことを言う。

生きている意味。

俺が幼い頃、スイクンに会うまで、見失っていたこの星に生きている意味。

見つけ、与えてくれたスイクンには、今でも感謝の気持ちを忘れたことはない。

スイクンのモンスターボールをそっと触ると、カタリと揺れた。

 

 

「そういえば、このイーブイはあなたの?」

 

「いや、僕のやないで。なんやすごい人懐っこおてなぁ。悪い人にもほいほい付いて行きそうな感じがあったから、僕の灯台に避難させてたんや」

 

「そうだったの。じゃあまだ野生なんだ」

 

 

カスミの目がキラリと光る。

 

 

「ブイ~?」

 

 

イーブイは呑気に首を傾げていた。

 

 

「僕は、たった一匹のポケモンを待っとる」

 

 

そう言って、マサキは灯台の上に案内してくれた。

聞くと、そのポケモンはこの世界で一番大きいポケモンで、その姿を見たものは誰もいないと。

そして、自分の仲間を探して世界中を探し回っているポケモンらしい。

海の向こうから聞こえたという声を、スピーカーで流してくれた。

そうこうしているうちに、霧がかった海の向こうからスピーカーから聞いた声と似たような声が聞こえてきた。

 

 

「来た!合図を!」

 

 

慌ててマサキが再びスピーカーから声を流す。

影だけで判断するならば、超巨大なカイリューだ。

返答として返ってきた声は、何だか歌っているような綺麗な声だった。

 

 

「なんか歌っているみたい」

 

「よかったら、お相手を」

 

「グラッツェ」

 

「ピ~カピカチュ~」

 

「ブイブ~イ~」

 

 

カスミも同じ感想を呟いたかと思えば、タケシと踊り出す。

そこに、いきなり巨大なカイリューの影にミサイルが直撃した。

 

 

「ブイ!?」

 

「ピ!?」

 

「なぁ!!?」

 

 

見ると、崖の上にロケット団の三人組がおり、ムサシとコジロウが武器を構えていた。

 

 

「お前達!何するんや!」

 

「なんだかんだと聞かれたら」

 

「答えてあげるが世の情け」

 

「世界の破壊を防ぐため」

 

「世界の平和を守るため」

 

「愛と真実の悪を貫く」

 

「ラブリーチャーミーな敵役」

 

「ムサシ」

 

「コジロウ」

 

「銀河を駆けるロケット団の二人には」

 

「ホワイトホール白い明日が待ってるぜ」

 

「ニャーんてニャ」

 

 

ロケット団は名乗ったかと思えば、再び武器を構えて巨大なカイリューの影にミサイルを放つ。

 

 

「悪いことをすると書いて空しいと読むなんてね!」

 

「やめろーーーーー!!」

 

「ピカチュウ、〝10まんボルト〟だ!」

 

「ピィカチュウウウウ!!!」

 

 

ミサイルを放って隙だらけのロケット団に〝10まんボルト〟が直撃し、武器を手放させる。

そうこうしているうちに巨大なカイリューの影が灯台にぶつかり崩れてしまったので、慌ててマサキとカスミの腕を引き、イーブイとピカチュウを肩に乗せて外に避難した。

灯台から外に出た瞬間、網が放たれイーブイだけ掻っ攫われる。

 

 

「ブイ!?」

 

「!イーブイ!」

 

「ニャー!?ピカチュウのはずがイーブイが釣れたニャ!」

 

「イーブイも珍しいポケモンだから問題ナシ!」

 

「よくもやってくれたわね、ジャリボーイ!今回はこのイーブイで見逃してあげるわ!」

 

 

そう言って、とうっ!と気球に乗り逃げていくロケット団。

イーブイが捕らわれているので、迂闊に〝10まんボルト〟が放てない。

 

 

「待つんや!イーブイを放せ!」

 

「べー!放せと言われて放す悪党はいないのよ!」

 

「出てこい、フシギダネ!〝つるのムチ〟だ!」

 

「ダネ!ダネフシャ!」

 

 

まだ比較的低い位置にあった気球のへりに〝つるのムチ〟を巻き付けてもらい、それ以上逃げられないよう固定する。

 

 

「ニャア!!?ニャにするニャ!放すニャ!」

 

「放してたまるか!皆、フシギダネを頼む!」

 

「おっけー!」

 

「あぁ!」

 

 

タケシにフシギダネを預け、抱っこしていてもらい〝つるのムチ〟での綱引きが始まる。

日頃から鍛えているので、そう簡単にフシギダネは音を上げたりしない。

歯を食いしばって耐えていた。

 

 

「イーブイーーーー!!!」

 

「ブ……」

 

 

気球が傾きロケット団が落ちないよう必死にへりに掴まっている隙を狙い、大ジャンプして気球に飛び乗った。

 

 

「「「げぇ!?ジャリボーイ!」」」

 

「イーブイは返してもらうぞ!」

 

「そうはさせないニャ!」

 

 

怯えてガタガタ震えているイーブイを傷付けないよう抱き上げるが、ニャースが腕の隙間を掻い潜って腕の中からイーブイが掻っ攫われる。

 

 

「やめろ!イーブイが傷付いたらどうするんだ!」

 

「イーブイを傷付けたくないなら、大人しく諦めろってんだ!」

 

「そうよそうよ!」

 

 

傾いている気球の中、という非常に不安定な狭い場所で、ロケット団との攻防が始まった。

合計三人と一匹のしっちゃかめっちゃかな動きにより、気球がガタンと揺れる。

瞬間、コジロウの腕の中からイーブイが転がり落ちた。

 

 

「ブイ!?」

 

「あぁ!しまったぁ!」

 

「イーブイ!!!!」

 

 

気球から落ちて崖の下に真っ逆さまなイーブイを追い、俺も気球からダイブする。

 

 

「ピカピ!!!」

 

「「サトシ!!!」」

 

 

ピカチュウとカスミ達の焦った声を聞きながら、空中でしっかりと抱き留めた。

 

 

「イーブイ、大丈夫だ。もう大丈夫だからな」

 

「ブイ………?」

 

 

涙目で体を固くしていたイーブイを空中で優しく撫で、微笑んでみせる。

 

 

「ブイ………」

 

 

イーブイの震えが止まったのを確認してもう一度微笑み、海面に叩き付けられる前に一つのモンスターボールを取り出した。

 

 

「頼むぞ、スイクン!」

 

 

綺麗な声を響かせて、イーブイを抱っこした俺を背に乗せたスイクンは海面に着地する。

そのまま水面を走り、崖を登り、灯台まで一気に躍り出る。

 

 

「なぁ!?スイクン!!!?」

 

「ジャリボーイ、いつの間にあんなポケモンを――!!?」

 

「スイクン!まさか、この目で見られる日が来るなんて!しかも、色違い!!?」

 

 

ロケット団とマサキが驚いている声を聞きながら、ホッとしていたピカチュウに目で合図を送る。

 

 

「ピカ!」

 

「〝10まんボルト〟!〝みずのはどう〟!」

 

「ピィィィカァァァァチュウウウウウウウ!!!!」

 

 

先ほどとは違い渾身の〝10まんボルト〟と、伝説のポケモンスイクンが放つ〝みずのはどう〟がロケット団に直撃した。

「「「やな感じーーーーー」」」と吹き飛ばされていく。

 

腕の中のイーブイの安否を改めて確認すると、嬉しそうに微笑みながら、大丈夫だよ、というように擦り寄ってくれた。

本当に可愛いイーブイである。

巨大なカイリューの影は、そうこうしているうちにいつの間にかいなくなってしまっていた。

 

マサキは落ち込んだ風もなく、スイクンの色違いに興奮しっぱなしだった。

あまりにも興奮していたため、カスミとタケシは先に寝に行ったほどだ。

そして一晩明け、朝。

マサキにクチバシティの方向を教えてもらい、旅立つ準備が整った。

 

 

「よかったら、このイーブイも連れて行ってくれへんか?」

 

「え?」

 

「はーい!はいはい!ならあたしがゲットする!」

 

 

マサキの言葉を受けて、いの一番に名乗りを上げたカスミに苦笑する。

見るとマサキも苦笑していた。

 

 

「昨日みたいな悪い奴が、このイーブイを連れて行ってしまわんとも限らん。腕の立つトレーナーの傍におった方が、このイーブイも安心するやろ」

 

 

マサキが連れて行ってほしい理由を説明する間にも、カスミはイーブイの前にしゃがみ込んでいた。

 

 

「ねぇイーブイ!あたしと一緒に行かない?あたしと一緒にくれば、いずれはシャワーズに進化して、広いプールで泳ぎ放題になるわよ!」

 

「ブ」

 

 

カスミの熱意が届かなかったのか、それともシャワーズに進化する意思はないのか、イーブイはそっぽを向いた。

そして尻尾を振って俺の傍にやってきて、俺の足に擦り寄ってくる。

 

 

「ブイ~~ブイブイ~~~」

 

「えぇぇぇ~~~~そんなぁ~~~~」

 

「はは。どうやら選ばれたんは、サトシ君みたいやな。大切にしてやってくれや」

 

「わかりました。けど、イーブイ。今俺、手持ちが六体いるんだ。ゲットしちゃうとすぐオーキド研究所に行くことになるんだけど、それでもいいか?」

 

「ブイ!ブイブーイ!」

 

 

オーキド博士に電話した際、オーキド研究所の様子を見ていたからか、イーブイは抵抗がないようで笑顔で頷いてくれた。

 

 

「よし、行くぞ、イーブイ!」

 

「ブーイ!」

 

 

空のモンスターボールを投げると、イーブイは自らモンスターボールに〝たいあたり〟して入っていった。

一回揺れて収まると同時に、オーキド研究所に転送されていく。

 

 

「イーブイ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「もう~~~サトシばっかりずるい~~~。あたしがゲットしたかったのにぃぃぃ」

 

「まぁ、イーブイ自身が決めたことだ。仕方ないと思って諦めろ!」

 

 

ガッツリ膝を付いて落ち込み、駄々をこねているカスミにタケシが止めを刺した。

再び苦笑するしかない。

 

 

「僕は待ち続ける。また幻のポケモンが現れる日を。君はポケモントレーナー。そして、僕はこの星の命を探るポケモン研究家。方向は違ってても、たぶん目指すもんは一つやと思う」

 

「…………はい。俺も、そう思います」

 

 

こうしてマサキの研究内容に心打たれながら、旅を再開するのであった。

 

 

 

 

 

第20話 電撃対決! クチバジム VSマチス

 

 

道に迷いに迷った末、ようやくクチバシティに着くことができた。

ようやくお風呂に入れると喜んでるカスミに、買い物ができると喜んでるタケシを連れ、一先ずポケモンセンターに向かう。

 

 

「ジョーイさん、お願いします」

 

「はい、お預かりします」

 

 

ジョーイさんにピカチュウ達を預け、俺達はご飯を食べてお風呂に入り、洗濯をし、買い物をした。

用事が全部終わるとちょうどピカチュウ達の回復が終わった音がして、受け取りに行く。

 

 

「はい。あなた達のポケモンは、みんな元気になりましたよ」

 

「ありがとうございます。ピカチュウ、おかえり」

 

「ピカ!」

 

 

ピカチュウ達を受け取っていると、ポケモンセンターの入り口が開いて、黒焦げのポケモンが運び込まれてくる。

 

 

「ど、どうしたんだ、今のポケモン。黒焦げだったぞ……」

 

「あらあら。今月は、これで十五匹目ね」

 

「えぇ!?」

 

「みんなクチバジムのジムリーダー、マチスにやられたのよ」

 

 

ジョーイさんが教えてくれた情報に、ピカチュウが少し怯えた表情をした。

エーフィや太陽の影響で、随分と好戦的な性格になったがまだまだ臆病なところがある。

安心させるようにピカチュウの頭を撫でた。

 

 

「なに。いつも通りの俺達なら勝てるさ。ピカチュウ、俺は君を出したいんだけど、嫌なら別の誰かにバトンタッチしてもいいぜ?」

 

「ピッ?………ピッカ!ピカチュウ!」

 

 

俺の言葉を聞いたピカチュウは、耳を立てて一瞬の思案の後、やる気を見せるように力こぶを作った。

一緒に戦ってくれるようだ。

頼もしい。

後ろからポケモンジムの犠牲者が続々と運び込まれてきて、ピカチュウが再び怯え始めたのは余談である。

 

オーキド博士に連絡とり、ポケモン達の調整を行えば準備万端。

そろそろロコンも人に馴れてきたので、今回はオーキド博士の元に送った。

色違いのポケモンに、オーキド博士が騒いでいたことは余談である。

 

 

「たのもーーーー!」

 

 

クチバジムの門を開け、中に入っていく。

ジムトレーナーと思しき人物が二人、出迎えてくれた。

 

 

「オレンジバッジを賭けて、公式戦を申し込みたい!」

 

「リーダー!また犠牲者が現れやしたぜ」

 

「ふん!どぉれ」

 

 

奥から巨漢が現れる。

 

 

「Welcome to クチバジム!」

 

 

そう言ってマチスはなんと、カスミにハグをした。

アメリカでは挨拶だと知っているから止めないが、場所によってはセクハラになるので注意した方がいいぞ。

カスミも肌を粟立たせて呆然としている。

 

マチスはどうもチャレンジャーをカスミだと誤解していたようで、俺がチャレンジャーだと誤解を解く。

すると俺をベイビーだのピカチュウをベイビーのペットだの馬鹿にしてきたので、さすがにちょっと頭にくる。

 

 

「俺は確かにまだまだベイビーかもしれませんが、ピカチュウはペットじゃありません!友達です!このピカチュウで、オレンジバッジを手に入れることぐらいはできますよ?」

 

「ピカ!ピカチュウ!!」

 

 

ピカチュウも馬鹿にされて更なるやる気を見せる。

 

 

「ほう……言うじゃないか、baby…。これを見ても同じことが言えるか?GO!モンスターボール!」

 

 

マチスは見せつけるようにライチュウを繰り出した。

馬鹿にしてくるのはあれだが、よく育てられているのがわかる。

 

 

「だからなんだ!進化させることが育てるってことじゃありません。ピカチュウにはピカチュウのよさがたくさんある。それを証明するためにも、バトルしてください!」

 

「ふっ。威勢のいい」

 

 

バトル前からピカチュウが電気をバチバチと迸らせ、ライチュウと一触即発の空気になりながらフィールドに入った。

使用ポケモンは三対三だと告げられる。

 

 

「GO!ビリリダマ!」

 

「太陽、君に決めた!」

 

 

マチスが繰り出したのはビリリダマ。

対するこちらはリザードの太陽を場に送り出す。

太陽を見たマチスは、よく育てられているな、とでも言うように口笛を吹いた。

 

 

「行くぜ、太陽!〝えんまく〟だ!」

 

「グァァァア!!!」

 

 

初っ端から目隠しの〝えんまく〟をフィールドに撒いていく。

こちらは俺の波導の力で場所がわかるが、視界が悪くなり、マチスが舌打ちした。

 

 

「真っ直ぐだ!〝りゅうのいかり〟!」

 

「グアァァ!!」

 

「What!? 何故場所がわかる!?」

 

 

これも戦略の一つさ。

波導の力のおかげで、俺達に錯乱攻撃は通じないってことの証明だ。

マチスとビリリダマが驚いている隙に、〝りゅうのいかり〟を直撃させる。

固定ダメージの技だがレベルが低い段階だと、一、二発当てただけで戦闘不能にできる、重宝する技だ。

 

 

「ビリリダマ、〝ころがる〟だ!」

 

「ビリ!」

 

 

動かねば的だとさとったのか、見えない中でもマチスが攻撃を仕掛けてくる。

 

 

「右に避けろ!〝りゅうのいかり〟!」

 

 

避ける方向を指示してビリリダマの〝ころがる〟を避け、二発目の〝りゅうのいかり〟を当てた。

あっという間にビリリダマが戦闘不能になった。

 

 

「………ちょっとはやるようだな、baby……」

 

 

まだ俺をベイビー呼ばわりするかと思ったが、気にしないことにした。

大人から見れば確かに俺はまだまだガキだろう。

喜んで抱き付いて来た太陽を撫でながら、マチスに二ッと笑ってやる。

それを見てマチスもフッと笑い、ビリリダマをモンスターボールに戻した後、新たなモンスターボールを取り出した。

 

 

「GO!コイル!」

 

「コイルか………太陽、戻ってくれ。ヒトカゲ、君に決めた!」

 

 

太陽を戻し、ヒトカゲを場に送り出す。

進化系を戻し、進化前のポケモンを繰り出したことで、マチスの眉が釣り上がった。

大方馬鹿にしていると思われたのだろうが、そんなことはない。

 

 

「俺のヒトカゲは強いですよ?」

 

「カゲ!」

 

 

先輩の太陽からバトンタッチされて、ヒトカゲもやる気満々に声を上げる。

ヒトカゲの声を聞いて、先ほど太陽にボコボコにされたことを思い出したのか、マチスも気を引き締め直していた。

 

 

「Sorry。Youのポケモンstrongね。Babyであろうと油断はしない。コイル、〝でんじは〟!」

 

「燃えろ、ヒトカゲ!〝かえんほうしゃ〟!」

 

「カゲッ!」

 

 

〝でんじは〟に対し、〝かえんほうしゃ〟をヒトカゲの周りに展開する形で燃え上がらせることで、灼熱のバリアを作り出し、電気を弾く。

いわゆる空気レンズだ。

温められた空気がレンズのようになって、電撃を曲げる技術。

 

 

「What!?」

 

「何あれ!?すご!!」

 

「あれは空気レンズ!いつの間にそんな高度な技術を!」

 

 

マチスだけじゃなく、カスミもタケシも驚いた声を上げる。

俺のヒトカゲは、強いぜ?

 

 

「攻めるぞ、ヒトカゲ!〝ほのおのキバ〟!」

 

「カゲ!」

 

 

マチス達が再び驚いている隙に、ヒトカゲの素早さで以て距離を詰め〝ほのおのキバ〟を決める。

特性はがんじょうだったようで一撃では倒せなかったが、効果抜群の技で大ダメージを負わせることはできた。

 

 

「続けて〝きりさく〟だ!」

 

「!コイル、〝エレキボール〟!」

 

 

マチスはすぐに我に返り、〝エレキボール〟を指示してきたので〝きりさく〟は〝エレキボール〟を切り裂くことになった。

 

 

「〝ほのおのキバ〟!」

 

「〝ジャイロボール〟!」

 

 

〝ほのおのキバ〟を仕掛けたら、〝ジャイロボール〟の回転で弾かれる。

さすがはジムリーダー。

炎技は対策済みか。

 

 

「コイル、〝スパーク〟だ!」

 

 

〝ジャイロボール〟から〝スパーク〟へと自然な流れで技を切り替え、〝ジャイロボール〟の回転で上がったスピードで避けることができず、諸に〝スパーク〟を受けることになった。

 

 

「カゲェ…!!」

 

「ヒトカゲ、頑張れ!〝かえんほうしゃ〟!」

 

「カゲ!」

 

 

吹っ飛ばされ、片手を付いて地面を滑ってきたヒトカゲが、〝スパーク〟を当て動きの止まったコイルに〝かえんほうしゃ〟を放つ。

 

 

「〝ジャイロボール〟!」

 

 

再び〝ジャイロボール〟の回転で〝かえんほうしゃ〟が弾かれる。

ダメージが通ってないわけではないが、弾かれている影響もあって比較的少なく済まされているようだった。

 

 

「あの回転、厄介だな…!」

 

「効果抜群の技なのに、全部弾かれちゃう!」

 

 

タケシとカスミの声が聞こえるが、まだ焦る時間ではない。

技が効いていないわけでもないのだ。

 

 

「ヒトカゲ、〝きりさく〟だ!回転を止めろ!」

 

「〝スパーク〟!!!」

 

 

〝ジャイロボール〟の回転を止めようと襲い掛かった〝きりさく〟は、〝スパーク〟に切り替えられたことでこちらが一方的に電撃を浴びた。

だがコイルの回転は止まり、至近距離にまで持ち込めた。

肉を切らせて骨を断つ、だ!

 

 

「〝ほのおのキバ〟!」

 

「カゲッ!」

 

 

電撃を振り払ったヒトカゲは、〝ジャイロボール〟で回転される前に〝ほのおのキバ〟を決める。

コイルはさすがに目を回し、戦闘不能になった。

 

 

「いいぞ!ヒトカゲ!」

 

「カゲ!カゲッコォ!」

 

 

太陽と同じように抱き付いて来たヒトカゲを抱きしめ、頭を撫でる。

電撃を浴びてボロボロになっていたが、それでもヒトカゲはまだまだ元気いっぱいだった。

 

 

「やるな、チャレンジャー。では本命といこう!GO!ライチュウ!」

 

「ラーイ!」

 

 

マチスの傍に控えていたライチュウがフィールドに飛び出してくる。

こちらはもちろん、ピカチュウだ。

 

 

「サンキューな、ヒトカゲ。ゆっくり休んでてくれ。ピカチュウ、行くぞ!」

 

「ピッカ!」

 

 

前戦った時の記憶をもとに、対策はできてる。

ピカチュウ得意のスピードで勝負だ!

 

 

「ピカチュウ、〝こうそくいどう〟だ!」

 

「ピッカァ!」

 

 

最初から〝こうそくいどう〟を積み、ライチュウの周りを周りまわって錯乱させていく。

 

 

「ライ?ライッ?」

 

「落ち着け、ライチュウ!〝10まんボルト〟!」

 

「ラァイ!」

 

 

当たるかよ。

 

 

「〝こうそくいどう〟!」

 

 

更にスピードを上げ、鈍足のライチュウの〝10まんボルト〟を避ける。

 

 

「当たらない!?」

 

 

俺のヒトカゲもピカチュウも、ちゃんと強いぜ?

馬鹿にするのも大概にした方が身のためだって、その身で味わえ。

 

 

「〝でんこうせっか〟!」

 

「ピカ!」

 

 

こちらは十八番のヒット&アウェイでペチペチダメージを与えていく。

〝でんこうせっか〟であまりにもペチペチした攻撃だからか、ライチュウがその鬱陶しさに怒り出した。

 

 

「ラァイ!ライラーイ!!」

 

「落ち着け、ライチュウ!〝エレキネット〟!地面に撒くんだ!」

 

「!ライ!」

 

 

〝エレキネット〟を何発も地面に撒かれることで、移動できる範囲が大幅に狭まる。

なるほど。

足を潰すために、フィールドを利用するか。

さすがはアニポケ。

なんでもありだ。

 

 

「それでも素早さも器用さもこっちが上だ!ピカチュウ、〝10まんボルト〟!」

 

「ピィィィカァァァァチュウウウウウウウ!!!」

 

 

〝エレキネット〟が当たらない場所に降り立ったピカチュウは、渾身の〝10まんボルト〟をライチュウに決める。

効果はいま一つだが、ライチュウは少し顔を歪めていた。

ダメージが積み重なってきたのだろう。

 

 

「こっちも〝10まんボルト〟!」

 

「尻尾をアースにして地面に突き刺せ!受け流すんだ!」

 

「!ピカ!」

 

 

ピカチュウは俺の指示を正確に理解し、前にした時のような体勢で〝10まんボルト〟を受け流した。

 

 

「What!?」

 

「〝10まんボルト〟!!」

 

 

三度マチスが驚いている隙に、返しの〝10まんボルト〟でダメージを与えていく。

ピカチュウは一旦場に留まりながら、踏めるフィールドの場所を把握したようでこちらに合図を送ってきた。

 

 

「よし!行くぞ、〝でんこうせっか〟!」

 

「ピッカ!」

 

 

ピカチュウが〝エレキネット〟が敷いてある隙間をぬって、ライチュウに突っ込んでいく。

 

 

「ライチュウ、〝かみなりパンチ〟で迎え撃て!」

 

「ライ!」

 

 

ライチュウは〝かみなりパンチ〟で迎撃しようとしてきたが、スピードの違いでピカチュウは迎え撃たせる前に簡単に懐に入り、〝でんこうせっか〟を決めてライチュウから距離を取る。

そのため〝かみなりパンチ〟は空ぶった。

 

 

「ライッ!?」

 

「〝10まんボルト〟!」

 

 

ライチュウの体勢が崩れた隙を見逃さず、〝10まんボルト〟が突き刺さる。

そしてすかさず〝でんこうせっか〟で突っ込み、ライチュウを吹き飛ばした。

 

 

「ライーーーーーー!!?」

 

「ライチュウ!」

 

 

吹き飛ばされたライチュウは、マチスの後ろの壁にぶち当たり、戦闘不能になる。

マチスのポケモンが全て戦闘不能になり、こちらは傷付いているとはいえ全てのポケモンが元気な状態。

完勝だ。

 

 

「やったぜ、ピカチュウ!!」

 

「ピカ!ピカチュウ!!!」

 

「すごいぞ!」

 

「勝ったのね!」

 

 

太陽やヒトカゲのように抱き付いてきたピカチュウを抱き上げ、駆け寄ってきてくれたタケシとカスミに一緒にピースする。

タケシとカスミも返してくれた。

 

 

「Congratulation! Winnerサトシ!こいつが、俺に勝った証、オレンジバッジだ」

 

「ありがとうございます。よーし!オレンジバッジ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

 

マチスからオレンジバッジを受け取り、いつもの台詞を決める。

 

 

「ライラーイ。ラーイ」

 

 

タケシやカスミだけじゃなく、ライチュウも拍手してくれていた。

 

 

「久々にガッツのあるファイトで楽しませてもらった。ワンダフルな勝利だったぜ。俺の完敗だ」

 

「フィールドを使った足を奪う戦法は、俺も参考になりました。ありがとうございます!」

 

 

マチスと改めて握手して、傷付いたポケモン達を回復するためにポケモンセンターに向かう。

これで、バッジ三つ目ゲットだぜ。

 

 









スイクン(色違い) Lv.45→46

エーフィ♀  Lv.35

リザード♂  Lv.36→37 -太陽-

ピカチュウ♂ Lv.34→35

ロコン♂(色違い) Lv.28→29

バタフリー♂ Lv.27→28

ピジョン♂  Lv.24→26

ニドラン♂  Lv.22→24

フシギダネ♂ Lv.18→21

ヒトカゲ♂  Lv.18→23

ゼニガメ♂  Lv.18→21

クラブ♂   Lv.15→20 NEW!

イーブイ♀  Lv.15→17 NEW!

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。