第48話 パラスとパラセクト
バトルの特訓を多くしていたせいか、キズぐすり等がすっからかんになくなってしまった。
ちょうど山間の町、マツモタウンに着いたので、そこで薬を調達して行こうということになり、薬屋に立ち寄る。
「ごめんくださーい。あのー?」
入ってみると、薄暗い店内に薬を煎じているおばあさんがいた。
「あ、あのー」
「お薬買いに来たんですけど……」
「ひっひっひ、それなら当店オリジナル、コイキングのヒゲ薬はどうじゃ?」
「い、いえ…」
「そんなのより、もっと普通の――」
「おばあちゃん!」
タケシが言いかけると同時に、横から声が割り込んできた。
「いきなりそれじゃ、お客さん驚くでしょう?」
「おやキヨミ、おかえり」
「ごめんねお客さん。うちは、ポケモンの漢方薬を作ってるお店なんだ」
「あぁ、なるほど。それでコイキングのヒゲを……」
俺が納得してる横で、綺麗なお姉さんに弱いタケシがキヨミさんをナンパしにかかる。
キヨミさんはキョトンとした後、タケシの言葉を無視し俺のピカチュウを見てパッと顔を輝かせた。
「君達ポケモントレーナー?」
「え、えぇ。そうですけど……」
「だったら、私とポケモンバトルしない?」
「ポケモンバトル?」
聞けば、新しい薬を作るためにパラスをパラセクトに進化させたいらしい。
それでポケモンバトルをしてほしい、と。
思い出した。
このパラス、臆病すぎてピカチュウの10ボルトですら耐えられないんだった。
上手くこちらがやられたフリをしなければならないな。
「わかりました。やりましょう!」
「ありがとう!」
キヨミさんのお店の裏に移動し、キヨミさんはパラスを出した。
しかしそのパラスは随分と臆病なようで、バトルが始まる前からピカチュウに怯えてキヨミさんの後ろに隠れている。
「頑張ってパラス!世界中があなたを待っているのよ!」
「パラッサボッ」
キヨミさんの声援を受けてパラスが前に出てきたので、物は試しでピカチュウを送り出す。
「ピカチュウ、今回は勝つバトルじゃない。相手を尊重して、負けてあげるんだ」
「ピィカ」
「キヨミさん、パラスの方から攻撃してみてください」
「わかったわ。パラス、〝ひっかく〟攻撃!」
「パラッ!」
向かい合った状態で始めたバトル。
パラスは目の前にいるピカチュウに、〝ひっかく〟を繰り出した。
「…………ピィカ?」
攻撃の威力が低すぎて、全然効いていなかった。
「ピカチュウ、負けてあげるんだ!」
「ピ!………ピィカァ~」
慌てて小声で指示すると、ピカチュウはひっくり返って白旗を振る。
「パラッ!?」
「やったわね、パラス!」
「パラッサボッ!」
喜ぶパラスには悪いが、本当にこれでいいんだろうか。
タケシ達の方を見ると、同じように何とも言えない顔をしていた。
まぁ、バトルに出すためにパラセクトに進化させたいわけではないし、バトルでの強さが伴わなくても大丈夫、か……?
正式なポケモンバトルで勝ちたい、と言われたわけではないし、とりあえずいいことにしよう。
キヨミさんもパラスも心から喜んでるし。
「よ、よし!この調子で、パラスに経験値をあげよう!」
仕切り直すようなタケシの一声で、俺達の手持ちのポケモン全員と戦わせることになった。
俺の手持ちはピカチュウ、ニドキング、リザード、ニンフィア、オコリザル、ウインディと、進化したポケモン達ばかりでパラスが怯えかねないので、一番最後に回される。
タケシはイシツブテ、ズバット、ロコン、ケンタロス、サイホーン、パラス。
カスミはタッツー、メノクラゲ、コダック、クラブ、キレイハナ、パルシェン。
全員上手いこと、やられたフリをしてパラスに経験値をあげている。
コダックだけがちょっと怪しかったが、カスミさんが無理やりやられたフリをさせていた。
この調子なら、と思ったところでロケット団が姿を現した。
「あ!お前達!」
「またポケモン達を狙って!」
「ざーんねん。今回は別の目的があってね」
「別の目的?」
「パラス!頑張るのニャ!ニャー達も協力するのニャ!」
と、どういうつもりかロケット団までパラスの進化を手伝い始める。
怪しい、とカスミ達が怪しんでいたので波導で探ってみたところ、ニャースがキヨミさんに想いを抱いていることがわかった。
ムサシとコジロウは、それとは別に企んでいそうではあるが。
なるほどな、と納得してカスミ達にも教えてやれば、カスミは女の子らしく恋バナが好きなのかニヤニヤし始め、タケシは納得したように頷いていた。
負けるのが得意なロケット団、と自分達で自慢のように言ってきたが悲しくないんだろうか。
アーボック、サワムラー、マタドガス、そしてギャラドス。
凶悪顔のポケモン達に、パラスが怯えまくっていたが自分達で負けるのが得意と言うだけあって、俺達よりもやられたフリが上手かった。
おかげでパラスも自信が付いたのか俺のポケモン達と勝負する気満々だ。
改めてピカチュウ、ニドキング、リザード、ニンフィア、オコリザルで相手をする。
ウインディはヒスイの姿なので、まだロケット団の前では見せたくない。
わざと負けてあげるんだ、という俺の言葉に最初はものすごく戸惑っていたが、何とか全員やられたフリをしてパラスに経験値をあげる。
再びピカチュウを倒した時、パラスが進化の光に包まれる。
「わぁ!」
「これは!」
パラスの体が徐々に大きくなり、光が弾けた先でパラセクトが姿を現す。
「おめでとうパラス!じゃなくて、パラセクト!」
キヨミさんが大喜びでパラセクトに抱き付きに行く。
よかった、何とかなった。
ピカチュウが拍手しているのを見て、俺も一応拍手する。
「やったぜ、パラセクト!」
「パラッセクトッ!」
「ありがとう、パラセクト。今度は私の番。世界中のポケモンのためにも、私、頑張るわ」
「パラッ!」
「そしてありがとう、皆。何かお礼をさせてちょうだい」
「来た来たぁ!」
「リッチライフまであと一歩!」
キヨミさんの言葉に、ムサシとコジロウがウキウキし始める。
リッチライフとな。
キヨミさん達が作る薬を使って一儲けしようとでも思っているんだろうか。
「リッチライフの約束はできないけど、私達にできることなら、何でも聞くわ」
「それなら、簡単な薬の作り方を教わってもいいですか?」
前の世界でタケシから薬草の知識を仕入れているが、色々な薬を混ぜ合わせて煎じる薬の作り方は、残念ながらなかった。
この機会に、ぜひとも覚えておきたいところだ。
「もちろんよ!私達の知識を、あなた達にも教えるわね!」
「ありがとうございます!」
抵抗なくすぐに頷いてくれたキヨミさんに感謝して、俺達は薬の知識を仕入れることに成功した。
キヨミさんのお店に帰ると、ロケット団までついてくる。
「お前達も薬の作り方を習うのか?」
「ノンノン」
「我らは、そんな面倒くさいことはしない」
「ニャ、ニャーは………ニャーは…………キヨミさん!!!」
ムサシとコジロウが何か言う前に、ニャースが意を決したようにキヨミさんを呼び止める。
「はい?」
逸早く感づいたカスミが、ワクワクした表情で見ている。
「ニャ、ニャーを、………ニャーを!ここの商売繁盛の招き猫に是非とも―――」
「ダ、ダメよ!」
「えっ?」
「「えっ?」」
思わぬ力強い否定に、ニャースがピシリと固まる。
「あなた達旅の途中なんでしょう?大事な目標を追ってるんでしょう?」
「それは確かに……」
「その通り……」
「パラスを助けてくれただけでも十分よ」
「で、でも……」
ニャースが食い下がろうとすると、キヨミさんのおばあさんがやってくる。
「それに招き猫なら間に合っとるぞ」
「へ?」
「ほれ」
「ペルニャー」
「たった今、裏の畑でゲットしたんじゃ」
そう言って首辺りを掴んで前に出したのは、ペルシアン。
「まぁ素敵!ニャースさん、私、あの子をあなただと思って大事にするわ。旅の無事と成功を祈ってるわね!」
「そ、そんニャあ……」
ロケット団のボスの愛玩ペット枠のペルシアンといい、ニャースの過去の恋敵ペルシアンといい、ニャースとペルシアンの因縁は切れないらしい。
あまりの因縁の酷さに、うわーん、と泣きながらニャースが走り去っていく。
ムサシとコジロウも慌ててニャースの後を追い、キヨミさんは何も気付かず笑顔で手を振って見送っている。
カスミもタケシもありゃりゃ、と苦笑いだ。
さすがにご愁傷様。
キヨミさんの家で一晩お世話になりながら、一日かけて薬の作り方を叩き込まれた。
結構スパルタだったが、旅の薬代がこれで浮くと思えば安いものだろう。
改めて薬の作り方を教えてくれたお礼を言い、パラセクトとペルシアンを撫でさせてもらってから、旅に戻ったのであった。
第49話 歌って! プリン!
砂漠を抜けた先に、とても賑やかで眩しい町、ネオンタウンに辿り着いた。
もう夜中近いというのに、町中明るい。
「ここは、夜がない町として有名なんだ」
「夜がない町って?」
「二十四時間、賑やかってことさ」
「へぇ」
タケシの説明を聞いていると、前から歩いて来た人に肩をぶつけられた。
「っと、すみません」
「おぉい!なんだよいてぇじゃねぇか!」
咄嗟にこちらが謝るも、ぶつかってきた人は更に突っかかってくる。
どうしたもんかと思っていると、ジュンサーさんがきて助けてくれた。
「はい!喧嘩はしないの!もう行って行って!」
「チッ!」
ジュンサーさんが来たからか、ぶつかってきた人は舌打ちして行ってしまった。
お礼を言おうとすると、ジュンサーさんはこちらにも厳しい目を向けてくる。
「ダメよ、子どもが夜出歩いてたら!」
「俺達、今さっき町についたばっかりで――」
「それならさっさとホテルにでも行って!この町の人は怒りっぽいんだから!」
「怒りっぽい?」
「皆あんまり寝ないから、苛々してんのよ。こんなことで一々私の手を煩わせないでよね」
そこまでジュンサーさんが言ったところで、また新たに揉め事の声がした。
「まただわ、まったくもう!」
バイクに乗ってさっさとその場に向かうジュンサーさんも、だいぶ苛々してそうだ。
他の人に絡まれないうちにホテルに入り、その日は大人しく就寝した。
翌日、ホテルから出るともう町の人達は起きていてあちこちで騒いでいた。
揉め事をジュンサーさんが介入して解決していくのを見ると、この町でジュンサーをやるのは大変そうだ。
騒がしい声に落ち着かないからとっとと町を出て、町近くの林に入る。
「やっぱりこういう静かなところがいいわね~」
「そうだな」
「自然が一番いい」
言いながら歩いていると、切り株の上にプリンが現れた。
前の経験から、思わずギクリとして足を止める。
このプリンの〝うたう〟で、何度眠らされ何度顔に落書きされたことか。
「どうしたの?」
「い、いや、あれ……」
「あれ……?わぁ!プリンじゃない!」
俺が指差した方を見て、カスミが歓声を上げる。
プリンの厄介な性格を知っている身としては、複雑な気分だ。
「前から欲しかったのよ!行くのよ、ヒトデマン!」
「ヘアッ!」
カスミがさっそく仕掛けたバトル。
ヒトデマンの技で吹き飛んだプリンは、木にぶつかって泣き始める。
「あ、あれ?」
「泣いちゃったな……」
「何だか様子が変だな」
タケシの一言で、プリンの事情を聞くことにした。
曰く、前と同じように上手く歌えないらしい。
「歌えないから反撃してこなかったんだな」
「それなのに、あんなことしてごめんなさいね……。ねぇ!あたし達の手で、何とかプリンが歌えるようにしてあげようよ!」
「まぁ、そうなるよな……」
「プリプリ!」
嬉しそうにプリンがカスミに抱き付いて擦り寄っている。
こういうところは可愛いんだがなぁ。
プリンを強奪しにきました、と正面から来たロケット団をさくっと「「「やな感じーーーーー」」」にして、一先ず習ったばかりの喉に良い薬を作ってみることにした。
作っている間、カスミがプリンに発声練習や腹式呼吸等を勧めているが、努力が嫌いなプリンはそっぽを向いている。
そんなプリンに、出来上がった薬と一緒にタケシが採ってきた喉に良い果物をあげると、喜んで食べてくれた。
それで歌えるようになったみたいだったので、カスミがプリンに歌を聞かせてとリクエストしている。
切り株にプリンを降ろし、さぁ!と意気込むカスミとタケシに、一先ず待ったをかける。
「どうした?」
「俺と手を繋いでいてくれ」
「えっ?な、なんで?プリンの歌が怖いわけでもないでしょぉ?」
一気に怪訝な顔になって引いているような顔をするカスミに、そうじゃなくてと説明する。
「プリンの〝うたう〟は、人間も眠ってしまう効果があるんだ。それを波導で防いで最後まで聞くためにも、俺が波導を流しやすいように手を繋いでいてほしいんだ」
「あ、なるほど……」
「そういうことか!」
納得してくれた二人と手を繋ぎ、ピカチュウは俺の膝の上に乗ってもらってプリンの歌を聞く。
波導でプリンの歌の睡眠効果を打ち消しながら、前の世界での経験も含め今回初めて最後までプリンの歌を聞けた。
プリンが歌い終わって、俺達全員で拍手する。
「プリー!プリプリ!」
プリンも大喜びでぴょんぴょこ跳ねている。
すると大きないびきが聞こえてきた。
何だ何だと思ってそちらに行くと、ロケット団が何やら録音装置を抱えて寝てしまっていた。
自分の歌を聞いて寝てしまったとわかったようで、プリンが〝おうふくビンタ〟するがそれでも起きず、気持ちよさそうに寝ている。
頬を膨らませたプリンがコジロウの持ち物を探って水性ペンを取り出し、ロケット団全員の顔に落書きを始める。
それを見て大笑いしたのはカスミで、神妙な顔になったのはタケシだ。
「あはははは!見てあれ!おっかしー!」
「俺達もサトシがいなければ、あぁなってたのか……」
「まぁ、うん。そうだな……」
心から納得し理解してくれたことで、俺がプリンの歌が怖いわけじゃないとわかってくれてよかったぜ。
と思ったところで、思い出した。
ネオンタウンの眠らない人のためにプリンが歌って、町の人達が穏やかになったんじゃなかったっけ?
そうと決まれば、プリンにもっと大勢の人の前で歌いたくないか?、と提案する。
「プリ?」
「もっと大勢の人に、プリンの歌を聞いてもらうんだ」
「プリッ!?プリプリー!」
プリンもやる気らしく、大喜びで飛び跳ねる。
「大勢の人って?」
「ネオンタウンの人達さ。プリンの歌には、人を穏やかにする力もあるって言われてるんだ」
「さすがサトシ。よく知ってるな。ネオンタウンの人達、特にジュンサーさんを少しでも休ませようってことか」
「そうゆうこと」
ジュンサーさんには、何かとお世話になってるからな。
これも恩返しだ。
カスミとタケシも賛同して、一旦ネオンタウンに引き返した。
何処でやろうか、と野外ステージを探していたところ、変装したロケット団が大型トラックの中に作ったステージを貸すと言ってきた。
まったく。
いつから起きてどこから聞いていたんだか。
だが今回は助かるので、やな感じーーー、にはせずありがたく貸してもらう。
「さぁ、プリン!」
「最高の歌を頼むぜ!」
「プリ!」
専用のステージで歌い出したプリンの歌に、町の人達は皆眠っていく。
これで朝までぐっすりだろう。
苛々解消には睡眠が大事だ。
寝てしまった町の人達の顔にプリンが落書きしていくのを心苦しくも見守って、そのまま帰ってこないプリンにカスミが残念がる。
「あ~あ、ゲットしたかったなぁ~~」
「まぁ、そのうちまた会えるよ」
「そうね!」
プリンの歌を聞いて身も心も軽くなり、俺達は足取り軽く旅を続けるのだった。
第50話 復活!? 化石ポケモン!
歩いていると、大渓谷のある美しい風景で有名なグランパキャニオンに化石を掘りに行く人の行列が見えた。
「なぁに?あの行列……」
「化石を掘りに行こうとしてるんじゃないかな?最近絶滅したはずのポケモンの化石が発見されたとかで、ポケモンの化石探しがブームになってるとか」
「さすがは、よく知ってるね。サートシ君?」
「!その声…………シゲル!」
グランパキャニオンといえばポケモン化石、という知識を披露していたら聞こえてきた声。
振り向くと思った通り、シゲルが化石堀りの格好をして立っていた。
「その格好………シゲルも化石掘りに?」
「当然さ。貴重なポケモンの化石を手に入れる機会を、この僕が逃すはずないだろう?」
「「「「「「いいぞ!いいぞ!シ・ゲ・ル!がんばれ!がんばれ!シ・ゲ・ル!」」」」」」
相変わらずガールフレンド達と一緒のようだ。
今度はタケシが鼻の下を伸ばして、連絡先を聞いているがおじさま、と呼ばれ傷付いている。
あちゃー。
「タケシさんは面白い一面があるんだね」
「お前がガールフレンド達を連れているのと同じ一面だと思うがな」
うんうん、とカスミとピカチュウが頷く。
「まぁいい。君達も行くかい?」
「あぁ、そのつもりだよ」
「せっかくならポケモンの化石、手に入れたいわよね!」
「でも何だか、化石になって眠っている古代のポケモンを、無理やり起こすみたいで気の毒な気がするなぁ」
「何万年も前に絶滅したポケモンの化石なんてロマンじゃない」
復活したタケシの言葉に、カスミが返している。
化石になっているポケモンは、実際どう思ってるんだろうなぁ。
結局シゲルと一緒にグランパキャニオンに向かうと、もう既に多くの人が化石掘りに精を出していた。
シゲルもウキウキでその中に混ざっていき、さっそくオムナイトの化石を掘り当てている。
「サトシ、参加しないの?」
「ん、なーんか、嫌な予感が………」
「嫌な?」
「予感?」
「ピィカ?」
何か忘れてる気がする。
グランパキャニオンとくれば化石。
化石といえば貴重。
貴重といえば防犯。
防犯といえば泥棒。
泥棒といえばロケット団。
ロケット団。
「あ!」
考え込んでいた俺が突然声を出したことにより、カスミとタケシ、ピカチュウがビクッとする。
すまん。
「ど、どうしたの?」
「ロケット団だ!あいつら―――」
「あいつら上手くやったかニャァア」
俺が言いかけたところでニャースの声が聞こえ、全員でそちらをバッと振り向く。
見れば、ニャースの後姿が見えた。
「頼りになるのかならんのか。あいつらも、なんだかニャァア」
「「じゃーん」」
ムサシとコジロウを待っていたらしいニャースの前に、件の二人が登場する。
そのまま口上を言い始めたと思ったら、ニャースと言い合いになりニャースが爆弾は仕掛けたのかと聞いている。
「ふんっ。爆弾はちゃんと仕掛けたわよ」
「ここら一帯の岩場を崩せば、隠れているポケモンの化石もきっと見つかるだろうぜ」
聞こえてきた言葉にカスミとタケシが目を見開く(タケシは糸目だけど雰囲気的に)。
「あいつら、グランパキャニオンを崩すつもりよ!」
「そんなことをしたら、採掘してる人達も危ない!」
「俺があいつらを止める!カスミとタケシは、皆に逃げるよう伝えてくれ!」
「うん!」
「わかった!」
「無茶しないでね!」
「わかってる!」
心配してくれたカスミに感謝して、ロケット団の前に躍り出る。
「お前ら!やめろ!」
「ニャニャ!ジャリボーイ!」
「ざーんねん。もう遅いわよ!」
既に導火線に火が付けられた後だった。
それも、前の時よりも遥かに早い段階で付けたようで、爆弾まであと少しという距離だった。
「なっ!?くそ!!!」
「ピッカ!」
ピカチュウと一緒に走り出して、全速力で導火線の火を追う。
「あちょっと!ジャリボーイ!」
「無駄だってことがわかんニャいのかニャ!」
「こらー!邪魔するなー!」
何故かロケット団も追ってくるが、無視して導火線目指して一直線に走る。
爆弾にもう火が届く、寸前で導火線の火を右手で掴めた!
右手の掌の中でジュっと火が消え、痛い思いはしたがなんとかなった。
ホッ、としたのも束の間。
「「「ぎゃーーーーーーー!!!!!」」」
「!?」
「ピカ!?」
何故か一つになって転がり落ちてきたロケット団が、ピカチュウに激突した。
「チャァァアアアアアアア!!!!!!」
反射で放った〝10まんボルト〟が、用意されていたダイナマイトに直撃する。
「あ」
「え」
「い」
「ニャ」
「ピ、カ?」
ドカーーーーーーーーーン!!!!!!!!!!
と、凄まじい爆発が起こる。
結局は爆発でできた穴に落ち、渓谷の下に落下してしまった。
「ピカチュウ!!!」
「ピカピ!!!」
空中でピカチュウを抱き抱え、ピカチュウには一切怪我を負わせることがないよう注意する。
落ち切った先は、地下洞窟だった。
あの高さから落ちて無傷なのは、我ながら人間としてどうかと思う。
「ここは……?」
「なんか、薄気味悪いわね……」
一緒に落ちてきたらしいロケット団が、辺りを見渡す。
「たぶん、地下の洞窟だよ。爆発でこの洞窟の天井に穴が開いて、そこに落ちたんだと思う」
「「何だって!?」」
「ジャリンコ達のせいよ!」
「そうだ!俺達の邪魔なんかするからこんなことなっちゃうんだろう!?」
明らかにダイナマイトを仕掛けた方が悪いだろう。
言い返そうとして、そんなことをしている暇ではないなとため息を吐いて誤魔化す。
「なぁに!ため息なんか吐いちゃって!」
「俺達のこと見下してるのか!?」
「そうじゃなくて……」
「今はそんなことどうでもいいニャ!それよりこっからどうやって脱出するか、考えるニャ!」
意外にもニャースが一番冷静なようで、ニャースが指差した方を見たムサシとコジロウは顔を青くした。
そう、落ちてきた穴が塞がってしまっているのだ。
安全に出るのは難しいだろう。
どうしたもんかと思っていると、ピカチュウがピクリと耳を動かした。
「ピカ?」
「どうした?」
「ピカピカ!」
ピカチュウが指差した方を見れば、眠っていたところ爆発音で起こしてしまったのか、血走った眼で怒っている様子のカブト、カブトプス、オムナイト、オムスターの姿が。
「ニャ、ニャ、ニャァ!?こりゃまずいニャース!」
「い、いいからとっとと、ゲットすんのよ!」
「「行けぇ、モンスターボール!」」
ムサシとコジロウが投げたモンスターボールは、カブトプスの鎌で弾き飛ばされた。
そのカブトプスの合図で、一斉にカブト達が襲い掛かってきた。
「よ、弱らせてからゲットしたほうが、よさそうね……」
「そのようで……」
あまりにも元気なカブト達に、ムサシとコジロウは顔を見合わせたかと思えば頷き合い、アーボックとサワムラー、マタドガスとギャラドスといういつもの面子を繰り出す。
そして襲ってきたカブト、オムナイト、オムスター達を相手取り、いい勝負をしている。
前とは違うか。
やるなぁ!
「ピカピ!」
「あぁ!俺達も負けてられないな!」
こちらに向かってきた二体のカブトプス。
一体はピカチュウに任せ、もう一体は素手で俺が相手をする。
波導で強化しているので問題ない。
〝いやしのはどう〟を真似た波導を流しながら相手をしていると、徐々にカブトプスが落ち着てきた。
「カブトプス、眠ってるところ起こしちゃって悪かった。俺達、敵じゃないんだ。落ち着いてくれないか?」
「……………」
俺の声が届いたのか、攻撃しても攻撃しても受け流されて埒が明かないからか、カブトプスは俺の言葉に動きを止めてくれた。
もう一体のカブトプスの方は、ピカチュウにボコボコにされていた。
手加減というものをだね。
「……」
「カブトプス、お前強いんだな」
「?」
「波導を通して伝わったよ、お前の強さ。なぁ、俺と友達にならないか?」
「!?」
「俺はお前と友達になって、仲良くなりたい。敵対したいわけじゃないんだ。俺の言葉、伝わるかな?」
「……………」
カブトプスは真剣な表情で悩んだ後、スッと右手の鎌を差し出してきた。
さながら、握手のように。
「!ありがとう!」
鎌に合わせて、俺も右手の手の甲を当てる。
強いカブトプスという、自慢できる友達ができた。
もちろん、グランパキャニオンに地下があってそこにカブトプス達が生きていることは、他の人には滅多に言わないけどな。
「……………………?」
鎌と手の甲を当て合ったカブトプスは、何故かそのまま俺を見つめていたと思ったら、首を傾げた。
「?どうかしたか?」
スッ、と鎌で差すのは腰のモンスターボール。
え、と思い波導を向けてみると、なんと俺と一緒に来る気満々だった。
同胞をボコボコにした強さを持つピカチュウに、素手で相手できるほどの強さを持った俺。
そんな俺達が住む外の世界に出るのも面白そうだと思ったらしい。
「い、いいのか?」
一応問いかけると、コクリと頷きが返ってくる。
「そ、それじゃあ!」
空のモンスターボールを差し出せば、自ら入っていく。
数回揺れて、収まる。
「カブトプス、ゲットだぜ!」
「ピッピカチュウ!」
カブトプスのモンスターボールがオーキド研究所に転送されていく。
ふとムサシ達の方を見ると、ムサシ達を襲っていたカブト達はムサシ達がゲットしていた。
俺のピカチュウがダウンさせたカブトプスも目聡く見つけたようで、いつの間にかゲットされていた。
悪事に使うのは止めたいところだが、ここで更なる一悶着を起こして洞窟が崩れでもしたら一番最悪なので、今回は見逃すしかない。
こりゃまた次に襲ってくる時は、面倒なことになっていそうだ。
「化石ポケモン!」
「大量ゲットでチュ!」
「ニャハハのハーー!」
ご機嫌なロケット団を一先ず放り、出口を探そうと波導を広げると、何故か転がっているオムナイトを発見した。
俺のクラブほどしかない小さなオムナイトだ。
「おい、大丈夫か?」
「!」
起こしてやると、オムナイトはビクッとして後退る。
よく見ると、ロケット団と戦った形跡があった。
あまりに小さくて見逃されたのか。
傷を放って置くのもあれなので、オムナイトを抱き上げて傷の手当てに入る。
「!?」
「ちょっと沁みるかもしれないけど、我慢してくれな?」
「ピカピカチュウ」
傷が化膿しないように丁寧に手当てをし、最後にオレンの実をあげて地面に降ろす。
「?」
「それを食べれば、回復できる。邪魔して悪かったな。ゆっくり休めよ?」
「ピィカ」
キョトンとしているオムナイトを一撫でして立ち上がる。
ポカンとしていたオムナイトだったが、不意にピャッと飛び上がって震え始めた。
何事かと思ったら、ふと波導に強者の気配をキャッチした。
「!何か来る!」
「!」
俺が向いた方を警戒するピカチュウ。
猛スピードで現れたのは、目を赤く光らせた大きな大きなプテラ。
あれ?
こんなに大きかったっけ?
「グワァァアアアアアアアアアア!!!!!!!」
思考できたのも一瞬。
プテラが轟かせた咆哮に、俺達が落ちてきた穴を塞いでいる岩が、ガタガタと揺れる。
「ニャニャァ………」
「あ、あんなのに……」
「勝てるわけ………」
機嫌よかったロケット団が、咆哮だけですっかり戦意喪失してしまった。
震えて動けないオムナイトを抱き上げ、ロケット団を庇うように立ち、モンスターボールを構える。
どう見ても、オヤブンだ。
前のプテラとは恐らく、次元が違う。
波導で詳しく調べてみるとレベル60、特性プレッシャーの技スロット15ととんでもない。
覚えている技は〝りゅうのいぶき〟、〝アイアンヘッド〟、〝じしん〟、〝ストーンエッジ〟、〝がんせきふうじ〟、〝かみなりのキバ〟、〝こおりのキバ〟、〝ほのおのキバ〟、〝りゅうのまい〟、〝ドラゴンクロー〟、〝ぼうふう〟、〝つばめがえし〟、〝はねやすめ〟、〝サイコファング〟、〝ギガインパクト〟。
絶対勝って、絶対友達になってやる!
「ウインディ、君に決めた!」
「ワゥ!!!!」
ヒスイの姿のウインディにロケット団が驚愕の声を上げるのを無視して、向かってくるオヤブンプテラに集中する。
「グオオオオオオオオ!!!!」
プテラはこちらに突進しながら〝りゅうのいぶき〟を放ってきた。
種族値的に攻撃よりも特攻が低いはずなのに、そうとは思えない威力だ。
「避けろウインディ!〝しんそく〟!」
「ワゥ!」
ロケット団から逃げ出して震えていたあの頃のガーディは、もういない。
いるのは、オヤブンプテラにも臆せず向かって行く勇ましいウインディだ。
オーキド研究所でしっかり俺の得意戦法を教えられたようで、〝しんそく〟のキレはスイクン譲りのもの。
立派になった。
「グワァァァァァアアアアア!!!」
感慨にふけっている場合じゃない。
洞窟に聳え立つ柱を上手く使って〝しんそく〟でプテラとの距離を詰めたウインディに、プテラが〝アイアンヘッド〟を仕掛けてくる。
「迎え撃ってやれ!〝もろはのずつき〟!!!」
「ワゥゥゥウウウウウ!!!!」
〝アイアンヘッド〟と〝もろはのずつき〟が大激突した。
ワンチャン押せるかとも思ったが、レベルがプテラの方が高く体格が大きかったことから、ウインディが押されてしまい弾かれてしまった。
すかさず横っ腹に〝ドラゴンクロー〟を叩き込まれ、地面に落とされる。
「ウインディ!大丈夫か!?」
「ガ、ガウ!」
ウインディは立ち上がるが、まだ強者との戦いに慣れていない。
今ので相手が自分より遥かに格上だとわかってしまい、特性プレッシャーを上乗せしたかのようなプテラの咆哮に、体が少し震え始めてしまった。
「戻れウインディ!よくやったぞ!」
「ワウ……」
ここはウインディを戻すことにした。
強者との戦いに慣れさせるために継続してもいいが、変なトラウマができないとも限らない。
ここで変に突っ張るよりかは安全優先だ。
申し訳なさそうにするウインディをモンスターボールに戻し、次のモンスターボールを手に取る。
プテラはその間にも、〝りゅうのまい〟を積んでいた。
むやみやたらに人間を攻撃してこないのは、先にポケモンを全滅させてしまおうという考えだろうか。
興奮している野生にしては珍しく、知能がある。
悩んでいる暇はない。
「ニドキング、君に決めた!」
「ニド!」
ニドキングを出したと同時にプテラが〝じしん〟を仕掛けてきたのでこちらも〝じしん〟を発動させ、相殺を狙う。
しかし〝りゅうのまい〟で威力が上がった分相殺しきれず、ニドキングに少なくないダメージが入って顔が苦痛に歪む。
「〝れいとうビーム〟!」
「ニドォォォ!!!」
翼を狙い放たれた〝れいとうビーム〟は、これまた〝りゅうのまい〟で上がったスピードとプテラ本来のスピードにより簡単にかわされてしまう。
何度も狙って〝れいとうビーム〟を放つが、どれも簡単に避けられてしまった。
「グワァァァァァアアアアア!!!」
避けることに飽きたのか、プテラが〝がんせきふうじ〟を仕掛けてくる。
「〝にどげり〟だ!」
飛んでくる全ての岩を〝にどげり〟で蹴っていると、続けて〝ストーンエッジ〟が飛んできた。
〝ストーンエッジ〟も〝にどげり〟で、と思ったが威力が高い〝ストーンエッジ〟は蹴り飛ばすことができず、ニドキングにダメージが入る。
「くっ…!」
「グワァァァァァアアアアア!」
プテラの猛攻は止まず、さらに続けて〝ぼうふう〟が放たれた。
〝ぼうふう〟は〝がんせきふうじ〟や〝ストーンエッジ〟の岩をも巻き込み、巨大な竜巻となってニドキングに襲い掛かる。
避ける術は、ない――――。
「ニドキング!!!!!!」
「ッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
ニドキングの声なき声が発されるとともに、〝ぼうふう〟がニドキングを呑み込んだ。
〝ぼうふう〟の勢いは止まらず、後方にいた俺やピカチュウ、ロケット団にまで余波が襲い掛かってくる。
ピカチュウとオムナイトを抱え、余波に耐えきって正面に顔を向ける。
ニドキングの姿は、なかった。
「………………え?」
頭が思考することを放棄する。
ニドキング。
どこへ―――――。
「ニドォォォォォ!!!!!!!!!」
思考停止してしまった俺の耳に、地中から飛び出してきたニドキングの姿が映った。
地中?
「!!」
「!!!?」
「ニドォォォォォ!!」
ニドキングはプテラの真下の地面から出てくると、驚きに固まるプテラに〝かみなり〟を決める。
「ニドキング!無事なのか!」
「ニド!」
俺の言葉に頷くニドキングに、〝ぼうふう〟を食らった様子はなかった。
何故、と思っていると、先ほどまでニドキングがいた場所に穴が開いているのが見えた。
咄嗟に波導をニドキングに向けると、新たな技が二つ、追加されていた。
一つは先ほど見た〝かみなり〟。
もう一つは。
「〝あなをほる〟!そうか、それで無事だったのか!」
俺の言葉に再び頷いたニドキングは、〝かみなり〟をプテラに当て続けたままだ。
効果抜群の技を喰らい、プテラの表情が苦痛に歪んでいる。
「ギャオオオオオオオ!!!!!」
〝かみなり〟を振り払って飛び上がったプテラは、怒り狂った様子で接近戦をしかけてきた。
ものすごいスピードでニドキングとの距離を詰め、足の爪でニドキングの肩を掴んだかと思ったら、〝こおりのキバ〟をニドキングにぶち込む。
あまりにも速くて、反応することができなかった。
「!!ニドキング、〝かみなり〟!!!」
「ニドォォォォォ!!!!」
咄嗟に〝かみなり〟で抵抗するが、〝こおりのキバ〟のダメージがすごすぎて先ほどのような威力を出せないようだった。
ニドキングの顔が苦痛に歪み、次第に〝かみなり〟が放てなくなっていく。
「振り払えニドキング!〝つのでつく〟攻撃!」
「ニ、ドッッッ!!!!!」
何とか〝つのでつく〟を発動させプテラを振りほどくが、プテラに大したダメージはない。
飛び上がって距離を取ったと思ったら、今度は〝サイコファング〟で攻撃してくる。
ニドキングへの効果抜群の技をしっかり理解しているようだ。
知能も高いとは。
「ニドキング、〝あなをほる〟!」
「ニド!」
〝あなをほる〟で地中に逃げ、〝サイコファング〟が空ぶった瞬間にプテラの背後からニドキングが飛び出した。
背中に飛び乗り、プテラを地面に押し付けて〝かみなり〟を発動させる。
「ギャオオオオオオオ!!!!!」
バタバタ暴れるプテラをニドキングも必死に押さえ付け、〝かみなり〟で削っていく。
削り切れれば、という淡い希望は一瞬で打ち砕かれる。
プテラが〝はねやすめ〟を発動させたのだ。
〝かみなり〟が効果抜群ではなくなり、プテラの体から一瞬力が抜ける。
それまで暴れていたプテラが一瞬大人しくなったことで、ニドキングの押さえていた力が反動で支えを失くした棒のように宙に浮く。
そのせいで体勢を崩しかけたニドキングが慌てて力を入れ直すのより、プテラがニドキングを振り払って飛び上がる方が早かった。
「グワァァァァァアアアアア!!!!!!」
プテラが最高速度で飛び上がったと思ったら、〝ギガインパクト〟を発動させてニドキングに直撃する。
指示をする暇も、モンスターボールに戻す暇もなかった。
「ニドキング!!!!」
ニドキングは、目を回していた。
戦闘不能だ。
「ギャオオオオオオオ!!!」
勝った雄叫びを上げながら、プテラはさらに〝りゅうのまい〟を積む。
手が付けられなくなるぞ。
一瞬、スイクンを連れて来なかったことを後悔する。
すぐに頭を振って余計な雑念として振り払う。
今持てる力で対抗するのだ。
ないものねだりしてどうする。
いざという時、スイクンに頼ってばっかじゃダメだって、ずっとそう思ってきたのに。
しっかりしろ!
「ありがとな、ニドキング」
ニドキングをモンスターボールに戻し、腕の中にいるピカチュウに目をやった。
「………」
頬袋から電気を迸らせ、やる気十分。
「よし、頼むぞ!ピカチュウ!」
「ピッカァ!」
元気にピカチュウが飛び出していく。
プテラは小さいピカチュウが相手でも、気を緩める様子も油断する様子もなかった。
「ピカチュウ、〝10まんボルト〟!」
「ピィィィカァァァチュウウウウウウウ!!!!!」
渾身の〝10まんボルト〟は、簡単にかわされる。
それがどうしたとばかりに、ピカチュウが〝でんこうせっか〟で飛び出してく。
プテラもそれを見て〝ドラゴンクロー〟を仕掛けてくるが、〝こうそくいどう〟を駆使してギリギリでかわし、カウンター気味に〝かわらわり〟を叩き付ける。
「グワォォォォォォォ!!!!」
ピカチュウから一撃を貰ったプテラは怒ったように飛び上がり、〝ぼうふう〟を発動させた。
「〝こうそくいどう〟でかわせ!」
「ピッカ!」
洞窟中にある柱を使い、縦横無尽に駆け抜けて〝ぼうふう〟をかわしていく。
次にプテラは〝じしん〟を仕掛けてくるが、〝でんじふゆう〟ですかす。
〝ストーンエッジ〟や〝がんせきふうじ〟は逆に岩を足場にして利用してやり、〝10まんボルト〟をぶち込んだ。
「グオオオオオオオオ!!!」
怒ったプテラは〝つばめがえし〟という必中技で仕掛けてくる。
「ピカチュウ!〝10まんボルト〟を纏って〝でんこうせっか〟!」
「ピッカァ!」
避けられないと判断し、〝10まんボルト〟を纏った〝でんこうせっか〟という、疑似〝ボルテッカー〟もしくは〝ばちばちアクセル〟で迎え撃つ。
一瞬拮抗した力はしかし、ピカチュウを弾き飛ばした。
「ピカチュウ!!!」
「ピィィィカァァァチュウウウウウウウ!!!!」
俺の声に応え、すかさずピカチュウは〝10まんボルト〟を放つ。
その瞬間プテラは〝はねやすめ〟を発動させて飛行タイプをなくし、あえて〝10まんボルト〟を受けていた。
ワンチャン麻痺ればとも思ったが、そう簡単にはいかないようだ。
技を受けるのも相殺するのも無理な以上、避けるしかない。
その後プテラが〝かみなりのキバ〟、〝こおりのキバ〟、〝ほのおのキバ〟、〝サイコファング〟、〝ドラゴンクロー〟、〝アイアンヘッド〟、〝りゅうのいぶき〟で攻めてくるのを、〝こうそくいどう〟を駆使して紙一重でかわし〝10まんボルト〟か〝かわらわり〟でカウンターしていった。
〝じしん〟は〝でんじふゆう〟ですかし、〝ストーンエッジ〟と〝がんせきふうじ〟は足場に利用し、〝ぼうふう〟は走り回ることで避け、〝つばめがえし〟だけは〝10まんボルト〟を纏った〝でんこうせっか〟で迎え撃つ。
ちまちましたダメージを与えては〝はねやすめ〟で回復され、こちらの動きを見切ってきたのか学んだのか、ピカチュウのカウンター気味の動きを取り入れてきた。
逆にピカチュウのカウンター気味の動きはかわされるようになり、攻撃を叩き込まれるようになる。
「ピカチュウ!!」
「ピカピッカ!!」
ピカチュウは気丈に大丈夫だ、と鳴くがもうボロボロで息が上がっている。
対するプテラは〝はねやすめ〟で回復し、戦う前と同じ状態のままだ。
「ギャオオオオオオオ!!!」
プテラは尻尾で〝じしん〟を起こしたかと思うと、そのまま高速で〝ギガインパクト〟を仕掛けてきた。
「ピッ―――――!?」
咄嗟に〝でんじふゆう〟で〝じしん〟をすかしたピカチュウに、〝ギガインパクト〟が直撃する。
「ピカチュウ!!!!!」
吹き飛んだピカチュウを走ってキャッチする。
ピカチュウは腕の中で、目を回していた。
「お、終わりだニャ……」
「ピカチュウまでやられちゃったんじゃ……」
「俺達に、勝ち目なんて欠片もない………」
ピカチュウが戦闘不能になったのを目の当たりにして、ロケット団が後ろで絶望の顔をする。
絶望?
終わり?
何を言ってるんだ。
「まだ、終わってない」
「ジャ、ジャリボーイ………?」
「おみゃーまだやるつもりニャ?」
「当然だろ、これで終わりじゃない。俺のポケモンは、ピカチュウだけじゃない。まだ、残ってる」
ガタガタガタ、と腰に付けているモンスターボールが力強く揺れる。
「む、無茶よ、もう!」
「あんなバケモノに、勝てるわけないだろう!?」
「ニャー達皆、あいつに食べられちゃうニャ!」
一つに纏まってガタガタ震えだすロケット団を再び庇う位置に立ち、プテラを見据えた。
ピカチュウに〝ギガインパクト〟を決めたプテラはその勢いのまま空中に飛び上がり、反動をすかしていた。
「グ、ギャ…!」
だがよく見ると、麻痺状態になっているのがわかる。
そのせいで、〝りゅうのまい〟が発動できていなかった。
最後っ屁で、ピカチュウの特性せいでんきが発動したのだ。
それに――――。
波導でさらによく見てみると、〝はねやすめ〟のPPは枯れていた。
それだけでも、ピカチュウの粘り勝ちである。
「頼むぞ。ニンフィア、君に決めた!」
「フィーア!」
ピカチュウがやられてしまった状況は確かに絶望かもしれないが、そのピカチュウが希望を残してくれた。
回復手段をなくし、麻痺状態という希望を。
勝ち切るしかない!
「行くぞニンフィア!〝うたう〟!」
「フィ~~~ア~~~~~!」
ニンフィアの〝うたう〟が高らかに響き渡る。
「グワァァァァァォォォォォォォ!!!」
だがプテラは自分の前に〝ぼうふう〟を作り出し、風の壁で〝うたう〟を防いできた。
野生なのに本当によく頭が回ること。
「〝でんこうせっか〟から〝ドレインキッス〟!」
「フィア!」
お得意のヒット&アウェイで攻めようとするが、ピカチュウのスピードに慣れてしまったプテラにニンフィアのスピードは通じなかった。
距離を詰めたところをプテラの足に掴まれ、地面に叩き付けられる。
「フィ、ア…!」
「ニンフィア!」
出す順番を間違えたか!?
いや反省は後だ!
「〝うたう〟!」
「フィ――――!」
〝うたう〟を発動させようとした瞬間、ニンフィアに直接〝じしん〟がぶち込まれキャンセルさせられる。
そうだ!
「ニンフィア!触覚から波動を流してやれ!」
「フィア!」
ニンフィアのリボン状の触角は、人やポケモンの気持ちを和らげ敵意を削いで心を穏やかにする波動を放つことができる。
それをプテラに流せれば―――!
「フィ、ア…!!」
ニンフィアのリボンがプテラの足に巻き付くと同時に、ニンフィアが苦しみ始める。
「ニンフィア!大丈夫か!?」
「フィ、フィア…!」
気丈に顔を上げるニンフィアだが、その顔はとても苦しそうだ。
ニンフィアのリボン状の触角は触れた対象の気持ちがわかってしまうため、とてつもない戦意と殺意に逆に苦しめられているのだろう。
こちらの波動を送るどころではなさそうだ。
「〝ハイパーボイス〟!」
「フィ!」
波動を送ることは諦めて、〝ハイパーボイス〟を響かせる。
さすがにプテラはニンフィアを放して飛び上がった。
「戻ってくれ、ニンフィア!」
自由にはなったがプテラの凄まじいまでの戦意と殺意に怯え始めてしまったニンフィアをモンスターボールに戻し、次のモンスターボールを手に取る。
「オコリザル、頼むぞ!」
「ウッキャ!」
出てきたオコリザルは、すぐにファイティングポーズを取る。
「グワァァオオオオオオオ!!!!」
プテラが〝つばめがえし〟で攻めてきたところを、俺が指示する前にオコリザルは〝シャドーパンチ〟で迎え撃った。
覚えたのか!
プテラとのぶつかり合いを意地で堪え、気合いでぶっ飛ばしたオコリザルは、俺に背を向けたままサムズアップしてみせる。
あぁ、知ってるさ。
俺達は、まだやれる。
「オコリザル!〝シャドーパンチ〟に怒りを込めるんだ!それが〝ふんどのこぶし〟に近付く鍵になる!」
「ウッキャアアアアアアア!!!!」
仲間達が次々とやられていくことに怒りを覚えているらしいオコリザルは、その身に怒りを燃え上がらせる。
そして〝シャドーパンチ〟を発動する時のように、ゴーストタイプの力を拳に集めていく。
「グワァァオオオオオオオ!!!」
それを待ってくれるプテラではなく、〝がんせきふうじ〟を放ってきた。
「ぶっ飛ばせオコリザル!!!〝ふんどのこぶし〟!!!」
「ブヒッ!!!!」
ゴーストタイプの力を溜めた拳で〝がんせきふうじ〟の岩を殴り飛ばしていく。
だがまだ技とは認識されておらず、技スロットに〝ふんどのこぶし〟の文字はなかった。
すなわち発動したのは〝シャドーパンチ〟だ。
「まだまだ!もっともっと怒りを!!!」
「ウッキャ!!!」
頭に血を上らせる勢いで怒り狂っていくオコリザルに、プテラ側の猛攻が襲い掛かる。
怒りで我を忘れそうなほどのオコリザルに避けるという選択肢はなく、受け身を取りながらあえて受けることで更なる怒りを溜めていく。
「ウッキャアアアアアアアアアアア!!!!!!」
プテラの猛攻を受け続けて耐えていたオコリザルは、プテラの〝アイアンヘッド〟に頭突きされた瞬間雄叫びを上げた。
そして左手でガシリとプテラを掴み、右手に怒りとゴーストタイプの力を集約させて、プテラの左頬にとてつもない右ストレートをぶつける。
思わぬカウンターを喰らったプテラは吹き飛び、柱に激突した。
ゼェ、ハァ、と息が上がっているオコリザルの右手には、いまだに黒い炎に見えるどす黒いオーラが纏わりついている。
技スロットには、〝ふんどのこぶし〟の文字。
完璧に習得したようだ。
しかも、技を受け続けていたことで〝ふんどのこぶし〟の威力が上がっていたらしく、とんでもない火力が出ている。
プテラはぶんぶんと首を横に振って飛び上がったが、痺れも合わさってまともな飛行になっていない。
フラフラと言っていいだろう。
ここまで追い詰めることができた。
ただし――――。
「………オコリザル、戻ってくれ」
「ウキャ……」
オコリザルも技を受け続けただけあって、もう限界だった。
あとは、お前に託す。
「リザード!君に決めた!」
「グワァ!!」
今戦える最後の一体だ。
これで終わらせるぞ!
「ちょ、ちょっと、ジャリボーイ!」
「スイクンはどうしたのニャ?」
「スイクンさえいれば、あの体力のプテラなら余裕で……」
「スイクンは今は手元にいないよ」
「な」
「な」
「ニャ」
「「「な(ニャ)んだってーーーーーーー!!!?」」」
ロケット団の声が響き渡り、リザードがうるさい、と一喝する。
「終わりよ!もう終わりよぉ!」
「スイクンがいなくて残りリザードだけ!これじゃあのプテラには勝てないよぉ!」
「ニャー達の命、短かったニャァ……」
「もう………少し黙っててよ」
勝手なことばかり言うロケット団に呆れながら、意識はずっとプテラに向けている。
「リザード、〝がんせきふうじ〟!」
まだ上手く飛べないプテラをこちらが待つ必要もなく、攻める。
翼に〝がんせきふうじ〟を当て、飛行体勢も素早さも奪っていく。
「グワァァオオオオオオオ!!!!」
プテラもオコリザルのように怒りが頂点に達したようで、我を忘れたように〝ギガインパクト〟を仕掛けてきた。
しかし麻痺状態な上に〝がんせきふうじ〟を喰らって素早さが落ちていることもあり、ギリギリだが避けることができた。
そのまますれ違い様に、リザードはプテラの尻尾にしがみつく。
「ギャアオ!?」
「行け!〝ほのおのキバ〟!」
「グワァァァァ!!!」
尻尾に〝ほのおのキバ〟で喰らい付き、プテラの顔が歪む。
だが効果はいま一つなこともあり、すぐに怒り形相で尻尾を振ってリザードを振り落とそうとしていた。
「頑張れリザード!〝ほのおのキバ〟だ!」
リザードは必死に尻尾にしがみつきながら、何度も〝ほのおのキバ〟を発動させる。
「ギャオオオオオオオ!!!」
そのうちダメージが鬱陶しくなったのだろうプテラが、先ほどピカチュウを追い詰めた時のように尻尾を地面に叩き付けて〝じしん〟を発動させた。
当然、尻尾にしがみついていたリザードは効果抜群の技を受けて手が離れる。
ようやく離れたリザード目掛けて、プテラは〝りゅうのいぶき〟を放った。
「リザード!〝かえんほうしゃ〟!」
「グワァ…ッ!!!!!」
地面に倒れて起き上がろうとした態勢のまま急いで放った〝かえんほうしゃ〟と、リザードの顔面の前まで迫っていた〝りゅうのいぶき〟が衝突する。
特攻が低いリザードの〝かえんほうしゃ〟でオヤブンプテラの〝りゅうのいぶき〟と拮抗するはずもなく、〝りゅうのいぶき〟が〝かえんほうしゃ〟を呑み込んでリザードに直撃した。
「リザード!!!!!!」
「グ、グオ……!!!」
爆煙の中から立ち上がるリザードの目は、死んでいない。
まだやれると燃えている。
「〝がんせきふうじ〟!」
「グワァァァァァアアアアア!!!!」
自分に喝を入れるように咆哮を上げたリザードが、〝がんせきふうじ〟を展開するのと同じく、プテラも〝がんせきふうじ〟を発動させてきた。
岩同士がぶつかり合い、標的への勢いを失くして地面に落ちて重なっていく。
リザードにとって、少々動きづらい足場になってしまった。
プテラのように飛べればまだ話は別だったのだが。
「グワァァオオオオオオオ!!!!」
〝つばめがえし〟を仕掛けてくるプテラに〝きりさく〟で迎え撃つが、足場が悪い中踏ん張りがきかず吹き飛ばされる。
吹き飛ばされた先で即座に〝がんせきふうじ〟を発動させ、何とかプテラに当てることができた。
「ギャオオオオオオオ!!!!」
「〝かえんほうしゃ〟!!!」
〝かみなりのキバ〟を仕掛けてきたのでプテラの口の中に〝かえんほうしゃ〟を放つことで不発に終わらせ、距離を取って再び〝かえんほうしゃ〟を放つ。
〝りゅうのいぶき〟で対抗してきたので、〝かえんほうしゃ〟を放つのを止め避けに専念する。
もうあまり、ダメージを喰らうわけにはいかない。
プテラは近付くとまたしがみつかれると思ったようで、遠距離戦を仕掛けてきた。
〝りゅうのいぶき〟、〝ストーンエッジ〟、〝がんせきふうじ〟を立て続け様に発動してくる。
全てをかわすことはできないので、〝りゅうのいぶき〟は避けることに専念し、〝がんせきふうじ〟は〝がんせきふうじ〟で迎え撃ち、〝ストーンエッジ〟は落ちた岩を盾にしてすかす。
距離を取るプテラにこちらから攻める術がなく、リザードの体力だけがじわじわと削られていく。
プテラは最後に〝ぼうふう〟を発動させた。
それも力を溜めに溜めたようで、巨大な竜巻となってリザードの逃げ場を失くしてきた。
「!!!リザード!!」
俺がモンスターボールにリザードを戻すより、〝ぼうふう〟がリザードを呑み込む方が早かった。
リザードの体が〝ぼうふう〟に絡め捕られ、上に持ち上げられて〝がんせきふうじ〟や〝ストーンエッジ〟の岩の嵐に遭い、洞窟内の柱にしこたま体をぶつけて、しばらく経って〝ぼうふう〟が収まる頃にようやくリザードが落ちてきた。
ドサリ。
「ッ!!!」
リザードが地面に落ちた音に、急いで波導でリザードの安否を確認する。
命に別状はない。
ただしもう、戦闘―――――。
「お、終わりだ……」
コジロウがポツリと呟いた。
その時。
「グ、ワ…!」
「!?」
リザードが、目を開けた。
「リザード!!!!」
「ッ、グ、………ッ!!!!!」
這いつくばり、踏ん張り、リザードはゆっくり立ち上がる。
もう、限界だ。
「リザード、俺はお前をもう―――!!!!」
「グォウ」
戦わせたくない。
このままでは、死んでしまうかも―――――。
そんな思いで叫びかけた俺を、リザードの静かな声が遮った。
リザードを見ると、ニヒルな笑みを浮かべてしっかりと俺と目を合わせている。
「……………リザード………」
「グォウ。…………グォォォォォオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!!!!!」
プテラを睨み付けたリザードが、咆哮を上げた。
瞬間。
光り出す。
「これって……」
「「「し、進化!!?」」」
徐々に大きくなっていくリザードの体。
翼が生え、尻尾は太く、炎は大きく。
パシンッと光が弾けた先に。
「グォォゥ……」
威風堂々、リザードンがいた。
「……………リザードン………」
「グワァウ。グオ」
リザードンは、諦めるなと言う。
まだ、終わってないと言う。
俺が、残っていると。
俺にはまだ、リザードンが残っていると。
勝つぞと。
ただ、静かに言う。
「……………………あぁ」
帽子のつばを掴んで、後ろに回す。
「勝つぞ!!!!リザードン!!!!!」
「グワァァオオオオオオオ!!!!!!」
咆哮を上げたリザードンは、新しく生えた翼で飛び上がる。
最初からリザードンで生まれてきたとでもいうかのように、新しい体を上手く操って、プテラに急速接近する。
「行っっっけぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええ!!!!!!!!!!!」
「グワァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」
俺の声とシンクロして雄叫びを上げたリザードンが、新技である〝ドラゴンダイブ〟をプテラにぶち込んだ。
「ギャオウ!!!?」
〝ドラゴンダイブ〟の追加効果で怯みを引いたらしく、プテラの動きが止まる。
「〝がんせきふうじ〟!!!」
隙を逃さず、効果抜群の技を叩き込んでいく。
翼を攻撃され飛んでいられずに、地面に落ちたプテラが怒りのままに〝りゅうのいぶき〟で攻撃してきたので軽く飛んでかわす。
翼が生えたことで地面の岩を気にしなくてよくなり、格段に動きが見違えた。
しかし体力が残りわずかなのは変わっていない。
速攻で決着をつける!
「〝かえんほうしゃ〟!」
「グワァ!」
遠距離から少しでもダメージを入れていく。
「ギャオオオオオ!グワォォォォォォォ!!!!!」
まともに〝かえんほうしゃ〟を喰らったプテラは炎を振り払って飛び上がり、〝ギガインパクト〟を発動させた。
決着をつけるなら、ここ。
「グオオオオオオオオ!!!」
リザードンも同じ考えのようで、一旦距離を取る。
そして発動する技。
「〝フレアドライブ〟ッッッッ!!!!!!!!」
「グワァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!」
真っ向から突っ込んでくるプテラに、こちらも真っ向から受けて立つ!!!
そして激突。
する寸前。
リザードンは冷静に、プテラの軌道を読んで直撃しないように体をずらし。
カウンター気味に、〝フレアドライブ〟を直撃させた。
大爆発。
爆風。
舞い上がる、砂埃。
地面に落ちる音、二つ。
「リザードン!!!!」
呼ぶと、返ってくる小さな声。
煙が晴れた先で。
地面に倒れ伏しているプテラと。
片膝を付き、荒い息を吐きながらも、意識を保っているリザードンの姿。
「勝った………」
ロケット団のどちらかが、ポツリと呟く声がした。
「リザードン!!!」
「「「勝ったぁぁぁぁぁ!!!!!!」」」
俺がリザードンに駆け寄るのと、ロケット団が抱き合って喜ぶのと、同時だった。
ロケット団が盛り上がっている声を背に、片手でピカチュウとオムナイトを抱いてリザードンに肩を貸す。
「大丈夫か?リザードン」
「グォ……」
気丈にも大丈夫だと頷いてくれるが、戦闘不能までいっているのは明白だった。
一旦座ってオムナイトを降ろし、ピカチュウを膝の上に乗せてげんきのかけらを使い、作っておいたとてもよく効くキズぐすりでピカチュウとリザードンをともに回復させる。
「ありがとう、リザードン。本当に………本当にありがとう。俺にはずっと、お前達がついてるんだったな」
「グォウ」
治療を受けながら、その通りだ、と迷いなくリザードンは頷く。
治療をしている最中に、ピカチュウも目を覚ました。
プテラが目を回して倒れているのを見て、リザードンとハイタッチしている。
ピカチュウとリザードンの回復が終わり。
さて。
このプテラ、どうしようか。
友達になりたかったが、最後のダメージが大きかったのかいまだに目を回している。
ゲットしても俺の言うことなど聞かないだろうし。
ここで野生で生きていた方がプテラにとってもいいだろう。
残念だが、ゲットは諦めて―――。
「なんだ、ゲットしないのか?」
「ゲットしないと、ここ崩れちゃうんじゃない?」
いつの間にか傍に来ていたコジロウとムサシに、話しかけられた。
「ここが崩れる?どういう意味だ?」
「どういう意味も何も、そのままよ。そいつ、とんでもなく強いから周りの被害なんて気にせず暴れるじゃない」
「今さっきの戦闘でさえ、この洞窟が崩れるかもしれないなんて、頭になかっただろ?」
「ニャーはポケモンだから何となくわかるニャ。そのプテラ、目を覚ましたら人間の持つポケモンに負けた悔しさに、暴れ出すと思うニャ。その時止められるポケモンがいニャかったら、この洞窟は崩れて終わりだニャ」
ロケット団の言う通り、さっきの戦闘でこの洞窟が崩れるかもなんて、プテラは気にしていなかった。
実際さっきの戦闘で、地面に岩は散乱し柱は崩れ、天井は今にも落ちそうになっている。
「こんなになっちゃった洞窟で、そのプテラを放置はマズいんじゃない?」
「俺達がゲットしてもいいけど……」
「ニャー。食べられるのはごめんだニャ」
ロケット団の言うことも一理あるか。
ピカチュウと顔を見合わせ、リザードンと顔を見合わせ。
まだ気絶しているプテラを見て、意を決す。
ここの洞窟が崩れて、グランパキャニオンが崩れるよりはマシだ。
プテラの元まで歩き、空のモンスターボールを当てた。
数回揺れて、収まる。
「プテラ、ゲットだぜ」
「ピッピカチュウ!」
ピカチュウは嬉しそうに、誇らしそうにピースする。
モンスターボールがオーキド研究所に転送されていくのを見送り、立ち上がる。
「さて、」
ここからどう出ようか、と上を見上げるのと、カスミとタケシが俺を呼ぶ声が聞こえるのと、同時だった。
「タケシ!カスミ!」
「サトシ!」
「サトシィ!!!」
どうやら地下洞窟で暴れに暴れた影響で、穴を塞いでいた岩が少しずつ落ちて再び穴が開いたらしい。
光が差し込んできている。
「サトシ!聞こえてるなら急げ!」
「もうすぐここも崩れそうよ!」
「!?」
見れば、穴周りの岩がガタガタしている。
「まずいな…」
「早く脱出するニャ!」
「け、けど……」
「どうやって……」
ロケット団がどうしようもなさ気に顔を見合わせる中、俺はリザードンに目をやった。
何の躊躇いも迷いもなく、しっかりとした頷きが返ってくる。
「悪い。瀕死になったばかりで、辛いだろうに―――」
「グォ」
問題ない、と間髪入れずに返された。
カッコいいやつだ。
よし脱出だ、と思って足を踏み出そうとすると、右足に縋りつくポケモンがいた。
「ん?」
「ピ?」
ピカチュウと揃って下を見ると、オムナイトが必死な様子で俺の足に縋りついていた。
「どうした?オムナイト」
「ッ!――!!」
オムナイトに何故かキラキラした目で見られながら、身振り手振りで一緒に行きたいと伝えられる。
「ここを離れることになるけど、いいのか?」
うんうんうん、と頷かれた。
どうやら誰も敵わなかったオヤブンプテラを倒したことで、俺のことを尊敬するようになったらしい。
俺の下で修業して、俺のポケモン達のように強くなりたい、と。
そういえば、今回バトルしている俺を一番近くで見てたからな。
そういうことなら。
「わかった。一緒に行こう、オムナイト!」
空のモンスターボールを差し出せば、喜んで飛び付き、自ら吸い込まれていく。
揺れもせず収まり、プテラと同じようにオーキド研究所に転送されていった。
「オムナイト、ゲットだぜ」
「ピッピカチュウ!」
「さぁ、行くか。リザードン、頼むぞ」
「グワゥ」
ピカチュウを肩に乗せ、リザードンに乗ればリザードンは前の時とは違い、難なく飛び上がった。
ヒトカゲ、リザードの時にずっと鍛えていた成果だろう。
「あ!ちょっと!」
「こらぁ!俺達を置いてくなぁ!」
「ニャース!」
「はいはい」
バッグから縄を出してリザードンに縄の端を持ってもらい、もう片方の端を下に垂らす。
「それに捕まってこい!さすがに俺の他に大人二人ポケモン一匹もリザードンに乗れないから!」
俺の言葉にぶー垂れたロケット団だが、リザードンが構うことなく上昇し始め縄が浮き始めたことで、慌てて全員で縄を掴んでいる。
俺、ピカチュウ、ムサシ、コジロウ、ニャースの体重を乗せて飛ぶリザードンは、さすがに辛そうでスピードは出ない。
上昇するのもやっとで、気球のようにゆっくり上がっていく。
瀕死状態から回復した直後にこんな真似をさせて、本当に申し訳ない。
だが謝ればリザードンの俺達を想ってくれた気持ちが無駄になりそうで、あとでかける言葉はお礼一択だ。
リザードンが天井の穴を目指す間にも、ガタガタガラガラと徐々に岩が崩れていく。
岩の隙間から差す光が大きくなり、光の上からさらに岩が降ってきている。
こりゃもう少し遅れてれば生き埋めもあり得たな。
波導を全開にし、リザードンに方向の指示を出して落ちてくる岩を何とか避けながら、上へ向かう。
あと少しで出られる、というところまで来た時。
ふと、岩ではない別の何かが落ちてきた。
「!リザードン、止まって!」
「グォ?」
その場に止まり、咄嗟にキャッチする。
落ちてきたもの。
それは―――――。
「これは………」
タマゴ。
「トゲピーの!そうか、ここで拾うんだった……」
「ピカ?」
「あ、今は脱出が先だな。リザードン、上がってくれ!」
「グワァウ」
再びリザードンに上昇してもらい、タマゴが割れていないかよく確認する。
「あとでカスミに渡せば――――」
そこまで言いかけた時。
タマゴが、光り出した。
「へ?」
タマゴの上部分が割れ、ぴょっこりと出てきた頭部。
目を覚ますのは…――――。
「チョゲ?」
「………………う、生まれちゃ、った………」
・『ふっかつ!? かせきポケモン!』より。
ムサシとコジロウがカブト二匹、カブトプス一匹、オムナイト二匹、オムスター二匹をゲットした。
ムサシがカブト、コジロウがオムナイトを一匹ずつ手元に置き、あとはロケット団本部に献上している。
正々堂々真っ向からポケモンバトルしてモンスターボールでゲットしていたので、サトシも止めようがなかった。
・プテラが人間を攻撃しなかったのは、プライドが高すぎたため。
ポケモンを無視して人間を攻撃するのは簡単だったが、それをすると人間が持つポケモンには敵わないと認めるような気がして、癪だった。
・「元気なポケモンと一緒にタマゴを連れて歩くとタマゴからポケモンが出てくる」より。
地下であまりにもうるさくしすぎたためと、振動でかなりタマゴが揺られたため、トゲピーのタマゴが早くかえった。
スイクン(色違い) Lv.49
エーフィ♀ Lv.51
リザードン♂ Lv.52 -太陽-
ピカチュウ♂ Lv.53→55
キュウコン♂(色違い) Lv.46
バタフリー♂ Lv.47
ピジョット♂ Lv.48
ニドキング Lv.47→50
フシギダネ♂ Lv.46
リザード→リザードン♂ Lv.49→53
カメール♂ Lv.45
キングラー♂ Lv.44
ニンフィア♀ Lv.47→49
ゲンガー♂ Lv.53
バタフリー♀(桃色の色違い) Lv.20 -モルガナ-
ゲンガー♂ Lv.46
オコリザル♂ Lv.49→51
ブラッキー♂(色違い) Lv.41
ウインディ♂(ヒスイの姿) Lv.46→49
リーフィア♂ Lv.36
ベトベトン♂ Lv.45
ジバコイル(色違い) Lv.42
ケンタロス♂ Lv.36
ガルーラ♀ Lv.34
ニョロゾ♂ Lv.35
サイホーン♂ Lv.34
バサギリ♂(色違い) Lv.34
ゾロア♀(色違い) Lv.25
ヒンバス♂(色違い) Lv.20
ラッキー♀ Lv.32
カラカラ♂ Lv.28→30
ポリゴン Lv.29→30
カブトプス♂ Lv.40 NEW!
プテラ♂ Lv.60 NEW!
オムナイト♂ Lv.15 NEW!