転生サトシの旅路   作:ナノブ

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20.自慢の仲間達

第36話 ディグダがいっぱい!

 

 

どうやらタケシは方向音痴らしい。

それか地図が読めないか。

セキチクシティを目指して森の中を歩いていたのだが、地図を持っていたタケシが今いる場所がわからなくなったらしく、また迷ったことが判明した。

 

 

「み、道らしき道はある!」

 

「行くっきゃないな」

 

「はぁ~~」

 

 

苦し紛れにタケシが前を指差すので、とりあえず歩いて行くしかない。

ため息を吐くカスミも俺達の後に続く。

しばらく歩いていると、大事に抱えていたタマゴが急に光り出した。

 

 

「!これは…!」

 

「えっ、もう生まれるの!?」

 

「ずいぶんと早いな!?」

 

 

俺は波導で大体の生まれる時期がわかっていたのであまり驚かないが、カスミとタケシは驚きの声を上げる。

恐らく、育て屋の老夫婦がこれまで大切に温めてきたのだろう。

その甲斐あって、もうあと少しで生まれるというところまでいっていたのだ。

皆が固唾を呑んで見守る中、タマゴは一際大きな光を放ち、そしてその姿を現した。

 

 

「……………ブイ?」

 

 

生まれてきたのは、男の子のイーブイ。

波導で調べてみると、なんと隠れ特性だった。

 

 

「はじめまして、イーブイ。俺はサトシ。よろしくな?」

 

「ブイ………ブイ!」

 

 

俺の顔を見上げて目をパチクリさせていたイーブイは、俺の笑顔を見てか笑顔で頷いてくれる。

すぐさま俺の肩によじ登ろうとアタックしてきたので、そっと抱き上げてやる。

 

 

「ブイ!ブイブイ!ブーイ!」

 

 

笑顔で擦り寄ってくるイーブイの元気なこと可愛いこと。

 

 

「いーなー、サトシ。あたしもイーブイゲットしたい~~~」

 

「こればかりはめぐり合わせだからな。縁に感謝するしかないさ」

 

「ぶーーー」

 

 

おちゃらけるように口を尖らせるカスミに、タケシと一緒に苦笑する。

俺の帽子にじゃれ、俺の服にじゃれ、俺の手にじゃれつくイーブイをあやしながら、俺ができる範囲での健康チェックを行い、タケシにもしてもらう。

満場一致で問題なしなのを確認して、改めてイーブイを抱き上げた。

 

 

「ブイ?」

 

 

抱き上げられたイーブイはキョトンとして、俺の目を見つめてくる。

可愛いこと可愛いこと。

 

 

「なぁ、イーブイ。俺は、ポケモンマスターを目指して旅をしてるんだ」

 

「ブイブ?」

 

「ポケモンマスターっていうのは、簡単に言うなら、全てのポケモンと友達になること」

 

「ブ……」

 

 

イーブイは驚きにぱちぱちと瞬きする。

 

 

「だから俺は、君とももちろん友達になりたい。俺と友達になって、一緒にポケモンマスターへの道を手伝ってくれないか?」

 

「ブ……………ブイブイ!ブーイ!」

 

 

呆けるように目をぱちぱちさせていたイーブイは、俺の言葉を聞いて迷う素振りもなく俺の腕の中に飛び込んできてくれた。

そのまま笑顔で俺に擦り寄ってきてくれて、波導を使わずとも意思が伝わってくる。

 

 

「………ありがとう、イーブイ」

 

「ブイ!」

 

「ピカピッカ!」

 

「……………貰ったタマゴでも、サトシはきちんと意思を確認するのね」

 

「いただたいたからこそ、だろうな。幸せになってほしいからこそ、無理強いするようなことは絶対にしたくないんだろう。どのポケモンに対しても」

 

「あたしも水ポケモンが好きだからって、最初からシャワーズだけを推すのは、そろそろやめておこうかしら……」

 

 

マサキの灯台で出会ったイーブイ、今は俺のニンフィアとなったイーブイに、シャワーズ一択しか選択肢をあげなかったことを、どうやら後悔しているらしい。

カスミも成長してきている証拠だ。

 

 

「人それぞれだよ、カスミ。水ポケモンが好きだからシャワーズを推す、それ自体は悪じゃないんだ。シャワーズの魅力をそれだけ推してて、それだけ広めたいって思ってる証拠なんだからな。悪いことじゃない」

 

「サトシ………」

 

「ポケモンの意思はもちろん大切だけど、カスミの意思だって同じぐらい大切だ。妥協でどっちかが折れ続けてたら、そのうち噛み合わなくなってしまうかもしれない。その前から、相性を見ておくことは大切なことさ。カスミが意思表示するのだって、なんら悪いことじゃない。むしろ、ポケモン達からしてみればありがたいことかもしれないぞ?」

 

「サトシの言うとおりだな。最初から意思を示しておけば、ポケモン達も自分の意思を伝えやすいし、自分の歩む道を決めやすい。悪いことばかりじゃないさ」

 

「……………ありがと……」

 

 

タケシにも諭されたことで、カスミは頬をほんのり赤く染め、小さな声でお礼を言ってくる。

 

 

「カスミには、カスミだけにしかない魅力があるんだから、それを伸ばしていけば大丈夫だよ」

 

「も、もう!!わかったから!」

 

 

俺が続けて言うと、カスミは屈辱だと思ったのか顔を真っ赤にして怒ってしまった。

少し露骨に持ち上げ過ぎたか。

やり過ぎてしまったようだ、とタケシを見たら、タケシは何やら微笑ましそうな顔をしていた。何だよ。

わけがわからなくて困惑したがまぁいいかと、イーブイにモンスターボールを差し出す。

 

 

「これからよろしくな、イーブイ」

 

「ブーイ!」

 

 

自らモンスターボールにアタックしていったイーブイは、揺れもせず無事収まる。

ピジョンをオーキド研究所に転送されるようにポケモン図鑑をいじって調整し、モンスターボールからイーブイを出す。

 

 

「ブゥ……」

 

 

モンスターボールから出た瞬間に俺の腕の中に飛び込んできたイーブイは、何やら耳を下げて元気なさそうに俺にもたれかかる。

 

 

「あら?何だか元気なさそうよ?」

 

「おかしいな。健康状態はいいはずなんだが……」

 

 

健康状態はいいが元気がない、とすると。

 

 

「お腹減ったか?」

 

「ブィィ」

 

 

正解のようで、イーブイはコクンと頷く。

体調が悪くなったわけじゃないことに安心して、カスミ達と顔を見合わせて苦笑する。

 

 

「待ってろ、今温かいミルクを作ってやる」

 

「ブイ!」

 

 

元気に頷いたイーブイをカスミに預け、火を熾してお湯を作り、タケシが買っておいてくれた粉ミルクを溶かして、哺乳瓶に移す。

火傷しないぐらいの温かさに調整してから、改めてイーブイをカスミから受け取った。

 

 

「ほら、ゆっくり飲めよ?」

 

「ブイ!ブ、ブッ、ブッ、ブ」

 

「いい飲みっぷりだぜ」

 

「ピィカ」

 

 

俺の腕に抱かれながら、イーブイは哺乳瓶からミルクを飲み、お腹を満たす。

幼子特有の微笑ましさに、カスミ達と顔を見合わせて微笑み合う。

 

 

「ブィィィ~」

 

「美味かったか?」

 

「ブイ!」

 

「それはよかった」

 

 

ミルクを飲み終わったイーブイの口の周りを、綺麗なハンカチで拭く。

そんな穏やかな空気は、地面が揺れるほどの突然の爆発によって破られた。

 

 

「ブィィ!!?」

 

「ピカ!?」

 

「おっと!大丈夫だぞ、イーブイ、ピカチュウ」

 

「な、なんだ!!?」

 

「もしかしてロケット団!?」

 

 

慌てて辺りを見渡すカスミとタケシに倣い、ビックリして俺に抱き付いてきたイーブイとピカチュウを撫でながら、俺も辺りを見渡す。

すると再び爆発音が響き、ここから少し行ったところで爆発が起こっていることを知った。

 

 

「あっちだ!」

 

 

怖がるイーブイをしっかり抱きしめて、爆発が起きている方へとタケシ達と走る。

すると何やら、トラックの行列に行き当たった。

 

 

「これは………」

 

 

何だと思っていると、突然地面がボコボコになりトラックが横転し始める。

 

 

「ブイィィィ」

 

「大丈夫だ、イーブイ」

 

 

怖がるイーブイを撫でながら宥め、事の成り行きを見守っていると、トラック全てが横転してぐちゃぐちゃになってしまった。

 

 

「うぅぅぅ、またしても!またしても!」

 

 

トラックの運転席から出てきたおじさんが、苛立ちながら悔しそうに手で地面を叩く。

とりあえず怪我の確認をするために、皆で近付く。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

「ディグダじゃ!ディグダの脅威じゃ!」

 

「ディグダ?」

 

「あれがディグダじゃ!」

 

 

おじさんが指差す先に、ディグダ、ディグダ、ディグディグダ、と鳴きながらポコポコ顔を出したり引っ込めたりする複数のディグダの姿が。

 

 

「なんか可愛い!」

 

「何が可愛いものか!あいつのおかげで、ダム工事が全っっ然進まん!あぁ憎い!憎い!ディグダが憎いぃぃぃ!!!」

 

 

おじさんが憎さのあまり、自分のヘルメットをバシバシ叩いて壊していく様を見て、思い出した。

ダムを作ったら、この森が水の中に沈んでポケモン達が困ることになるんだった。

それでディグダは人間の邪魔をしていて、ポケモン達もそんなディグダと戦いたくなくてモンスターボールから出てくるのを嫌がる。

そんなこともあったんだった。

 

 

「あの、俺の話を聞いてもらえませんか?」

 

「サトシ?」

 

「君は?」

 

「俺、マサラタウンのサトシっていいます。ポケモン達が人間の邪魔をするのは、よほど悪戯好きなポケモン以外、基本的には理由があります。だから、ディグダ達がおじさん達の邪魔をするのも、理由があるんです」

 

「理由?」

 

 

俺の言葉に、カスミとタケシはハッとした。

ハトバーポートでのメノクラゲとドククラゲの騒動を思い出したのだろう。

 

 

「とりあえず、森を破壊するのをやめてください。ポケモン達が住処を追われて、困っているはずです」

 

「ポケモン達が…………し、しかし、すでにディグダ撃退のため、特別対策本部を作って近辺を修行中のポケモントレーナー、それも、優秀なポケモントレーナーを呼び寄せてしまったのだ……」

 

「あら~~~もうすでに呼んじゃったんだ」

 

「う、うむ………」

 

 

カスミの言葉におずおずと頷くおじさんの言葉を裏付けるように、俺達の後ろから真っ赤なオープンカーと大型バスがやってきた。

 

 

「第一陣、ただいま参上!あとは後ろの団体バス」

 

 

そういえば、ここでシゲルと再会したんだった。

 

 

「おや、サートシ君じゃありませんか。君も呼ばれたのかい?」

 

「いや俺は、ただの通りすがりだよ」

 

「君が、呼ばれていない?」

 

 

調子に乗っていたシゲルの顔が、一気に怪訝になる。

 

 

「悪いけどシゲル。今回は出番ないぜ?」

 

「………呼ばれていない君が出張る、というわけではなさそうだね」

 

「さすが、話が早い」

 

 

森を破壊されては森に住んでいるポケモン達が困る。

だからディグダは邪魔をしているのではないか、とシゲルに話してみると、すぐに納得してくれた。

 

 

「なるほどね。それなら確かに、僕達ポケモントレーナーの出番はなさそうだ」

 

「ま、待ってくれ!本当にそうかは、まだわからないだろう!?」

 

 

慌てたようにおじさんが待ったをかける。

確かに話しているよりかは、実際に目で見てもらった方が早い。

俺はディグダ達の元まで行き、片膝を付いてしゃがみ、目を合わせた。

 

 

「なぁ、ディグダ」

 

「ディグ?」

 

「君達の畑に、俺達を案内してくれないか?見せてくれれば、もう二度とこの森を荒らさないって約束する」

 

「ディグ!」

 

 

俺の言葉に即座に頷いてくれたディグダは、一列になって移動し始める。

団体バスに乗っていたトレーナーも、希望者にはついてきてもらって枝を運ぶディグダの後をついていく。

イーブイはポコポコ地面を潜って進むディグダが面白いようで、俺の腕から降りて笑顔でディグダの後に並んでいた。

そうして辿り着いた、ディグダとダグトリオの畑。

 

 

「これは……」

 

「森の畑、って言っていいんだろうな。ダグトリオが土を耕し、ディグダが木を植える。ここだけじゃなくて、この山並みの全てが木の畑なんだろう」

 

「たぶん、もしかしたら、世界中の山や森が」

 

「この子達が作った畑……」

 

 

俺の後に続いてくれたタケシとカスミの言葉に、工事のおじさんもついて来ていたトレーナーも、感嘆の声を漏らす。

 

 

「そうだったのか………あのダムができればこの森全部が、水の中に沈んでしまう。そして、何も住めなくなる」

 

「ポケモンには、まだまだ人間の知らないところが、いっぱいあるんだな」

 

「このダムは無駄。いや、それどころか……」

 

 

おじさんはガクリと首を落とし、ダム造りは中止だと言ってくれた。

その場で解散になり、集められたトレーナー達もバスに乗って街に戻っていく。

 

 

「僕も、ポケモンマスターを目指す旅に戻るとしよう」

 

「ここで会ったのも何かの縁だ。バトルでもしないか?」

 

「…………」

 

 

俺が挑発気味に呼び止めると、背を向けてオープンカーに乗ろうとしていたシゲルはピタリと動きを止めた。

そして真剣な表情で振り返る。

数秒俺と見つめ合った後、シゲルは一つ頷いた。

 

 

「確かに何かの縁だ。一旦僕達の実力をはっきりさせておくのもいいだろう。ただし、今回は一対一で勝負だ」

 

「わかった」

 

 

というわけで、急遽シゲルと一対一のバトルをすることになった。

前はやらなかったが、今回は実力試しにやってもいいだろう。

俺が今、シゲルと比べてどの位置にいるのか。

それを知るいい機会だ。

改めて距離を取り、シゲルと向かい合った。

 

 

「僕のポケモンは…――――行け、ニドキング!!!」

 

「ニドォォォ!!」

 

「ゼニガメ、君に決めた!」

 

「ゼニュゥ!」

 

 

シゲルが繰り出したのは、ニドキング。

俺のニドキングよりは小柄だが、それでも通常の個体よりもがっしりしているように見える。

レベルも俺のゼニガメよりも高く、よく育てられているのがわかる。

 

 

「先攻は貰った!ニドキング、〝かみなりパンチ〟!」

 

「ニドォォ!!」

 

 

右手に〝かみなりパンチ〟を構え、ニドキングは真っ直ぐ突っ込んできた。

いきなり技マシン技か。

 

 

「〝アクアジェット〟で回避だ!」

 

「ゼニ!」

 

 

〝アクアジェット〟を発動させ、体をひねりながらニドキングの〝かみなりパンチ〟をすれ違いざまに避けた。

 

 

「〝れいとうビーム〟!」

 

「ニド!」

 

「〝みずでっぽう〟!」

 

「ゼニ!」

 

 

ニドキングはすぐさま振り向いてゼニガメに〝れいとうビーム〟を放ち、ゼニガメも〝みずでっぽう〟を放って相殺する。

〝れいとうビーム〟の方が威力は高いが、ゼニガメの〝みずでっぽう〟はタイプ一致技だったこともあり、それなりの威力が出て相殺できたらしい。

 

 

「ゼニガメ、〝こうそくスピン〟!」

 

「〝メガホーン〟で弾け!」

 

 

〝こうそくスピン〟で果敢に攻めていくが、〝メガホーン〟で簡単に弾かれてしまう。

それどころか、力負けして空中に投げ飛ばされた。

 

 

「〝れいとうビーム〟!」

 

 

凍り付かせるのが狙いなのか、効果いま一つの技でも平気で狙ってくる。

 

 

「〝からにこもる〟から〝こうそくスピン〟!」

 

「ゼニュニュニュニュ!!」

 

 

〝からにこもる〟で防御を上げてから〝こうそくスピン〟をすることで、回転の力により〝れいとうビーム〟を拡散してダメージを最小限に抑えた。

俺の色違いのロコンを狙っていたポケモンハンターのニドキングがやっていた技術だ。

 

 

「そのまま〝みずでっぽう〟だ!」

 

「ガメメメメメメ!!」

 

 

〝こうそくスピン〟をしながらの〝みずでっぽう〟。

ジム戦でカスミが、〝ハイドロポンプ〟でやっていた技術である。

無事ニドキングに直撃を入れられた。

 

 

「やるね。でも、着地の瞬間は無防備になる。ニドキング!着地の瞬間を狙え!〝かみなりパンチ〟!」

 

「ニドォ!」

 

 

ニドキングは走り出し、ゼニガメの着地する地点に移動して〝かみなりパンチ〟を構える。

 

 

「そう簡単にはやらせないぜ?〝みずでっぽう〟!」

 

「ゼニュゥ!」

 

 

着地地点、つまり真下に来てくれたことで当てやすくなり、真下に〝みずでっぽう〟を放ってニドキングに再び直撃させ、技を放った勢いでゼニガメは空中に浮遊する形になった。

重力に従ってゼニガメは少しずつ落ちていくが、〝みずでっぽう〟を放ち続ける限りニドキングはダメージが入り続ける。

 

 

「くっ!〝れいとうビーム〟!」

 

「ニド!」

 

 

〝かみなりパンチ〟をキャンセルして、〝みずでっぽう〟に〝れいとうビーム〟を当てることで氷の柱を作り上げていく。

 

 

「〝アクアジェット〟で脱出!」

 

「ガメ!」

 

 

〝みずでっぽう〟を放つゼニガメまで凍ってしまう可能性があったため、一際強く〝みずでっぽう〟を放って一瞬体を浮遊させた後、〝アクアジェット〟で脱出する。

安全に地面に着地することができた。

 

 

「もう一度!〝こうそくスピン〟からの〝みずでっぽう〟だ!」

 

「ゼニ!」

 

「ニドキング、〝だいちのちから〟!」

 

「ニド!」

 

 

再び〝こうそくスピン〟から〝みずでっぽう〟を放つが、ニドキングは自身の正面に〝だいちのちから〟を発動させることにより、〝だいちのちから〟が壁になって〝みずでっぽう〟の直撃は避けていた。

それでもいくらかダメージは入る。

 

 

「完全には防ぎ切れないか……。もう一度〝だいちのちから〟だ!」

 

「ニドォ!」

 

「!ゼニュゥ…!」

 

 

〝みずでっぽう〟を放ち終わって着地したゼニガメの真下に、〝だいちのちから〟を発動されてゼニガメの表情が歪む。

 

 

「〝アクアジェット〟!」

 

「ゼニ!」

 

 

そこを無理やり〝アクアジェット〟で脱出した。

ついでにニドキングとの距離を詰める。

 

 

「真っ向勝負というわけかい?力はこちらの方が上だ!ニドキング、〝かみなりパンチ〟!」

 

「ニドォォォ!!!」

 

「ゼニガメ、そのまま〝こうそくスピン〟だ!」

 

「ゼニュニュニュニュ!!」

 

 

〝アクアジェット〟からの〝こうそくスピン〟で、大きく振りかぶってきたニドキングの〝かみなりパンチ〟を避け、背中に回り込む。

 

 

「何っ!?」

 

「行け!〝みずでっぽう〟!」

 

「ゼニュゥゥゥゥ!!!」

 

「ニドォ!!?」

 

 

渾身の〝みずでっぽう〟がニドキングの背中に直撃した。

前のめりに倒れ込むニドキングに、シゲルが焦りの表情になる。

 

 

「立て、ニドキング!立ってくれ!」

 

「ニドォ……!」

 

 

さすがのタフさか、それともこちらが未進化故にいまいち押し切れていないのか。

ニドキングは難なく立ち上がり、ゼニガメを睨み付けた。

 

 

「いいぞ、ニドキング!〝だいちのちから〟!」

 

「〝アクアジェット〟!」

 

 

〝だいちのちから〟が発動される前に〝アクアジェット〟でニドキングに迫る。

ニドキングは反応し切れず、〝アクアジェット〟の直撃を受けた。

しかし威力が低い分ふらつきもせず、逆に待ってましたとばかりに両腕でゼニガメを押さえられてしまう。

 

 

「しまった!」

 

「〝かみなりパンチ〟!!!」

 

「ニドォォォォ!!!!」

 

「ゼニャァァァァ!!?」

 

 

ニドキング渾身の〝かみなりパンチ〟がゼニガメに右ストレートで決まった。

押していたのはこちらのはずなのに、あまりにも迂闊だった。

効果抜群の技を受けて、ゼニガメはふらつきながら立ち上がる。

 

 

「ゼニガメ、大丈夫か!?」

 

「ゼ、ゼニ!」

 

 

俺の言葉に頷いてくれるゼニガメは、しかしニドキングよりも消耗が激しい。

それが俺の、トレーナーとしての力量差に映った。

 

 

「俺が………」

 

 

油断せず、ゼニガメにきちんとヒット&アウェイを徹底するよう言っていれば。

ニドキングを舐めていたわけではないが、あのままペチペチダメージを与え続けていれば勝てると思ってしまった。

自分の勝利が見えていたからこそ、慢心してしまった。

俺の、力量不足だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ゼニィ!!!!!!」

 

「!」

 

 

ゼニガメの一喝に、ハッとなって俯きかけていた顔を上げた。

ゼニガメの目に、燃えるような熱が見える。

 

 

「ゼニガメ……」

 

「ゼニ!ゼニゼニ!ゼニガゼニゼニ!」

 

 

何事か訴えかけてくるゼニガメに、シゲル達も動きを止めてくれる。

言いたいことは、波導を通さなくてもわかった。

俺達は、一緒に戦っているのだ。

何も、俺一人でシゲルの相手をしているのではない。

俺の力量がまだまだなのは当然として、それをカバーしてくれるのがゼニガメの力だ。

 

ゼニガメは、決して俺を一人にさせるつもりはないらしい。

俺だけのせいにするつもりはないらしい。

どこまでも一緒に戦ってくれるつもりでいるみたいだ。

それなら、俺も下を向いてはいられない。

それに、応えなければ。

 

 

「ありがとな、ゼニガメ。俺達は一緒に、強くなるんだ!」

 

「ゼニ!ゼニャァァァァァ!!!!」

 

 

力強く頷いてくれたゼニガメが、光り出す。

 

 

「!これは…!」

 

「まさか!」

 

 

前の時は見なかった、進化の光。

ゼニガメの体が大きくなっていき、光がパシンっと弾ける。

そこにいたのは…―――。

 

 

「ガメ!」

 

「カメール……」

 

 

進化したカメールから、強い意思が感じ取れた。

 

 

 

俺を独りにさせない決意。

 

 

俺と一緒に歩む決意。

 

 

俺と一緒に、強くなる決意。

 

 

 

 

 

 

 

 

やばい。

泣きそうだ。

 

 

ポケモン達がこれほどまでに好いてくれて、嬉しくないわけがない。

いつの間にか足元に、ピカチュウとイーブイも居て俺の足に擦り寄ってくれていた。

トレーナーとしての力量差を埋めようとしてくれるポケモン達の、なんと優しいことか。

独りじゃないんだ。

嬉しくて零れそうになった涙を、帽子の影に隠してそっと拭う。

 

 

「ピカピ」

 

「ブイブ」

 

「あぁ、ありがとう。………行くぞ、カメール!」

 

「ガメ!」

 

 

進化したことで新たな技も覚え、これならば真っ向からでもニドキングと戦える。

 

 

「相手は更に強敵になった。ニドキング、気を引き締めて行くぞ!」

 

「ニド!」

 

「カメール、〝アクアジェット〟で突っ込め!」

 

「ガメ!」

 

 

気を取り直し、改めてバトルを再開する。

先ほどの二の舞にならないように、〝アクアジェット〟で真正面からではなく脇腹に直撃させてすぐさま離脱するを徹底させた。

 

 

「なるほど。今のが、さっき君がやりたかった動きか…。ニドキング、〝メガホーン〟!」

 

「ニドォォォ!!!」

 

 

〝アクアジェット〟で離脱したカメールを追い掛け、ニドキングが〝メガホーン〟を発動させながら迫る。

 

 

「〝てっぺき〟!!」

 

「ガメ!」

 

 

進化した際に〝からにこもる〟が〝てっぺき〟になり、防御力をさらに上げられるようになった。

ニドキングと比べて小柄だから空には打ち上げられるが、ダメージはかなり抑えられた。

 

 

「〝みずでっぽう〟!」

 

「〝れいとうビーム〟!」

 

 

空中にいる状態でニドキングに向けて放った〝みずでっぽう〟は、再び〝れいとうビーム〟で相殺されるかと思いきや、進化したことで威力が上がったのか〝れいとうビーム〟を押し切ってニドキングに命中する。

 

 

「ニドォ!?」

 

「何ッ!?」

 

「新技行くぞ!〝だくりゅう〟!」

 

「ガメェェェェェ!」

 

 

〝みずでっぽう〟の勢いに体が傾いた隙を狙って、新技である〝だくりゅう〟を発動させ、避ける隙を与えず荒波で以て押し流した。

 

 

「ニ、ドォ…!」

 

 

文字通りの強力な濁流に押し流されて、ニドキングはさすがに片膝を付く。

 

 

「ニドキング!」

 

「〝アクアジェット〟!」

 

「!!〝かみなりパンチ〟!」

 

 

〝アクアジェット〟を迎え撃とうとした〝かみなりパンチ〟は、〝だくりゅう〟で命中率が下がっていたのか〝アクアジェット〟が届く前に空振りし、〝アクアジェット〟が直撃する。

 

 

「〝こうそくスピン〟からの〝みずでっぽう〟!!!」

 

「ガメメメメメメ!!!」

 

 

ここしかないとばかりに、畳みかけていく。

 

 

「ニドキング頑張れ!〝だいちのちから〟!」

 

「ニドォォォ…ッ!」

 

 

片手を上げて〝だいちのちから〟を発動させ壁を作るが、先ほどまでの強度はなくダメージが入った。

ニドキングの顔が苦痛に歪む。

 

 

「とどめだ!〝だくりゅう〟!」

 

「ガメェェェェェェェ!!!!」

 

 

先の〝だくりゅう〟よりも大きな波の〝だくりゅう〟を作り出し、片膝を付いて動けないニドキングを呑み込んだ。

 

 

「ニドキング!!!!」

 

 

シゲルが呼びかけるも、荒波に流されたニドキングは目を回していた。

 

 

「負けた、か……」

 

「いや、引き分けだ」

 

「!サトシ………」

 

 

引き分けを宣言する俺に、シゲルは驚いたようにこちらを見てくる。

 

 

「シゲルは、俺達のことを待っていてくれた。攻撃してきてもよかったのに、俺達のことを尊重してくれた。公式試合じゃないとはいえ、一度戦闘を中止してしまった俺達は、不戦敗にされてもおかしくない。攻撃されていれば負けていたのは俺達の方だ。だから、引き分けだ」

 

 

俺がそう言えば、シゲルは考え込むような顔をしてニドキングの傍に寄る。

俺も駆け寄ってきてくれたカメールを抱き上げる。

 

 

「進化おめでとう、カメール。悪い、ちゃんと勝たせてあげられなくて…」

 

「ガメ!ガメガァメ!」

 

 

カメールは気にしてないよ、と俺に擦り寄ってくれる。

可愛い。

優しい。

俺の、最高の仲間だ。

 

嬉しくて俺もカメールに頬擦りすると、カメールは照れ臭そうにしながらも嬉しそうに再び擦り寄ってくれた。

それを見ていたイーブイとピカチュウも、俺の肩によじ登って頬擦りしてくれる。

最高の、自慢の仲間達。

俺にはいつだって、こいつらがいるんだ。

 

旅立ちの日に母さんが言ってくれた言葉を、真の意味で今やっと理解できた気がした。

 

 

「………………やっぱり、僕の負けだよ」

 

「!シゲル………」

 

 

俺達の様子を見ていたのだろうシゲルは、どこか晴れ晴れとした雰囲気で自分の負けを認めてくる。

 

 

「君のポケモン想いなところも、同じだけポケモンに想われるところも、僕にとっては羨ましい一面だ。そして、いずれ君を超えるために、追い付きたい一面でもある……」

 

「シゲル………」

 

 

シゲルからのまさかの言葉に、少し面食らう。

シゲルがちゃんと言葉に出して、俺のことを羨ましいと言うとは。

 

 

「バトル中に、トレーナーを想ってポケモンが進化するなんて、初めて見たよ。ポケモンとトレーナーの強い繋がりをはっきりと目にしたのは、初めてだ。僕のライバル、サトシ。今回のディグダのことといい、君はやっぱり僕の一歩先を行くね」

 

「………バトルでは互角か、トレーナーとしての力量はシゲルの方が上だよ」

 

「いや、僕だってまだまださ。君のゼニガメ、カメールに与えられた明確なダメージは、〝かみなりパンチ〟の一発のみ。それで効果抜群なこともあって大ダメージを与えられたが、それまではいいように翻弄されていた。トレーナーとしての力量、実力は、サトシの方が上さ」

 

「………シゲル…」

 

「完敗だよ。今の僕では、やはりまだ君に遠く及ばない。それがわかっただけで、今回は収穫だ。ポケモンリーグで、今回の借りも含めて今までの僕の気持ち、全て返させてもらうよ」

 

「………望むところだ。俺だって、今よりずっと強くなっておく。ポケモンリーグで、決着をつけようぜ」

 

「あぁ!」

 

 

俺とシゲルが握手をすると、起き上がっていたニドキングも俺が抱えていたカメール相手に、手を差し出してくる。

 

 

「ガメ!」

 

「ニド!」

 

 

カメールも意図を汲み取り、手を差し出してニドキングと握手をした。

次は負けない、次も負けない、と言い合う姿は正しくライバルだろう。

シゲルもそんなニドキングの様子を、微笑ましそうに見ていた。

 

 

「なぁんかいい感じ!」

 

「そういえば、この近くには温泉があるんだったな」

 

「シゲルも一緒にどうだ?」

 

「いや、僕は先に旅に戻らせてもらうよ。君達は君達のペースで歩むといい」

 

 

アニメでいう、DP時代のシゲルになったかのような落ち着き具合に、シゲルも一段階成長したことが窺える。

焦っても仕方ないので、シゲルの言うように俺達は俺達のペースで歩んでいこう。

 

 

「そうさせてもらうよ。それじゃあ、またな」

 

「あぁ、また。では行こうか、僕のガールフレンド達」

 

「「「「「「いやーん。カッコいい~~~」」」」」」

 

「「「………」」」

 

 

成長しても、ガールフレンドを連れて行くのは変わらないのね。

なんとも言えない気持ちになり、カスミ達と顔を見合わせて苦笑した。

タケシがシゲルのガールフレンド達に鼻の下を伸ばさなかったのは、空気を読んでくれたようだ。

そういえば、イーブイはポケモンバトルにすごく興味を持ったらしく、覚えていた〝にどげり〟や〝アイアンテール〟を見せてくれた。

今からやる気十分で、頼もしい限りだ。

 

あの後工事のおじさんの奢りで、温泉に入ることができた。

水着を着てカスミも一緒の湯船に浸かる混浴だ。

ピカチュウ、バタフリー、クラブ、カメール、イーブイも一緒になって温泉を楽しむ。

タケシのズバット、カスミのヒトデマン、トサキント、クサイハナ、タッツー、メノクラゲ、浮き輪を付けたコダックも一緒だ。

 

さて、温泉を楽しみながら、反省会だ。

まず、バトル中に自責で俯きかけるとか、したらダメだろう。

反省するならバトルが終わった後だ。

相手が理解のあるシゲルだからよかったものの、バトル中にバトル以外の余計なことを考えて思考を止めてしまうのは、公式試合でやったらほとんど死と同じだ。

 

一度チャンピオンになった記憶を持ちながら、何やってるんだか。

いやこれは、転生者としての記憶も持っていることで、大幅に精神年齢が上がり色々なものが見えるようになってしまったことによるものだろう。

 

前は難しいことを考えるのが苦手で愚直に真っ直ぐ生きていたが、難しいことを考えるのが苦じゃなくなってしまった。

色々なものが見えるからこそ全てをどうにかしたくて、自分にできる最低限から最良のものまで、考え込んでしまう。

よくない癖がつきかけていたものだ。

 

でもきっと、もう大丈夫。

俺には―――――。

 

 

「ピカピ」

 

「フリ~」

 

「コキコキ」

 

「ガメガ」

 

「ブイブ」

 

 

いつだってこいつらがいる。

いつだってもう、独りじゃないんだから。

 

俺は笑みを浮かべ、無言でピカチュウ達を抱きしめたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁんていいかんじには終わらせないわよ!」

 

「!その声は!」

 

「世界の破壊を防ぐため」

 

「世界の平和を守るため」

 

「愛と真実の悪を貫く」

 

「ラブリーチャーミーな敵役」

 

「ムサシ」

 

「コジロウ」

 

「以下省ニャく」

 

 

カッコよく決めポーズを取っていたムサシとコジロウが、ガクッとズッコケる。

おかげで立ち上がって一歩踏み出そうとした俺達の足の力も抜けた。

 

 

「忘れてた……」

 

「ちょっと!入浴中に襲ってくるなんて!」

 

「入浴ぅ?水着着て何言ってんだか」

 

「温泉で気持ち良くなり、ふにゃふにゃになったところを狙う。ふっふっふ、我ながら完璧な作戦だぜ」

 

「ニャー。新顔の珍しいイーブイもいるようニャし、おみゃーら、やってまうニャ!」

 

「「おうよ!!」」

 

 

ムサシとコジロウは、アーボとドガースが進化したのかアーボックとマタドガス、そしてサワムラーとギャラドスを繰り出した。

中央にニャースが躍り出て、布陣完成といったところか。

というかサワムラー、普通にロケット団に混ざってるな。

 

 

「さぁ、やってやるニャー!」

 

「…………意気込んでいるところ悪いけど、俺達は温泉に入って心身ともにリフレッシュできた後だ」

 

「悪いのはそっちなんだから、手加減はしないわよ」

 

「お前達のポケモンが強くなったのと同じく、俺達のポケモンだって強くなってる」

 

「……………ニャ?」

 

 

俺、カスミ、タケシの言葉に、ニャースはピタリと動きを止めた。

俺達の前にずらりと並んだやる気満々のポケモン達に、ムサシとコジロウの顔はひくりと引きつる。

結局モンスターボールから出していたポケモン達全てで、さくっと「「「やな感じーーーーー」」」にした。

数の暴力になったが、まぁロケット団相手なら別にいいだろう。

全く、懲りない奴らだ。

 

 

 

 

 

第37話 セキチクジム VSキョウ

 

 

何だかんだで迷いながら森を出ると、セキチクジムの屋敷が見えた。

ここにはジムしかないのだろうかと波導で辺りを見渡してみると、森の中に隠れるようにポケモンセンターがあるのを発見した。

よく見れば、セキチクシティの建物全部が森の中に隠れるように立っている。

セキチクジムが忍者屋敷だからとはいえ、セキチクシティ自体が忍ぶことはないだろうに。

 

一度ポケモンセンターに寄り、手持ちをピカチュウ、スイクン、フシギダネ、ヒトカゲ、ゲンガー(のろい個体)、イーブイ(タマゴから生まれた個体)にする。

生まれたばかりのイーブイは、しばらくは手持ち固定になりそうだ。

母さんとオーキド博士に連絡を入れ、ポケモン達の調整をしてからいざ、セキチクジムへ。

 

 

「あ~………」

 

「どうしたの?」

 

 

そういえばこの忍者屋敷、仕掛けがすごいんだった。

屋敷の中に人は居るのかと波導で調べてみて、よかった。

危ない仕掛けの多いこと多いこと。

 

 

「ここ、セキチクジムだけど忍者屋敷っぽいんだ」

 

「忍者屋敷?」

 

「危ない仕掛けが多い。それこそ、ジムへの挑戦者を選り好みしてるんじゃないか、ってぐらいにはな……」

 

「それは……」

 

 

タケシの顔が一気に険しくなる。

それもそうだろう。

ポケモンジムは、ポケモンとトレーナーの力量を図る場。

それとは全く無関係の罠を散りばめて、ジム挑戦者を受け入れる気があるのかないのかわからないジムになっているのは、ジムリーダーとしてどうなんだと言いたくもなる。

 

 

「サトシ、俺達を導けるか?」

 

「できないことはないけど……」

 

「なら、俺達をジムリーダーの元まで連れて行ってくれ!一言言わなきゃ気が済まん!」

 

「あたしも!ジムを自分達が使うポケモン達に合わせたバトルフィールドとして改造するのはまだわかるけど、ポケモンリーグ公認のポケモンジムが、挑戦者を選り好みしてるなんて信じらんない!」

 

 

カスミも怒りを顕わに、忍者屋敷に入る気満々だ。

そうと決まれば、波導を駆使して最奥の部屋へと二人を導きながら進む。

途中、カスミが回転扉に吸い込まれそうになったので腕を引いて俺が下敷きになったり、タケシがビリリダマを踏みそうになったので慌てて腕を引いて俺が代わりに受けたりした。

 

二人に感謝されながら、なんとか一番奥の部屋に辿り着く。

そこには、コンパンがいた。

 

 

「コンパン?」

 

「ジムリーダーは不在か?」

 

「中々やるじゃない!あなた達!」

 

「誰!?」

 

 

いきなり声がしたかと思ったら、上からショッキングピンクの忍者服を着た女性が降ってきた。

 

 

「闇に生まれ、闇に生きる。それが忍びの定め。くノ一、アヤ、参上」

 

「でもぉ、その色は目立ち過ぎなんじゃなぁい?」

 

「お、大きなお世話よ」

 

 

カスミの真っ当なツッコミに、アヤと名乗った女性はふんっとそっぽを向く。

 

 

「それよりあなた達、よく罠に引っ掛からずここまで来れたわね」

 

「あ、そうだった。ジムリーダーにジム戦を挑むためには、この仕掛けだらけの屋敷を抜けなきゃいけないなんて、おかしいだろう!?」

 

「そうよそうよ!危ないじゃない!」

 

「ここは修行の場。隙を見せた方が悪いの」

 

 

タケシとカスミが苦言を呈すも、アヤは再びそっぽを向きながらそんなことを宣ってくる。

 

 

「あなたはジムリーダーですか?」

 

「いえ?ジムトレーナーといったところかしら?」

 

「ジムリーダーはどこに?」

 

「それは私にポケモンバトルで勝ったら、教えてあげるわよ」

 

「コン、パン」

 

 

やっぱりバトルすることになるのか。

まぁ、肩慣らしにちょうどいい。

 

 

「俺はマサラタウンのサトシ。ジムに挑戦する者として、その勝負受けて立ちます!」

 

「なら決まりね。使用ポケモンは一対一。いつでもどうぞ?」

 

「フシギダネ、君に決めた!」

 

「ダネフシャ!」

 

「行くのよ、コンパン!」

 

「コン!パン!」

 

 

互いのポケモン達が前に飛び出した。

 

 

「コンパン、〝しびれごな〟よ!」

 

「フシギダネ、〝ねむりごな〟だ!」

 

 

仕掛けたのはほぼ同時。

お互いの粉技が中央で混ざり合い、お互いに届かずにフィールドに漂う。

多少視界が悪くなり、これではどちらも近付けない。

 

 

「フシギダネ、真っ直ぐだ!〝やどりぎのタネ〟!」

 

「フシャ!」

 

 

視界が悪い中でも、俺達には関係ない。

波導の力でコンパンの位置を正確に把握していたため、無事〝やどりぎのタネ〟を当てることができた。

 

 

「!?コンパン!〝サイケこうせん〟よ!」

 

「ジャンプしてかわせ!〝はっぱカッター〟!」

 

「ダネフシャ!」

 

 

放たれた〝サイケこうせん〟をジャンプでかわし、〝やどりぎのタネ〟の蔓を切らないようにしながら器用に〝はっぱカッター〟でダメージを与える。

そのまま連続で〝はっぱカッター〟を当て続けていれば、粉系の技が散っていったので〝つるのムチ〟からの〝ヘドロばくだん〟で戦闘不能にした。

 

 

「戻れコンパン!」

 

「フシギダネ、よくやったぞ」

 

「フシャア!」

 

 

バトルが終わって俺の元に戻ってきたフシギダネを撫でていると、どこから転がってきたのかビリリダマがフィールドの中央で爆発を起こす。

 

 

「なぁ!?」

 

「ビリリダマが!」

 

 

タケシとカスミの驚いた声を聞きながら、ようやくジムリーダーがご登場かと身構える。

 

 

「アヤ。お前はまだまだ未熟者だな」

 

 

現れたのは、アヤさんと同じく忍者装束の男、キョウ。

 

 

「兄者。不覚を取りました」

 

 

アヤさんがキョウさんの前に跪く。

 

 

「あなたが、セキチクジムのジムリーダーですか?」

 

「如何にも。セキチクジムのジムリーダー、キョウとは、拙者のことでござる」

 

「俺はマサラタウンのサトシです。ジム戦をする前に、一言言っても?」

 

「?何でござるか?」

 

 

本当にわかっていないようだったので、俺とタケシ、カスミの顔が歪む。

そして一気に不満をぶちまけた。

ポケモンリーグ公認のポケモンジムが、自分達の趣味に合わせた屋敷に改造して挑戦者を馬鹿にしているのは、あまりにも常識がなっていないと。

事前に立て札なんかで説明があればまだいいもののそれもなく、ポケモンバトルとは何も関係ないところで挑戦者を選り好みしているのはどうなんだと。

ポケモントレーナーの身体能力を見たいのであれば、らしいことをしろと。

はっきり言って、ポケモン監察局に連絡すべき事態だと。

 

ここまで言えばこちらの本気具合が伝わったらしい。

俺達の勢いに押されて顔を引きつらせていたキョウが、慌てたように待ったをかけてきた。

 

 

「す、すまなかった。確かにここは、拙者達の修行の場として改造した忍者屋敷。だがそれを、挑戦者にまで押し付けるのは間違っておった。すまない…」

 

 

頭を下げるキョウさんの横で、アヤさんも頭を下げて一緒に謝って来たので溜飲が下がる。

 

 

「わかってくれればいいですよ」

 

「次からは、この屋敷の前で挑戦者を受け入れるようにしたら?」

 

「キョウさん達の修行の場を潰さなくて済む、挑戦者達は罠にかからずに済む。それがいいかもな」

 

「そうさせてもらおう……」

 

 

ポケモン監察局の名前を出されたことで未だにショックを受けているのか、キョウさんの元気がない。

まぁ、今回ばかりは自業自得ということで反省してくれ。

 

 

「キョウさん。改めて、正式な公式試合を申し込みます。俺と、バトルしてください!」

 

 

日を改めようかとも思ったが、仮にもジムリーダーならば切り替えるだろうと思って宣言する。

 

 

「………うむ、よかろう。拙者に勝てば、このピンクバッジをお主にやろう」

 

 

やはりジムリーダー。

すぐさま切り替えて、巻物に付けられたピンクバッジを見せてきた。

そうこなくっちゃな。

 

 

「使用ポケモンは三体三でござる。準備はいいか?」

 

「もちろん!」

 

「では、拙者の先方は!ベトベトンでござる!」

 

「ゲンガー、君に決めた!」

 

「ほう…。この拙者相手に、毒ポケモンで勝負を挑むか」

 

「毒は毒を制す。〝どくどく〟は効きませんよ?」

 

「なるほど」

 

 

それにそれだけじゃない。

もしかしたら前と違うポケモンを出してくるのではとは思っていたが、厄介なベトベトンにこのゲンガー(ふゆう個体)を合わせられてよかった。

 

 

「ゲンゲン!」

 

「あぁ!行くぞゲンガー!〝のろい〟!」

 

「!いきなり〝のろい〟を使うか!」

 

 

〝ちいさくなる〟だったり〝とける〟だったり、厄介な技を使ってくるだろうベトベトンは楽に処理できるならその方がいい。

ゲンガーもそれをわかってくれていた。

 

 

「えぇいベトベトン!〝ちいさくなる〟でござる!」

 

「ベェトォ」

 

 

慌ててキョウが〝ちいさくなる〟を発動させるが、〝のろい〟は入れられたので痛くも痒くもない。

後は時間稼ぎをするだけだ。

 

 

「ゲンガー、〝ナイトヘッド〟!」

 

「ベトベトン、〝ヘドロこうげき〟!」

 

 

互いの技が中央でぶつかり合い、軽い爆発を起こす。

結局ベトベトンの技をのらりくらりとかわし、〝のろい〟で半分体力が削られただけでベトベトンは戦闘不能になった。

 

 

「ベトベトン、戦闘不能!」

 

 

審判代わりのアヤさんが手を上げて宣言する。

 

 

「戻れベトベトン。してやられたでござるな。しかし、次はそうはいかん!出でよ、マタドガス!」

 

「マァァタドガァァス」

 

 

マタドガスか。

ぶっちゃけコジロウのマタドガスとはレベルが違うが、レベルの違うマタドガスは一度経験済みだ。

 

 

「戻ってくれ、ゲンガー。よくやったぞ」

 

「ゲンゲン!」

 

「フシギダネ、君に決めた!」

 

「フッシャァ!」

 

 

先ほどアヤさんのコンパンに勝ったフシギダネが、自信満々に飛び出していく。

 

 

「また〝どくどく〟を封じるか。しかし、このマタドガスは毒技だけが取り柄ではない!〝ねっぷう〟でござる!」

 

 

マジか。

 

 

「〝はっぱカッター〟!」

 

「フシャ!」

 

 

放たれた〝ねっぷう〟に〝はっぱカッター〟をぶつけて幾らか勢いを相殺するが、完璧には相殺しきれずダメージを受けた。

効果抜群の技を覚えていたのか。

 

 

「〝やどりぎのタネ〟だ!」

 

「ダネフシャ!」

 

「焼き尽くせ!〝ねっぷう〟!」

 

「マァタドガァス!」

 

 

回復手段のために放った〝やどりぎのタネ〟は、〝ねっぷう〟で焼き尽くされるどころかこちらにダメージを与えてくる。

〝ねっぷう〟連打で負けそうな勢いだ。

 

 

「フシギダネ、走りながら〝ねむりごな〟!」

 

「フシッ!」

 

「〝ねっぷう〟!」

 

 

〝ねむりごな〟も〝ねっぷう〟で燃やし尽くされるが、〝ねむりごな〟に目がいっている間にマタドガスとの距離は詰められた。

 

 

「〝やどりぎのタネ〟!」

 

 

避けられない至近距離で、〝やどりぎのタネ〟を確実に当てる。

これで少なからず回復手段は得られた。

 

 

「〝ヘドロこうげき〟!」

 

「〝ヘドロばくだん〟だ!」

 

 

超至近距離で技同士がぶつかり合い、技としての練度がこちらの方が低かったのか、威力負けしてフシギダネが押される。

 

 

「〝ねっぷう〟!」

 

「マァタドガァス!」

 

「〝つるのムチ〟でマタドガスを掴むんだ!」

 

「ダネ!」

 

「振り回せ!」

 

「フッシーーー!」

 

 

〝ねっぷう〟が放たれる前に〝つるのムチ〟でマタドガスを掴み、振り回すことで〝ねっぷう〟はしっちゃかめっちゃかな方向に放たれ、フシギダネには当たらない。

 

 

「なんと!」

 

「そのまま叩き付けろ!〝ねむりごな〟だ!」

 

「フッシャァ!」

 

 

〝つるのムチ〟でぶん回して地面に叩き付け、〝ねむりごな〟を発動した。

体勢を立て直す間もなく当たり、マタドガスは眠ってしまう。

 

 

「マタドガス!起きるのだ!」

 

「よし!畳み掛けるぞ!〝ヘドロばくだん〟から〝はっぱカッター〟!」

 

「フシ!」

 

 

眠っているマタドガスの体力を、チクチクしたダメージながら一気に削っていく。

あと少しというところで、キョウさんの声に応えマタドガスは目を覚ました。

 

 

「よし!〝ねっぷう〟でござる!」

 

「マァタドガァス!」

 

「耐えろフシギダネ!」

 

「フシィィ!」

 

 

〝ねっぷう〟を何とか耐えて、返しの〝つるのムチ〟で戦闘不能にまで持っていく。

〝ねむりごな〟を当てられなかったら確実にこちらが負けていたな。

フシギダネが受けたダメージはそれほど大きい。

 

 

「マタドガス、戦闘不能!」

 

「戻れ、マタドガス。中々にやるでござるな。拙者の最後のポケモンは、行けぇい、クロバット!」

 

「クロバットか……」

 

 

前はゴルバットだったが、今回は進化系が出てきた。

強敵そうだ。

 

 

「フシギダネ、ご苦労さん。戻って休んでてくれ」

 

「フッシ」

 

「ヒトカゲ、君に決めた!」

 

「カゲェ!」

 

 

俺の最後のポケモンはヒトカゲだ。

空を飛ぶ相手に戦いづらくなるだろうが、攻めて攻めて攻めまくる!

 

 

「ヒトカゲ、〝かえんほうしゃ〟だ!」

 

「カゲェェェ!!」

 

「クロバット、〝あやしいひかり〟」

 

「!」

 

 

〝かえんほうしゃ〟は当てられたが、返しの〝あやしいひかり〟でヒトカゲは混乱してしまった。

 

 

「しっかりしろ、ヒトカゲ!もう一度〝かえんほうしゃ〟!」

 

「カ、ゲ…ッ!」

 

 

ヒトカゲは俺の声を聞いて〝かえんほうしゃ〟を放つが、クロバットがいる方向とは見当違いの方に放たれる。

それを見てキョウさんはニヤリと笑った。

 

 

「クロバット、〝どくどく〟攻撃!」

 

 

混乱しているからとか関係なく、毒タイプの〝どくどく〟は必中故にヒトカゲが猛毒状態になる。

 

 

「さらに〝かげぶんしん〟!」

 

 

混乱、毒、そして回避率を上げるか。

さすがは忍者。

やることが害悪だ。

だが幸いなことに、俺達に撹乱は効かない。

 

 

「ヒトカゲ、しっかり!頑張るんだ!」

 

「カゲ、ッコォ!」

 

「よし!左斜め前に飛んでるクロバットだ!〝ほのおのキバ〟!」

 

「カゲェェ!」

 

 

気合で混乱を解き、俺達が一発で本物を見分けたことに動揺して固まるクロバットに〝ほのおのキバ〟を決める。

早めに勝負を着けないと、こちらは猛毒ダメージで削られていく。

 

 

「もう一度〝ほのおのキバ〟!」

 

「カゲッ!」

 

「本物を見分けるか。なるほど、小細工はあまり通用しないようだ。だが、真っ向勝負はこちらに分がある!クロバット〝つばさでうつ〟攻撃!」

 

「ッ!」

 

 

〝ほのおのキバ〟と〝つばさでうつ〟がぶつかり合い、火花が散る。

怯みか火傷状態を狙い、そのまま〝ほのおのキバ〟で攻め続け〝つばさでうつ〟と何度か撃ち合う。

すると運が傾いたようで、クロバットの翼が火傷状態になった。

 

 

「!しまった!それが狙いか!」

 

 

こちらも猛毒ダメージで息は絶え絶えだが、勝機は掴んだ。

 

 

「いいぞ!ヒトカゲ!」

 

「カゲェェェェ!」

 

 

雄叫びを上げるヒトカゲの体が何やら光り出し、周りに岩が浮かび始める。

 

 

「!あれは!」

 

「〝がんせきふうじ〟………覚えたのか!」

 

「カゲェェ!」

 

 

この土壇場で、クロバットに効果抜群の技を覚えてくれるとは。

俺を勝たせたい意思が強く伝わってくる。

俺だって、それに応えなければ!

 

 

「行け!〝がんせきふうじ〟!」

 

「!クロバット、〝かげぶんしん〟!」

 

 

渾身の〝がんせきふうじ〟だったが、さすがのジムリーダー。

慌てずに〝かげぶんしん〟で回避してくる。

今回は放つ方向を言わなかったことで、確実に避けられるタイミングで〝かげぶんしん〟を使ってきた。

 

 

「なら〝かえんほうしゃ〟!クロバットを追い込め!」

 

「カゲ!」

 

 

〝かえんほうしゃ〟で影を消しながらクロバットの飛べる位置を制限する。

 

 

「クロバット、〝つばさでうつ〟攻撃!」

 

「ッ!」

 

 

〝かえんほうしゃ〟の猛攻を潜り抜けて、クロバットが急接近した。

だがそれは、こちらにとっても好都合。

 

 

「〝がんせきふうじ〟!」

 

「カゲェ!」

 

 

新しく覚えた〝がんせきふうじ〟を再び発動させ、クロバットの翼にぶつけていく。

クロバットも〝つばさでうつ〟で跳ね返そうとしたようだが、火傷状態なのもあって威力が弱く、逆に押されて翼を傷めていた。

クロバットがふらつく。

 

 

「よし!〝ほのおのキバ〟で止めだ!」

 

「カゲッ!」

 

「踏ん張れクロバット!〝つばさでうつ〟!」

 

 

再び〝ほのおのキバ〟と〝つばさでうつ〟がぶつかり合った。

だが拮抗はせず、火傷状態で威力が下がった〝つばさでうつ〟を〝ほのおのキバ〟がかみ砕き、技と技の衝突により爆発が起こる。

 

 

「ヒトカゲ!!」

 

「クロバット!!」

 

 

互いのトレーナーが、互いのポケモンを呼ぶ。

煙が晴れたフィールドに立っていたのは、もうフラフラ状態のヒトカゲ、のみ。

クロバットは、地に伏せ目を回していた。

 

 

「クロバット、戦闘不能!ヒトカゲの勝ち!よって勝者、マサラタウンのサトシ!」

 

「よし!やったぜヒトカゲ!」

 

「カゲェ…」

 

 

アヤさんの判決を聞いて、安心したのか倒れ込んでしまったヒトカゲの元に駆け寄り、抱き上げる。

 

 

「よくやったぞ!〝がんせきふうじ〟を覚えたなんてすごいじゃないか!本当に頑張ったな、ヒトカゲ!」

 

「カゲェ。カゲッコォ!」

 

 

同じく駆け寄ってきてくれたタケシに毒消しを貰い、ヒトカゲに使いながら褒めちぎるとヒトカゲは照れ臭そうに笑みを浮かべてくれた。

本当に可愛い。

 

 

「負けたでござる。トレーナーとしての力、しかと見せてもらった。このピンクバッジは、お主のものでござる」

 

 

キョウさんがそう言ってピンクバッジがついた巻物を広げたので、ありがたく受け取ることにする。

 

 

「ありがとうございます。ピンクバッジ、ゲットだぜ!」

 

「ピッピカチュウ!」

 

「カゲッコォ!」

 

「それと、詫びとしてこいつも貰って行ってくれ。〝どくどく〟の技マシンだ」

 

「いいんですか!?」

 

「うむ。完全にこちらに非がありながら、君達はそれを許してくれた。その礼だ。改めて、すまなかったな」

 

 

そういえば、ゲームでもキョウさんから〝どくどく〟の技マシンを貰えるんだっけ?

そういうことなら。

 

 

「ありがとうございます!」

 

 

〝どくどく〟の技マシンも貰えていい感じー。

さっそくフシギダネの〝どくのこな〟を〝どくどく〟に上書きしようかな。

と思ったところで、天井が爆発した。

 

 

「何だ!?」

 

「この感じ、もしかして……」

 

 

驚くキョウさんとは裏腹に、カスミは一気にげんなりした顔になる。

 

 

「なんだかんだとぉ聞かれたらぁ」

 

「あ答えてあげるがぁ世の情けぇ」

 

 

どうやら正解のようで、ロケット団が何故か歌舞伎スタイルで現れた。

前はジム戦の途中で現れていたが、今回はジム戦が終わるまで待っていてくれたらしい。

 

 

「ジム戦でクタクタになったジムのポケモン、あガッポガッポといただきだい!」

 

「ニャ!やるニャース!」

 

「「おう!」」

 

 

アーボック、サワムラー、マタドガス、ギャラドスと繰り出してきて、こちらもピカチュウを出し、キョウさんのモルフォンにアヤさんのコンパンで相手をしていく。

と思ったら、何やら手のひらから粘着糸のようなものを出し、俺達のポケモンが動けなくされてしまった。

 

 

「何だと!?」

 

「卑怯だぞ!」

 

「ニャー達に卑怯は褒め言葉だニャ!」

 

 

悪党だからそれもそうか。

 

 

「納得してる場合か!行くのよ、スターミー!」

 

「コパァ!」

 

 

カスミがスターミーを出そうとしたところ、カスミのバッグから勝手にコダックが出てきてカスミがズッコケる。

 

 

「な、ならヒトデマン!」

 

「コパァ!!!!」

 

 

ヒトデマンを出そうとしたカスミの前にずずいとコダックが出張り、カスミが再びズッコケる。

 

 

「も~う!何なのよう!それじゃあコダック!あんたが相手をしてやりなさい!」

 

「コパァ?」

 

 

首を傾げながらもコダックが走り出し、〝ひっかく〟を発動させる。

そしてアーボックに〝ひっかく〟を決める、と思われた瞬間、頭を噛み付かれて止められた。

 

 

「コパァ!?コパァ!?」

 

「コダック!」

 

 

俺のポケモン達は、ロケット団が狙い目と見たようにジム戦で疲れている。

粘着糸は電気を通さないようで、ピカチュウも封じられてしまった。

これはスイクンを出すしかないか?

そう思っていると、頭を噛まれ続けているコダックの頭痛が酷くなったようで、カッと目を見開いて〝かなしばり〟を発動させた。

 

 

「ニャ、なんニャァ?」

 

「な、何がどうしたのかな?」

 

「か、体が動かないぃぃぃ!」

 

「コダックの〝かなしばり〟だ!」

 

「これが、コダックの技!?」

 

 

ロケット団全員の動きを封じ込めて浮かせ、次いで〝ねんりき〟を発動させてロケット団が開けた天井の穴から空に放り投げる。

 

 

「ピカチュウゲットのチャンスだったのにーー!」

 

「上手くいきそうだったのにーー!」

 

「急にやられたニャーー!!」

 

「「「やな感じーーーーーーーー!!」」」

 

 

あっという間に空の星となったロケット団を見送っていると、コダックが〝ねんりき〟で粘着糸を解いてくれた。

やればできる、強いポケモンである。

 

 

「ピッカァ!」

 

「あんた、こんなパワーを持ってたのね…」

 

「コダックは、頭痛が激しくなると不思議な力を使うって言われているからな」

 

「頭痛が激しくなると………アーボックに頭を噛み続けられてたから!」

 

「そういうこと」

 

「なんか厄介な能力だなぁ」

 

「ほんとに」

 

 

はぁ、とため息を吐くカスミに苦笑する。

やる時はやるし、強いし、可愛いし、言うことなしだと思うけどなぁ。

何はともあれ、これでようやく落ち着ける。

セキチクジムを後にして、ポケモンセンターに戻るのであった。

 

 







・このサトシは、精神年齢が高い分何でも一人で背負いこみがち。
ちょっとしたことでも全部背負い込む。
そこを一緒に背負ってくれるのが、仲間になってくれたポケモン達。
サトシの思考を読んで、背を叩きながら励まし、一緒に歩んでくれる頼もしい仲間達。
サトシのポケモン達はサトシ大好きな分、サトシの折れない心の支えになりたい意思が強い。

・今回のサトシの心境、少し急に見えるがこれまでのトレーナー戦では基本危なくなることなく、ジム戦はこちらが胸を借り戦術を試す場としてチャレンジャーというある種の余裕がある。
そんな中でシゲルという同年代のトレーナー、しかも互いがライバルと認める仲で、サトシの記憶の中では常に一歩先を行かれていた相手に不利になり、一気に精神面の脆さが垣間見えた形。
本来なら本文の中だけでわかりやすくさせるものだと思うが、作者の技量不足により急すぎる、違和感があると言われる可能性があるので、一応補足。

・シゲルは幼い頃から大人びているサトシを見てきて、ずっとどこか先を行かれている気がしていた。
傷付いたイーブイがサトシにだけ心を開いた出来事も、トレーナーに捨てられたヒトカゲ(太陽)を旅立つ前からリザードまで進化させた出来事も、心のどこかでトレーナーとしての格の違いを見たようで嫉妬していた。
今回バトルしたことで、バトル中にポケモンと一緒に成長するサトシを見て、ある意味でのサトシの弱さを知り、自分と同じように成長しようと必死にもがいている人間だと理解して吹っ切れた。

・ロケット団がジム戦終わりだったり、温泉に入っている途中だったりを狙うのは、真っ向からだとスイクンがいるからどう足掻いても無理じゃね?という思考になったから。
ジム戦を尊重して、とかじゃない。

・アニメだとキョウとアヤがロケット団を撃退したコダックを交換してほしいと頼む描写があるが、今回はポケモン監察局という名前を出されて意気消沈したことで自重した。





スイクン(色違い) Lv.49

エーフィ♀  Lv.50

リザードン♂ Lv.50 -太陽-

ピカチュウ♂ Lv.50

ロコン♂(色違い) Lv.42

バタフリー♂ Lv.39→42

ピジョン♂  Lv.41→43

ニドキング  Lv.39

フシギダネ♂ Lv.40→43

ヒトカゲ♂  Lv.41→43

ゼニガメ→カメール♂  Lv.36→41

クラブ♂   Lv.38→40

ニンフィア♀ Lv.38

ゲンガー♂  Lv.53

バタフリー♀(桃色の色違い) Lv.20 -モルガナ-

ゲンガー♂  Lv.38→40

オコリザル♂ Lv.48

イーブイ♂(色違い) Lv.35

ガーディ♂(ヒスイの姿) Lv.38

タマゴ→イーブイ♂ Lv.1→5 NEW!

ベトベトン♂ Lv.38

コイル(色違い) Lv.25→27

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