第38話 炎のポケモン大レース
ジム戦を終えてポケモンセンターでポケモン達を回復させ、一旦部屋でそれぞれの荷物整理をすることになる。
必要なものが揃っているかの確認と、買い出しが必要かの確認をするためだ。
俺もタマムシデパートで買った色々なものを整理していると、外に出てピカチュウと遊んでいたイーブイ(タマゴから生まれた個体)がやってきて、進化の石に興味を示した。
「ブイ!ブイブイ?」
「これは進化の石だよ。触れると進化できるんだ。興味あるのか?」
「ブイ!」
笑顔で頷くイーブイは、ほのおのいし、みずのいし、かみなりのいし、リーフのいし、こおりのいしにそれぞれ近付いて、クンクンと匂いを嗅ぎ始める。
触れはしないが、とても興味津々だ。
まだレベルは低いが、進化したいというのならそれでいいだろう。
「ブイ!ブイブイブイ!」
イーブイはリーフのいしの前でぴょんぴょこ飛び跳ねてアピールしてくる。
「リーフのいしを使うとリーフィアになれるけど、それでいいのか?」
「ブイ!」
イーブイは再び笑顔で頷いた。
森の中でタマゴから生まれたので、草木に興味が湧いたのか親しみを覚えたのか。
どちらでも構わない。
進化したいなら、言うことなしだ。
「よし。ほら、イーブイ」
「ブイ!」
イーブイにリーフのいしを差し出すと、イーブイも右前足を差し出してそっと触れた。
途端に光り出すイーブイの体。
徐々に体が大きくなり、耳や尻尾の形が変わっていく。
パシンっと光が弾けた先に、目をパチクリとさせたリーフィアが、お座りしていた。
「改めて、これからもよろしくな、リーフィア」
「フィア!」
リーフィアは三度笑顔で頷き、俺に擦り寄ってきてくれた。
元気いっぱいで人懐っこいのは、イーブイの時と変わらずだ。
その後タケシとカスミと合流した際、イーブイがもう進化していることに驚かれた。
リーフィアに進化したとはいえ、まだまだ幼いので俺の腕の中でミルクを飲むのは変わらずだった。
そして必要な買い出しを終え、セキチクシティに来たならぜひサファリゾーンに寄ろうという話になり、オーキド博士に連絡を入れて手持ちをピカチュウ、スイクン、イーブイ(色違い)、ガーディ、リーフィア、オコリザルに変える。
オコリザルは前、ロケット団のアポロに手も足も出なかったことに相当怒りを覚えたようで、気が立っていてリーフィアを筆頭に幼い組が怯えていたので、一先ずは宥めた。
「これからだ、オコリザル。今で終わりじゃないんだ。自分自身で終わらせないためにも、悔しさをバネに乗り越えていこうぜ?」
「ウキャ!」
俺の言葉にオコリザルは納得してくれて、一先ずは落ち着いてくれた。
それでも完全に悔しさが消えるわけではないので、今回はオコリザルが手持ちにいる間は、重点的に鍛えようと思う。
それに。
「それにお前には、まだ進化っていう道が残ってる」
「ブヒッ!?ウキャッキャ!?」
「あぁ。お前はまだ、進化できる。進化したからといって劇的に強くなるってわけじゃないけど、それでも戦い方の幅は大いに広がるだろう。どうだ?興味あるか?」
「ウキャ!」
躊躇うことなく、オコリザルは頷いた。
「よし!それなら今日から、進化に必要な技の特訓だ!最初から上手くいくとは限らないから、焦らず行こうぜ?」
「ブヒッ!」
やる気満々、進化する気満々のオコリザルに、〝ふんどのこぶし〟を覚えてもらうことが決まった。
先ほどとは違い、ピリピリした空気はなくただ闘志を燃え上がらせるオコリザルに感化されたのは、ガーディだった。
両拳をぶつけ合い、やる気を滾らせるオコリザルを何やらキラキラした表情で見つめ、自分も自分も!自分ももっと強くなる!と言ってくれた。
仲間になった時期が同じだからか、ガーディとニコイチのように一緒にいる色違いのイーブイが、なら自分も!自分も強くなる!と後に続き、色違いのイーブイのことを兄として慕うリーフィアがそんな二人を見てようやく怯えの色をなくし、俺の影から出てくる。
そしてよくわからないままぴょんぴょこ飛び跳ね、ガーディとイーブイに突撃しに行く。
「ブイ!?」
「ワゥワゥ!」
「フィーア!」
「はは!」
「ピッカ!」
「ブヒ?」
途端にわちゃわちゃし始める三匹に、オコリザルがキョトンとする。
仲良し三匹、今日も元気いっぱいだ。
ピカチュウ以外をモンスターボールに戻し、待っていてくれたタケシとカスミと合流し、北を目指す。
木々を抜けて広い原っぱに辿り着くと、地響きを上げながら走るケンタロスの群れを見つけた。
「あれはケンタロス」
「ってことは、ここはもうサファリゾーンなの?」
「いや、まだのはずだ。ここは確か、ポケモン保護区のはず……」
知識を呼び起こしながら俺が答えていると、ポニータに乗った女性が現れる。
「あんた達、ポケモン保護区を知ってるのね。なら、ポケモンを捕ろうだなんて考えないわよね」
「あ、はい。もちろん」
「あの、あなたは?」
「あたし、ポケモン放牧民ララミー族のフウコってんだ。そして…」
「ワゥ!」
いつの間にか、ポニータの横にガーディが現れた。
「このガーディは、言ってみればポケモン保護区のガードマンってところかな」
「へぇ…。俺、マサラタウンのサトシっていいます」
「ピカ、ピカチュウ」
「あたしカスミです」
「タケシといいます!のびのび育てば、五年後が楽しみです!」
頬を赤らめて鼻の下を伸ばすタケシの頭を小突く。
その後、フウコちゃんにララミー族の集落に案内された。
「あんた達は、ポケモントレーナー?」
「はい。ポケモンリーグに出るために、ジムバッジを集めて旅をしているんです。今は、サファリゾーンに行こうとしてて」
「なるほど、それでここを通りかかったのね」
「一匹だって大変なのに、これだけの群れを育てるなんて」
「ララミー族、聞いたことがあるな。確か、ポケモンを大自然の中で育ててる人達ですよね。ポケモンブリーダーの間でも、ララミー族のポケモンは大自然の中でのびのび育てられただけあって、強さも一味違うって評判だ」
「うふふ、そう言ってもらえると嬉しいよ。ここの連中は皆そう。皆、自分の仕事に誇りを持ってんだ」
お喋りしていると、フウコちゃんの中に欠片ほどあった警戒心が解かれていくのを感じる。
「ね、今あたし達の村お祭りやってんだ。よかったら遊んでいきなよ」
「お祭り!いいわね!」
「ピッカ!」
仲良くなったからか、フウコちゃんがお祭りに誘ってくれる。
真っ先に反応したのは、意外にもカスミだった。
今回のカスミ、前よりも子どもっぽいところが多いというか、甘えてるというか……。
まぁいいけど。
ピカチュウも行く気満々だ。
「あんた達いいときに来たよ。おまけに明日はポケモンレースだからね」
「ポケモンレース、って?」
「ポケモンの成長の成果をレースで競うのさ。優勝すれば、ララミー族名誉ポケモン、名誉トレーナーとして認められる―――」
そこまでフウコちゃんが言うと、地響きを鳴らしながらドードリオの群れが現れ、あっという間に通り過ぎていく。
「よぉフウコ!」
やってきたのは、ドードリオ使いのドリオ。
よく覚えてる。
レースで優勝するために、ロケット団と手を組んだやつだ。
「明日のレース、俺様がもらったぜ?」
「それはどうかしら?ポケモンレースは速いだけじゃ勝てないわよ?」
思い出せてよかった。
フウコちゃんが怪我をするのを、未然に防げるかもしれない。
ドリオが去り、改めてフウコちゃんからドリオの名を知る。
「あの、俺もポケモン、出していいですか?ちょっと試したいことがあって……」
「別にいいけど………試したいこと?」
フウコちゃんから許可を貰い、色違いのイーブイとヒスイガーディをモンスターボールから出す。
「ブイ!」
「ワゥ!」
途端に驚きを顕わにするフウコちゃん。
「色違い!?それに、何このガーディ!通常のガーディと違うような!?」
「まぁ、驚くわよね~」
「無理もない。だがサトシ。急にこの二体を出してどうしたんだ?」
「ちょっと考えがあるんだよ。フウコちゃん、ポケモン保護区のガードマンをしているガーディと俺のガーディ、交流させてもらってもいいですか?あと、イーブイとそのポニータも」
「も、もちろんいいけど……」
「ありがとうございます!」
動揺しながらも頷いてくれたフウコちゃんに感謝して、傍で食い入るように俺のガーディを見つめているガードマンのガーディと、俺のガーディを交流させる。
二体とも、己とは違う姿の己と同じ種族らしきポケモンの姿に、おっかなびっくりといった様子で様子見していたが、仲良くなるのは早かった。
今ではもう、ガードマンのガーディから俺のガーディが〝かえんほうしゃ〟を教わっている。
一方のポニータとイーブイは、何故か二体とも緊張してしまい、ギクシャクしながらの挨拶になった。
あまりにギクシャクしすぎて体が硬いので、ピカチュウが助け舟を出している。
それが微笑ましくて、俺はつい微笑んだ。
「………あの子達に、世界を見せてあげたかったの?」
「えぇまぁ、それもあります」
「あの子達、たぶん狭い世界の中で、人間を憎みながら生きてきたから……」
フウコちゃんの質問に俺が頷いて答えると、カスミが補足してくれる。
ガーディとイーブイの過去について。
出会った時の状況を。
「そっか…………ふふ、優しいんだね、サトシ」
「そんなことは。ただ、トレーナーとしてできることをしたいと思っただけですよ」
「ね、あたしに対しては、敬語じゃなくていいよ」
「そう?じゃ、遠慮なく」
「うん。その方がサトシっぽい」
ガーディとイーブイの話を聞いて、どうやらフウコちゃんは俺達のことを完全に信頼してくれるに至ったらしい。
先ほどまでは客人としての距離感だったが、今では友人としての距離感に変わっている。
いい変化だろう。
そのままポケモン達を交えて交流し、夜になるのを待つ。
ポニータとイーブイは、だいぶ馴染めたようだった。
ピカチュウ以外をモンスターボールに戻し、屋台が並ぶお祭りに参加する。
フウコちゃんは前のように人気者だった。
優勝候補でもあるらしく、改めてすごい人と知り合ったものだ。
そして後ろから慌てたふりをしてやってきたドリオ。
「お前んとこのケンタロス、何か様子が変なんだよ!」
慌てて皆で走り出し、フウコちゃんはポニータを呼んで先を行く。
今回は俺も置いて行かれないように、ポニータと並行して走る。
フウコちゃんは物凄く驚いていたが、それも喧嘩し合っているケンタロスを見てそちらに意識を向けてくれた。
「ガーディ!ケンタロスを鎮めろ!」
「ワゥ!」
ガーディがケンタロスの周りを走り回り、ケンタロスを宥め落ち着かせていく。
その間に、俺は波導で辺りを探る。
すると見つけた、邪な気配。
「一体何が起こったってんだ?」
「フウコちゃん!」
「え?」
「ヒヒーン!」
遅かった。
フウコちゃんを庇うより先にその邪な気配が飛び出して、ポニータを驚かす。
ポニータから振り落とされたフウコちゃんが地面に落ちる寸前で、慌てて抱き留めた。
「フウコちゃん!大丈夫!?」
「え、えぇ……」
何が起こったかわからないらしく、俺の腕の中で呆然とするフウコちゃんをゆっくり地面に降ろし、今度は暴れているポニータを宥めにかかる。
「落ち着け!落ち着けポニータ!」
〝いやしのはどう〟を真似た波導を流しながら手綱を引き宥めると、ポニータはすぐに落ち着いた。
「サトシ……」
そんな俺を、フウコちゃんは物凄く驚いたように見ている。
しかし後だ。
邪な気配は、まだ傍にいる。
「そこにいるのはわかってるぞ!ロケット団!」
「「「げげっ!?」」」
「オコリザル!〝インファイト〟だ!」
「ウキャ!」
まさかバレるとは思っていなかったらしいロケット団に、前にフウコちゃんが怪我した分の痛みをお見舞いする。
「ニャんでバレたのニャ!?」
「上手くいくと思ったのに!」
「どうしてこうなるのよ!?」
「「「やな感じーーーーーーー!!!!」」」
オコリザルの〝インファイト〟で、あっという間に空の星になるロケット団。
ふとドリオの波導も感じたが、無視してフウコちゃんの元に戻り、片膝を付く。
「たぶん、もう大丈夫だ」
「…………う、うん……」
手を差し出してフウコちゃんの手を握り、立たせてあげる。
フウコちゃんは未だに何が起こったのやらで困惑したまま、頬をほんのり赤く染めてポーっとしていた。
そこでやっとカスミとタケシが追い付いてきた。
一旦フウコちゃんの家に入って落ち着いた後、ロケット団がフウコちゃんのケンタロスに何かしたこと、ポニータを驚かせてフウコちゃんが怪我をしそうだったこと全てを話す。
「ロケット団め!大事な時期になんてことを!」
「でもどうして、ロケット団がそんなことをするのかしら」
「近くに、ドリオってやつの気配もあった。たぶん、関係してるだろうな」
「ドリオが……」
フウコちゃんはとても残念そうな表情で俯く。
証拠はないが、俺には知識がある。
確定であいつとロケット団は繋がっている。
「ロケット団は、懲りない連中だ。もしかしたら、明日のレースでも何か仕掛けてくるかも……」
「そんな!大切なレースなのに!」
顔を上げたフウコちゃんが、悔しそうに手を握る。
そんなフウコちゃんを見て、カスミは意を決めたようだった。
「サトシ、タケシ。明日のレース、あたし達も参加しましょう」
「カスミ?」
「あたし達も参加して、できるだけロケット団の妨害を防ぐの。そしてできることなら、真っ向勝負でドリオを打ち負かすのよ!」
決意したカスミの目に燃える炎は、タケシにも伝染した。
別にいいが、俺、誰で出よう?
結局、乗れるポケモンということでニドキングに決めた。
ララミー族の村にポケモン転送機械はなかったので、セキチクシティまで一っ走りしてオコリザルとニドキングを入れ替えてもらう。
フウコちゃんがポニータに乗っていけばと提案してくれたが、レースは明日だ。
大事なレースの前に、体力を消耗させることは避けたい。
そう言って辞退した。
オコリザルには、ゴーストタイプの技だからゲンガー達に習うといいと言っておいた。
俺の下で少しは練習できたし、あとはコツさえ掴んでくれればもしかしたら、習得は早いかもしれない。
ニドキングをモンスターボールから出して明日レースに出ることを伝えれば、とてもやる気に満ちた返事を貰った。
断られなくてよかった。
ララミー族のフウコちゃんの家に戻ったころには、もう真夜中で皆寝静まっていた。
俺も借りた布団に潜り込むと、フウコちゃんの家に置いていったイーブイが俺の存在に気付いたらしく、傍に寄ってきた。
「ブイブ?」
「お、イーブイ。悪いな、起こしちゃったか?」
「ブーイブイ」
首を横に振って、俺の布団に潜り込んでくるイーブイ。
続いて、傍にいた温もりがなくなったことで目が覚めたらしい、ガーディも起きてきた。
「ワゥ!」
「しー」
「ワゥー」
俺の真似をして声を抑え、ガーディも俺の布団に潜り込む。
二匹がぴょこ、ぴょこと俺の布団から顔を出す姿の、可愛いことよ。
さて、ちょうどいいし、二人に確認しておくか。
「なぁ、イーブイ」
「ブイ?」
「お前、ここに残るか?」
「ブ!?」
イーブイは俺の言葉に心底から驚いたようで、慌てて布団から出て俺の枕元にお座りする。
俺も上半身を起こした状態で、イーブイと向き合った。
「ここなら、ポケモン保護区だしガードマンのガーディはいるし、のんびり暮らせると思う。無理にバトルする必要もないだろうしな」
「………」
イーブイは何も言わず、つぶらな瞳で俺のことを見つめている。
「ポニータとも仲良くやれそうだし、もし残りたいならフウコちゃんに頼むつもりだよ。フウコちゃんは頼りになるし、イーブイの事情も知ってるし。ただ、ポケモンハンターとか、どうしようもない敵が寄ってこないようにだけ注意しないといけないけど…。そういう意味では、フウコちゃんに気苦労かけちゃうかもしれないけどな」
「………」
「野生に戻すっていう君との約束、果たせそうな場所ではある。……………どうする?」
「………」
イーブイは無言のまま、俺から目を逸らさない。
ガーディは、そんなイーブイにあわあわしながら俺とイーブイのことを交互に見る。
「君も同じだよ?ガーディ」
「ワゥ?」
「残りたかったら、残っていい」
「ワ!?」
ガーディは驚いて、布団の中でピャッと飛び上がった。
「君は俺と強くなる道を選んでくれたけど、それは選択肢がそれしかなかったからだ。ここなら、また別の選択肢を与えてあげられる」
「ワゥゥゥ………ワゥ!」
しかし、悩むことはなかった。
真っ直ぐに俺の腕の中に飛び込んできて、俺に擦り寄る。
「………俺で、いいのか?」
「ワゥ!ワゥガゥ!ワゥワゥワゥ!」
少し怒ったようにガーディは、俺と一緒がいい、選択肢がなかったからじゃなくて自分で選んだ道だ、この道で後悔なんてないとまくし立ててくる。
そして勢いを失くし、尻尾をペタリと床に付ける。
「………クゥ?」
「ダメじゃない、ダメじゃないよ。ありがとう、ガーディ。すごく嬉しい」
俺と共に歩む道を選んでくれて。
ありがとう、の意味を込めてガーディを抱きしめる。
ガーディも嬉しそうに俺に擦り寄ってくれる。
よかった。
ガーディを助け出せて、本当によかった。
零れそうになった涙を必死に止めて、今度はイーブイに向き直る。
イーブイは、まだ微動だにしなかった。
「どうしたい?イーブイ」
「………………………」
答えが出せないのか、イーブイは無言のまま俯く。
表情から見るに、ものすごく考えこんでいる様子だ。
悲壮感はない。
だが、喜びもない。
本当に心から悩んでいる。
「大丈夫だよ、イーブイ。時間はまだある。明日までに決めてくれれば、それでいいから」
「ブ………」
イーブイは俺の言葉に顔を上げ、俺の顔を見つめた。
俺も笑みを浮かべてイーブイを見つめていると、イーブイの目にジワリと涙の膜が張った。
「!?ど、どうした?」
「ブ、ブイッ。ブッ、ブイッブ」
どうやら、俺と離れるのがまだ寂しいらしい。
幼子らしく、しゃくりあげながら俺と会えなくなるのは嫌だ、と言ってくる。
慌ててガーディと一緒にイーブイを優しく抱きしめる。
元気いっぱいに遊んでいたし、最近はレベルも上がっていたから忘れかけていたが、まだこのイーブイは幼いんだった。
「ごめん、イーブイ。寂しいなら、無理にとは言わないよ。まだ、俺と一緒にいるか?」
「ブイッ!ブイブイッ!」
俺にしがみついて泣きながらうん、うんと頷くイーブイ。
まだ離れる判断をするのは早すぎたか。
もう少し大人になってからでも遅くないな。
そう判断すれば、イーブイを泣かせることになってしまった俺の判断を呪うしかない。
「大丈夫だよ、イーブイ。俺はここにいる。一緒にいよう。これからもまだ、俺達は一緒だ。だから―――」
言いかけた時。
イーブイの体が、光り出した。
「泣き、や、ん…………………え?」
「ワゥ?」
光が収まった先には――――。
「……………ブラッキ」
色違いのブラッキーが、そこにいた。
叫びそうになったのをぐっとこらえた俺、偉い。
まさかの進化。
このタイミングで。
しかもブラッキー。
「…………進化おめでとう、ブラッキー」
「ブラッキ!」
とりあえずお祝いの言葉を告げると、ブラッキーは涙が残る笑顔で頷いた。
そして、俺の頬にそっと頬擦りする。
可愛い。
「じゃなくて!よかったのか?ブラッキーに進化して……」
「ブラ!」
ブラッキーは何も気にした様子はなく、笑顔で頷く。
よかったのか。
そうか。
「なら、よかった……」
「ブラ!」
「ワゥ!」
望まない進化じゃなくて、本当によかった。
俺が心から安心していると、ブラッキーとガーディが腕の中に飛び込んでくる。
そしてすりすり擦り寄り、再び俺の布団の中に潜り込む。
「よし、寝るか」
「ブラ!」
「ワゥ!」
「おやすみ、二人とも」
「ブラァ」
「ワゥゥ」
俺の腕を枕にして寝るガーディとブラッキーの、可愛いこと。
明日起きたら腕が痺れてるんだろうなぁ、と考えながら、俺も眠りにつく。
ガーディとブラッキーが、俺を選んでくれた。
その嬉しさに、涙が流れないようにしながら。
翌朝、イーブイがブラッキーに進化していることに当然ながら驚かれた。
ガーディとブラッキーがいつも以上に俺に甘えてくる姿を見て、カスミがもしかして、という顔になる。
「サトシ。あんた、ガーディとブラッキーをここに置いていくつもりだったの?」
「えっ?」
フウコちゃんが驚きの声を上げる。
「あぁ、まぁな。二人が望むなら、そうしてもいいと思った。ここはいい場所だし、ポケモン保護区だし、フウコちゃんは頼りになるし、信頼できるからな」
「そ、そんな……」
褒められ慣れていないのか、フウコちゃんがほんのり顔を赤らめて俯く。
その様子を見て、何があったのかカスミが一気に不機嫌になった。
「でも、そうはしない選択をしたんだな?」
「あぁ。二人とも、俺といることを選んでくれた。ガーディは俺と一緒に強くなりたいんだって。ブラッキーは、まだ幼いから俺と離れるのが寂しいみたいでな」
「なるほど。まだもう少し成長して大人になってから、どうするか決めても遅くはないな」
タケシは納得してくれたようで、何度も頷いている。
「ポニータとイーブイの相性を見るために、交流してもいいかって聞いてきたんだ」
「そういうこと」
フウコちゃんも合点がいったようだ。
不機嫌になったカスミが気になるが、今日は大事なレースの日。
しっかり朝ご飯を食べて、いざレース会場へ。
「ララミー族主催のポケモンレースは、山あり谷ありの障害物レースだ!全ての障害をクリアして、このスタンドに誰よりも早く戻ってくれば優勝!今年一番のポケモンが決まるんだ!出場ポケモンとトレーナーは、スタートラインに集まってくれ!」
実況者の声に従い、フウコちゃんとポニータ、俺とニドキング、カスミとスターミー、タケシとイワーク、そして特別参加のピカチュウとブラッキーが、スタートラインに立つ。
今回はフウコちゃんが怪我をしなかったから、ポニータ本来の実力が期待できるだろう。
「Ready GO!!!!」
スタート開始の合図とともに、一斉に飛び出す。
まずは直線コース。
ドードリオのドリオが一番に駆け抜けていくが、その後にフウコちゃんとポニータが続く。
俺達もペース配分に注意しながら出せる最高速度で追っていく。
意外にも、ブラッキーに進化したばかりだというのにピカチュウとブラッキーコンビが俺達の後に並んでいた。
一応、ペース配分はしっかりな!、と声をかける。
すると俺達のすぐ後ろを走っていたケンタロスに何かがぶつかり、急に暴れ始めた。
ケンタロスの角がニドリーナに当たり、ニドリーナも怒り始めて喧嘩を始め、二匹が脱落してしまう。
「やっぱり、ロケット団がまだ!」
「みたいだな」
「大事なレースを………許せない!」
「あ、フウコちゃん!」
怒りに溢れたフウコちゃんが、ポニータのスピードを上げる。
慌ててニドキングに頼み、その隣に並んでもらう。
「フウコちゃん!怒りはわかるけど、今は抑えろ!ポニータのペースを考えるんだ!」
「!サトシ……」
「ポニータと心を一つにするんだ!じゃないと、このレース厳しくなるぞ!」
「……………ありがとう、サトシ!」
フウコちゃんを落ち着けることに成功したようで、少しだけペースが緩む。
それでもハイスピードなことに変わりはなく、ドリオを除いた先頭組を維持できている。
しばらく進むと、斜め45度の急な坂道になった。
ここでもドリオが一番早かった。
その後を追うフウコちゃんとポニータ、俺とニドキング、カスミとスターミー、タケシとイワーク。
ブラッキーは、少しだけスピードが落ちて最後尾組と一緒にいた。
まだ進化したてだからな、仕方ない。
下り坂になると、真ん丸マルマインに乗った男性がドリオを追い抜く勢いで転がっていく。
しかしドリオを追い抜けたと思ったら、落とし穴に嵌ってしまった。
フウコちゃんの顔が再び悔し気に歪むが、今度は深呼吸して自分の心を落ち着けていた。
フウコちゃん、俺、カスミ、タケシがマルマインの横を通り過ぎていくと、後ろからマルマインの〝だいばくはつ〟が起きた音が聞こえた。
「!?ブラッキー!ピカチュウ!」
慌てて大丈夫だろうかと波導で確認すると、最後尾にいたおかげで巻き込まれなかったようだ。
よかった。
坂が終わると湖に到着し、水面にある小さな岩を跳んでいくコースになった。
サイホーンが一つ岩に飛び乗ると、重みで岩が沈む。
それを見て、タケシとイワークが泣く泣くリタイアとなった。
スターミーで参加したカスミは、意気揚々と波乗りして水面を渡る。
「タケシー!後は任せてー!」
ポニータ、ニドキングとブラッキーは、ぴょんぴょん岩を跳んで向こう岸へと渡った。
ニドキングの重さで岩は大丈夫かと思ったが、素早く移動することにより沈む前に移動出来ていた。
それが終われば、下り坂でちょっとした休憩タイム。
ご飯を残さず食べたらレースに復帰というコースだ。
ドリオのドードリオが、三つの頭でどのご飯を食べるかで喧嘩を始め、失速したのをいいことに追い付く。
この段階で残っているのが、ドリオの他にフウコちゃん、俺、カスミ、ピカチュウだけだ。
「くそぅ!先生方!出番だぜ!」
焦ったらしいドリオが叫んだかと思えば、黒い霧が辺りに充満してロケット団がいつもの口上と共に姿を現す。
ロケット団とドリオが明確につながっていたことがわかり、フウコちゃんが再び怒りを顕わにする。
「ドリオ!あんたやっぱり!」
「うるせぇ!勝てばいんだよ!」
「皆まとめてリタイアよ!アーボック!サワムラー!やっておしまい!」
「マタドガス!ギャラドス!お前達もだ!」
ポケモンを繰り出してきたロケット団に、こちらも対応しないわけにはいかない。
ニドキング、ピカチュウ、ブラッキー、ガーディを出して相手になる。
「アーボック、〝へびにらみ〟!」
「ピッ!?」
厄介な技を覚えてきたな!
〝へびにらみ〟で、こちらのポケモン達が麻痺状態にされる。
一つロケット団の誤算だったことは、ブラッキーがいたことだろう。
特性のシンクロで、アーボックも麻痺状態になる。
「な、何でアーボックも麻痺にぃぃぃ!!?」
「マタドガス、〝ヘドロこうげき〟!」
「スターミー、〝ハイドロポンプ〟!」
〝ヘドロこうげき〟と〝ハイドロポンプ〟がぶつかり合い、爆発が起こる。
「ドリオ!今のうちよ!」
「ありがてぇ!」
ドリオは煙でカメラが何も捉えていないのをいいことに、再びドードリオでレースに復帰していく。
「フウコちゃん!行って!」
「!サトシ!」
「君が行って優勝するんだ!ドリオの不正を許しちゃいけない!ポニータとの絆を見せつけてやれ!行くんだっ!!!!」
「サトシ…………わかった!ハッ!」
フウコちゃんがポニータの手綱を強く引き、レースに復帰してドリオの後を追いかけていく。
「フウコちゃん!ドリオは何してもいいと思ってる!相手からの技や攻撃に気を付けろ!こっちも〝こうそくいどう〟か〝ニトロチャージ〟でスピードアップするんだ!」
「わかったー!」
俺に返事をしながら、あっという間にその背が遠のいていく。
「さて」
改めてロケット団の方に振り返ると、ロケット団はぎくりと体を固まらせた。
「お前達、覚悟はできてるんだろうな?」
「ふ、ふん!卑怯なのがロケット団だもんね!」
「悪役は悪役らしく、悪事を働くのだ!」
「ニャんと言われようと、ニャー達はニャー達の仕事に誇りを持っているのニャ!」
「それでも、フウコちゃんに怪我させていい理由にはならない」
今俺は、どんな顔をしているのだろう。
ロケット団のみならず、ロケット団のポケモン達までガタガタと震えている。
結局まともなバトルにはならず、ピカチュウ、ニドキング、ブラッキー、ガーディの攻撃であっという間に空の彼方へ吹き飛ばした。
「………」
出番のなかったカスミが、レース前と同じく不機嫌になる。
一先ず置いておいて、レースに復帰するために急いでニドキングとスターミー、ブラッキー、ピカチュウはご飯を完食した。
「カスミ!行くぞ!」
「………えぇ!」
返事をしてくれたことに内心安堵しながら、ニドキングとスターミー、ブラッキー、ピカチュウはレースに復帰する。
ゴールが見える地点まで行くと、既にドリオとフウコちゃん、どちらかが優勝したようだった。
会場の盛り上がりがすごい。
俺達も一気にゴールして、フウコちゃんがいる辺りでスピードを落とす。
何故かドリオは、その場にいなかった。
「フウコちゃん!」
「!サトシ!」
「結果は!?」
「ドリオはどうしたの!?」
俺とカスミが矢継ぎ早に尋ねると、フウコちゃんは笑顔でピースしてくれた。
「勝ったよ!ドリオはサトシの言うように攻撃してきたから、ギャロップの〝にどげり〟で吹っ飛ばしちゃった!」
なんかすごいこと言ってないか?
まぁフウコちゃんがいいならいいか。
「って、ギャロップ?」
カスミが不思議そうにフウコちゃんの横を見ると、そこにはポニータが進化した姿、ギャロップがいた。
「進化したんだ!おめでとう!」
「ありがとう、サトシ!ギャロップが進化してくれたおかげで、ゴールまで間に合ったんだ!」
フウコちゃんはとても上機嫌だ。
レースはロケット団のせいで脱落者が多く出たが、シンプルに地力の差で優勝できたことが嬉しいのだろう。
よかったよかった。
フウコちゃんが優勝旗を手にし、名実ともに名誉トレーナーと名誉ポケモンが決まる。
「おめでとう、フウコちゃん」
「おめでとう!」
「やったな!」
「ありがとう、皆!」
拍手と歓声に包まれて、ギャロップも誇らしそうに堂々としていた。
ドリオの処遇に関しては、盛り上がりムードをぶち壊すのもあれなので、フウコちゃんに一任することにする。
前と同じようにどういうわけかギャロップに懐かれ、顔を舐められた。
「ははは!くすぐったいぜ、ギャロップ」
「この子があたし以外の人にこんなに懐くなんてね。やっぱりサトシは、あたしが見込んだ通りのトレーナーだよ」
「ありがとう」
無事レースが終わり、旅に戻る準備をする。
ブラッキーもガーディも、俺と一緒に行く。
だからモンスターボールに二人を戻して、腰に装備した。
いつまでも一緒。
その意味を込めて、モンスターボールをそっと撫でる。
「ピカピ」
「あぁ、行こう!」
見送りに来てくれたフウコちゃんに、サファリゾーンがある方角を聞く。
「頑張ってね。ポケモンマスター。サトシなら絶対なれる。あたし信じてる」
「ありがとう、フウコちゃん」
「それと……」
「ん?」
「いつか、ポケモンマスターになったサトシに釣り合う女性になる。これがあたしの夢。だから待っててね、サトシ!」
「ん?うん?」
「ふふふ」
フウコちゃんは顔を赤らめながら、とてもいい笑顔で頷いた。
一気にカスミが不機嫌になる。
タケシは何故か悔しそうな顔をした後にカスミに思い切り足を踏まれ、とても痛がっていた。
釣り合う?
俺に釣り合う女性になる、って…………何で?
この世界で言う、付き合うとはまた違った、ポケモントレーナーとしてのパートナー的なことかな。
「よくわかんないけど、待ってればいいのか?」
「そう!待ってればいいの!頑張るのはあたしだからね!」
「そっか?」
「うん!」
よくわからないが、フウコちゃんが楽し気だからそれでいいだろう。
カスミがものすごく不機嫌になってしまったのは気掛かりだが。
フウコちゃんに手を振って別れ、俺達の旅は続く。
「カスミー?」
「…………」
「カスミさーん?」
「…………」
「お転婆人魚のカスミ様ー?」
「ふんっ」
どれだけ呼んでも、無視。
どうして。
タケシに助けを求めようにも、微笑ましそうに菩薩の顔で首を横に振られた。
何故。
「カスミさーん?何をそんなに怒ってるんですかー?」
「自分の胸に手を当てて考えてみれば?」
それがわかれば苦労はしない。
ガクッと項垂れる。
「サトシは、随分フウコちゃんに入れ込んでたみたいじゃないか」
さすがに見かねたのか、タケシが助け舟らしきことを言ってきた。
「入れ込んでた?」
「あぁ。信頼してるって言ったり、怪我をするのを未然に防いだり、聞けばフウコちゃんがレースに復帰したのもサトシが背中を押したからだとか。フウコちゃんにとってサトシはヒーローのように映っただろう」
「……………ヒーローなぁ………」
そんなんじゃない。
俺が、俺の目の前にいる人たちが、傷付くのが嫌なだけだ。
「嬉しくないのか?」
「嬉しくないわけじゃないけど、ヒーローのつもりで動いたわけじゃないからなぁ……」
「じゃあどうして、ロケット団にあんなに怒ってたのよ」
俺とタケシの会話に、ようやくカスミが混ざってきた。
まだ表情は不機嫌そうだが、こちらの言葉を待っている。
「そりゃあ…―――」
「大切な人が傷付けられそうになって、怒ったんじゃないの?あんたのあんなに怒った顔、あたし初めて見たわよ」
ふんッとそっぽを向くカスミは、どこか寂しそうで苦しそうだ。
どうしてだろう。
俺は理由がわからなくて、眉を下げる。
「そうじゃないよ。俺は………………」
思い出すのは、ラティオスが天に昇っていった光景。
人間のエゴで、命を使い潰した。
傷だらけのラティオス。
独りになってしまったラティアス。
失われた命。
取り戻せない大切なもの。
新しい、心の、雫。
友の元に帰ると言って、その姿を光の粒に変えたルカリオ。
あれは、俺達が足を踏み入れなければ起こらなかった。
そう思えば、心が苦しくなる。
ピカチュウを迎えに行かないなんて選択肢はない。
ルカリオが真実を知ってよかったと思う。
それでも、命と引き換えになるなんて、思わなかった。
どちらも、今回はそうさせない。
絶対に。
傷付けさせない。
大切なもの。
守りたいもの。
失いたくないもの。
未来に当たる出来事を、変えてみせる。
だから、お願いだ。
俺からもう、奪っていかないで。
大切な人達を。
傷付けないでくれ――――。
「サトシ?」
ハッとした。
俯いていた顔を上げると、どうやら突然足を止めて俯いた俺を心配してくれたようで、タケシもカスミも俺の顔を覗き込んでいた。
「あ、…………何でもない」
「けど!」
「俺はさ」
カスミの声を遮って、俺は深呼吸する。
あの時の出来事が、二度と起こらないように。
「誰にも、傷付いてほしくないんだよ。タケシも、カスミも、勿論、ピカチュウ達も」
「ピィカ?」
「誰にも傷付いてほしくない。それは、身体的なことだけじゃなくて、心のほうも。ただ、それだけなんだ」
俺の返答に、カスミは納得してくれるだろうか。
改めてカスミの目を見ると、動揺に揺れていた。
俺らしくない、暗い雰囲気にしてしまったなと反省して、意識して笑みを浮かべテンションを上げる。
「悪い。らしくないよな。本当に何でもないんだ。さ、行こうぜ!サファリゾーンが俺達を待ってる!」
「あ!おいサトシ!」
俺が勢い勇んで歩き出すと、カスミもタケシも慌てて付いてくる。
しばらく歩いていると、カスミから小さく「ごめん」の声が聞こえた。
「気にしてないよ。俺こそ何か傷付けたなら、悪かった」
「…………サトシは、何も悪くないわよ」
「そっか」
それだけ会話して、大草原を抜ける。
第39話 ガルーラの子守歌
大草原を抜けた先には、鬱蒼としたジャングル地帯が広がっていた。
ここはまだポケモン保護区だったはずなので、ポケモン達のゲットはせずに通り過ぎ――――――ようとした時、突然ガルーラ達の悲鳴が聞こえた。
「何!?」
「あっちのほうだ!」
「行ってみよう!」
慌てて三人で、悲鳴が聞こえた方に移動する。
ジャングル内でも開けた場所に出ると、ガルーラの群れが網に捕らわれていた。
「ガルーラの群れが!」
「誰があんなことを!」
タケシとカスミが憤る中、俺は波導を展開させてロケット団であることを確認していた。
ロケット団以上のポケモンハンターや密猟者じゃなくてよかった。
いやよくはないか。
一先ず助けねばとモンスターボールに手を伸ばしたところで、ジャングルから飛び出してくる小さな波導をキャッチした。
「う~~~~ら~~~~~~!!!」
ターザンで現れた小さな子どもは、木製であろうブーメランで網を切り裂き、ガルーラ達を助け出す。
そして掛け声一つでガルーラをまとめ上げ、ガルーラの力であっという間にロケット団を空の彼方に吹き飛ばしてしまった。
「おぉー。やるな、あの子」
「なんかすごい野生児ね……」
思わず感心していると、その子はガルーラの群れと一緒にどこかに移動して行ってしまった。
その後で、バラバラバラとヘリの音がして、白いヘリが俺達の前に着陸する。
「な、なんだ?」
「やぁ。お騒がせなのです。パパはタロウのパパさんなのです。タロウのパパさんの息子のタロウをこの辺で見たという噂を聞いたので来たのです」
最初、何を言っているのか理解するのに時間がかかった。
カスミとタケシ、ピカチュウの頭の上にも?が浮かんでいる。
「えぇと、あなたの息子さんのタロウ君を探してるんですか?」
「そうなのです」
そう言えば、息子さんをヘリから落としちゃって五年間探してた話だっけ?
戸惑っていると、後からジュンサーさんがやってきた。
どうやらサファリ保護管らしく、タロウ君のパパさんとママさんの話を詳しく聞くべく、事務所に案内してくれる。
そこで話されたのは、やはり思い出した通りだった。
パパさんとママさんとタロウ君で世界一周旅行をしていた際、誤ってヘリからタロウ君を落としてしまったらしい。
それが五年前の話。
五年間ずっと探し続け、今になってタロウ君の噂を聞いたのでここに来た、と。
だが探すまでもなかったらしく、ジュンサーさんがサファリ番外地の住所録に載っていると教えてくれた。
そしていざ、タロウ君に会いに行こう!となったのはいいが……。
「なんでこんなことに……」
「サトシ、大丈夫?」
「必要なら、俺達も手を貸すぞ?」
「いやまぁ、大丈夫だ」
「ピカピカチュウ?」
俺は今、タロウ君のパパさんとママさんが乗った木製の神輿のようなものを、一人で担いで移動していた。
何でもタロウ君のパパさんは社長らしく、体がそんなに丈夫ではないらしい。
まぁいいけどさ。
しばらく歩いていると、前方で傷付いたガルーラの赤ちゃんを見つけた。
慌ててタケシとカスミが駆け寄っていくのを目に、俺も一旦神輿を降ろす。
急いでタケシがガルーラの赤ちゃんを治療していると、ブーメランが飛んでくるのがわかったのでキャッチする。
「!?」
「タロウ君……」
「ガルーラいじめる!わるい!!」
「違うわ!タケシは、ガルーラの赤ちゃんが怪我してたから助けてたのよ!」
間に入ってくれたカスミに感謝していると、タロウ君の意外な一面が見れて苦笑いする。
タロウ君のパパさんとママさんはその一面で間違いなくタロウ君だと確信が持てたらしい。
それってどうなん?
だがタロウ君は、本当のパパさんとママさんのことを覚えていなかった。
無理もない。
タロウ君が三歳の時に別れたきりなのだ。
自分のママはガルーラだと言っている。
そのタロウ君の頭を、タロウ君のパパさんが木の棒で殴った。
「えぇ!?」
下手したら虐待だぞ!?
「これでいいのです。後で説得すればいいのです」
「こんなことしちゃダメよ!タロウ!しっかり!タロウ!タロウ!?」
タロウ君のママさんが必死に呼びかけると、タロウ君は目を覚まし、ママさんのことを思い出したようだった。
しかし育ての親であるガルーラのことも大切なママとして認識しており、タロウ君は混乱してしまい頭を抱えてしまった。
こればっかりは、どうしようもないな。
そう思っていると、ジュンサーさんが車で現れる。
「大変!協力して!また密猟者がガルーラを!」
「えぇ!?」
「っ!?」
タロウ君がいの一番に飛び出していく。
「俺達も行こう!」
「えぇ!」
ジュンサーさんの車に乗り、ガルーラの群れの元まで急ぐ。
辿り着くと、ロケット団の巨大ガルーラメカがタロウ君にロケットパンチを繰り出していた。
ガルーラの群れは、何故か眠っている。
ジュンサーさんの車に間に入ってもらって、問答無用で止めに入る。
「本当に懲りない奴らだ!」
ニドキングを出してロケットパンチを受け止めてもらい、逆にロケットパンチを返していく。
「ニャにぃぃぃ!!?」
「何て強さなのぉぉ!?」
「やっぱり狙うはジャリボーイのポケモンかぁ!?」
驚いているロケット団の巨大ガルーラメカを、ニドキングの素の力だけで押し留める。
そこへニドキングに電気技が効かないのをいいことに、ピカチュウの〝10まんボルト〟をお見舞いした。
だがロケット団のメカも軟ではなく、それだけで爆発まで持っていけなかった。
それならニドキングの力で――――と思ったところで、ヘリが突っ込んできた。
「あのヘリは……!」
タロウ君のパパさんとママさん。
その二人が、タロウ君を助けるために巨大ガルーラメカに突っ込んでいった。
大きな爆発が起こり、ロケット団は空の彼方に吹っ飛ばされる。
「パパさん!ママさん!」
慌ててメカの残骸を掘り起こし、二人の無事を確認する。
すると二人はタロウ君と同じような野生児の服に変わり、タロウ君がジャングルを離れないなら同じくジャングルに住んでポケモン達を守っていくと言った。
「パパとママはタァサンの家族に入るのです」
「パパ……ママ……」
泣きながらタロウ君、タァサンがパパさんとママさんに抱き付きに行く。
一件落着、だな。
その後タケシが保護したガルーラの赤ちゃんも無事群れに戻すことができ、タァサン達に手を振って別れた。
さぁ、サファリゾーンでポケモンゲットするぞ!
・このサトシは、誰かが怪我したり傷付いたりすることがトラウマ。
嫌なのではなく、トラウマ。
ラティオスとルカリオのことが鮮明に思い出せるから。
それが二人の記憶両方に共有する後悔だから。
だから怪我一つさせられれば、とてつもない怒りを表す。
それはポケモンも人間も関係ない。
・前のサトシほど鈍くはないが、サトシがモテるとは思っていないので自分への好意に鈍感。
付き合ってと言われれば、何処に?と返すし、
(恋愛的意味で)好きですと言われれば、(友人的意味で)俺も好きだよ!と返す。
ポケモンが第一優先故に、遠回しな言い方では自分への想いに気付かない。
周りが傷付くことを極端に恐れるのに自分が傷付くことは一切厭わないので、自分に向けられる感情はどれも受け流してしまう癖がついている。
だからこそ、相手から深く突っ込まなければ今回のフウコに返したように、何でだろ、まぁいっか、頑張れよ!で終わってしまう。
スイクン(色違い) Lv.49
エーフィ♀ Lv.50
リザードン♂ Lv.50 -太陽-
ピカチュウ♂ Lv.50
ロコン♂(色違い) Lv.42→43
バタフリー♂ Lv.42→43
ピジョン♂ Lv.43→44
ニドキング Lv.39→42
フシギダネ♂ Lv.43→44
ヒトカゲ♂ Lv.43→44
カメール♂ Lv.41→42
クラブ♂ Lv.40→41
ニンフィア♀ Lv.38→39
ゲンガー♂ Lv.53
バタフリー♀(桃色の色違い) Lv.20 -モルガナ-
ゲンガー♂ Lv.40→41
オコリザル♂ Lv.48
イーブイ→ブラッキー♂(色違い) Lv.35→37
ガーディ♂(ヒスイの姿) Lv.38→40
イーブイ→リーフィア♂ Lv.5→15
ベトベトン♂ Lv.38→40
コイル(色違い) Lv.27→33