転生サトシの旅路   作:ナノブ

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15.笑わせてあげたい相手

第27話 ポケモンタワーへ

 

 

ヤマブキシティに向かい森の中を歩いていると、何やら不思議な気配を感じた。

 

 

「?なんだ………」

 

「どうした、サトシ」

 

「いや………」

 

 

思わず立ち止まって、波導を展開する。

近くには何もいないようだったが、誰かに見られているような気配をずっと感じている。

 

 

「………気のせい、じゃないよな……」

 

「………波導、か?」

 

「あぁ、何か感じるんだ」

 

「何か、って……………こんな森の中で?」

 

 

カスミの疑問はもっともだ。

見渡す限り、俺達以外に人影はない。

波導で探っても誰もいない。

それでも誰かの気配を強く感じている。

不思議な感じだ。

 

そういえば、今向かっているヤマブキシティのジムリーダー、ナツメ。

彼女は前もすごく手強い相手だったな。

超能力を使ってこちらを惑わせてきたり、強力なエスパーポケモンを持っていたり。

とにかく強かった。

そこまで思い出した時、転生者としての知識も思い出した。

そういえば今のナツメは……。

 

 

「……………いや、いいや。とにかく一旦行こうぜ」

 

「サトシがそう言うならいいけど……」

 

 

一先ず納得してくれたカスミとタケシを連れて、ヤマブキシティへと足を踏み入れた。

瞬間変装して近付いて来たロケット団をサクッと「「「やな感じーーーーー」」」にして、強くなった気配を辿る。

その気配はやはり、ヤマブキジムから放たれていた。

波導で逆にこちらの気配を向こうに飛ばしてやると、ひどく動揺したように気配が揺れる。

それに軽く笑ってやり、足を止めた。

 

 

「サトシ?」

 

「どうした。ヤマブキジムに行かないのか?」

 

「あぁ。先にシオンタウンに行ってから挑もうと思う」

 

「シオンタウン?どうしてまた?」

 

「ちょっと、そうだな…………笑わせてやりたい相手がいるんだ」

 

「笑わせてやりたい相手?」

 

「あぁ」

 

 

俺が笑って頷くと、再び気配が動揺に揺れる。

 

 

「ふ~ん………」

 

 

カスミは何故か面白くなさそうに口を尖らせる。

よくわからないがそっとしておいて、一旦ポケモンセンターに向かう。

何故かヤマブキシティのジョーイさんは不在で、ジョーイさんのお母さんだというジョーイさん似のおばあさんが勤めていた。

母さんとオーキド博士に連絡を入れ、バタフリーに子育てもいいがバトルの特訓もしておくように言って、ヒトカゲ、ゼニガメと交換して貰う。

その際、バタフリーの桃色の色違いという、世にも珍しいポケモンにオーキド博士が悲鳴を上げていたのは余談とする。

今の手持ちはピカチュウ、スイクン、エーフィ、ロコン、ヒトカゲ、ゼニガメとなった。

 

一晩休んで朝になると、ドククラゲから託されたカスミのタマゴが光り始める。

 

 

「!!タマゴが…!」

 

「これは……!」

 

「生まれるぞ!」

 

 

ワクワクした表情で見守っていると徐々に光が収まり、ちょこんと座ったメノクラゲが誕生した。

 

 

「わぁぁぁ!メノクラゲ!あたしカスミよ。よろしくね!」

 

「!」

 

 

心から喜んでカスミが抱き上げて自己紹介すると、一瞬ビクついたメノクラゲはパチクリと瞬きしたが、ついでキャッキャと笑い声をあげる。

そんな姿も可愛らしく、カスミはメロメロだ。

ミルクをあげた後にカスミのモンスターボールに入れ、一度ジョーイさんに健康診断を頼む。

健康状態異常なしであることを確認してから、ヤマブキシティを出発し、シオンタウンに向かった。

 

森の中を歩いていると霧が出てきたので、タケシの提案で手をつないで歩くことになった。

カスミが我先にと俺の手を握ってきて、タケシも俺の手を握ってきたので両手が塞がれてしまったが、歩き辛くはないのでよしとする。

ようやくたどり着いたシオンタウンには、なんとポケモンタワーらしき塔が二つあった。

一つは前の記憶にある古い塔。

もう一つは真新しい綺麗な塔。

 

シオンタウンに住んでいる人に話を聞いてみると、古い塔はあまりも老朽化が進んでいるので、ポケモン達のために新しく塔を建てたらしい。

前は幽霊ポケモンのことで頭がいっぱいだったので、気付かなかったのかこの世界で生まれたズレなのか。

どちらでもいいが、これでポケモン達も安らかに眠れるだろう。

俺達が古い塔に入って多少騒いでも、迷惑になることはない。

 

そうして向かったポケモンタワー。

入る前に、カスミとタケシが大いにビビり散らかして中々入ろうとしなかったので、先にポケモンセンターで休んでいるように言ってピカチュウと一緒に入る。

ピカチュウも怖いものは怖いようだったが、俺が怖がっていない様子を見て勇気づけられたようだった。

 

 

「こんばんはー!ごめんくださーい!」

 

「ピッ、ピカピカー!」

 

 

元気よく入った俺の後に、ピカチュウも怖がりながらも勇気を奮い立たせて続く。

中に入ると自動で扉が閉まり、辺りが暗闇に包まれる。

 

 

「ヒトカゲ、頼む」

 

「カゲッ!」

 

 

この時のために連れていたヒトカゲをモンスターボールから出し、明かりを頼りに奥へと進む。

すると何やら不気味な笑い声が聞こえてきた。

 

 

「この声は………」

 

 

声を辿って奥まで行き、扉を開けると。

ゴースとゴースト、ゲンガーがテレビを見ながら大笑いしていた。

あまりにもテレビに集中していて俺達に気付く様子がなかったため、俺はそっとヒトカゲをモンスターボールに戻し、ピカチュウを肩に乗せ、そっと後ろからゴース達に近付いた。

そして――――。

 

 

「わっ!!!!!」

 

「「「!!!!!!?」」」

 

 

思い切り、驚かせてみた。

 

 

「ゴォォォォォス!!?」

 

「ゴーストッ!!?」

 

「ゲンゲンゲーーーーー!!?」

 

 

面白いくらいに驚いてくれたので笑ってみせると、自分達の専売特許である驚かしをされたのだと気付いたゴース達が、目をパチクリさせる。

 

 

「はは、ごめんごめん。俺達に気付いてなかったみたいだから、ついさ」

 

「ゴース…………ゴスゴース!?」

 

「ゲンゲン!?」

 

 

笑っている俺を見て、怒るでもなく技を放ってくるでもなく、お笑いが好きなのかと、目を輝かせながら聞いてきてくれるゴース達。

気のいい奴らだ。

 

 

「俺はマサラタウンのサトシだ、よろしくな。お笑い好きだよ。お前達もお笑いが好きなのか?」

 

「ゴース!」

 

「ゴースト!」

 

「ゲン!」

 

 

うんっ!、とニッコリ笑顔で頷いてくれるゴース達。

可愛い。

 

 

「お笑い、いいよな。誰かを笑顔にさせることは難しいけど、それをやろうとしているお前達はすごいよ」

 

「「「!」」」

 

 

そう言ってやるとゴース達は大喜びで、俺とピカチュウを遊び場に案内してくれた。

遊びたかったわけではないが、ゴース達なりの心からの歓迎らしい。

せっかくなので、エーフィ、ロコン、ニドラン♂、ヒトカゲをモンスターボールから出し、ゴース達と遊び場で遊んでいくことにした。

 

一緒に遊んでくれた存在が俺達が初めてだったようで、ゴース達は大はしゃぎだった。

ゴース達と遊びながら、技を使った演技、コンテストのような演技をして見せ、さらなる感激を誘う。

一頻り遊び終わった後に、改めてゴース達と向き合った。

 

 

「実はさ。お前達に、笑わせてやってほしい存在がいるんだ」

 

「ゴス?」

 

「ゲン?」

 

 

ゴース達は、揃って首を傾げる。

可愛い。

 

 

「お前達の力で。お前達のお得意のお笑いで。笑わせてやってほしいんだ。俺に力を貸してくれないか?」

 

 

俺が真剣に頼み込むと、その真剣さが伝わったようでゴース達も真剣に話を聞いてくれた。

そして俺の目を見つめた後ゴース達で顔を見合わせ、しっかりと頷く。

 

 

「ゴース!ゴスゴース!」

 

「ゴースト!」

 

「ゲンゲーン!」

 

「!やってくれるのか!」

 

 

ゴース達は俺の言葉に、揃って頷いてくれた。

皆俺と一緒に遊んだ時間が楽しかったようで、よく懐いてくれたようだった。

これでナツメを笑わせる準備は整った。

あとは、いざ行かん。

ヤマブキジムへ。

 

というわけで、ゴース達をモンスターボールに入れることなく外の世界に誘うことに成功する。

コンテストのような演技だけでなく、ポケモンバトルの楽しさも伝えるとやってみたいと笑顔で頷いてくれた。

特に懐いてくれたのは、前と同じくゴーストだった。

しきりに俺の周りを飛び回り、モンスターボールに入れろと催促してくるが、決めるのはナツメに会ってからでも遅くないのでのらりくらりと濁す。

 

そうこうしているうちに朝になったので、ゴース達を連れてポケモンタワーを出た。

扉を開けるとすぐ傍までカスミ達が来ており、心配であまり寝れなかったので朝早く起きてきたとのことだった。

いい仲間を持ったもんだ。

ゴース達を紹介し、改めてヤマブキシティに向かいヤマブキジムに挑むことを告げる。

エスパータイプに強いゴーストタイプのポケモンを仲間にしたかったのかと納得されたが、残念こいつらは正式な俺の手持ちではありません。

 

 

「あれ?でもサトシには、もうゲンガーがいるじゃない」

 

「あ、確かに……」

 

「だから、こいつらはバトルに出すために友達になったんじゃないよ。こいつらのお笑いで、笑わせてやりたい存在がいるから先にこっちにきたんだ」

 

 

俺の言葉に、よくわからない、という顔をするタケシとカスミ。

まぁいいさ。

ジム戦の前にナツメにゴース達を会わせてやるつもりだから、その時にわかるだろう。

一旦シオンタウンのポケモンセンターに寄り、俺自身のコンディションを整えてから再びヤマブキシティに向かう。

 

ヤマブキシティに向かう道すがら、手持ちのポケモン達の特訓を怠らずにいると、ゴース達も参加してきた。

特にゴーストは、何故か俺の役に立つのだと張り切っており、バトルの特訓への熱意も凄まじかった。

そんなに俺と一緒に遊んだのが楽しかったのだろうか。

嬉しい限りではあるが、俺にはもうゲンガーがいるし、ナツメに会ったらナツメの反応を気に入ってナツメと一緒にいると言い出すのではないか。

そんなことを思い、ゲットするまではいかなかったりする。

 

ヤマブキシティにつき、一度ポケモンセンターで準備を整えてからヤマブキジムに向かう。

ヤマブキジムの前に着くと、どこからともなくおじさんが走ってきて、

 

 

「ここだけは避けた方がいい」

 

 

と言ってきた。

転生者の知識から、この人がナツメの父親だというのは知っていたので、

 

 

「よかったら、おじさんも俺のジム戦を見ていってください」

 

「ん?」

 

「見たいでしょ?ナツメ……さんが、笑うところ」

 

「!」

 

 

と誘ってやった。

俺の言葉に動揺したおじさんが、そんなことできるはずがない、いやでも、と呟きながら、ジムに入っていく俺達の後を慌ててついてくる。

 

 

「たのもーーーー!」

 

 

ジムに入って声を張り上げて見ても、前のように誰かが来たりはしない。

そのまま進んでいき、扉があったので覗いてみると超能力の研究をしている研究者がたくさんおり、異様な雰囲気を放っていた。

声をかけに来てくれた人も、スプーンを曲げてみせてくれたので一応拍手する。

ナツメに公式試合を申し込みに来たと話し、ナツメのもとまで案内してもらう。

 

 

「ナツメ様。ナツメ様に挑戦したいと申すものが来ております。あいつらに戦う資格はないと思われるのですが」

 

 

鼻で笑うように続ける男は嫌な感じだが、すぐにナツメが超能力で追い払ってしまった。

逃げていく男の背を見送っていると、ナツメが奥から現れた。

 

 

「………………お前」

 

「俺はマサラタウンのサトシです。ナツメ、さん。あなたに公式試合を申し込む!」

 

「…………………何故、私に………」

 

 

ナツメは何を考えているのかよくわからない顔で、俺の顔をじっと見つめている。

波導で感じ取れた感情は、強い戸惑いと疑問。

超能力で俺がナツメを笑わせたいと思っていることが伝わっているのだろう。

ナツメはひどく戸惑っている。

 

 

「ただ、その前に……」

 

「?」

 

「ゴース、ゴースト、ゲンガー、GO!」

 

「ゴース!」

 

「ゴースト!」

 

「ゲンガー!」

 

「!!?」

 

 

俺の言葉を合図に飛び出したゴース達に、ナツメは攻撃でもされるのかと思ったらしく、体をびくつかせ動きを止めた。

 

 

「なぁ!?何をする気だ!ジム戦をするんじゃなかったのか!」

 

 

驚いたのはナツメの父親も同じで、慌てた様子でそう叫ぶ。

まぁまぁ。

慌てなさんな。

ゴース達はナツメを取り囲み、次々にお笑いのネタを披露していく。

ポカンとして動きを止めたのはナツメとナツメの父親だけでなく、カスミとタケシもだった。

 

 

「わ、笑わせたい、って……」

 

「あれで、笑わせるつもり?」

 

「とーぜん!」

 

 

俺は前を知っているから、自信満々に頷く。

ナツメは笑う。

絶対に。

前回とは違い、ゴース達が二人でやるお笑いも三人でやるお笑いも披露し、最終的には口の中らからそれぞれ爆弾を取り出した。

 

 

「あ」

 

「え」

 

「な」

 

「は」

 

 

ナツメの周りが爆発し、ゴース達は大笑いする。

ちなみに上から俺、カスミ、タケシ、ナツメの父親だ。

爆弾まで前と同じにしなくてもよかったんだが。

だがナツメのツボには入ったようで、口角を上げてお腹を抱え、大笑いし始めた。

ナツメの父親が信じられないものを見るような顔をしてナツメを見ている。

 

 

「し、信じられん。あのナツメが、………ほ、本当に…!」

 

「これだけでも、見に来てよかったでしょ?」

 

「あ、あぁ!ありがとう!本当にありがとう!あの子があんなに愉快そうに笑うのを、初めて見たよ!」

 

 

感激したナツメの父親は、涙を流しながら俺に礼を言ってきたばかりか、勝手に握手までしてきた。

笑わせたのはゴース達なので、礼ならゴース達にしてほしい。

そう言ってみても、もはや俺の声が届いていないようで聞いてはくれなかった。

まったく。

 

ナツメが笑えたことで満足したのか、ナツメが抱えていた人形も消え、人形にされていた母親が人間に戻る。

人間に戻って戸惑っているナツメの母親に父親が駆け寄り、安否を確かめている。

何はともあれ、よかったよかった。

 

ナツメが落ち着いたころを見計らい、ナツメの母親と父親、俺、カスミ、タケシでナツメの周りに集まる。

ゴース達は自分達のお笑いで誰かを笑わせることができて、相当満足したらしくクフクフ笑っていた。

 

 

「ナツメ、さん。落ち着いた?」

 

「えぇ。こんなに笑ったのは初めてよ。マサラタウンのサトシ、君だったわね。ありがとう」

 

「本当にありがとう、サトシ君。ナツメが人間的な心を取り戻してくれたのは、君のおかげだ」

 

「ありがとうございます」

 

 

ナツメ一家に頭を下げられ、だから礼を言うならゴース達に、と言ってみても変わらなかった。

 

 

「サトシ君が私の気配に気付いてくれたことも、私を笑わせたいと思ってくれたことも、全て知っているもの。私からしたら、あなたには十分お礼を言う価値と意味がある」

 

 

そう言われると、何も返せない。

 

 

「気配に気付いてた、って……」

 

「ヤマブキシティに入る前の、か?」

 

「あぁ。あと、波導でちょっとな」

 

「ふふ。あれは私でも初めての体験で、嬉しかったわ」

 

「………………ふ~ん………」

 

 

可愛らしく笑うナツメに、カスミは何故か面白くなさそうに口を尖らせる。

よくわからなくてタケシの方を見ると、タケシは何故か目を逸らした。

何故。

 

 

「どうして、私を笑わせたいと思ってくれたの?」

 

「改めて聞かれると、答えるのが難しいんですけど…………強いて言うなら、勿体ないから、ですかね?」

 

「勿体ない?」

 

「えぇ。この世界には、面白いことがたくさんあります。それを知らずに、自分の世界だけで完結してしまっているのは、勿体ないと思ったんです。もっと広い世界を知って、面白いことも楽しいことも、時には辛いことだって知って、そうやって成長していければ人生に色がついて、楽しくなるんじゃないかなって。自分の世界に籠っていては、何も知らないまま、下手したら色のない世界を送ることになるでしょう。それはきっと、つまらない。つまらないよりかは、楽しい世界を。あなたに届けたかったんです」

 

「私に……………そう………」

 

 

ナツメは俺の答えに納得したように、何処か幸せそうに微笑んだ。

実際は前の記憶と知識から、どうにかしてやりたいと思ったのだが、上手く誤魔化せただろうか。

何やらカスミの雰囲気が怖いので、誤魔化しきれてないかもしれない。

 

 

「えっと、それで……ナツメさんに、改めて公式試合を申し込みたいんですが……」

 

「ナツメでいいわ、サトシ君。敬語も不要よ。もちろん、受けます。ゴールドバッジをかけた、正式な公式試合をやりましょう」

 

「わかった!お願いします!」

 

「ゴス!ゴースト!」

 

「!ゴースト……」

 

 

大人しく成り行きを見守っていたゴース達だったが、いざジム戦となった時、ゴーストが張り切って俺の前に出てきた。

まるで、俺のポケモンとしてナツメと戦いたい、と言っているようだ。

 

 

「お前………俺と一緒に、戦いたいのか?」

 

「ゴース!」

 

 

はっきり頷くゴーストに、それが意思なのであれば俺は振り払えない。

何より、ゴーストもバトルの訓練はしてあるしな。

 

 

「どうする?サトシ」

 

「わかった!俺と一緒に戦ってくれ、ゴースト!」

 

「ゴースト!」

 

 

喜んで空中を踊りまわるゴーストに、本当に気のいい奴だと笑みがこぼれる。

改めてフィールドに入り、ナツメと向き合った。

使用ポケモンは三対三。

 

 

「ゴースト、君に決めた!」

 

「ゴースト!」

 

「私のポケモンは、この子よ」

 

「ケーシィ」

 

 

ナツメが繰り出したのはケーシィ。

進化する可能性のある個体なら、早々に潰しておきたい。

 

 

「ゴースト、〝くろいまなざし〟!」

 

「ゴス!」

 

「!」

 

 

一先ずこれで、〝テレポート〟は封じた。

ナツメが一瞬動揺したことにより、その動揺がケーシィに伝わったようでケーシィは目を覚ましていた。

 

 

「〝ナイトヘッド〟!」

 

「ゴースト!」

 

「〝サイコショック〟!」

 

「ケーシィ」

 

 

〝ナイトヘッド〟と〝サイコショック〟のぶつかり合いは、〝ナイトヘッド〟が勝ちケーシィに直撃する。

 

 

「続けて行くぞ!〝したでなめる〟!」

 

「ゴースト!」

 

 

特性“シンクロ”による麻痺が気になるが、相手が麻痺らないことを祈って〝したでなめる〟を指示した。

咄嗟にいつもの癖で、〝テレポート〟を指示しようとしたらしいナツメの動きが止まり、〝したでなめる〟が再びケーシィに直撃する。

麻痺にはならなかった。

癖は怖いぞ~。

いつも〝テレポート〟に頼りきりになっていたら、いざという時にこうして動けなくなる。

 

 

「〝ナイトヘッド〟!」

 

「ゴォォォスト!!」

 

「!〝ねんりき〟!」

 

「ケシッ…――!」

 

 

技が立て続けに直撃したことで、動揺から抜けきれなかったらしいケーシィは慌てて〝ねんりき〟を発動させようとしたが、間に合わず〝ナイトヘッド〟が直撃した。

ケーシィは目を回し、戦闘不能になった。

 

 

「…………ダメね。私が弱いわ」

 

 

そう溢して、ナツメはケーシィをモンスターボールに戻す。

恐らく自身の超能力と、ポケモン達とテレパシーで繋がれる強みを活かしてこれまで戦ってきたのだろうが、逆に対策を取られて動揺するとポケモンにまで強く動揺が伝わってしまうのが欠点だ。

だがナツメはジムリーダー。

すぐに対応してくるだろう。

そうなった時が本当の勝負の時だ。

 

 

「次はこの子よ」

 

「ユンゲラー!」

 

 

ナツメは次のポケモンとして、ユンゲラーを繰り出してきた。

こちらは交換も視野だが、どうするか。

 

 

「ゴス!ゴースト!」

 

「ゴースト…………よし!ゴースト、〝のろい〟だ!」

 

「ゴースト!」

 

「〝アンコール〟」

 

 

また〝くろいまなざし〟が来ると思ったのか、ナツメは〝アンコール〟を指示してきた。

〝のろい〟を当てることはできたが、使える技が〝のろい〟で縛られてしまう。

 

 

「交換だ!」

 

「ゴースト」

 

 

ゴーストは素直に俺の元に戻ってくる。

 

 

「ロコン、君に決めた!」

 

「コーン!」

 

「〝スプーンまげ〟」

 

「ユンゲラー!」

 

「!」

 

 

出てきて早々、ロコンの命中率を下げられた。

 

 

「ロコン、〝ひのこ〟だ!」

 

「コン!」

 

「〝テレポート〟」

 

 

ユンゲラーに向かい〝ひのこ〟を放つが、今度は〝くろいまなざし〟をしていないため楽に〝テレポート〟で避けられる。

だが甘い。

ナツメには超能力があるのかもしれないが、俺には波導がある。

 

 

「斜め左後ろだ!〝かなしばり〟!」

 

「コン!」

 

「!」

 

 

俺の言うことを素直に信じてくれたロコンが、〝テレポート〟先のユンゲラーに見事〝かなしばり〟を当て〝テレポート〟を封じ込める。

 

 

「今だ、〝でんこうせっか〟!」

 

「コン!」

 

「〝サイケこうせん〟!」

 

「ユン!」

 

 

再び動揺してくれるのではないかと少し期待したが、そんなことはなく〝サイケこうせん〟で迎え撃ってきた。

〝でんこうせっか〟で〝サイケこうせん〟を避けることにシフトさせ、避けながらあっという間に距離を詰めさせる。

 

 

「〝ひのこ〟!」

 

「コーン!」

 

 

〝でんこうせっか〟で背後に回り込み、〝ひのこ〟を当てて即座に〝でんこうせっか〟で距離を取る。

近距離ならば、技を外すこともない。

エーフィ直伝のヒット&アウェイ戦法だ。

ナツメは厄介そうに眉をしかめる。

 

 

「〝スプーンまげ〟!」

 

「目を瞑れ!」

 

「コン!」

 

「!」

 

 

バトル中、躊躇うことなくロコンは目を瞑る。

 

 

「罠……?〝サイケこうせん〟!」

 

「ユン!」

 

「ロコン、右斜め前からくる!ジャンプだ!」

 

 

俺はロコンが目を瞑っている間、事細かに指示を出してロコンが動きやすいようにした。

目を瞑っていても信じているから、ロコンは〝でんこうせっか〟で走り回りながら〝サイケこうせん〟を避ける。

そんなことをしている間に、ユンゲラーの顔色が悪くなってきた。

ゴーストの〝のろい〟が効いているのだろう。

 

 

「ロコン、〝じんつうりき〟だ!」

 

「コーン!」

 

 

目を開けたロコンが、視界に捉えたユンゲラーを〝じんつうりき〟で持ち上げる。

 

 

「〝サイケこうせん〟!」

 

「ゲラー!」

 

「!」

 

 

持ち上げられたまま技を放ってきたのはさすがジムリーダーのポケモン、といったところか。

技を喰らってしまったが、ロコンはそれでも意地で〝じんつうりき〟を解除しなかった。

 

 

「地面に叩き付けろ!」

 

「コン!」

 

 

〝じんつうりき〟で空中に持ち上げ、地面に叩き付ける。

〝のろい〟のダメージもあり、ユンゲラーは戦闘不能になった。

 

 

「強いわね、サトシ君」

 

「!ありがとうございます!」

 

 

まさかナツメに褒められるとは。

嬉しくて笑みを浮かべたら、ナツメもフッと笑ってくれた。

途端にカスミから何やら不穏な気配が……。

何だってんだ。

 

 

「最後はこの子よ!」

 

「フーディン!」

 

 

ナツメの最後のポケモンはフーディンだった。

見るからに強力そうで、油断ならない。

 

 

「このまま行くぞ、ロコン!」

 

「コーン!」

 

「〝サイコキネシス〟」

 

「フー!」

 

 

初っ端から〝サイコキネシス〟で動きを封じられ、先ほどのお返しだとばかりに空中に持ち上げられる。

 

 

「〝ひのこ〟だ!」

 

「コ、ン…ッ!」

 

 

何とか〝ひのこ〟を放つものの、フーディンがいる方とは見当違いの方向に放たれ、フーディンには当たらない。

顔がフーディンの方を向かないよう天井向きに固定されているようだった。

 

 

「抜け出せなければ、終わりよ」

 

「くっ!ロコン、〝しっぽをふる〟!」

 

「コン……!」

 

 

一先ずは動かせる尻尾で〝しっぽをふる〟を発動し、フーディンの防御力を下げていく。

それに比例するように、〝サイコキネシス〟のダメージもロコンに入る。

 

 

「〝でんこうせっか〟!」

 

「コ、ン…ッッッ!!!!」

 

 

〝サイコキネシス〟から抜け出そうと〝でんこうせっか〟を発動させるが、中々抜け出せない。

単純に力負けしているのだ。

 

 

「コ、ン!!!コーーーーーーン!!!!」

 

「!」

 

 

体が自由に動かせないロコンが、おもむろに〝ひのこ〟を放ったかと思えばその〝ひのこ〟が〝かえんほうしゃ〟になって放たれる。

その〝かえんほうしゃ〟が天井に当たり、火の粉が舞ってフーディンに襲い掛かった。

 

 

「フー、ディ!!?」

 

「フーディン!」

 

 

突然降りかかってきた火の粉に驚いて、フーディンは目を瞑って目の前の火の粉を振り払う。

その隙を逃さずに〝でんこうせっか〟を発動させ、〝サイコキネシス〟の拘束から抜け出した。

 

 

「いいぞ、ロコン!〝でんこうせっか〟!」

 

「コン!」

 

「!〝サイコキネシス〟!」

 

「フー!」

 

 

〝サイコキネシス〟の拘束から抜け出したと同時に〝でんこうせっか〟でフーディンの懐に潜り込み、思い切り〝でんこうせっか〟を決める――――。

 

 

「コン!?」

 

 

確かに決めたと思ったが、浅く入っただけで再び〝サイコキネシス〟に捕らわれてしまった。

〝しっぽをふる〟で防御力を下げていたので、〝でんこうせっか〟でもそれなりのダメージにはなっただろうが、浅すぎる。

 

 

「くっ!〝かえんほうしゃ〟!」

 

「投げ飛ばしなさい!」

 

「フー!」

 

「コッ―――!?」

 

「ロコン!」

 

 

〝かえんほうしゃ〟で先ほどのように脱出しようと試みるが、まだ練度が低いからかすぐには放てず、〝サイコキネシス〟で投げ飛ばされる方が早かった。

天井近くにまで放られ、次いで地面に叩き付けられる。

 

 

「ロコン!大丈夫か!?」

 

「コ、ン………!」

 

 

意地で立ち上がるロコンは、誰がどう見ても限界が近かった。

 

 

「これで決める。〝サイコキネシス〟」

 

「!〝でんこうせっか〟!」

 

「!コン!」

 

 

慌てて〝でんこうせっか〟を発動させ姿を捉えさせないようにするが、スピードも動きのキレも明らかに落ちている。

捕まるのは時間の問題だろう。

かと言って〝じんつうりき〟で〝サイコキネシス〟を相殺するのは、威力的にもタイプ相性の補正的にも無理がある。

〝かえんほうしゃ〟で炎を壁にする?

いやまだそこまでの練度はない。

どうする。

 

 

「コン!!!」

 

「!」

 

 

思考の波に襲われかけていた俺は、ロコンの一喝にハッとさせられた。

ロコンで終わりではないのだ。

俺の残りのポケモン達は、まだ二体残っている。

一対一で勝たなくていい。

全員の力を合わせて勝つのだ。

それならやるべきことは。

 

 

「走れロコン!〝でんこうせっか〟!」

 

「コン!」

 

 

最後の力を振り絞り、トップスピードで以てフーディンの背後に回り込む。

 

 

「!!後ろ!〝サイコキネシス〟!!!」

 

 

慌ててナツメが指示を飛ばすが、一歩遅い。

 

 

「〝かなしばり〟!!!!」

 

「!!?」

 

 

攻撃技ではなく、変化技。

〝かなしばり〟で以て、厄介な〝サイコキネシス〟を封じ込める。

攻撃が飛んでこなかったことに多少動揺したナツメだったが、フーディンは冷静に〝サイケこうせん〟でロコンを戦闘不能にしてきた。

 

 

「ありがとな、ロコン。おかげで助かった。ゴースト、頼めるか!?」

 

「ゴース!!」

 

 

素早くロコンをモンスターボールに戻し、お礼を言ってからゴーストを送り出す。

フーディンは〝しっぽをふる〟で防御力は下がっているが、ダメージは〝でんこうせっか〟で追わせた浅いダメージしか入っていない状態。

ゴーストは既に、自分の役割を理解しているようだった。

皆で勝つのだ。

ロコンの意思を無駄にしないために。

 

 

「フーディン、〝サイケこうせん〟!」

 

「〝のろい〟!」

 

「!」

 

 

十八番の〝サイコキネシス〟で体を縛られないようにして、指示をするはまたしても変化技。

確実に削り切るために。

ゴーストは〝サイケこうせん〟が届く前に〝のろい〟を発動し、反動で戦闘不能になる。

〝サイケこうせん〟は、戦闘不能になって地面に落ちたゴーストの真上を通っていった。

あっという間に最後の一体になってしまった。

 

 

「ありがとな、ゴースト」

 

「ゴース……」

 

「この試合、必ず勝つから!見守っていてくれ!」

 

 

ゴーストに駆け寄り、抱き上げれば満足気な顔をしたゴーストが舌で顔を舐めてくる。

急いで指定の位置に戻り、ピカチュウにゴーストを託して送り出す、最後のポケモン。

 

 

「エーフィ、君に決めた!」

 

「フィーー!!」

 

 

モンスターボールの中で事のあらましを見ていたのか、弟分のロコンがやられていつもよりやる気なのか。

ものすごい闘志を迸らせたエーフィが飛び出してくる。

ラストは君に任せた!

 

 

「エーフィ………エスパータイプのポケモンね。この私にエスパー勝負を仕掛けるなんて。面白いわ!フーディン、〝サイケこうせん〟!」

 

「フー!」

 

「〝でんこうせっか〟!」

 

「フィ!」

 

 

未だ〝サイコキネシス〟が封じられているうちに、接近戦を挑んでいく。

一直線に放たれた〝サイケこうせん〟を〝でんこうせっか〟の勢いでかわし、そのまま目にも止まらぬ速さでフーディンの懐に叩き込む。

 

 

「!速い!!」

 

 

エーフィはもう何年も前から〝でんこうせっか〟を鍛え続けている。

悪いがまだ、ロコンのスピードよりもピカチュウのスピードよりも速いぜ。

防御力が下がっていた分、かなりのダメージになっている。

 

 

「フーディン、〝じこさいせい〟!」

 

 

〝のろい〟でダメージが蓄積される分、それなりに楽に倒せるかと思っていたが、さすがはジムリーダーのポケモン。

きちんと変化技も覚えており、〝じこさいせい〟で体力を回復されてしまった。

 

 

「それでも勝機はずっとこっちにある!エーフィ、〝サイケこうせん〟!」

 

「こちらも〝サイケこうせん〟!」

 

「フィーーーーーーー!!!」

 

「フーーーーー!!!」

 

 

エスパータイプのポケモン同士、意地のぶつかり合いが始まる。

中央でぶつかり合った〝サイケこうせん〟同士は、ほんのわずかにフーディンの方が押す形で爆発を起こした。

最終進化系なだけはあり、さすがに特攻が高い。

 

 

「なら〝めいそう〟だ!」

 

「フィ~~~」

 

 

〝かなしばり〟が解けて〝サイコキネシス〟が解放されるまでのタイムリミットを思えば、〝めいそう〟を積んでいる暇は今ぐらいしかない。

 

 

「隙は逃さない!〝サイコショック〟!」

 

「フーディ!」

 

「!〝サイコショック〟が使えたのか!」

 

 

〝めいそう〟で上げた特防も意味を成さず、エーフィの種族値として低い防御力に対するダメージが入る。

〝のろい〟の蓄積ダメージがあるとはいえ、うかうかしていられない。

 

 

「〝サイコキネシス〟」

 

「フーーーー」

 

「〝でんこうせっか〟!」

 

「フィ!」

 

 

〝かなしばり〟が解け、さっそくとばかりに〝サイコキネシス〟を仕掛けてきたが難なく〝でんこうせっか〟で避ける。

そのまま距離を詰めても良かったのだが、ロコンが〝でんこうせっか〟を決める直前に〝サイコキネシス〟で受け止められたことを考えると、〝サイコキネシス〟の練度はかなりのものだ。

それを考えると、エーフィの速度でも迂闊に近寄るのは危険だ。

 

 

「〝でんこうせっか〟をしながら〝めいそう〟だ!」

 

「フィィ!」

 

「!高度な技術を…!」

 

 

二つの技を同時に使う、という高度な技術にナツメが驚いている間に、〝サイコキネシス〟から逃げながら〝めいそう〟を積んでいく。

 

 

「〝サイコショック〟!地面に当てるのよ!」

 

「フー!」

 

「フィッ!?」

 

 

エスパータイプ特有の超能力か、エーフィが逃げる道を予測したのか。

エーフィが走っていた目の前の地面に〝サイコショック〟を当てられ、土埃が上がり思わずスピードが緩む。

 

 

「しまった!」

 

「フーディン!」

 

「エーフィ、頑張れ!〝でんこうせっか〟!」

 

「―――――――お返しよ。〝かなしばり〟」

 

「!」

 

 

まさかまさかの〝かなしばり〟返し。

だが残念。

俺のエーフィは、隠れ特性のマジックミラーだ。

変化技は効かない!

 

 

「フィ!」

 

「!?」

 

 

土埃から〝でんこうせっか〟で飛び出したエーフィに、ナツメの目が驚愕に見開かれる。

隙が、できた。

 

 

「〝アシストパワー〟!!!!」

 

「フィーーーーーー!!!」

 

 

〝めいそう〟で威力の上がった渾身の〝アシストパワー〟が、フーディンに突き刺さる。

 

 

「フディ!?」

 

「フーディン!」

 

 

ナツメの心配する声を受けて、技の衝撃で上がった爆煙の中から、スプーンで煙を振り払いながらフーディンが飛び出してくる。

 

 

「〝サイコショック〟!!!!」

 

「フー!!」

 

「〝でんこうせっか〟!」

 

 

指示された〝サイコショック〟を避けるために〝でんこうせっか〟を指示したが、肝心の〝サイコショック〟は地面に乱れ撃ちされた。

上がる土埃に、エーフィがむやみやたらに走り回らず足を止める。

視界が奪われても、俺には波導があるからエーフィの目になってやれる!

 

そう思っていたのが、油断になった。

足を止めてはいけなかったのだ。

波導を展開した瞬間、エーフィの目の前に〝テレポート〟でフーディンが移動してきたのがわかった。

 

 

「!!!エーフィ、目の前だ!」

 

「フィ――――!!」

 

「〝サイコキネシス〟!!」

 

「フー!!!」

 

 

足を止めてしまったのが仇となり、避ける術がなくなったエーフィに真正面から〝サイコキネシス〟が襲い掛かり、空中に持ち上げられる。

ご丁寧にも、顔は天井ではなく明後日の方向に向けられて固定されていた。

 

 

「フィーー!エフィーーーー!!」

 

「エーフィ!」

 

「〝じこさいせい〟!」

 

「フーーーー」

 

 

必死にもがいて〝サイコキネシス〟から逃れようとするエーフィを横目に、フーディンは〝サイコキネシス〟を発動させながら〝じこさいせい〟を発動するという、ナツメ達も高度な技術を返してくる。

 

 

「エーフィ、〝めいそう〟だ!」

 

「フィ~~~~」

 

 

〝サイコキネシス〟に捕らわれながらも、〝じこさいせい〟をしている隙を突いて、〝めいそう〟を五段階目まで積むことに成功した。

〝めいそう〟で上げた特防のおかげで、〝サイコキネシス〟の受けるダメージは軽減されている。

あとは俺が、技を当てられるように指示するだけ。

 

 

「〝アシストパワー〟!溜めて溜めて溜めまくれ!」

 

「フィ!」

 

 

エーフィも、もう何年も俺と一緒にいる中。

俺の指示を聞いて、すぐにしたいことをわかってくれた。

〝アシストパワー〟を放つのではなく、顔の目の前に集約させて大きな球にしていく。

大きく、大きく。

エーフィの姿を覆い隠す程大きくなった球が、中でエネルギーが暴発し眩しいほどの光を放つ。

 

 

「フーディ!?」

 

「なっ!?」

 

 

その光は疑似的な〝フラッシュ〟となり、フーディンの目を眩ませる。

瞬間、〝サイコキネシス〟の拘束が緩む。

 

 

「今だ!放て!」

 

「フィーーーーーー!!!」

 

 

天井に向かって放たれた〝アシストパワー〟の大きな球は、天井に当たって大きな爆発を起こした。

天井に小さな穴が開き、照明が落ちる。

それと同時にフィールド全体に降りかかる爆風に押され、完全に体が自由になった。

 

 

「畳み掛ける!〝あくび〟!」

 

「フィ~~~」

 

「〝あくび〟……?」

 

 

照明が落ちたことでも動揺していたナツメは、〝あくび〟の効果を知らなかったようで、俺が指示をしても避ける指示をするでもなく怪訝そうな顔をする。

おかげで楽に〝あくび〟をフーディンに当てることができた。

 

 

「よし!〝サイケこうせん〟!」

 

「フィーーーー!」

 

「〝サイコキネシス〟!」

 

「フーーーーー!」

 

 

〝めいそう〟を積んで強力になった〝サイケこうせん〟は、〝サイコキネシス〟により軌道を変えられ地面に着弾する。

その瞬間、フーディンの目がトロンと眠気に襲われた。

 

 

「〝サイコショック〟!…………フーディン?」

 

 

そのことに気付けなかったナツメは、急に眠り出したフーディンに困惑した表情で声をかける。

 

 

「よし!〝アシストパワー〟!」

 

「フィーーーー!!!」

 

「フーディン!起きて!」

 

 

眠ってしまったフーディンを起こそうとナツメが声をかけるも空しく、〝アシストパワー〟がフーディンに直撃した。

瞬間、〝のろい〟のダメージも合わさってフーディンが戦闘不能になる。

 

 

「………………勝った………」

 

「フィーーーー!」

 

 

勝った実感が湧いていなかった俺に、心底から嬉しそうにエーフィが抱き付いてくる。

エーフィの笑顔を見て、ようやく思考が追い付いた。

 

 

「勝ったぞ!」

 

「フィ!」

 

「ピカピッカ!」

 

「ゴース!」

 

「皆、ありがとな!!」

 

 

エーフィだけじゃなく、ピカチュウとゴーストも笑顔で俺に抱き付いてきて、俺も笑顔になって皆を撫でる。

今回は、本当に皆での勝利だった。

ロコンとゴースト、エーフィ皆の力でナツメに勝ったのだ。

 

これまでジムリーダーのみならず、トレーナー相手にも一対一で勝つことが多かったからか、一対一で勝つことに思考が囚われ過ぎていた。

サトシとしての記憶があるにもかかわずそうなったのは、ゲームでレベルを上げて一対一で勝つことが基本だった社会人としての記憶に引っ張られたためだろう。

 

ここは現実。

 

皆で勝つために、次に繋げる思考に切り替えることも大切なのだ。

例え犠牲が出たとしても。

トレーナーとしての力量が、直接的に物を言う。

三体三よりも六対六になれば、それはもっと顕著に表れるだろう。

 

それがわかったから。

それを痛感したから。

やはり、もっと強くならなければ。

改めて、そう思った。

 

 

 

 

「おめでとう、サトシ君。あなたは本当に強かった。これが私に勝った証、ゴールドバッジよ」

 

「ありがとうございます。よぉーし!ゴールドバッジ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「コンコーン!」

 

「ゴスゴース!」

 

「フィー!エフィ!」

 

 

ナツメからゴールドバッジを受け取り、いつもの台詞を決めれば皆が後に続いてくれる。

ナツメの母親も父親も、タケシもカスミも拍手してくれた。

ちょっと恥ずかしい。

 

 

「本当にありがとう、サトシ君。君には感謝してもしきれない。君の活躍は、是非テレビで追わせてもらうよ」

 

「だから、お礼はゴース達に………って、俺もしつこいか。ありがとうございます。テレビに映る段階まで行けるよう、しっかり精進します」

 

「あぁ、頑張ってくれ!」

 

「サトシ君、これ……」

 

「ん?」

 

 

ナツメから手渡されたのは、ポケフォン番号とメールアドレスが書かれた可愛らしい手書きのメモ。

 

 

「よかったら、これからも、その……………仲良くしてくれると、嬉しい、から……」

 

 

ほんのり頬を赤く染めながら、照れ照れと言葉を伝えてくるナツメは可愛らしい。

そっか。

今まで友人らしい友人がいなかったから、俺と友人になってほしいのか!

何故かカスミのオーラが不機嫌だけど、そういうことなら。

 

 

「ありがとう。まだ俺ポケフォン持ってないんだけど、早めに買って連絡させてもらうよ」

 

「!うん!」

 

 

俺がメモを受け取ると、ナツメは本当に嬉しそうな笑顔で頷いてくれた。

可愛い。

ナツメの母親と父親も、微笑ましそうにナツメを見守っている。

 

 

「俺からも、ゴース達のことはよろしく頼むな?」

 

「任せて。サトシ君との大切な絆。責任を持って幸せにするから」

 

「ん?うん」

 

 

なんかちょっと違う気がするが、ポケモントレーナーとしてポケモンを幸せにする、というのは間違っていないのでいいだろう。

ゴースとゲンガーは、やっぱりナツメの元に残るようだ。

ゴーストは、というと……。

 

 

「ゴース。ゴスゴース!ゴースト!」

 

「ゴースト…………本当に良いのか?」

 

「ゴース!」

 

 

俺の袖を引っ張って、早くゲットしろとせっついていた。

ゲンガーを既に仲間にしているとはいえ、このゴーストは絶滅危惧種の特性、ふゆうの個体。

ゲンガーに進化させて、二体のゲンガーでビックリどっきり作戦も面白いだろう。

それを考えれば、良いのかもしれない。

 

 

「それじゃあ、よろしくな、ゴースト」

 

「ゴース!」

 

 

モンスターボールを差し出せば、一目散に入っていくゴースト。

揺れもせず、一瞬で収まる。

 

 

「ゴースト、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

 

いつもの台詞を決めて、オーキド研究所に転送されていったモンスターボールを見送った。

新たなバッジと仲間をゲットし。

旅は、まだまだ続く。

 









スイクン(色違い) Lv.46

エーフィ♀  Lv.36→38

リザードン♂ Lv.41 -太陽-

ピカチュウ♂ Lv.38

ロコン♂(色違い) Lv.30→32

バタフリー♂ Lv.30

ピジョン♂  Lv.30

ニドラン♂  Lv. 28

フシギダネ♂ Lv.24→25

ヒトカゲ♂  Lv.26

ゼニガメ♂  Lv.26

クラブ♂   Lv.24→25

イーブイ♀  Lv.21→23

ゲンガー♂  Lv.50

バタフリー♀(桃色の色違い) Lv.15 -モルガナ-

ゴースト♂  Lv.25→30 NEW!

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