転生サトシの旅路   作:ナノブ

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12.友達になろう

第21話 傷を乗り越えて

 

 

もうすっかり夜だ。

ジム戦に勝ち、ポケモンセンターに向かう途中。

サクラギ研究所になる場所の前を通りがかった時、その声は聞こえてきた。

 

 

「いいか、お前はここで待て。ここから離れるんじゃないぞ~?」

 

「ゲン!」

 

 

その声の後、ダッシュで出てくる男の人。

 

 

「ちょ、ちょっと待ってください!」

 

 

思わず声をかけた。

この人、見覚えがある。

 

 

「ん?なんだ?俺は急いでんだよ」

 

「さっきの!聞こえてたんですが、誰かを待たせてるんですか?」

 

「お前には関係ねーだろ!すぐに絡まれるなんてとことん運が悪い!」

 

 

その男の人は、こちらのことを構わずにそのまま走っていこうとしていたので、慌てて前に躍り出て道を塞ぐ。

 

 

「!?な、なんだよ!」

 

「サトシ!あんた何を――!」

 

「ポケモンを置き去りにしたなら、ちゃんと戻ってくるんでしょうね?」

 

「「「!!!」」」

 

 

俺の言葉に、その男の人もタケシもカスミも驚愕に目を見開く。

 

 

「な、なんだ!知ってんじゃねーか!あいつがいた時は、本当に酷かったんだよ!バトルには勝てないし、ポケモンゲットも失敗してばかり」

 

「それはあんたの実力がないからでしょ!」

 

「それだけじゃない!階段から落ちたり、物を失くしたり。もう何もかもついてなかった。けど、もうあの疫病神はいない!俺はこれから、呪いから解放されるんだ!!!」

 

「そんな理由でポケモンを置き去りにしたのか!!」

 

 

男の人は自分がいかに正当かを、大声で喚く。

 

 

「まったく。なんで俺が、絡まれなきゃなんねーんだ………ゲンガーなんか、ゲットするんじゃなかったぜ!!!」

 

 

瞬間横を摺り抜けて、男の人の傍に着弾した〝シャドーボール〟。

ハッと振り向くと、サクラギ研究所になる建物の入り口に、怒り顔で両腕に〝シャドーボール〟を構えたゲンガーがいた。

 

 

「ゲンガー!!」

 

「な!?お、お前なんで!!?」

 

 

男の人の声が大きすぎて、聞こえてしまっていたのだろう。

ゲンガーは怒りで我を忘れているようで、何発も何発も〝シャドーボール〟を男の人に向かって放つ。

 

 

「ピカチュウ、疲れてるとこ悪い!〝10まんボルト〟だ!」

 

「ピカ!」

 

 

慌ててピカチュウの〝10まんボルト〟で〝シャドーボール〟を相殺しようとするが、ゲンガーの方がレベルが高いのかピカチュウの〝10まんボルト〟が押し負ける。

 

 

「ピカ!?」

 

「ゲン!ゲンゲン!!!」

 

 

邪魔をするな、とゲンガーが吠える。

怒りに燃えるのは理解できるし仕方ないが、それでも元トレーナーを攻撃してしまうのはゲンガーのためにならない。

さらに心に傷を負ってしまうことになる。

 

 

「落ち着け、ゲンガー!お前の怒りはもっともだけど、お前の力を傷付けるために使っちゃダメだ!」

 

「ゲェン!!!」

 

「きゃあ!」

 

 

俺の声が聞こえていないのか、構わずに再び〝シャドーボール〟を放ってくるゲンガー。

今度は元トレーナーの男の人の方だけでなく、タケシやカスミ達の方にまで放ってくる。

埒が明かない。

 

 

「おい!あんたあのゲンガーのトレーナーなんだろ!ちゃんと話し合いをしろよ!」

 

「う、ううう、うるさい!お前がいたら、嫌なことばっかり起こるんだ!もういらないんだよ!!!」

 

 

その声は、辺りに大きく響き渡った。

ゲンガーは両手に大きな〝シャドーボール〟を構えたまま、固まってしまっている。

 

 

「なんてことを!!」

 

「そんな言い方ないだろ!!!」

 

「それでもポケモントレーナーなの!!?」

 

「う、うるさい!!うるさいぃぃぃぃぃ!!!!」

 

 

男の人はゲンガーの大きな〝シャドーボール〟に腰を抜かしていたようだったが、力の限りを振り絞って逃げていった。

 

 

「あ!ちょっと!!」

 

 

カスミが呼び止めても、もう背中は遠い。

ぶっちゃけ本気で走れば簡単に追い付けるが、今はゲンガーが優先だ。

 

 

「ゲンガー、大丈夫か?」

 

「ゲンッ………ゲンッ……」

 

 

ゲンガーは技の放ち疲れか、肩で息をして元トレーナーの背中を睨んでいる。

その目には涙こそないものの、深く傷ついた様子が窺える。

俺は攻撃されないことを祈って、ゲンガーの視界から元トレーナーを隠すようにゲンガーの前にしゃがみ込んだ。

 

 

「ゲンッ!!?」

 

「サトシ……!」

 

「気にするな、っていうのは、たぶん無理だと思う。あんなトレーナーでも、お前にとっては大切なトレーナーだったんだろうからな。でもな、ゲンガー」

 

「ゲ、ン……?」

 

 

ゲンガーは攻撃してこず、何も信じられない、信じたくないといった目で俺の目を見つめていた。

 

 

「お前は、呪いのゲンガーなんかじゃないぜ?一途で、トレーナー想いの、優しいポケモンだ。俺はそれを知ってる」

 

 

前の時、仲間になってくれた記憶からそう語る。

俺はこのゲンガーを、よく知っている。

強いことも、優しいことも、お茶目なことも、寂しがりやなことも、悪戯っ子なことも。

ちゃんと覚えている。

目を見開いて、これ以上ないほどゲンガーは驚いている。

ゲンガーにこれ以上傷付いてほしくなくて、手を伸ばした。

 

 

「なぁ、ゲンガー。前のトレーナーが何と言おうと、俺はお前のことを信じる。俺は、お前と友達になりたい」

 

「ゲン、ガッ!?」

 

「うん、友達。ゲンガーが許してくれるなら、俺を………人間である俺のことを、お前の友達にさせてくれないか」

 

 

驚いて固まっているゲンガーに、手を差し出したまま待つ。

この世界にはあんな酷いことばかり言う人間だけだと、思ってほしくない。

今はゲンガーのレベルが高すぎて、俺がゲットすることは難しいだろう。

それでも、心が傷付いたままにはしたくない。

心を閉ざしてしまう前に、本当の意味で独りになってしまう前に。

何とか、したい。

 

 

「……~~~~~~ゲンッ!!!!!」

 

 

ゲンガーの答えは、俺の手を自分の手で弾くこと。

つまり、信じられない。

 

 

「ゲンガー………」

 

 

そう簡単にはいかないと思っていたが、やはり心の傷は深いか。

弾かれて痛む手をさすりながら、どうしようかと思案する。

と、突然ゲンガーがよくわからない掃除機似の機械に吸い込まれていった。

 

 

「ゲン!!!?」

 

「ゲンガー!!!」

 

「「「なぁーはっはっはっ!!」」」

 

「強いゲンガー」

 

「ゲットでチュ!」

 

「ロケット団!」

 

「またあんた達なの!!」

 

「そのゲンガーは今、元トレーナーにされた仕打ちで心が傷付いている!更に傷付けるようなことはよすんだ!」

 

「「「べーーー!」」」

 

 

いつから見ていたのか、ゲンガーの事情を知った上で、ゲンガーのレベルが高いことも知った上で、ロケット団達はタケシの言葉に舌を出す。

ゲンガーは吸い込まれた透明な筒の中で暴れているが、中々抜け出せない。

 

 

「今回はこのゲンガーだけで勘弁してやるぜ?」

 

「それじゃ」

 

「「「帰る!!」」」

 

「させるか!フシギダネ、君に決めた!」

 

「ダネ!」

 

 

気球を呼んでいるロケット団達を逃がさぬように、すぐにフシギダネを繰り出した。

ジム戦で疲れている太陽、ヒトカゲ、ピカチュウには無理をさせられない。

もう存在がばれているスイクンを呼んでもいいのだが、ここは街中なので何処に目があるかわからない以上、迂闊に出したくはない。

 

 

「〝はっぱカッター〟!」

 

「ダネフシャ!」

 

 

ゲンガーが入れられている筒に攻撃するも、よほど頑丈なのかカキンカキンと弾かれる。

 

 

「なんて固いんだ!!」

 

「へっへーんだ!」

 

「そんな攻撃、痛くも痒くもないわ!」

 

「まだまだ!ゼニガメ、君に決めた!」

 

「ゼニュ!」

 

「〝こうそくスピン〟!」

 

「ガメメメメメメ!!!」

 

 

ロケット団達が油断している隙に、直接攻撃の〝こうそくスピン〟を筒にぶち当てて破壊する。

 

 

「「「なにぃ!!!?」」」

 

「ゲン~~~!!?」

 

 

捕らえられていた筒から飛び出してきて、両膝をつくゲンガーに駆け寄り、背に庇う。

 

 

「ロケット団!これ以上ゲンガーを傷付けるな!」

 

「ゲン……!?」

 

「ふんっ!カッコつけちゃって!」

 

「その強いゲンガーは我らが頂くのだ!」

 

「それにそのゲンガーはもう人間不信ニャ!ジャリボーイが庇ったところでもうどうにもならないニャ!それなのに庇う意味はないのニャ!」

 

「意味はある!これ以上ゲンガーの心は傷付けさせない!絶対に守る!!!」

 

「………ゲ、ン……」

 

「ピーカ!」

 

「ゼニュ!」

 

「ダネフシャ!」

 

 

俺の言葉に同意するように、ピカチュウ達が俺と一緒にゲンガーを庇うように並び立つ。

特に同じくトレーナーに捨てられたポケモンであるゼニガメとフシギダネの怒り様は凄まじい。

 

 

「ふんっ。行け、アーボ!」

 

「ドガース!」

 

 

いつも通りの実力行使に出てきたロケット団相手に、俺はゲンガーの方を振り向いた。

 

 

「ゲンガー。今すぐに俺のことを信じてくれなくてもいい。でも俺は、お前を信じる。一緒に戦おうぜ!」

 

「ちょ、サトシ――!」

 

「いくら何でも無茶だ!」

 

 

加勢しようとしてくれたタケシとカスミが驚きに動きを止める。

同じく驚いているゲンガーに、もう一度手を差し出した。

 

 

「俺には、お前が必要だ」

 

「…………ゲン………………」

 

「何を勝手にごちゃごちゃと!アーボ、〝かみつく〟!」

 

「ドガース、〝スモッグ〟だ!」

 

「ゼニガメ、〝こうそくスピン〟!フシギダネ、〝つるのムチ〟だ!」

 

「ガメメメメメメ!!!」

 

「ダネフシャ!!」

 

 

〝スモッグ〟を〝こうそくスピン〟の回転で吹き飛ばし、〝かみつく〟で向かってくるアーボの口を〝つるのムチ〟で巻き付けてロケット団の方に吹き飛ばす。

 

 

「ピカチュウ、〝10まんボルト〟だ!」

 

「ピィィィカァァァァチュウウウウウウウ!!!」

 

「シャーーーー!!?」

 

 

ドガースとアーボに〝10まんボルト〟を喰らわせ、一気に戦闘不能にまで追い込んだ。

しかし俺は、すっかり戦えるニャースの存在を忘れていた。

 

 

「ニャー!調子に乗るニャァァァ!!」

 

「!!?」

 

「ピカピ!!!」

 

 

波導の力を使っていなかったのも相俟って、こっそり近付かれていることに気付かなかった。

〝みだれひっかき〟を顔面に受ける―――――と思った時。

 

 

「ゲェェェン!!!」

 

 

ゲンガーの〝れいとうパンチ〟が、ニャースの顔面に直撃した。

吹き飛ばされて、ムサシとコジロウ達の方に落ちる。

 

 

「ニャァァァァァ!!?」

 

「「ニャース!」」

 

「ゲンガー、お前…………ありがとな!!」

 

「ゲ、ゲン……」

 

 

笑顔でお礼を言うと、ゲンガーは照れ隠しか目を逸らした。

 

 

「よーし、ピカチュウ!思いっ切り〝10まんボルト〟!ゼニガメ、〝みずでっぽう〟!フシギダネ、〝はっぱカッター〟!ゲンガー、〝シャドーボール〟だ!」

 

「ピカァ!ピィィィカァァァァチュウウウウウウウ!!!!」

 

「ゼニュウウウウウウ!!!!」

 

「ダネフシャーーーーー!!!」

 

「ゲンゲロゲーーーー!!!」

 

 

戦闘不能になったアーボとドガース、そしてニャースを抱えているロケット団達に〝10まんボルト〟と〝みずでっぽう〟、〝はっぱカッター〟に〝シャドーボール〟が直撃して「「「やな感じーーーーー」」」と飛ばされていく。

 

 

「やったぜ!」

 

「ピカピッカ!」

 

「ゼニ!」

 

「フシャ!」

 

「ゲンガ!」

 

「悪戯にゲンガーの心に傷を付けるからそうなるのよ!」

 

「今回ばかりは、容赦しなくて当然だな。よくやったぞ」

 

 

飛ばされていくロケット団を見送って、皆で笑い合う。

その際ゲンガーも笑みを浮かべていたが、俺が微笑みかけるとハッとしてぎこちなく目を逸らしていた。

 

 

「ゲンガー。改めて、俺と………俺達と友達になってくれないか」

 

「………ゲ、ン……………」

 

 

片膝を付いてゲンガーに手を差し出すと、ゲンガーは物凄く迷う素振りを見せる。

俺の手を見て、顔を見て、視線を逸らして、また手を見て。

視線があっちこっちに移動する。

そんなゲンガーに辛抱強く待つこと、数分。

ゲンガーは口角を上げたまま諦めたように小さなため息を吐き、俺の手にそっと自分の手を重ねた。

優しく、握り合う。

 

 

「!!ありがとう、ゲンガー!これで俺達は友達だ!」

 

「ゲン、ガ……」

 

「よかったわね、サトシ、ゲンガー!」

 

「ゲンガー。俺達ともよろしくな?」

 

「………ゲンゲロゲー」

 

 

吹っ切れたのか俺の粘り強さ、基しつこさに折れたのか、ゲンガーは呆れたような表情で笑みを浮かべたままタケシに頷いている。

 

 

「よし!ゲンガー、お前は自由だ!」

 

「ゲン?」

 

「元トレーナーは、お前にとっては大事な人かもしれないけど、あの人の言いなりになってここでずっと待つ必要はどこにもない。もう、お前は自由なんだ。何処に行ってもいいんだよ」

 

「ゲン!!?」

 

 

俺がそう言うと、何故かゲンガーはひどく驚いた顔をした。

 

 

「ゲン!?ゲンゲロゲー!!?」

 

「うん?どうしたんだ?」

 

「ちょ、ちょっとサトシ!あんた、このゲンガーをゲットしたくて友達になろうって言ったんじゃないの!?」

 

「え、違うよ。俺はただ純粋に、このゲンガーと友達になりたかっただけだよ。ゲンガーは確かに強いけど、強いから求めたわけじゃない。バトルのために求めたわけじゃない。このゲンガーと、仲良くなりたかったんだ」

 

「ゲ、ン……!!!」

 

 

ゲンガーは呆然として、大きな口をあんぐりと開ける。

カスミも言葉が出てこないといった顔で呆然としていた。

どうやらカスミは、俺がこのゲンガーをゲットしたいのだと思っていたらしい。

まぁ、元々前は俺のゲンガーになってくれたわけだし、ゲットしたい気持ちがないわけではない。

仲間にならなかったらならなかったで、寂しいしな。

それでも。

 

 

「ゲンガーの心が第一優先だよ。無理強いはしたくない」

 

「………サトシらしいな」

 

 

タケシが微笑みながらそう言ってくれたことが、少しくすぐったい。

さてゲンガーはどうするか、と視線を向けて見ると、心を深く傷付けられても流さなかった涙を流していた。

 

 

「!!ゲンガー………」

 

「ゲ、ゲンッ!」

 

 

慌ててゲンガーは腕で涙を拭う。

そしてぶんぶんと首を横に振って雫を飛ばすと、キリッとした顔で俺の顔を見上げてきた。

 

 

「ゲン!ゲンガ!ゲンゲロゲ!」

 

「ん?」

 

 

何か伝えたいことがあるようだったので、波導の力を使って聞いてみる。

 

 

「何々………バトルして俺が勝ったらゲンガーのことを連れて行け、ゲンガーが勝ってもゲンガーのことを連れて行け?」

 

「ゲン!」

 

「それは……」

 

「あれまぁ。サトシと一緒に行くことは決定なのね」

 

「一先ず、今の段階での力比べがしたいんだろう」

 

「よーし!そういうことなら―――」

 

 

誰を出そうか。

ヒトカゲ、ゼニガメ、フシギダネはレベルが違いすぎて、おそらくゲンガーに手加減してもらわないとバトルらしいバトルにならない。

ピカチュウはジム戦と今のロケット団戦で疲れている。

太陽もジム戦をして無傷とはいえ疲れているだろう。

だからといって、スイクンを出すのは大人げないし人目の問題がある。

さぁて、どうするか。

俺が悩む素振りを見せると、太陽が勝手にモンスターボールから出てきた。

 

 

「!太陽」

 

「グアァォウ」

 

 

自分が行く、と太陽は伝えてくる。

そのやる気を買って、今回は太陽で行くことにした。

 

 

「よし!頼むぞ、太陽!」

 

「グォォ!」

 

「フシギダネ、ゼニガメ。ありがとな。一度戻って休んでてくれ」

 

「フシャ」

 

「ゼニュウ」

 

 

フシギダネとゼニガメを一度モンスターボールに戻し、やる気満々の太陽と一緒にゲンガーと対峙する。

 

 

「ゲンガー。この太陽は、ゲンガーと同じくバトルで勝てないからって理由で、トレーナーに捨てられたポケモンなんだ」

 

「ゲン!?ゲンガゲンゲン!?」

 

「グォウ………」

 

 

ゲンガーは酷く驚いた表情をして太陽を見つめ、太陽は静かに頷いた。

 

 

「それでも、太陽は強くなった。その時の傷を乗り越えて、俺と一緒にいてくれている。俺と一緒に、ポケモンマスターへの道を歩んでいる。お前も俺の仲間になることを望んでくれるなら、もう悲しい思いはさせない。楽しい思い出をたくさん作っていくんだ」

 

「…………ゲン……」

 

「改めて。俺は、マサラタウンのサトシ。ポケモンマスターを目指してる。行くぜ、ゲンガー!」

 

「ゲン!」

 

 

ゲンガーは嬉しそうに戦闘態勢に入る。

 

 

「太陽、〝かえんほうしゃ〟!」

 

「グアァァ!!」

 

「ゲンガ!」

 

 

真っ直ぐに放った〝かえんほうしゃ〟は〝ナイトヘッド〟で簡単に突き破られ、〝ナイトヘッド〟が太陽に直撃する。

やはりこのゲンガー、レベルが高い。

太陽でも勝てるかはわからない。

このゲンガーでバトルに勝てないのは、トレーナーの方に問題があるだろう。

 

 

「ゲン!」

 

「避けろ、太陽!」

 

「グアゥ!」

 

 

〝シャドーボール〟を連発で放ってきたので、太陽に避けさせる。

高威力のタイプ一致技である以上、当たるわけにはいかない。

 

 

「〝えんまく〟だ!」

 

「ゲンッ!!?」

 

 

マチス戦でも使った目くらましに、ゲンガーも動揺の声を上げる。

 

 

「一時の方向!〝りゅうのいかり〟!」

 

「グアゥ!!!」

 

「ゲンガ!?」

 

 

見事〝りゅうのいかり〟が決まり、ゲンガーは宙に飛ばされ宙に浮いたままこちらを睨んできた。

 

 

「ゲンガァ!……………ゲン?」

 

 

ゲンガーは〝サイコキネシス〟を放とうとしたようだったが、〝えんまく〟が残っており対象を捉えきれず、技がキャンセルされる。

 

 

「チャンスだ!〝かえんほうしゃ〟!」

 

「グワァァァ!!」

 

「ゲンガァァァァ!!?」

 

 

〝かえんほうしゃ〟が直撃し、ゲンガーは苦しげな表情をする。

ここまではこちらのペースだ。

 

 

「ゲン!!!ゲンガッ!!」

 

 

空中から一気に地上に降り立ったゲンガーは、影に忍び込む性質を活かし、まるで〝シャドーダイブ〟のような形で太陽の背に回り込んできた。

 

 

「!太陽!後ろだ!」

 

「!?」

 

「ゲン!!!」

 

 

ゲンガーの〝れいとうパンチ〟が右ストレートに決まる。

効果はいま一つの技でも、レベルが高い相手から思い切り殴られれば吹き飛ばされる。

太陽は踏ん張りをきかせ何とか持ち堪えた。

 

 

「ゲンガァ!」

 

「!〝かえんほうしゃ〟!」

 

 

そこに〝シャドーボール〟を放たれたので、相殺しようと〝かえんほうしゃ〟を放ったが〝かえんほうしゃ〟を突き破って〝シャドーボール〟が太陽に命中する。

もしかしたらとは思ったが、やはり相殺はできなかったか。

さっき避けさせた判断は正しかったわけだ。

 

 

「太陽!大丈夫か!?」

 

「グァ………グアゥ!!」

 

 

太陽はまだまだやれるとばかりに声を張り上げる。

 

 

「よし!〝りゅうのいかり〟!」

 

「グォウ!」

 

「ゲンガッ!」

 

 

放った〝りゅうのいかり〟は〝れいとうパンチ〟で軌道を逸らされ、地面に着弾した。

爆発が起こり、爆風が巻き起こる。

 

 

「ゲンガァ!!!」

 

 

そして〝えんまく〟が晴れたことで視界がクリアになり、〝サイコキネシス〟で動きを封じてくる。

 

 

「グァ!?」

 

「落ち着け、太陽!」

 

「ゲンッ!!」

 

 

〝サイコキネシス〟で太陽が宙に放り投げられ、空中で態勢が整えられないところに〝シャドーボール〟がぶち込まれる。

 

 

「太陽!!!!」

 

「グ、ァウ………!!」

 

「ゲンガァアアア!!!」

 

 

何とか立ち上がったところに、更なる追撃で〝ナイトヘッド〟が直撃した。

吹き飛ばされ、地面に叩き付けられる太陽。

やはり、今のままではレベルの差があって一方的なバトルになってしまう。

俺の腕の見せ所とは言っても、上手くできるだろうか。

いや、弱気になっちゃだめだ。

諦めちゃだめだ。

 

 

「太陽、大丈夫か!?」

 

「グァ…………グアァァァア!!」

 

 

太陽はボロボロになりながらも立って、咆哮を上げる。

 

 

「よし!まだまだこっからだ!俺達の強さ、見せてやろうぜ!!」

 

「グォォォォォ!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

瞬間。

 

 

 

 

太陽が、光り出した。

 

 

 

 

「!!これは――!」

 

「進化の光!?」

 

 

太陽に翼が生え、体がぐんぐん大きくなっていく。

光がパシンと弾けた時。

そこにいたのは―――。

 

 

「グォォォオオオオオ!!!!!」

 

「太陽が……」

 

「リザードンに進化した!」

 

 

まさか太陽が進化するとは思わず、一瞬呆然としてしまったがすぐに笑みが浮かんだ。

 

 

「やったな、太陽!すごいぞ!」

 

「グアァ!」

 

 

太陽は前のリザードンの時のように言うことを聞かない、といったことはなく、俺の方を見て嬉しそうな笑みを見せてくれた。

可愛い。

波導の力で確認すると、進化したことで技スロットが一つ増えて五つになり、新しい技も覚えていた。

 

 

「これなら、十分ゲンガーと渡り合える!行くぞ、太陽!」

 

「グオォォォォ!!」

 

 

太陽は同意するように咆哮を上げ、大きな翼を広げて飛び立っていく。

突然の進化で驚き固まっていたゲンガーは、太陽の咆哮でハッとしたように我に返った。

 

 

「ゲン!ゲンガッ!」

 

 

両手に〝シャドーボール〟を展開し、太陽に向かって放ってくる。

 

 

「新技行くぞ!〝エアスラッシュ〟!」

 

「グォォ!」

 

 

放たれた〝シャドーボール〟を、全て〝エアスラッシュ〟で相殺していく。

進化したことで、相殺できるまでにパワーが上がったのだ。

 

 

「いいぞ、太陽!もう一つ新技だ!〝ねっぷう〟!!」

 

「グォォォオオオオオ!!!」

 

「ゲンガッ!?」

 

 

広範囲技の〝ねっぷう〟が、ゲンガーに逃げ場所を与えず直撃する。

ゲンガーは苦しそうな表情をして耐え切り、楽しそうにこちらを見た。

 

 

「ゲンガゲンゲン!」

 

「〝かえんほうしゃ〟!!」

 

 

〝ナイトヘッド〟で仕掛けてきたところを、〝かえんほうしゃ〟で相殺する。

 

 

「もう一度〝えんまく〟だ!」

 

 

〝サイコキネシス〟で捕らえられる前に、再び目くらましをした。

ゲンガーは嫌そうに眉をしかめ、目だけを動かし太陽の姿を探そうとしている。

 

 

「十一時の方向!〝かえんほうしゃ〟!!」

 

「グオォォォ!!!」

 

「ゲンッ!!?」

 

 

俺達はどれだけ視界が悪くても波導の力で場所がわかるので、〝かえんほうしゃ〟を直撃させた。

度重なる技の直撃を受けて、ゲンガーも息を荒げ始めた。

 

 

「方向は同じ、少し上の位置!〝りゅうのいかり〟だ!」

 

「!ゲンガッ!!」

 

 

慌ててゲンガーは〝ナイトヘッド〟を展開するが、それは見当違いの方向に放たれゲンガーに〝りゅうのいかり〟が当たる。

 

 

「ゲンッ!!?」

 

「よし!〝ねっぷう〟!」

 

「グォォォオオオオオ!!!」

 

 

再び広範囲技で避けようのない〝ねっぷう〟がゲンガーを襲った。

ゲンガーは腕で顔を覆いながら、必死に耐えている。

 

 

「ゲ、ン…!!ゲンガッ!」

 

 

〝ねっぷう〟の終わり際、腕で熱風を振り払ってゲンガーは飛び上がる。

そして〝えんまく〟の切れ目。

視界が徐々にクリアになっていく中、即座に〝サイコキネシス〟を発動させて動きを封じてきた。

 

 

「グ、ォ…!!」

 

「太陽、その体勢のまま〝ねっぷう〟だ!」

 

「グァォォ!!!」

 

 

空中に浮かんだまま捕らえられている状況で、無理やり〝ねっぷう〟を発動させる。

〝ねっぷう〟が地面に当たり、余波となった熱風がゲンガーを襲う。

 

 

「ゲガッ!?」

 

「今だ!振りほどけ!」

 

「グァァァァ!!」

 

 

ゲンガーの意識がそれた時を狙い、思い切り抗って太陽は〝サイコキネシス〟の拘束から抜け出した。

しかし限界が近いのか、荒く息を吐いている。

無理もない。

相手にはトレーナーがいない野生のポケモンだとはいえ、レベル差があるのだ。

その差を埋めるのがトレーナーの仕事とはいえ、俺の腕がまだまだ未熟なせいで、太陽には苦労をかけている。

 

 

「ゲン!!!ゲン、ガァァァァ―――!!!」

 

 

同じく限界が近いゲンガーは最後の勝負に出たのか、両手の間に大きな大きな〝シャドーボール〟を作り始めた。

 

 

「俺達も、次で決めるぞ太陽!」

 

「グォォォォォ!!!」

 

 

太陽が大きな咆哮を上げた瞬間、太陽の特性、もうかが発動する。

熱気が赤く見えるほど太陽の体を包み込み、さらなる太陽の力を引き出していく。

 

 

「最大パワーで、〝かえんほうしゃ〟!!!」

 

「グワァォウ!!グォォォオオオオオ!!!!!」

 

「ゲンッ、ガァァァァァァ!!!!」

 

 

最大パワー同士の技が、互いの中央でぶつかり合う。

物凄い衝撃の余波が起き、危うくピカチュウが飛ばされかけた。

何とか耐えていると、エネルギーとエネルギーのぶつかり合いが、とうとう大きな爆発を引き起こした。

今は夜だということをすっかり忘れていたが、これ、近所迷惑にもほどがある。

現実逃避に思考を飛ばしていると、徐々に爆発で起きた煙が晴れていった。

視界がクリアになってくると、太陽が倒れている姿が目に入った。

 

 

「太陽!!!」

 

「グ、ァ………!」

 

 

何とか立とうとする太陽だったが、立てないようだった。

ゲンガーは、と見ると、笑みを浮かべたまま立ってこちらを見ていた。

 

 

「ゲンガー…………」

 

 

負けたか。

そう思ったが、ゲンガーは笑みを浮かべたままゆっくりと前倒しに倒れる。

 

 

「!!ゲンガー!」

 

 

ゲンガーは目を回し、戦闘不能になっていた。

 

 

「あれま。引き分け。これじゃどっちが勝ったかわからないわね」

 

「レベルの高いゲンガー相手に、よく引き分けに持ち込めたもんだ」

 

 

カスミとタケシが感心したように言っているのを聞きながら、太陽を助け起こし、一緒にゲンガーの元へと向かう。

ピカチュウも一緒だ。

 

 

「ゲンガー、大丈夫か?」

 

「ゲ、ン……!ゲンガ………」

 

 

ゲンガーは体を起こし尻もちをつきながら、大丈夫だとこちらに親指を立ててみせてくれた。

それに一先ずホッとして、笑みを浮かべる。

 

 

「お前、全然弱くなんかないな。強すぎてどうしようかと思ったぜ。扱えなかった前のトレーナーの、トレーナーとしての腕がまだまだ未熟だったんだ。ゲンガーは何も気にすることないぜ?」

 

「ゲン♪」

 

 

俺の言葉に、素直に笑顔を見せるゲンガー。

可愛い。

バトルして俺の人柄がわかったのか、溜まっていたモヤモヤが晴れてスッキリしたのか、ゲンガーは落ち着いているようだった。

空のモンスターボールを一つ取り出す。

 

 

「今は俺、手持ちが多くてさ。ここでゲットしちゃうと、すぐにオーキド研究所に行くことになるんだけど…………それでもよければ、俺と一緒に、来るか?」

 

「ゲン!」

 

 

すぐにゲンガーは頷いて、俺が手に持っていたモンスターボールに自ら触れ、入っていった。

数回揺れて、止まる。

 

 

「ゲンガー、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

 

お決まりの台詞を言えば、モンスターボールはオーキド研究所に転送されていった。

それを確認してから、肩を貸している太陽の方に意識を向ける。

 

 

「太陽、ありがとな。進化おめでとう」

 

「ピカピッカ!」

 

「グォウゥ」

 

 

太陽も満足そうに笑ってくれた。

 

 

「色々おめでとう、サトシ」

 

「やったな!」

 

「あぁ。ありがとう、カスミ、タケシ」

 

 

カスミとタケシも祝福してくれて、いい感じー、である。

尚、この後近所迷惑でジュンサーさんにこっぴどく叱られるもよう。

 

 







・サトシの中で友達になりたい=ゲットしたい、ではない。
強さを求めているわけではなく、そのポケモンの存在を全て受け入れたうえで手を差し出しているので、前よりもポケモン達に懐かれやすく、思った以上にポケモン達の方からゲットされたがる。
そのことにサトシ自身は気付いていない。





スイクン(色違い) Lv.46

エーフィ♀  Lv.35

リザード→リザードン♂  Lv.37→40 -太陽-

ピカチュウ♂ Lv.35

ロコン♂(色違い) Lv.29

バタフリー♂ Lv.28

ピジョン♂  Lv.26

ニドラン♂  Lv.24

フシギダネ♂ Lv.21

ヒトカゲ♂  Lv.23

ゼニガメ♂  Lv.21

クラブ♂   Lv.20

イーブイ♀  Lv.17→18

ゲンガー♂  Lv.50 NEW!

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