転生サトシの旅路   作:ナノブ

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19.強くなるのは一緒に

第34話 ポケモン育て屋さん

 

 

セキチクシティを目指して旅をしていると、ポケモンの育て屋さんを発見した。

はて。

前の時もゲームでも、ここに育て屋さんはなかった気がするが。

不思議に思う俺を放って、カスミが見学したいと言い出したので、入ることにした。

 

 

「ごめんくださーい!」

 

「はぁい」

 

 

奥から出てきたのは、おっとりした老夫婦。

 

 

「育て屋をご利用の方かしら?」

 

「はい!見学させてもらいたくって!」

 

「そうかぁ。悪いなぁ。実は、育て屋はもう引退することにしたんだ」

 

「「えぇ!?」」

 

 

カスミとタケシの驚きの声が被る。

前は、すでに育て屋を引退していたから気付かなかったのかな。

 

 

「どうして、引退を?」

 

「私達も、もう年だからねぇ」

 

「ポケモン達に付き合ってやれるだけの体力が、もうないんだ。一匹や二匹だけでもと思っても、じっくり付き合っているとすぐに腰を悪くしてしまう。軽く手を加えてやったり、アドバイスしたりならできるんだが、それだけだとちゃんとした育て屋とは言えないからなぁ」

 

 

歳を取ったからこその、どうしようもない悩みにカスミもタケシも眉を下げる。

それでも老夫婦は、穏やかに微笑んでいた。

 

 

「そんな顔をしないで。立ち寄ってくれただけでも、すごく嬉しいわ」

 

「よかったら、君達の旅の話でも聞かせておくれ。いいお茶があるんだ」

 

 

そう言ってお茶に招いてくれたので、ありがたくご馳走になる。

俺達の旅の話をして、俺がポケモンリーグに出ると知ると、なんと自分達の育ての秘訣を教えてくれた。

何でも旅の話が面白く、孫と過ごした気分になったのでそのお礼だとか。

ありがたいので、カスミ達も一緒に育て屋さんから育ての秘訣を学ぶ。

 

タケシでも知らないようなことばかりで、普通に勉強になった。

そして俺達のポケモンを見たいと言うので、交換しながら全てのポケモンを見せてあげたところ、なんと少しだけ育ての手を加えてもらえることになった。

結果として、全員のレベルが上がった。

それだけでなく、嬉しいことに全員共通して技スロットが一つ増えたばかりか、新しい技を覚えたポケモンもいた。

すごい手腕である。

現役だった頃はさぞ有名な育て屋さんだったのだろう。

 

お礼を言っても言い切れないので、色違いのスイクンを見せてあげることにした。

スイクンにも了承をとってから、人目が付かない位置でスイクンをお披露目する。

老夫婦は大いに驚き、そして大いに喜んでくれた。

そしてあろうことか、スイクンも少し育てたいと言い出したので、スイクンの意思を確かめてから少しだけ預けた。

もはや職業病だろう。

引退してもポケモンを育てることばかり考えていそうな夫婦だ。

 

結果として、スイクンもレベルが上がり、新しい技を覚えた。

老夫婦の夫の方は、興奮しすぎでギックリ腰になってしまったので、波導の力を応用して多少マシな状態になるまで治してあげた。

お礼を言われたが本当にお礼を言わなきゃいけないのは俺達の方だ。

 

 

「あの、本当にありがとうございました。何か俺達で、できることがあればいつでも言ってください。本当に、何でもお礼をします」

 

「あらあらまぁまぁ。ありがとう。でも、その気持ちだけで十分よ」

 

「お礼がしたいというなら、そうだな」

 

 

夫の方が奥に引っ込むと、一つのタマゴを持って帰ってきた。

 

 

「こいつに世界を見せてやってくれ。私達ではもうできないことだ。世界中を旅する君に、託したい」

 

「それは……」

 

 

言い分はわかるが、結局は俺が貰いっぱなしになってしまう。

 

 

「遠慮しないで。本当に、本当に楽しい時間を貰えて、私達だっていっぱい貰いっぱなしなのよ」

 

「君達のような若者の手助けができて、私達は嬉しいのだよ。たくさんの絆に巡り合えて、私達は嬉しかった。そのお礼をする機会が、終ぞ訪れなくてね。君達がここに立ち寄ってくれたのも、何かの縁だ。今までのお礼を、君達でさせてほしいんだ」

 

 

優しい人達だ。

できた人達すぎるだろう。

そう言われてしまっては断れない。

カスミもタケシも同じようで、俺にタマゴをいただくよう促してくる。

 

 

「絶対、大切にします。立派なポケモンに、育ててみせます!」

 

「あなたなら、きっとできるわ」

 

「ポケモンリーグの放送を、今からとても楽しみにしているよ」

 

 

タマゴを大切に抱き抱え、俺は力強く頷いたのだった。

そして一晩泊めてもらい、ものすごく収穫があった育て屋を後にする。

涙ぐむほど俺達に感情移入してくれていたらしい老夫婦に見送られ、手を振って別れた。

 

 

 

 

 

第35話 発電所のコイルとベトベトン

 

 

手持ちのポケモンをピカチュウ、スイクン、バタフリー、ピジョン、ニドキング、クラブにして旅を続けていると、工業都市のグンジョシティに辿り着いた。

夜に辿り着いたこともあり、辺りはすっかり真っ暗で、空気も悪く水も汚く、少し勘弁してほしい街だ。

 

 

「ピィィカ……」

 

「ん?ピカチュウ?」

 

 

早めにポケモンセンターで休もうと思っていると、ピカチュウが何やらフラフラし出す。

頬袋からバチバチと帯電し、ほんのり顔が赤い。

 

 

「風邪の症状か!すぐにポケモンセンターへ!」

 

「えぇ!」

 

「わかった!」

 

 

さすがにピカチュウの体調不良はどういうものか覚えているので、ゴム手袋をつけてピカチュウを抱え、ポケモンセンターに走る。

出てきてくれたジョーイさんは、遅い時間ということもあり欠伸をしながら眠そうに診断してきた。

あまりにも言い方が適当なので、タケシのいつもの癖も発動しない。

治療室について行っていると、突然停電に見舞われる。

 

 

「なんだ!?」

 

「停電!?」

 

 

慌てて移動するジョーイさんの後について行くと、治療中だというポケモン達が多くいる部屋に辿り着いた。

 

 

「早く電気が復旧しないと、この子達の命が危ない!!!」

 

「自家発電はないんですか!?」

 

「このポケモンセンターにはないの。どうしよう……」

 

「俺達で、発電所を見に行こう!」

 

「オッケー!」

 

 

急ぎ移動しようとすると、ピカチュウも一緒に行くと珍しい駄々をこね始める。

ピカチュウの珍しい我が儘に、放っておくわけにもいかずピカチュウを抱っこして移動することにした。

途中、発電所の場所を聞くために交番にも寄ったが、ジュンサーさん曰く発電所の応答がなく理由は不明とのことだった。

ジュンサーさんに発電所の場所を聞き、そこまで急ぐ。

 

 

「失礼しまーす!誰かいらっしゃいませんかーー!」

 

 

扉を開けて声を上げても、何も応答がないので仕方なくそのまま入る。

中に進めば、前のようにコイルが現れてピカチュウに付き纏うように擦り寄ってきた。

 

 

「このコイル、頬を染めてまるで恋をしているみたい」

 

「いや、コイルは磁力をとっても魅力に感じるらしいからな。ピカチュウが帯電して電磁石状態になっているから、強い磁力を放っているピカチュウがとっても魅力的に見えるんだ」

 

「へぇ~……よく知ってるわね」

 

 

もちろん、転生者としての知識である。

ピカチュウが迷惑そうにしていたので、コイルに離れてもらっていると、上の通風口からベトベターが大量に落ちてきた。

 

 

「くっさぁい!!」

 

「カ、カスミ。ポケモンの自尊心を傷付けて怒らせるような発言は、自粛しろよ」

 

「だ、だぁってぇ!」

 

 

タケシとカスミがわちゃわちゃしていると、更にベトベトンまでも落ちてくる。

そっか、サトシのベトベトン、ここでゲットしたんだった。

臭いが酷くなり、カスミとタケシが後退り始めると、ベトベトンが指揮を執ってベトベターをけしかけてきた。

 

 

「きゃあーーーーーー!!!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「ニドキング、君に決めた!」

 

「ニドォ!!」

 

 

慌てて毒タイプに強いニドキングに壁になってもらい、一旦抑えてもらう。

一瞬でもベトベターの動きが止まった隙を突いて、バタフリー、ピジョン、クラブを出して応戦する。

 

 

「バタフリーは〝ぼうふう〟!ピジョンは〝ふきとばし〟!クラブは〝みずでっぽう〟だ!」

 

「フリーーーー!」

 

「ピジョーーー!」

 

「コキコッキ!」

 

 

自慢の技でニドキングから引き離し、ニドキングが自由になったタイミングでニドキングに〝じしん〟を指示して圧倒していく。

ピカチュウも役に立ちたいのか、俺の腕から抜け出して〝10まんボルト〟をお見舞いしていた。

ベトベター達は逃げ出していくものの、数が多くて中々減らない。

 

これもレベル上げのためだと思って、襲い掛かってくるベトベターをひたすら追い払っていると、ピカチュウに付き纏っていたコイルが仲間を呼んでくれたらしく、これまたかなりの数のコイルとレアコイルが現れた。

 

 

「コイルとレアコイル!」

 

「それもこんなにたくさん!」

 

「しめた!コイル!レアコイル!〝でんきショック〟か〝10まんボルト〟だ!力を貸してくれ!!」

 

「「「「「リリリリリ!!!」」」」」

 

 

コイルとレアコイルも、ベトベター達に発電所を荒らされるのは困るのか、素直に俺の言葉に従ってくれた。

数の暴力に押され、ベトベター達が一気に逃げ出していく。

コイル達が逃げ出していくベトベター達の後を追い、海水をせき止めていたベトベター達も電撃で追い払ってくれた。

明かりが付き、一件落着かと思いきや、親玉のベトベトンは逃げ出していなかった。

ここは、自ら一歩前に出たニドキングに任せることにする。

 

 

「ベェトォベェトォ~!」

 

「〝のしかかり〟か!ニドキング、受け止めてやれ!」

 

「ニド!」

 

 

ベトベトンの〝のしかかり〟を、力に物を言わせてニドキングに受け止めさせた。

 

 

「ベト!?」

 

 

まさか受け止められるとは思っていなかったらしく、ベトベトンが驚愕に体を固まらせる。

 

 

「今だ!思いっ切り踏み付けてやれ!〝じしん〟!!!」

 

「ニドォォ!!」

 

 

受け止めていたベトベトンを地面に叩き付け、踏み付けることで〝じしん〟の直撃を食らわせる。

 

 

「ベェトォ……」

 

 

効果抜群の技の直撃が入り、さすがのベトベトンも弱って体を縮こまらせる。

ベトベター達と一緒に、幾らか電撃を浴びていたことも大きいか。

 

 

「よし!行け!モンスターボール!」

 

 

即座に空のモンスターボールを投げ、ベトベトンに当てた。

無事数回の揺れで収まる。

 

 

「よっしゃ!ベトベトン、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「お!ピカチュウ!元気になったのか!」

 

「ピッカァ!」

 

 

〝10まんボルト〟を放ちまくって電気を放出したからか、風邪に似た症状も収まり元気になったピカチュウが俺の後に続いてくれた。

すぐにモンスターボールがオーキド研究所に転送される。

 

 

「ベトベター達が逃げ出していったぞ!発電もできてるし!」

 

「君達がベトベター達を?」

 

 

後からやってきた所員の人に、まず勝手に入ったことの謝罪をして、停電したままだとポケモンセンターが緊急事態だったことの説明をした。

 

 

「そうだったのか。何はともあれ、助かったよ」

 

「本当にありがとう!」

 

「いえ。何とかなってよかったです」

 

「リリリリ」

 

「あ!コイル!」

 

 

所員の人達と話していると、また何処からともなくコイルがやってくる。

ピカチュウを追い回していたコイルかと思いきや、なんと色違いのコイルだった。

 

 

「リリリリリリ」

 

「な、なんだ?」

 

 

どういうわけか、そのコイルは俺の周りをぐるぐる回って楽しそうだ。

 

 

「サトシのことが気に入ったのか?」

 

「でも俺、何もしてないけど……」

 

 

今回に限っては本当に何もしていない。

タケシとカスミの知らないところで、餌付けしたとかでもない。

困惑していると、コイルはビリビリと帯電させて〝スパーク〟を見せてくれた。

次いで〝エレキネット〟、〝ちょうおんぱ〟、〝でんじは〟。

技を放って、ニコニコと俺の方を見る。

 

 

「お前、バトルが好きなのか?」

 

「リリリ!」

 

 

正解のようだ。

 

 

「なるほど。バトルが好きで、ベトベター達をバッタバッタ薙ぎ払って行ったサトシのポケモン達に憧れた、ってところかな」

 

「リリ!」

 

 

タケシの言葉に、コイルが嬉しそうに頷く。

これも当たりらしい。

そういうことなら、拒む理由は何一つない。

 

 

「一緒に行くか!コイル!」

 

「リリリリ!」

 

 

モンスターボールを差し出せば、コイルは嬉しそうにモンスターボールに入っていった。

一度の揺れで収まり、無事ゲットする。

 

 

「コイル、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

 

再びいつもの台詞を決めれば、コイルのモンスターボールもオーキド研究所に転送されていく。

あとでオーキド博士に連絡を入れなくちゃな。

予想外の収穫もあり、発電所の所員さんに感謝されながらポケモンセンターに戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――――――前に、スイクンがモンスターボールをカタリと揺らした。

 

言いたいことはわかる。

放って置くには、あまりにも汚れ過ぎている。

スイクンの意思もあり、俺は夜なのをいいことにスイクンをモンスターボールから出した。

 

 

「サトシ?」

 

「どうしたの?」

 

「いや、さすがにスイクンも、見過ごせないんだってさ」

 

 

首を傾げるタケシとカスミを置いて、スイクンは水を綺麗にする力を解放して海の上を走り回る。

途端に綺麗になっていく海に、タケシ達が感嘆の声を上げる。

一通り綺麗にすると、スイクンは満足した表情で戻ってきた。

俺に頬を寄せてきたので、俺もスイクンに頬を寄せる。

 

 

「ありがとな、スイクン。人間のせいで汚れた海を、綺麗にしてくれて。俺達人間のためだけじゃなくて、ポケモン達のためでもあるんだろうけど………。それでも、ありがとう」

 

 

スイクンはゆっくり頷いてくれた。

人間の汚い部分を多く見ているスイクンは、海が汚される怒りもあるだろうに、それでも俺と一緒に歩む道を選んでくれた。

そのことが、改めて奇跡的であるのだと実感し、改めて心の底から嬉しい。

 

 

「ピィカ…」

 

 

俺の肩に乗っているピカチュウも、揃ってスイクンに頬を寄せる。

そんな俺達を、カスミ達は微笑ましそうに見守ってくれていた。

その後、前よりも早く片が付いたので、ジョーイさんにも感謝されながら部屋を借り、朝までゆっくり休んだ。

 

朝起きて、朝食を食べてタケシが買い出しに行ったのを見届けてから、オーキド博士に連絡を入れる。

すると何やら、待ってましたとばかりに画面に食いつかれ、食い気味で話し始めた。

 

 

「サトシ!!!連絡を待っておったぞ!!!!」

 

「オ、オーキド博士?」

 

「待ってた、って……」

 

 

カスミと一緒に首を傾げると、オーキド博士は悲鳴を上げながら前のめりに倒れる。

 

 

「は、博士!!?」

 

「サ、サトシ……!早くこいつを……こいつをそっちに送ってくれぇぇぇぇ……」

 

 

息も絶え絶え、というような状態でこいつ、とオーキド博士が指差す先には、オーキド博士を押し潰そうとしている怒り顔のベトベトンの姿。

 

 

「ベトベトン!」

 

「あらまぁ……」

 

 

状況を詳しく聞くと、送られてきたベトベトンは最初から怒っていたらしい。

宥めようとはしたのだが、何に怒っているのか怒りの原因がわからないので対処のしようもなく、ベトベトンが送られてきてから今の今までずっとベトベトンは研究所内で暴れっぱなしだったらしい。

 

 

「そ、それはすみません。夜だからとか考えずに、すぐに状況を確認するべきでした」

 

「い、いいから早く!!早くそっちに転送してくれぇぇぇ!!!」

 

 

謝罪される間も惜しい、とばかりにオーキド博士が叫ぶので、慌ててクラブとベトベトンを交換する。

モンスターボール越しでも臭うので、カスミとピカチュウが一気に距離を取る。

 

 

「はぁ……ふぅ…………酷い目に遭ったわい」

 

「すみません、オーキド博士」

 

 

改めて謝罪すると、オーキド博士はぽんぽん叩いていた腰から手を放し、苦笑した。

 

 

「なに、元気なのはいいことじゃ。お前さんがたくさんポケモンを捕まえるのもいいことじゃ。今回は少しばかり元気すぎるポケモンに、ワシの方が対処できなかった。それだけのことじゃよ」

 

「……………ありがとうございます」

 

 

オーキド博士の優しさに感謝して、ベトベトンの次に転送されていったコイルについて聞く。

ベトベトンと違い、コイルは早々に俺のポケモン達と合流して、強くなろうと特訓しているらしい。

やる気に満ち溢れていると教えてくれた。

 

 

「そうですか。教えてくれてありがとうございます」

 

「うむ。して、サトシ。そのベトベトンをどうする気じゃ?」

 

「一先ず落ち着かせてみます。俺は、今はこいつのトレーナーですから、こいつが何を望んでいるのかわかるようにならないと」

 

「その意気や良しじゃ!理由がわかったらまた連絡してくるといい」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 

一旦オーキド博士との通話を終え、カスミにピカチュウを任せてから他の人の迷惑にならないよう外に出る。

人があまりいない場所に移動して、改めてベトベトンを外に出した。

 

 

「ベェェトォォベェトォ!」

 

 

オーキド博士の言うように、何かに怒っているらしいベトベトンはモンスターボールから出るや否や、俺に向かって両手を上げて威嚇してくる。

 

 

「落ち着いてくれ、ベトベトン。何をそんなに怒ってるんだ?」

 

「ベェェトォォ!!!!」

 

 

できるだけ優しく問いかけてみても、返ってくるのは威嚇だった。

いや、威嚇というよりは、なんと言うか…………悔しがってる?

波導で感じ取ったベトベトンの感情に、より一層疑問が生まれる。

 

 

「何をそんなに、悔しがってるんだ……?」

 

「ベト!?…………ベェェェェェトォォォォオ!!!!」

 

 

自分の感情を当てられたからか、それとも明確に俺が言葉にしたことで自分でもよくわかっていなかった感情を理解したからか。

ベトベトンはさらに悔しさの色を濃くして、俺に襲い掛かってきた。

咄嗟に波導で体を包み、受け止めようとするより早く、モンスターボールから勝手にニドキングが出てきて受け止めてくれる。

 

 

「ニドキング!」

 

「ニィド!」

 

「!!?ベトベトォォォォ!!!!」

 

 

自分を受け止めたニドキングにベトベトンが固まったかと思ったら、ものすごい怒りを顕わにしてニドキングに襲い掛かる。

 

 

「ニド?」

 

 

ニドキングはキョトンとして、両腕でベトベトンを抑え込む。

レベルは同じぐらいのはずだが、やはり野生で生きていたポケモンとトレーナーに育てられたポケモンとでは、強さの出方に差がある。

ニドキングの素の力に歯が立たないベトベトンは、非常に悔しそうな顔をして自分のヘドロの体に頭を埋めている。

なるほど。

 

 

「ニドキングにあっさりやられたのが、すごく悔しかったのか」

 

「ベェト!」

 

 

苦笑しながら呟けば、そうだ!と答えが返ってくる。

同じ毒タイプ同士、そしてたぶん親玉同士。

何か通じるものがあって、だからこそ自分が手も足も出なかったことに、ベトベトンは憤ったらしい。

苦笑したまま、ニドキングが抱えているベトベトンと目を合わせるよう、片膝を付く。

臭いは波導で鼻をガードすることで、気にならない。

 

 

「ベトベトン。お前は、確かに強かったのかもしれない。けど世界には、上には上がいるもんだ。このニドキングを軽く凌駕してくるポケモン達だって、たくさんいるだろう」

 

「ベェトォ……」

 

 

自分を軽く抱えてしまうこのニドキングよりも強いポケモン、と聞いてベトベトンがじわりと目を見開く。

 

 

「嘘じゃないぜ?世界は広い。俺達よりもまだまだ強いトレーナーやポケモンなんて、たくさんいるさ」

 

「ベトォ……?」

 

「ニド」

 

 

ベトベトンが、俺の言葉の真偽を確認するようにニドキングと目を合わせ、ニドキングは頷いてやっていた。

 

 

「なぁ、ベトベトン。君は、もっと強くなりたい?」

 

「ベト?」

 

「強くなりたいなら、俺は君のトレーナーとして無条件に手を貸すよ。それがトレーナーの役割だからな」

 

「…………ベトベト?」

 

 

ベトベトンが、心底不思議そうな顔をして聞いてきた。

 

 

「どうしてそこまでしてくれるのか、って?」

 

「ベト」

 

「何でって、」

 

 

答えは決まってる。

 

 

「俺が、君と友達になりたいから、かな?」

 

「ベ…………」

 

 

先ほどよりも大きく大きく、ベトベトンは目を見開く。

ニドキングはそんなベトベトンにクスリと笑い、俺のことを誇らしげに見てくれた。

 

 

「俺はね、ベトベトン。ポケモンマスターを目指して旅をしてるんだ。ポケモンマスターっていうのは、全てのポケモンと友達になること。だから俺は、他でもない君とも、友達になりたい。ただそれだけのことなんだよ。なんら特別でも、不思議なことでもない。俺にとっては、当たり前のことさ」

 

「ベト……………」

 

 

未だ驚きから抜け出せないベトベトンに、手を差し出す。

 

 

「ベト?」

 

「俺と一緒に、強くならないか?」

 

「……………………ベト!」

 

 

俺の差し出した手を見て、どこか感動したように目を潤ませたベトベトンは、笑顔で頷いてくれた。

そして俺の手に自分の手に当たる部分を重ねたかと思うと、俺の方にのしかかり抱き着いてくる。

悪意や戦意がなかったからか、ニドキングも止めなかった。

臭いは、いつの間にか消えていた。

 

 

「わっ。あはは、人懐っこいな、お前!」

 

「ベェトォ」

 

 

ニコニコ笑顔で可愛いベトベトンを存分に愛でてから、モンスターボールに戻しポケモンセンターに帰る。

臭いが消えていることに驚きながら、心から安心した表情を浮かべるカスミに苦笑して、再びオーキド博士に連絡を入れた。

ベトベトンが怒っていた理由は、ニドキングにあっさり負けて悔しかったからだとわかり、一旦ニドキングとベトベトンをオーキド研究所に送りたいと言えば、了承してくれた。

手持ちをピカチュウ、スイクン、バタフリー、ピジョン、クラブ、ゼニガメにする。

 

そう言えば、スイクンのことをオーキド博士に話す暇がなく、今でも秘密のままだ。

そろそろ仲間にしたことを言って、スイクンがオーキド研究所で特訓できるようにした方がいいかもしれない。

 

今回は置いておいて、オーキド博士との連絡を終え、母さんに連絡を入れた。

順調にバッジを集め、順調な旅ができていることを話すととても喜んでくれた。

口を酸っぱくして危険なことに首を突っ込まないよう言われ、既にロケット団のアジトを一つ潰した身としては目を逸らして頷くしかない。

母さんとの連絡も終え、旅に出る準備を整えるとタケシも帰ってきた。

出発しようとポケモンセンターを出ると、見送りに出てきたのはジョーイさんだけでなく、ジュンサーさんまで来てくれていた。

 

 

「ベトベターが大量に発生するなんて、それだけ海が汚れちゃってる証拠よ。そこんとこ、よろしくね!」

 

「面目ない。どういうわけか一日で海が綺麗になっていたけど、その状態をいつまでも保てるよう、皆で努力します」

 

 

申し訳なさそうに眉を下げたジュンサーさんがそう言ってくれたので、一先ずスイクンの力のおかげで綺麗になった海が、またすぐ汚染されることはない、と信じたい。

 

 

「これでグンジョシティも、爽やかスカイブルーの街に生まれ変わるかもな」

 

「色々と本当にありがとう。あなた達の活躍で、多くのポケモンが助かったわ。これからは、私も真面目なジョーイになります」

 

 

ジョーイさんの言葉も信じて、手を振って別れる。

旅はまだまだ続くのだ。

 

 







・全員のレベルが上がり、全員の技スロットが一つ増えた。
ピカチュウが〝かわらわり〟を、エーフィが〝サイコキネシス〟を、バタフリーが〝ぼうふう〟を、ニドキングが〝じしん〟を、フシギダネが〝ヘドロばくだん〟を、ゼニガメが〝アクアジェット〟を、クラブが〝ハサミギロチン〟を、ニンフィアが〝ハイパーボイス〟を、ゲンガー(のろわれボディ個体)が〝ギガドレイン〟を、オコリザルが〝インファイト〟を、スイクンが〝なみのり〟を覚えた。
本当にすごい育て屋の老夫婦だった。

・サトシは知らなかったが、ベトベトンはその臭いやヘドロでできた体に対して、人間やポケモンに色々言われて傷付いた過去を持っていた。
そんな過去を抱きしめるように手を差し伸べてくれたサトシに、涙腺が緩んだ形。
繰り返すが、サトシは知らない。裏設定。





スイクン(色違い) Lv.46→49

エーフィ♀  Lv.48→50

リザードン♂ Lv.48→50 -太陽-

ピカチュウ♂ Lv.47→50

ロコン♂(色違い) Lv.37→42

バタフリー♂ Lv.34→39

ピジョン♂  Lv.36→41

ニドキング  Lv.34→39

フシギダネ♂ Lv.35→40

ヒトカゲ♂  Lv.36→41

ゼニガメ♂  Lv.30→36

クラブ♂   Lv.30→38

ニンフィア♀ Lv.32→38

ゲンガー♂  Lv.52→53

バタフリー♀(桃色の色違い) Lv.15→20 -モルガナ-

ゲンガー♂  Lv.32→38

オコリザル♂ Lv.45→48

イーブイ♂(色違い) Lv.25→35

ガーディ♂(ヒスイの姿) Lv.30→38

タマゴ    中から音が聞こえてくる! もうすぐ生まれそう! NEW!

ベトベトン♂ Lv.38 NEW!

コイル(色違い) Lv.25 NEW!


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